リソー教育 Research Memo(3):“進学実績追求型”事業モデルを確立し、安定した増収基調と高い利益率を実現
[18/11/16]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
3. 特長・強み
リソー教育<4714>は様々な特長や強みを有しているが、弊社ではそれらの中で特に以下の2つが重要だと考えている。すなわち、1)長期的にほぼ一貫して業績が拡大基調を歩んでいることと、2)高い利益率を実現していること、の2つだ。これら2つの特長は、弊社の理解では同根であり、この2つをしっかりと理解することで、同社の中長期的な成長シナリオに対する理解度や確信度が高まることにつながってくるものと考えている。
同社の長期的な業績推移を以下に掲げた。同社は1985年7月の創業で、初年度の1986年6月期は163百万円の売上高を計上した。その後2013年2月期まで、連続増収を達成した(2006年2月期は決算期変更によって8ヶ月の変則決算のため減収となったが、12ヶ月換算すると実質的に増収を達成)。その後、不適切な会計処理の問題が発覚して同社はその対応に追われ、2016年2月期まで停滞が続いた。2017年2月期に4期ぶりに過去最高売上高を更新した後は再び連続増収基調を回復した状況にある。
重要なことは、この間日本においては少子化、すなわち同社が属する学習塾・予備校業界にとっての市場の縮小が続いてきたということだ。少子化を表す一例として、各年の出生数を見ると、同社の創業の10年前に当たる1975年は1,901,440人だった。それが2017年には946,065人にまでほぼ一貫して減少が続いている。
一方、同社の利益率について、売上高総利益率、売上高販管費率及び営業利益率の推移を下に掲げた。直近期の2018年2月期の売上高営業利益率は9.6%と10%をわずかに下回る水準となっているが、過去には2000年代前半においては15%前後の営業利益も決して珍しいことではなく、さらに歴史を遡れば株式公開前の1990年代においては20%〜25%の営業利益率が常態となっていた。同社自身は現在の10%という営業利益率には決して満足しておらず、営業利益率15%の回復を当面の目標に掲げて全力で取り組んでいる最中にある。
弊社では、学習塾・予備校業界を俯瞰した場合、営業利益10%というのは決して低くはなく、むしろ称賛に値する水準だと評価している。上場する同業他社の中には同社よりも高い営業利益率を実現している企業も複数あるが、それらは集団指導を中核の事業モデルとしている。同社のように個別指導をメインとするか集団と個別とを半々で展開するような業態の同業他社の中に同社のように2ケタの営業利益率を実現できているところは極めて少ない。
2018年2月期の業績は新規事業の先行投資で一部の事業が損失を計上しているなど、同社の実力を的確に反映しているとは言えない。同社が当面の目標と掲げる15%という水準が、同社の事業が本質的に有する営業利益率であり、その先の将来においては、それにどれだけ上積みをできるかが注目ポイントだと弊社では考えている。同社が展開する事業は、それだけハイ・マージン(高利益率)ビジネスがそろっているということだ。
安定した増収とハイ・マージンビジネスという2つの特長はまったく別の事象であり、その要因も異なると思いがちであるが、実は同じところに起因するというのが弊社の理解だ。
同社が現取締役相談役の岩佐氏により創業されたのは前述のとおりだが、同氏は創業に当たり中国の一人っ子政策から2つの大きなヒントを得た。それは一人っ子政策の裏側に潜む少子化と、少子化の結果として子供1人当たりに投下される教育費が増大するということの2つだ。すなわち、少子化を当初から想定して事業を興し、事業モデルを構築したという点で、同社はスタート時から相対的に優位なポジションにあったとも言えるだろう。また1人当たりの教育費が増大する点を看破したことで、少子化を逆風ではなく追い風に変えることに成功している。
少子化に立ち向かううえで事業モデルの重要なポイントが、1)1対1の完全個別指導と、2)その目的(ゴール)を進学指導に置いたこと、の2つだ。この2つは現在のTOMASをはじめとする同社の各業態に共通した要素でもある。1)と2)の2つを組み合わせた個別指導を本格的に展開しているところは現状では見当たらない。現在の個別指導市場における最も一般的なモデルは、1:少数(2〜3名)の“凖”個別指導で、学校の授業の補習目的というものだ。他社が同社のモデルを採用しない大きな理由は明確で、一言で言えば事業リスクが高いためだ。完全個別指導を行おうとすれば料金は高くせざるを得ないが、“授業の補習”ではその高い料金を正当化することはできない。高い授業料を正当化するものは唯一、進学実績だけという厳しい現実がある。ここまで頭では理解できても、いざ実行するのは相当ハードルが高いのは想像に難くない。成功(進学実績)が約束されているわけではなく、また、ブランドや評価の確立に相当の時間を要するためだ。
同社自身、質の高い個別指導の提供を設立目的としながらも創業当初は「1クラス6名の学力別クラス編成」という集団指導からスタートし、岩佐氏が思い描いていた完全個別指導を提供したのは創業5年後の1990年だった。その間は同社内でも意見・方針の対立もあったと推察されるが、最終的に実現の原動力となったのは、学習塾産業は「サービス業」という意識の導入とその徹底にある。サービス産業だからこそ高い顧客満足を提供することに心を砕いてきた。学習塾・予備校業界における高い顧客満足とは希望校への合格に他ならない。同社は創業以来現在に至るまでサービス産業という意識が一貫して保持されており、サービス事業者の使命として進学実績の追求を最大の経営目標としている。この“進学実績追求型”の事業モデルこそが同社の強みの源泉であり、冒頭の安定増収と高利益率の2つの特長につながっている。
同社がサービス産業という意識を高く持って経営していることを表す1つの事例が、同社の正社員はマネジメントに徹するというスタイルだ。主力のTOMAS事業では同社の講師陣は学生、社会人のアルバイトであり、各教室に在籍する正社員はそうした講師陣と児童・生徒、及びその保護者との調整役に徹している。具体的には、1)生徒・保護者の本音の目的・目標(ゴール)を引き出し、2)それを担当講師としっかり共有した上でカリキュラムを作成し、3)レッスン開始後は進捗状況やその後の指導方針等について保護者に対して説明責任を果たす、という作業だ。この一連のサイクルを繰り返して行うことで、普段から高い顧客満足度を維持しつつ、最終的に志望校合格という最大の顧客満足へとつなげるという流れだ。
同社の安定成長・高利益率という状況が将来的に持続可能かという点について弊社では、投資のタイムホライズンをどう設定するかにもよるが、一般的な中長期投資のタイムホライズンと考えられる5年から10年という時間軸の中では持続する可能性は十分高いと考えている。
まず、同社の展開する事業モデル(高価格・高品質のサービス)への需要は常に一定数存在することが挙げられる。次に、その市場への他社の参入がポイントになるが、この点は前述のように他社の参入で過当競争に陥るリスクは小さいとみている。同社の事業モデルに特段の秘密はないが、様々な要素が有機的につながって初めて今の同社が有する特長・強さの実現が可能になり、そこに至るには時間を要する。同社が創業から長い年月を要した道程を、少子化が加速する現在において後追い・再現するのは同社が経験した以上の事業リスクを伴うことになると考えられる。同社の進学実績追求型事業モデルに対する参入障壁の高さは同社の3つめの特長と言うことができるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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3. 特長・強み
リソー教育<4714>は様々な特長や強みを有しているが、弊社ではそれらの中で特に以下の2つが重要だと考えている。すなわち、1)長期的にほぼ一貫して業績が拡大基調を歩んでいることと、2)高い利益率を実現していること、の2つだ。これら2つの特長は、弊社の理解では同根であり、この2つをしっかりと理解することで、同社の中長期的な成長シナリオに対する理解度や確信度が高まることにつながってくるものと考えている。
同社の長期的な業績推移を以下に掲げた。同社は1985年7月の創業で、初年度の1986年6月期は163百万円の売上高を計上した。その後2013年2月期まで、連続増収を達成した(2006年2月期は決算期変更によって8ヶ月の変則決算のため減収となったが、12ヶ月換算すると実質的に増収を達成)。その後、不適切な会計処理の問題が発覚して同社はその対応に追われ、2016年2月期まで停滞が続いた。2017年2月期に4期ぶりに過去最高売上高を更新した後は再び連続増収基調を回復した状況にある。
重要なことは、この間日本においては少子化、すなわち同社が属する学習塾・予備校業界にとっての市場の縮小が続いてきたということだ。少子化を表す一例として、各年の出生数を見ると、同社の創業の10年前に当たる1975年は1,901,440人だった。それが2017年には946,065人にまでほぼ一貫して減少が続いている。
一方、同社の利益率について、売上高総利益率、売上高販管費率及び営業利益率の推移を下に掲げた。直近期の2018年2月期の売上高営業利益率は9.6%と10%をわずかに下回る水準となっているが、過去には2000年代前半においては15%前後の営業利益も決して珍しいことではなく、さらに歴史を遡れば株式公開前の1990年代においては20%〜25%の営業利益率が常態となっていた。同社自身は現在の10%という営業利益率には決して満足しておらず、営業利益率15%の回復を当面の目標に掲げて全力で取り組んでいる最中にある。
弊社では、学習塾・予備校業界を俯瞰した場合、営業利益10%というのは決して低くはなく、むしろ称賛に値する水準だと評価している。上場する同業他社の中には同社よりも高い営業利益率を実現している企業も複数あるが、それらは集団指導を中核の事業モデルとしている。同社のように個別指導をメインとするか集団と個別とを半々で展開するような業態の同業他社の中に同社のように2ケタの営業利益率を実現できているところは極めて少ない。
2018年2月期の業績は新規事業の先行投資で一部の事業が損失を計上しているなど、同社の実力を的確に反映しているとは言えない。同社が当面の目標と掲げる15%という水準が、同社の事業が本質的に有する営業利益率であり、その先の将来においては、それにどれだけ上積みをできるかが注目ポイントだと弊社では考えている。同社が展開する事業は、それだけハイ・マージン(高利益率)ビジネスがそろっているということだ。
安定した増収とハイ・マージンビジネスという2つの特長はまったく別の事象であり、その要因も異なると思いがちであるが、実は同じところに起因するというのが弊社の理解だ。
同社が現取締役相談役の岩佐氏により創業されたのは前述のとおりだが、同氏は創業に当たり中国の一人っ子政策から2つの大きなヒントを得た。それは一人っ子政策の裏側に潜む少子化と、少子化の結果として子供1人当たりに投下される教育費が増大するということの2つだ。すなわち、少子化を当初から想定して事業を興し、事業モデルを構築したという点で、同社はスタート時から相対的に優位なポジションにあったとも言えるだろう。また1人当たりの教育費が増大する点を看破したことで、少子化を逆風ではなく追い風に変えることに成功している。
少子化に立ち向かううえで事業モデルの重要なポイントが、1)1対1の完全個別指導と、2)その目的(ゴール)を進学指導に置いたこと、の2つだ。この2つは現在のTOMASをはじめとする同社の各業態に共通した要素でもある。1)と2)の2つを組み合わせた個別指導を本格的に展開しているところは現状では見当たらない。現在の個別指導市場における最も一般的なモデルは、1:少数(2〜3名)の“凖”個別指導で、学校の授業の補習目的というものだ。他社が同社のモデルを採用しない大きな理由は明確で、一言で言えば事業リスクが高いためだ。完全個別指導を行おうとすれば料金は高くせざるを得ないが、“授業の補習”ではその高い料金を正当化することはできない。高い授業料を正当化するものは唯一、進学実績だけという厳しい現実がある。ここまで頭では理解できても、いざ実行するのは相当ハードルが高いのは想像に難くない。成功(進学実績)が約束されているわけではなく、また、ブランドや評価の確立に相当の時間を要するためだ。
同社自身、質の高い個別指導の提供を設立目的としながらも創業当初は「1クラス6名の学力別クラス編成」という集団指導からスタートし、岩佐氏が思い描いていた完全個別指導を提供したのは創業5年後の1990年だった。その間は同社内でも意見・方針の対立もあったと推察されるが、最終的に実現の原動力となったのは、学習塾産業は「サービス業」という意識の導入とその徹底にある。サービス産業だからこそ高い顧客満足を提供することに心を砕いてきた。学習塾・予備校業界における高い顧客満足とは希望校への合格に他ならない。同社は創業以来現在に至るまでサービス産業という意識が一貫して保持されており、サービス事業者の使命として進学実績の追求を最大の経営目標としている。この“進学実績追求型”の事業モデルこそが同社の強みの源泉であり、冒頭の安定増収と高利益率の2つの特長につながっている。
同社がサービス産業という意識を高く持って経営していることを表す1つの事例が、同社の正社員はマネジメントに徹するというスタイルだ。主力のTOMAS事業では同社の講師陣は学生、社会人のアルバイトであり、各教室に在籍する正社員はそうした講師陣と児童・生徒、及びその保護者との調整役に徹している。具体的には、1)生徒・保護者の本音の目的・目標(ゴール)を引き出し、2)それを担当講師としっかり共有した上でカリキュラムを作成し、3)レッスン開始後は進捗状況やその後の指導方針等について保護者に対して説明責任を果たす、という作業だ。この一連のサイクルを繰り返して行うことで、普段から高い顧客満足度を維持しつつ、最終的に志望校合格という最大の顧客満足へとつなげるという流れだ。
同社の安定成長・高利益率という状況が将来的に持続可能かという点について弊社では、投資のタイムホライズンをどう設定するかにもよるが、一般的な中長期投資のタイムホライズンと考えられる5年から10年という時間軸の中では持続する可能性は十分高いと考えている。
まず、同社の展開する事業モデル(高価格・高品質のサービス)への需要は常に一定数存在することが挙げられる。次に、その市場への他社の参入がポイントになるが、この点は前述のように他社の参入で過当競争に陥るリスクは小さいとみている。同社の事業モデルに特段の秘密はないが、様々な要素が有機的につながって初めて今の同社が有する特長・強さの実現が可能になり、そこに至るには時間を要する。同社が創業から長い年月を要した道程を、少子化が加速する現在において後追い・再現するのは同社が経験した以上の事業リスクを伴うことになると考えられる。同社の進学実績追求型事業モデルに対する参入障壁の高さは同社の3つめの特長と言うことができるだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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