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リソー教育 Research Memo(5):「TOMAS」はサテライト校戦略で2023年2月期までに120校体制へ

注目トピックス 日本株
■中長期成長戦略

2. 学習塾事業の詳細と成長戦略
(1) 事業の概要
学習塾事業は実質的に創業事業でリソー教育<4714>本体が運営する1対1の完全個室・個別指導で進学指導を目的とする「TOMAS」と、子会社のインターTOMASが展開するマンツーマンの英会話スクール「inter TOMAS」から成り立っている。全社の売上高の48.8%を占め、利益面でも同様に48.4%を占めている(いずれも2018年2月期通期実績。調整額控除前の合計に対するセグメント売上高、営業利益の構成比。以下同じ)。

a) 「TOMAS」事業
同社はTOMASを2018年8月末現在で80校展開している。エリアは高所得層の分布状況などに鑑み、1都3県に限定している。TOMASの特長は進学指導を目的にしている点だ。一般に個別指導は学校の授業の補習という性格で、進路指導を目的としたものは、コースとしても非常に少なく、TOMASのように全面的に展開しているところはない。その点で他社と差別化できており、また、高価格設定を正当化し、一定数存在するそのニーズを着実に捉えて長期にわたる持続的成長を実現している。

教室展開はターミナル駅(主要駅)を中心に展開を続けてきたが近年はその周辺の中堅駅での展開に注力している。現状の80校の内訳は、駅の定義付けでも変わるが大まかに言ってターミナル駅40校、中堅駅40校という構成だ。同社は中堅駅での教室展開を「サテライト校戦略」と呼称しており、今後の拡大戦略の中核となっている。

TOMASの対象は小学生〜高校生までで、その大まかな構成比は小学生40%、中学生25%、高校生35%となっている。営業地盤の1都3県では私立学校の場合中高一貫の割合が高いため、中学生の構成比が若干低くなっている。

月間の授業料は7万円〜8万円の水準で、これは2万円〜3万円とされる他の個別指導の料金の約3倍だ。これだけの金額を払える所得層の分布を考えてTOMAS展開地域を1都3県に限定している。

b) 「inter TOMAS」事業
子会社のインターTOMASはマンツーマンの英会話スクール「inter TOMAS」を首都圏に8校展開している。個別指導によって成果を追求した英会話スクールというのが特徴だ。英会話を入り口としながら、英語4技能に対応したカリキュラムで、資格、受験、留学など、目的に合わせたコースを展開している。

コース展開からもわかるように、対象年齢は幼児〜社会人と、同社の各事業の中で最もカバー年齢が広くなっている。開業当初は幼児からの囲い込みや社会人需要の取り込みによる対象市場の拡大を狙っていたが、現在ではTOMASとの連携に軸足が移ってきている。それに伴い今後の出店戦略なども変わってくる見通しだ。

(2) 成長戦略
TOMASの成長戦略は前述したサテライト校戦略、すなわち中堅駅周辺での教室展開だ。同社は2023年2月末時点で120校体制にすることを目標に掲げている。2019年2月期から2023年2月期までの5年間で年間10校のペースで開校する計画だ。

サテライト校戦略のポイントは不動産物件を見つけやすい広さである50坪〜60坪を標準モデルとしている。生徒数は150名が目安だ。これらはターミナル駅の教室の約半分という規模感だ。

サテライト校戦略のベースにあるのは、1都3県での教室数が80校と同業他社に比べて最も少ないという事実だ。TOMASの授業料は他社比で高いものの、それだけの費用を出費できる世帯数は1都3県には十分存在していると判断している。少子化の影響で“財布”が複数ある状況もまた同社の成長戦略の支えとなっている。

これまでのところ、新規開校は計画どおり順調に進捗している。2018年3月に5校を同時開校し、4月に吉祥寺校を開校して80校体制となった(2018年8月末現在)。2017年中にも複数校を同時開校して新規開校のペースを加速させてきており、出店モデルのダウンサイジング効果が狙いどおり出ている形だ。

TOMASに関しては、サテライト校戦略に加え医学部受験に特化した個別指導塾「MEDIC TOMAS」の展開にも取り組んでいる。現役の難関大学医学部生チューターによる指導が特色だ。MEDIC TOMASはTOMASの地域特性、市場特性に応じた派生形態でTOMASの内数となるが、医学部合格実績はアピール力が強いと考えられるためTOMAS事業全体の底上げへの貢献が期待される。

英会話のinter TOMASについては、期待される役割が変化してきており、今後はTOMASと連携して成長を目指す方針だ。背景には大学入試制度改革とそれに誘発された英語教育に対するニーズの変化がある。入試においてもより実践的な英語力が問われるようになったことで、英語指導を理由としてTOMASからの退会者が増えることを同社は潜在的なリスク要因として考えている。それへの予防・対抗措置がTOMAS教室と同一・隣接ビルへのinter TOMASの出店だ。それによってTOMASからの退会を防ぐだけでなく、inter TOMASからTOMASへの集客という流れも狙っているとみられる。具体的な新規開校ペースや教室数の目標数などは示されていないが、来年に予定される中期経営計画においてはそのあたりも明らかになってくると弊社では予想している。

こうした成長戦略の結果として、学習塾事業の業容は現在の1.5倍、すなわち、年間売上高で150億円は十分狙えると弊社では考えている。TOMASの教室数が1.5倍に増加することや、inter TOMASの業容が現状の約5億円のレベルから5〜6倍に拡大することは充分可能とみていることが理由だ。中期的な学習塾事業の収益規模の詳細についても新中期経営計画での発表が待たれる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)



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