リソー教育 Research Memo(6):「TOMEIKAI」ブランドで地方展開を推進し、収益規模の倍増を狙う
[18/11/16]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期成長戦略
3. 家庭教師派遣教育事業の詳細と成長戦略
(1) 事業の概要
家庭教師派遣教育事業は子会社の名門会が担っている。リソー教育<4714>の中では比較的早い1989年から事業を開始した。100%プロの社会人講師が指導することと、学習塾・予備校に比べて情報開示が不透明な家庭教師業界にあって、進学実績をきちんと公表している唯一の事業者であるという点が特徴かつ差別化要因となっている。
家庭教師はTOMAS同様、個別指導であるが指導場所が異なる。同社グループとしては1都3県ではTOMASの拡大に注力し、TOMASの営業地域外において家庭教師による個別指導という形ですみ分けてきた。その結果、名門会の地域別売上構成は、首都圏が40%、それ以外が60%となっている。
(2) 成長戦略
家庭教師派遣教育事業セグメントを担う名門会としての成長戦略は大きく2つだ。1つは現状の家庭教師派遣事業の拡大だ。現在の業容は年商50億円規模であるが、当面はこれを100億円規模にまで成長させることが目標となっている。100億円という目標値は、家庭教師業界でかつて最大手だった企業の最高実績が300億円に達したことを目安にしたものだ。名門会と当該大手企業とでは営業地盤や料金体系、指導の目的などが大きく異なるため、業界の最高売上高を更新するとは想定していない。しかし一方で、当該大手企業が地方だけで展開しながら300億円の売上高を達成したことは、家庭教師に対する潜在ニーズの高さを物語っており、そうした隠れたニーズを掘り起こすことで家庭教師事業の成長を図る方針だ。
名門会のもう1つの成長戦略は、TOMAS事業の地方展開だ。前述のようにTOMASは1都3県に営業地域を限定している。しかしながら地方においてもTOMASが提供する進学指導型の個別指導へのニーズは存在している。これまではそれを家庭教師派遣で対応してきたが、ニーズに応えて教室型の個別指導での展開にも着手した。同社はこれを「TOMEIKAI」ブランドで展開しており、2018年8月現在、全国で7校展開している。ブランド名は「トーマス名門会」から来ており、TOMASの指導ノウハウと実績の全国展開という意図が込められている。
TOMEIKAIの開校スケジュールや教室数の目標数などは開示されていないが、弊社では開校余地は大きいと考えている。1県2校とすれば約100校の開設余地がある。また、例えば医学部をターゲットに門前教室的に開校する場合でも、国公立私立大学の医学部全81校のうち75校が1都3県以外のエリアにあることに照らすとやはり100校近くの開校は十分可能だろう。名門会においてはあくまで家庭教師事業の成長が第1という位置付けとみられるが、TOMEIKAIも高いポテンシャルがあり、今後の進捗が注目される。
「伸芽’Sクラブ」ブランドによる英才託児事業と進学指導付き学童保育事業で成長を狙う
4. 幼児教育事業の詳細と成長戦略
(1) 事業の概要
幼児教育事業には2003年に伸芽会を完全子会社化して参入した。伸芽会は創立・創業62年の老舗で、名門幼稚園・小学校へのいわゆる“お受験”の業界において、パイオニア企業であると同時にトップレベルの合格実績を誇っている。
伸芽会はお受験指導の「伸芽会」教室を関東エリア20教室、関西エリア3教室の合計23教室を展開している(2018年8月末現在)。お受験業界は、学力テストで合否が決まる中学や高校受験とはまったく様相を異にしており、知能や運動能力、行動観察など評価基準が多岐に分かれている。また試験科目も学校ごとにバラバラとなっている。それゆえ、特定の幼稚園や小学校をターゲットにした小規模事業者や個人事業者が乱立している。また市場も東京都内が圧倒的に大きく、それ以外は神奈川・埼玉・千葉の3県と関西圏の一部に限定されている。そうした業界構造にあって23教室を抱える伸芽会は、実績のみならず業容としてもナンバーワン企業と言えるだろう。
(2) 成長戦略
お受験市場は少子化トレンドにもかかわらず、むしろ少子化ゆえに、今後も緩やかに拡大が続くと弊社ではみている。過去10年くらいの間に大学入試の多様化(推薦入試・AO入試の拡大など)が急激に進んだがそれは一般入試の競争激化を生みだした。また、2020年度からの大学入試制度改革は、その全貌が見えないこともあって、一般入試を避けるマインドが強まっている。こうした環境変化が大学系列の幼稚園・小学校へのお受験熱を高めている状況だ。一方大学側でも学生の確保に向けた囲い込みの戦略の一環で系列幼稚園・小学校の強化を図っており、双方の思惑が一致した状況にある。これがお受験市場の拡大を予想する理由だ。
こうした市場環境の中、同社は「伸芽会」教室の拡大には慎重だ。首都圏で20校を展開する同社は、年齢層を上下に拡大して新市場を取り込むことで成長する戦略を採用している。それが「伸芽’Sクラブ」ブランドによる託児事業と学童保育事業だ。
託児事業は1〜3歳児を対象としており、お受験指導の「伸芽会」の1段前の年齢層を取り込む事業だ。特長は1)お受験対応型の長時間託児、2)共働き世帯へのお受験対応のソリューション提供(伝統的に、お受験は母親が専業主婦でないと合格は困難と言われてきた)の2つだ。現在首都圏で6校(2018年8月末現在)を展開しているが、開校と同時に満員・順番待ちという状況が続いている。
託児事業の拡大戦略では、需要の面での不安は乏しいものの、不動産物件の確保が制約条件となっている。託児所としての規定(面積要件や水回り等の設備要件など)を充足し、かつ駅近の物件を確保することが簡単ではないためだ。これが教室数拡大をスケジュール化し、公表することを難しくしている状況だ。
学童保育は小学校1〜3年生を対象としたもので、お受験を終えた年齢層を取り込む事業だ。学童保育は少子化が進行する現在にあっても成長を続ける数少ない市場の1つで、多くの学習塾事業者が多角化の一環で参入している。同社はこの市場に“(中学受験を見据えた)進学指導付きの長時間学童保育”を特長・差別化要因として参入している。2018年8月現在で首都圏に13教室を開設しており、託児事業同様、順調な成長が続いている。
前述のように、成長事業の伸芽’Sクラブの教室数は託児・学童合計で19教室であるが、弊社では、中期的にこの3倍すなわち60教室程度の新規出店は十分可能だと考えている。伸芽’Sクラブが既存の「伸芽会」の対象年齢を上下に拡大する位置付けと考えれば首都圏20校の「伸芽会」教室に託児・学童を併設する形での出店が1つの基本形になってくると考えられ、それに加えて空白地(学童保育は低学年児童が自身で移動するため、お受験教室などに比べれば商圏が狭い)を埋めるための教室を開校することで、60校の開設余地は十分にあると考えている。仮にそれが実現した場合、単価設定や1施設当たり収容人数にもよるが、売上高の規模は現状の年商50億円規模に対して100億円〜150億円程度は十分視野に入ると考えている。
売上げの成長以上に弊社が注目するのは、伸芽会の収益性ポテンシャルだ。伸芽会の事業はその高利益率で中期成長戦略の中で重要な役割を果たすものと期待している。このように考える理由は、伸芽会の各事業が集団指導だということにある。集団指導と個別指導とを比較した場合、同じフル稼働状態にあるならば本質的に集団指導の方が収益性は高い。講師1人当たりの生徒数(すなわち収入)を考えれば明白だろう。ポイントは教室の高稼働率をどのように確保するかにあるが、前述のようにお受験業界ナンバーワンの実績と、受験指導や英才教育を組み合わせた託児・学童事業という独自のポジショニングで高稼働率を維持している。2019年2月期第2四半期の幼児教育事業セグメントの営業利益率は21.3%に達した。これは一過性の現象ではなく、伸芽’Sクラブ事業が軌道に乗ってきたことの当然の帰結であり、更なる利益率向上のプロセスの通過点だと考えている。幼児教育事業は上期偏重という季節性があるが、近い将来、通期ベースでも営業利益率が20%を超えてくる可能性は十分あると弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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3. 家庭教師派遣教育事業の詳細と成長戦略
(1) 事業の概要
家庭教師派遣教育事業は子会社の名門会が担っている。リソー教育<4714>の中では比較的早い1989年から事業を開始した。100%プロの社会人講師が指導することと、学習塾・予備校に比べて情報開示が不透明な家庭教師業界にあって、進学実績をきちんと公表している唯一の事業者であるという点が特徴かつ差別化要因となっている。
家庭教師はTOMAS同様、個別指導であるが指導場所が異なる。同社グループとしては1都3県ではTOMASの拡大に注力し、TOMASの営業地域外において家庭教師による個別指導という形ですみ分けてきた。その結果、名門会の地域別売上構成は、首都圏が40%、それ以外が60%となっている。
(2) 成長戦略
家庭教師派遣教育事業セグメントを担う名門会としての成長戦略は大きく2つだ。1つは現状の家庭教師派遣事業の拡大だ。現在の業容は年商50億円規模であるが、当面はこれを100億円規模にまで成長させることが目標となっている。100億円という目標値は、家庭教師業界でかつて最大手だった企業の最高実績が300億円に達したことを目安にしたものだ。名門会と当該大手企業とでは営業地盤や料金体系、指導の目的などが大きく異なるため、業界の最高売上高を更新するとは想定していない。しかし一方で、当該大手企業が地方だけで展開しながら300億円の売上高を達成したことは、家庭教師に対する潜在ニーズの高さを物語っており、そうした隠れたニーズを掘り起こすことで家庭教師事業の成長を図る方針だ。
名門会のもう1つの成長戦略は、TOMAS事業の地方展開だ。前述のようにTOMASは1都3県に営業地域を限定している。しかしながら地方においてもTOMASが提供する進学指導型の個別指導へのニーズは存在している。これまではそれを家庭教師派遣で対応してきたが、ニーズに応えて教室型の個別指導での展開にも着手した。同社はこれを「TOMEIKAI」ブランドで展開しており、2018年8月現在、全国で7校展開している。ブランド名は「トーマス名門会」から来ており、TOMASの指導ノウハウと実績の全国展開という意図が込められている。
TOMEIKAIの開校スケジュールや教室数の目標数などは開示されていないが、弊社では開校余地は大きいと考えている。1県2校とすれば約100校の開設余地がある。また、例えば医学部をターゲットに門前教室的に開校する場合でも、国公立私立大学の医学部全81校のうち75校が1都3県以外のエリアにあることに照らすとやはり100校近くの開校は十分可能だろう。名門会においてはあくまで家庭教師事業の成長が第1という位置付けとみられるが、TOMEIKAIも高いポテンシャルがあり、今後の進捗が注目される。
「伸芽’Sクラブ」ブランドによる英才託児事業と進学指導付き学童保育事業で成長を狙う
4. 幼児教育事業の詳細と成長戦略
(1) 事業の概要
幼児教育事業には2003年に伸芽会を完全子会社化して参入した。伸芽会は創立・創業62年の老舗で、名門幼稚園・小学校へのいわゆる“お受験”の業界において、パイオニア企業であると同時にトップレベルの合格実績を誇っている。
伸芽会はお受験指導の「伸芽会」教室を関東エリア20教室、関西エリア3教室の合計23教室を展開している(2018年8月末現在)。お受験業界は、学力テストで合否が決まる中学や高校受験とはまったく様相を異にしており、知能や運動能力、行動観察など評価基準が多岐に分かれている。また試験科目も学校ごとにバラバラとなっている。それゆえ、特定の幼稚園や小学校をターゲットにした小規模事業者や個人事業者が乱立している。また市場も東京都内が圧倒的に大きく、それ以外は神奈川・埼玉・千葉の3県と関西圏の一部に限定されている。そうした業界構造にあって23教室を抱える伸芽会は、実績のみならず業容としてもナンバーワン企業と言えるだろう。
(2) 成長戦略
お受験市場は少子化トレンドにもかかわらず、むしろ少子化ゆえに、今後も緩やかに拡大が続くと弊社ではみている。過去10年くらいの間に大学入試の多様化(推薦入試・AO入試の拡大など)が急激に進んだがそれは一般入試の競争激化を生みだした。また、2020年度からの大学入試制度改革は、その全貌が見えないこともあって、一般入試を避けるマインドが強まっている。こうした環境変化が大学系列の幼稚園・小学校へのお受験熱を高めている状況だ。一方大学側でも学生の確保に向けた囲い込みの戦略の一環で系列幼稚園・小学校の強化を図っており、双方の思惑が一致した状況にある。これがお受験市場の拡大を予想する理由だ。
こうした市場環境の中、同社は「伸芽会」教室の拡大には慎重だ。首都圏で20校を展開する同社は、年齢層を上下に拡大して新市場を取り込むことで成長する戦略を採用している。それが「伸芽’Sクラブ」ブランドによる託児事業と学童保育事業だ。
託児事業は1〜3歳児を対象としており、お受験指導の「伸芽会」の1段前の年齢層を取り込む事業だ。特長は1)お受験対応型の長時間託児、2)共働き世帯へのお受験対応のソリューション提供(伝統的に、お受験は母親が専業主婦でないと合格は困難と言われてきた)の2つだ。現在首都圏で6校(2018年8月末現在)を展開しているが、開校と同時に満員・順番待ちという状況が続いている。
託児事業の拡大戦略では、需要の面での不安は乏しいものの、不動産物件の確保が制約条件となっている。託児所としての規定(面積要件や水回り等の設備要件など)を充足し、かつ駅近の物件を確保することが簡単ではないためだ。これが教室数拡大をスケジュール化し、公表することを難しくしている状況だ。
学童保育は小学校1〜3年生を対象としたもので、お受験を終えた年齢層を取り込む事業だ。学童保育は少子化が進行する現在にあっても成長を続ける数少ない市場の1つで、多くの学習塾事業者が多角化の一環で参入している。同社はこの市場に“(中学受験を見据えた)進学指導付きの長時間学童保育”を特長・差別化要因として参入している。2018年8月現在で首都圏に13教室を開設しており、託児事業同様、順調な成長が続いている。
前述のように、成長事業の伸芽’Sクラブの教室数は託児・学童合計で19教室であるが、弊社では、中期的にこの3倍すなわち60教室程度の新規出店は十分可能だと考えている。伸芽’Sクラブが既存の「伸芽会」の対象年齢を上下に拡大する位置付けと考えれば首都圏20校の「伸芽会」教室に託児・学童を併設する形での出店が1つの基本形になってくると考えられ、それに加えて空白地(学童保育は低学年児童が自身で移動するため、お受験教室などに比べれば商圏が狭い)を埋めるための教室を開校することで、60校の開設余地は十分にあると考えている。仮にそれが実現した場合、単価設定や1施設当たり収容人数にもよるが、売上高の規模は現状の年商50億円規模に対して100億円〜150億円程度は十分視野に入ると考えている。
売上げの成長以上に弊社が注目するのは、伸芽会の収益性ポテンシャルだ。伸芽会の事業はその高利益率で中期成長戦略の中で重要な役割を果たすものと期待している。このように考える理由は、伸芽会の各事業が集団指導だということにある。集団指導と個別指導とを比較した場合、同じフル稼働状態にあるならば本質的に集団指導の方が収益性は高い。講師1人当たりの生徒数(すなわち収入)を考えれば明白だろう。ポイントは教室の高稼働率をどのように確保するかにあるが、前述のようにお受験業界ナンバーワンの実績と、受験指導や英才教育を組み合わせた託児・学童事業という独自のポジショニングで高稼働率を維持している。2019年2月期第2四半期の幼児教育事業セグメントの営業利益率は21.3%に達した。これは一過性の現象ではなく、伸芽’Sクラブ事業が軌道に乗ってきたことの当然の帰結であり、更なる利益率向上のプロセスの通過点だと考えている。幼児教育事業は上期偏重という季節性があるが、近い将来、通期ベースでも営業利益率が20%を超えてくる可能性は十分あると弊社では考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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