ワコム Research Memo(4):営業利益率10%、売上高1,000億円、ROE15〜20%の達成を目指す
[18/11/30]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■新中期経営計画『Wacom Chapter 2』の進捗状況
1. 新中期経営計画『Wacom Chapter 2』の概要
ワコム<6727>は、2018年4月に井出信孝(いでのぶたか)氏が代表取締役社長兼CEOに就任したのに合わせて新中期経営計画『Wacom Chapter 2』(2019年3月期−2022年3月期)を発表し、現在それに取り組んでいる。同社はかねてより中期経営計画を策定し、中長期成長戦略の指針としてきた。新中期経営計画もまた同様の役割と期待を担っている。
新中期経営計画の目指すところは「テクノロジー・リーダーシップ・カンパニー」としての同社の立ち位置を明確にし、限られた経営資源を有効活用して、利益重視の経営体質に転換することだ。この実現に向けた様々な取り組みのベースとなるビジョンとして、従来からの“for a creative world”を継承するとともに、さらに“Life-long Ink”を新たに加えた。“Ink”はデジタルインクを意味している。表現におけるインクの重要性と潜在的可能性の大きさをアピールするとともに、同社が今後向かう方向性を示唆するものと弊社では考えている。
より具体的な施策、取り組みに関しては、同社はまず、行動規範あるいはスタンダード(基準)として3項目の基本戦略を掲げている。すなわち、1)テクノロジー・リーダーシップの推進、2)アイランド&オーシャン戦略による緊密な連携、3)エクストリーム・フォーカスに基づく行動の徹底、の3つだ。それぞれの意味や目指すところについては2018年6月12日付の前回レポートに詳しい。
この全体戦略を受けた具体的な取り組みとして、同社は顧客志向の技術革新など4つの重要取組事項を掲げている。重要なことは、これら4つの重要取組事項はあくまで現在の同社にとって重要な事項であって、将来的にもこれらに限定されるわけではないということだ。各課題の解決の進捗や新たな課題の浮上などの状況変化に対応して重要取組事項の内容は順次変更されていくとみられる。
新中期経営計画がスタートして最初の6ヶ月に当たる2019年3月期第2四半期においてもいくつかの進捗がみられた。その詳細については後に詳述する。
新中期経営計画の財務目標として同社は、最終年度の2022年3月期に営業利益率10%、売上高1,000億円、連結ROE15%〜20%を掲げている。
売上高の事業セグメント別内訳は、ブランド製品事業が60,400百万円、テクノロジーソリューション事業が39,600百万円となっている。4年間の年平均成長率は、それぞれ6%、4%だ。テクノロジーソリューション事業の年平均成長率が低くなっているのは、パートナー戦略の重要性が高く、それだけ不確実性や不透明性が高いことが要因とみられる(同社がいうところの確実性の高い「ベースシナリオ」に基づく計画値)。同社の本音としては、ブランド製品事業のそれを凌駕するような高い成長率を想定しているものと弊社では推測している。
同社は2019年3月期通期の業績見通しを上方修正し、テクノロジーソリューション事業の売上高の2019年3月期見通しは40,000百万円と中期経営計画最終年度の計画値を超えた状況にある。そのため、上記の中期経営計画財務目標値の上方修正を期待する向きもあろうが、弊社はその点については慎重にみている。“慎重”なのは、1)修正が行われる可能性と、2)修正された場合の評価、の2つについてだ。1)については前述したテクノロジーソリューション事業の不透明性、不確実性に鑑みて、2019年3月期の数字をベースとして見通しを修正することが適切な判断かどうかがポイントになる。2)については、仮に上方修正が行われたとしてもブランド製品事業の上方修正を伴うことが大事で、それがなければ評価は半減すると考えている。いずれにしても中期経営計画見直しが行われるとしてもそれは早くて2019年5月の本決算発表時であり、当面は後述するように重要取り組みの進捗を注視したいと考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
<MH>
1. 新中期経営計画『Wacom Chapter 2』の概要
ワコム<6727>は、2018年4月に井出信孝(いでのぶたか)氏が代表取締役社長兼CEOに就任したのに合わせて新中期経営計画『Wacom Chapter 2』(2019年3月期−2022年3月期)を発表し、現在それに取り組んでいる。同社はかねてより中期経営計画を策定し、中長期成長戦略の指針としてきた。新中期経営計画もまた同様の役割と期待を担っている。
新中期経営計画の目指すところは「テクノロジー・リーダーシップ・カンパニー」としての同社の立ち位置を明確にし、限られた経営資源を有効活用して、利益重視の経営体質に転換することだ。この実現に向けた様々な取り組みのベースとなるビジョンとして、従来からの“for a creative world”を継承するとともに、さらに“Life-long Ink”を新たに加えた。“Ink”はデジタルインクを意味している。表現におけるインクの重要性と潜在的可能性の大きさをアピールするとともに、同社が今後向かう方向性を示唆するものと弊社では考えている。
より具体的な施策、取り組みに関しては、同社はまず、行動規範あるいはスタンダード(基準)として3項目の基本戦略を掲げている。すなわち、1)テクノロジー・リーダーシップの推進、2)アイランド&オーシャン戦略による緊密な連携、3)エクストリーム・フォーカスに基づく行動の徹底、の3つだ。それぞれの意味や目指すところについては2018年6月12日付の前回レポートに詳しい。
この全体戦略を受けた具体的な取り組みとして、同社は顧客志向の技術革新など4つの重要取組事項を掲げている。重要なことは、これら4つの重要取組事項はあくまで現在の同社にとって重要な事項であって、将来的にもこれらに限定されるわけではないということだ。各課題の解決の進捗や新たな課題の浮上などの状況変化に対応して重要取組事項の内容は順次変更されていくとみられる。
新中期経営計画がスタートして最初の6ヶ月に当たる2019年3月期第2四半期においてもいくつかの進捗がみられた。その詳細については後に詳述する。
新中期経営計画の財務目標として同社は、最終年度の2022年3月期に営業利益率10%、売上高1,000億円、連結ROE15%〜20%を掲げている。
売上高の事業セグメント別内訳は、ブランド製品事業が60,400百万円、テクノロジーソリューション事業が39,600百万円となっている。4年間の年平均成長率は、それぞれ6%、4%だ。テクノロジーソリューション事業の年平均成長率が低くなっているのは、パートナー戦略の重要性が高く、それだけ不確実性や不透明性が高いことが要因とみられる(同社がいうところの確実性の高い「ベースシナリオ」に基づく計画値)。同社の本音としては、ブランド製品事業のそれを凌駕するような高い成長率を想定しているものと弊社では推測している。
同社は2019年3月期通期の業績見通しを上方修正し、テクノロジーソリューション事業の売上高の2019年3月期見通しは40,000百万円と中期経営計画最終年度の計画値を超えた状況にある。そのため、上記の中期経営計画財務目標値の上方修正を期待する向きもあろうが、弊社はその点については慎重にみている。“慎重”なのは、1)修正が行われる可能性と、2)修正された場合の評価、の2つについてだ。1)については前述したテクノロジーソリューション事業の不透明性、不確実性に鑑みて、2019年3月期の数字をベースとして見通しを修正することが適切な判断かどうかがポイントになる。2)については、仮に上方修正が行われたとしてもブランド製品事業の上方修正を伴うことが大事で、それがなければ評価は半減すると考えている。いずれにしても中期経営計画見直しが行われるとしてもそれは早くて2019年5月の本決算発表時であり、当面は後述するように重要取り組みの進捗を注視したいと考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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