IRJーHD Research Memo(5):実質株主判明調査からSRコンサルティング事業へと発展
[18/11/30]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業の沿革
同社グループの主力事業は、実質株主判明調査から立ち上がり、さらに顧客からの要望を受け、株主総会関連業務へと発展してきた。1997年当時ソニー<6758>から、「株主総会の直前まで定足数が集まらない。議決権が集まらない」という相談を受けた。アイ・アールジャパンホールディングス<6035>は、当時の株主名簿は役に立たないということを実感し、ソニーから株主総会の委任状収集、議決権確保のため、外国人株主を特定して議決権を行使させるという依頼を受けた。これがSRコンサルティング事業として成長していった。それ以降、同社グループは大手電気機器メーカーや大手製薬会社からの依頼を受けている。
依頼された調査の過程で、株主名簿の外国人が実際は誰なのかを特定し、議決権行使の流れを押さえることができた。それらの調査で判明したことは、まずは年金スポンサーが最も大事であること、次に運用機関、カストディアン(管理信託銀行)が重要な外国人株主であるということであった。なかでも、カストディアンは運用機関のすべてのパフォーマンス、配当の管理を行っており、その先に常任代理人がいる。当初は実質株主を判明しようとしたが、なかなか聞き出すことができなかった。当然ながら、機関投資家から特定企業の株主かどうかを聞くのは非常に困難な作業であったと言えるだろう。
しかしながら、独立系の同社グループは、ソニー本体から委任状を得ていたので、それを示すことで協力を得ながら調査を進めることができた。「あくまでクローズドの情報なので」、ということで調査協力の成果を上げていったようだ。実質株主を探り出すためのチェーンを全部紐解いていくため、同社社員が自らロンドン、ニューヨークに赴いた。それでも当初は外国人株主の行使率が若干上がったのみだったので、さらに問題点を解決するため自力での実質株主判明調査を始めた。このことが結果として、同社グループの基盤となる日本流の議決権確保と議決権行使の流れを確立することにつながったようだ。
その後は、多くの大手自動車メーカーや大手輸送機器メーカーなどブルーチップ銘柄について依頼を受け支援してきた。このような経験から、国内では、同社グループのみが自力で実質株主判明調査ができる会社へと成長した。同業他社は外国の実質株主判明調査を購入している状況だ。この業務は、機関投資家はどれだけ持っているかという非公開情報を扱うこともあり、顧客企業のトップと会える機会も多い。しかも、村上ファンド問題などもあり議決権を確保するための支援ビジネスが認知され広がってきた。これが、SR支援に特化し、今なお強みを保っている同社グループの原点だ。また、同社グループは自前主義という点で特徴があり、これまでの調査情報をデータとして蓄積しており、同社グループの圧倒的なコアコンピタンスとなっている。
改めて注目すべきポイントは、実質株主名簿は同社グループのビジネスにおいて非常に重要だということだ。プロキシーファイトでは必ず、Avs.Bという対立軸で戦うことになる。会社法では誰が株主総会を開いてもいいが、日本では事実上は証券代行機関の関与がないと総会を開くことができない。例えば、株主サイドから支配権争いを目的とした臨時株主総会の開催請求については、株主事務取扱機関である証券代行機関が企業サイド側の支援のため、事実上開催を定時株主総会まで延ばすという実態があった。
医療系企業のケースは、同社グループが自社で証券代行業務の認定機関である成果が出た例だ。この企業では取締役会が大株主であるオーナーを追放した。同社グループは企業のオーナー側を支援し、会社側は定時株主総会までの引き延ばし工作を行ったが、同社グループが認可された証券代行機関であることを武器とした地方裁判所への訴えが奏功し、早期の臨時株主総会を行うことで、オーナー側の株主提案が可決し、劇的な勝利となった。
同社グループはこれまでの実績から、法曹界からの紹介も多い。また、機関投資家との関係でも、日本株の議決権を行使する担当者を熟知しており、関係強化を図っている。海外の運用会社もピンポイントで押さえている。こうしたことから、実質株主判明調査の利用企業のすそ野は広がってきており、また委任状争奪戦を回避し水面下での解決に向けたソリューションを提供する同社グループの金融サービスが伸長している。
コーポレートガバナンス・コードに関する事例として、同社グループが大手電気機器メーカーであるファナック<6954>のSR業務を支援することになった。ファナックがSR部を新設した際、SR活動を円滑に行うため同社グループと秘密保持/業務委託契約を締結し、同社グループ内にファナック株主専用の対話窓口を設置した。
2017年3月には、社外取締役紹介ネットワークの「ID-Search」を構築し、コーポレートガバナンス領域へのビジネスを広げていっている。
2017年6月6日東証2部に上場を果たし、2018年1月には東京丸の内に投資銀行業務のオフィスを構え、資本市場の発展に向けて、付加価値の高いサービスを提供していくため、サービスの開発・提供に努めている。その後、2018年9月27日に東証1部へ市場変更をした。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 福田 徹)
<SF>
同社グループの主力事業は、実質株主判明調査から立ち上がり、さらに顧客からの要望を受け、株主総会関連業務へと発展してきた。1997年当時ソニー<6758>から、「株主総会の直前まで定足数が集まらない。議決権が集まらない」という相談を受けた。アイ・アールジャパンホールディングス<6035>は、当時の株主名簿は役に立たないということを実感し、ソニーから株主総会の委任状収集、議決権確保のため、外国人株主を特定して議決権を行使させるという依頼を受けた。これがSRコンサルティング事業として成長していった。それ以降、同社グループは大手電気機器メーカーや大手製薬会社からの依頼を受けている。
依頼された調査の過程で、株主名簿の外国人が実際は誰なのかを特定し、議決権行使の流れを押さえることができた。それらの調査で判明したことは、まずは年金スポンサーが最も大事であること、次に運用機関、カストディアン(管理信託銀行)が重要な外国人株主であるということであった。なかでも、カストディアンは運用機関のすべてのパフォーマンス、配当の管理を行っており、その先に常任代理人がいる。当初は実質株主を判明しようとしたが、なかなか聞き出すことができなかった。当然ながら、機関投資家から特定企業の株主かどうかを聞くのは非常に困難な作業であったと言えるだろう。
しかしながら、独立系の同社グループは、ソニー本体から委任状を得ていたので、それを示すことで協力を得ながら調査を進めることができた。「あくまでクローズドの情報なので」、ということで調査協力の成果を上げていったようだ。実質株主を探り出すためのチェーンを全部紐解いていくため、同社社員が自らロンドン、ニューヨークに赴いた。それでも当初は外国人株主の行使率が若干上がったのみだったので、さらに問題点を解決するため自力での実質株主判明調査を始めた。このことが結果として、同社グループの基盤となる日本流の議決権確保と議決権行使の流れを確立することにつながったようだ。
その後は、多くの大手自動車メーカーや大手輸送機器メーカーなどブルーチップ銘柄について依頼を受け支援してきた。このような経験から、国内では、同社グループのみが自力で実質株主判明調査ができる会社へと成長した。同業他社は外国の実質株主判明調査を購入している状況だ。この業務は、機関投資家はどれだけ持っているかという非公開情報を扱うこともあり、顧客企業のトップと会える機会も多い。しかも、村上ファンド問題などもあり議決権を確保するための支援ビジネスが認知され広がってきた。これが、SR支援に特化し、今なお強みを保っている同社グループの原点だ。また、同社グループは自前主義という点で特徴があり、これまでの調査情報をデータとして蓄積しており、同社グループの圧倒的なコアコンピタンスとなっている。
改めて注目すべきポイントは、実質株主名簿は同社グループのビジネスにおいて非常に重要だということだ。プロキシーファイトでは必ず、Avs.Bという対立軸で戦うことになる。会社法では誰が株主総会を開いてもいいが、日本では事実上は証券代行機関の関与がないと総会を開くことができない。例えば、株主サイドから支配権争いを目的とした臨時株主総会の開催請求については、株主事務取扱機関である証券代行機関が企業サイド側の支援のため、事実上開催を定時株主総会まで延ばすという実態があった。
医療系企業のケースは、同社グループが自社で証券代行業務の認定機関である成果が出た例だ。この企業では取締役会が大株主であるオーナーを追放した。同社グループは企業のオーナー側を支援し、会社側は定時株主総会までの引き延ばし工作を行ったが、同社グループが認可された証券代行機関であることを武器とした地方裁判所への訴えが奏功し、早期の臨時株主総会を行うことで、オーナー側の株主提案が可決し、劇的な勝利となった。
同社グループはこれまでの実績から、法曹界からの紹介も多い。また、機関投資家との関係でも、日本株の議決権を行使する担当者を熟知しており、関係強化を図っている。海外の運用会社もピンポイントで押さえている。こうしたことから、実質株主判明調査の利用企業のすそ野は広がってきており、また委任状争奪戦を回避し水面下での解決に向けたソリューションを提供する同社グループの金融サービスが伸長している。
コーポレートガバナンス・コードに関する事例として、同社グループが大手電気機器メーカーであるファナック<6954>のSR業務を支援することになった。ファナックがSR部を新設した際、SR活動を円滑に行うため同社グループと秘密保持/業務委託契約を締結し、同社グループ内にファナック株主専用の対話窓口を設置した。
2017年3月には、社外取締役紹介ネットワークの「ID-Search」を構築し、コーポレートガバナンス領域へのビジネスを広げていっている。
2017年6月6日東証2部に上場を果たし、2018年1月には東京丸の内に投資銀行業務のオフィスを構え、資本市場の発展に向けて、付加価値の高いサービスを提供していくため、サービスの開発・提供に努めている。その後、2018年9月27日に東証1部へ市場変更をした。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 福田 徹)
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