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IRJーHD Research Memo(7):実質株主判明調査からプロキシー・アドバイザリー、証券代行業務等を展開

注目トピックス 日本株
■アイ・アールジャパンホールディングス<6035>の事業内容

同社グループの事業領域は、「IR・SR活動に専門特化したコンサルティング業」であるが、以前より、実質株主判明調査、議決権事前賛否シミュレーション、プロキシー・アドバイザリー(株主総会における総合的な戦略立案)、取締役会評価、社外取締役紹介サービス、投資銀行業務、ESG開示項目に関するコンサルティング等幅広い事業を行っている。サービス別に事業内容を見ていく。

1. IR・SRコンサルティング
当業務は、実質株主判明調査、議決権事前賛否シミュレーション、株主総会における総合的な戦略立案を行うプロキシー・アドバイザリー、投資銀行業務、証券代行業務等を中心とする同社グループの中核サービスである。2019年3月期第2四半期の同サービスの売上高は前年同期比14.2%増となった。買収防衛策、M&A、ROE低迷、不祥事、アクティビストによる提案等株主議決権確保に関する問題が増加するなか、機関株主におけるスチュワードシップ・コード採用が加速、2015年に施行されたコーポレートガバナンス・コードが2018年改訂され、政策保有株式の合理性が問われるなど、株主総会における安定的な議決権確保が一段と難しくなった。同社グループの全世界の機関株主の議決権情報提供の精度やスピードが高く評価され、議決権確保における具体的ソリューションに関するSRコンサルティングサービスが大幅に増加した。具体的には、機関株主の議決権行使のルールとして、ROEの数値、女性の比率、不祥事発生時の判断などがどうなっているのかなど、20年間積み重ねたデータを保有している。同社のエンゲージメントプラットフォームを利用して、欧米の議決権担当者は日本の上場企業の担当者に接触でき、また日本企業は議決権担当者に説明することもできるようになった。上場企業にアクティビストが株主として入った場合にコンサルティングを受託することも多くなってきている。同社グループのAIとデータ集積・分析技術を駆使したアクティビストソリューションシステムへの受託も拡大するとともに、個人株主向けのソリューションシステムの販売も伸びている。このアクティビストソリューションによると、社外役員の比率、政策保有株主の割合等の様々な要素を分析し、その企業が狙われやすいかどうかが偏差値で出される。

投資銀行部門では、丸の内新オフィスでの人材確保も進み、上場製造会社における非上場製造会社に対するM&A、陸運物流会社と海運物流会社のM&A、上場会社大株主のMBOを介した株式譲渡等のFA業務を成功させた。大型M&Aに関するプロキシーアドバイザーの受託も増加している。同社グループのパイプラインには、上場会社のM&A、企業支配権争奪に関するM&A Proxy、上場会社と非上場会社間の事業承継等に関するM&A、大株主(アセットオーナー)の資産売却、アクティビスト関連があり、着実に増加している。

2017年12月に資格取得したTOKYO PRO Marketへの上場支援を行うJ-Adviser業務に関しては、第1号案件が決まり、TOKYO PRO Marketでは6年半ぶりに上場時のファイナンスが実現する見込みだ。

ガバナンスコンサルティングでは、社外取締役紹介サービスが増加、取締役会実効性の第三者評価の引き合いも高まっている。

証券代行事業では、受託決定済み企業は前年同期が49社であったが2018年11月2日時点で76社と大幅増となり、管理株主数も前年同期は265,807名だったのが、333,382名となった。同社グループの証券代行サービスの高度なソリューションの対応を期待してグルメ情報検索大手上場企業が同社グループに受託を変更するなど同社グループの証券代行サービスの強みが認知されてきている。

投資銀行業務の主な実績(ディスクローズされているもののみ)
(1) 2005年 経営統合案件
三共(株)(現第一三共<4568>) vs M&Aコンサルティング(村上ファンド)に関して三共・第一製薬(株)側を支援、統合成立をもって三共側の勝利。
概要:村上氏率いるM&Aコンサルティングが三共・第一製薬経営統合議案への反対を表明。三共側プロキシーアドバイザーとして統合議案可決を支援。

(2) 2007年 敵対的TOB
ブルドックソース<2804> vs スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンドに関してTOB不成立をもって、ブルドックソース側の勝利。
概要:筆頭株主であるスティール・パートナーズがブルドックソースに対し敵対的TOBを展開。ブルドックソース側プロキシーアドバイザーとしてTOB不成立に向けて支援。

(3) 2007年 委任状争奪戦
イオン<8267> vs (株)CFSコーポレーション※に関して統合不成立をもってイオン側の勝利。
概要:CFSコーポレーションと(株)アインファーマシーズの統合に対して、CFSコーポレーションの筆頭株主であるイオン側プロキシーアドバイザーとして統合不成立に向けた委任状回収を支援。

※2016年9月にウエルシアホールディングス<3141>の子会社、ウエルシア薬局(株)との合併により消減。


(4) 2007年 株主提案
電源開発<9513> vs TCI(ザ・チルドレンズ・インベストメント・マスターファンド)に関して株主提案否決をもって、電源開発側の勝利。
概要:筆頭株主であるTCIが増配等の株主提案。電源開発側プロキシーアドバイザーとして株主提案の否決を支援。

(5) 2008年 経営統合
(株)三越・(株)伊勢丹(現三越伊勢丹ホールディングス<3099>)に関して統合成立。
概要:三越・伊勢丹の経営統合に向けて両社のプロキシーアドバイザーとして統合議案可決を支援。

(6) 2017年 資本業務提携
(株)神明・(神明の子会社)元気寿司(株)・スシローグローバルホールディングス<3563>の資本業務提携。
概要:神明のFAとしてスシローグローバルホールディングスの株取得に関するアドバイザリー業務。400億円規模のディールサイズであり、回転すし業界で圧倒的な地位を確立するというシンボリックなディールとなった。

(7) 2018年 自己株式取得
三信電気<8150>の自己株式取得
概要:三信電気のFAとして、公開買い付けによる自己株式取得に関するアドバイザリー業務を支援。三信電気が普通株式30.74%を自己株式取得

(8) 2018年 TOB
(株)アクティオHDによる三信建設工業(株)へのTOB
概要:三信建設工業大株主(売手)FAとして、アクティオHDによる三信建設工業に対するTOB応募に関するアドバイザリー業務を支援。三信建設工業株式の約30% を大株主個人(複数名・合計株数)が保有する中、95.93% の応募でTOB が成立。

(9) 2018年 完全子会社化
武蔵精密工業<7220>による(株)浅田可鍛鋳鉄所の完全子会社化
概要:武蔵精密工業のFAとして、浅田可鍛鋳鉄所の株式全部の譲受に関するアドバイザリー業務を支援。創業家など個人株主が保有する株式の全部を武蔵精密工業が譲受。

(10) 2018年 買収及び資本業務提携
エーアイテイー<9381>による日新運輸(株)の完全子会社化及びエーアイテイーと日立物流<9086>の資本業務提携
概要:エーアイテイーのFAとして、日新運輸の株式交換による完全子会社化および日新運輸の親会社である日立物流との間の資本業務提携に関するアドバイザリー業務を支援。株式交換により日立物流がエーアイテイー株式約20% を保有することとなり、両者間で資本業務提携契約を締結。

2. ディスクロージャーコンサルティング
ツールコンサルティング及びリーガルドキュメンテーションサービス。ツールとは、アニュアルレポート、統合報告書、株主通信等IR活動において必要とする各種情報開示資料で、その企画や作成支援を行っている。リーガルドキュメンテーションは、企業再編やM&A時における各種英文開示書類の作成や和文資料の英訳等である。2019年3月期第2四半期の売上高は前年同期比14.2%増加となった。資金提供者や機関株主の投資基準において、ESGへの注目が増加しており、グローバルなESG開示基準を満たす上での情報開示コンサルティングの受託が新たに増加している。

3. データベース・その他
「IR-Pro」は、大量保有報告書や国内・海外公募投信における株式組入状況等を提供するIR活動総合サポートシステムであり、実質株主判明調査の簡易版の位置付けで、大量保有報告書も見ることができる。大量保有報告書に関しては、過去10年分が収録されており、主にIR担当や証券会社が利用している。また、IR説明会への参加受付や参加者の管理等を上場企業が一括実施することが可能な「アナリストネットワーク」等をWEB上で提供するサービスを行っている。個人株主向けアンケートサービス「株主ひろば」も展開。売上高は前年同期比7.4%の減少。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 福田 徹)



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