日本調剤 Research Memo(7):最新鋭のつくば第二工場を最大限に生かし、医薬品製造販売事業の収益拡大を目指す
[18/12/10]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略と進捗状況
2. 医薬品製造販売事業の成長戦略と進捗状況
日本調剤<3341>は『2030年に向けた長期ビジョン』の中で、医薬品製造販売事業ではシェア15%の獲得を目標に掲げている。15%という数値の意味は、ジェネリック医薬品メーカーが将来的に5〜6社に集約されるとの見方のもと、勝ち残りの1社となることを象徴する数字だと弊社では理解している。
ジェネリック医薬品の需要については、国が2020年9月末までにジェネリック医薬品の使用数量割合を80%に高める政府目標を策定している(日本ジェネリック製薬協会によると2017年度7月−9月期の数量シェアは68.8%)ことに象徴されるように、今後も増加が期待されている。そうした需要拡大を取り込むべく同社は最新鋭のつくば第二工場の建設を進めてきたが、2018年4月に予定どおり竣工した。つくば第二工場の生産設備は複数期に分けて導入予定で、今回は第1期として生産能力33億錠/年の設備が導入された。つくば第二工場に関する設備投資は2017年3月期でピークアウトし、2019年3月期以降の設備投資額は年間25億円前後での安定推移が見込まれている。一方減価償却費も稼働初年度の2019年3月期に前期比8億円増(実額は34億円)と大きく増加する見込みだが、2020年3月期以降は年間1〜2億円の増加と安定推移が見込まれ、大きな減益要因とはならない見通しだ。2019年3月期を1つのターニングポイントとして、今後の焦点はつくば第二工場の最新設備をいかに収益拡大につなげるかに移ることになる。
(1) 売上高拡大への取り組み
売上高の拡大に向けた同社の戦略は、自社の調剤薬局事業とのシナジー追求を図る内部売上高の拡大と、外部売上高の拡大の2つが柱となる。内部売上高については、調剤薬局事業の業容拡大(店舗数増加、ジェネリック医薬品の使用割合の上昇)がストレートに反映されてくることが期待される。前述のように、2019年3月期第2四半期は内部売上高が前年同期比17.0%増と大幅に伸長し、外部売上高の減収をカバーした。外部売上高の減収は採算性を重視した販売政策を徹底した結果でもあるが、そうした姿勢を貫くことができるのも、内部売上高の伸長で工場稼働率を維持できるという裏付けがあるためという見方もできるだろう。
一方、外部売上高については、卸売業者を通じたグループ外の医療機関、薬局、ドラッグストアへの販売に加え、新たな成長ドライバーとして受託事業と導出事業に期待が高まる。受託事業は他のジェネリックメーカーからの開発・製造の受託だ。ジェネリックメーカーは一般に先発薬メーカーと比較して小規模で、設備投資余力のないところも多い。2019年3月期第2四半期の新規受託件数は5件8品目となった。導出事業は他社からの受注による導出品の製造で、2019年3月期第2四半期までに2件2品目の新規導出実績がある。
(2) 生産効率改善の取り組み
上記の販売戦略の多様化と合わせて生産面でも様々な施策が行われている。ポイントは工場稼働率と生産効率の追求だ。つくば第二工場は最新鋭・大規模工場という特色を生かして、大量生産に適した性格を有する。一方つくば工場は少量対応も可能な強みがある。同社はつくば工場からつくば第二工場に生産量の多い品目を中心に生産を移管し、つくば工場の生産余力を受託品製造・導出品製造に振り向けることで生産効率の向上を図っている。
つくば第二工場の完成に伴い同社は施設の集約による効率性改善も進めている。2018年8月には春日部工場をニプロファーマ(株)に売却することを発表した(工場の引き渡しは2019年3月1日の予定)。春日部工場の生産能力は年産9億錠だが、ここでの生産分をつくば第二工場を始めとする既存工場に振り向けることになるため稼働率及び生産効率の向上が期待される。
(3) 利益率向上の取り組み
利益率向上に向けた取り組みでは、採算性を重視した販売の徹底がまず挙げられる。外部の医療機関や薬局に対しては卸売業者を通じて販売しているが、他メーカーとの価格競争にさらされ、十分な採算を確保できないケースもあった。こうした状況に対して同社は採算性重視の販売に努めてきたが、2018年1月に厚労省から流通改善ガイドラインが発表されたことで、医薬品製造販売事業にとって大きな追い風となっている。この流通改善ガイドラインは前述のように国が主導することを明言していることや、その狙いの1つとして薬価毎年改定の実施のための環境整備が含まれていることから、効果が比較的長期にわたって継続するものと弊社では推測している。
中長期的には自社製造品の拡大による利益率改善にも期待が高まる。導入品や他社への製造委託品に比べて自社製造品の採算性が高いのは自明だ。同社は積極的な研究開発投資を行って自社製造品目数の増大を図り、「研究開発⇒自社製造品目増加⇒利益率改善⇒研究開発強化⇒』というスパイラルを確立していく方針だ。同社はまた、「自社承認・他社製造委託品」も200品目以上有している。十分な生産能力を獲得したことで、今後これらの内製化も同時に進める予定だ。
薬剤師事業での「派遣⇒紹介」シフトと、医師・登録販売者の紹介事業への領域拡大で成長を目指す
3. 医療従事者派遣・紹介事業の成長戦略と進捗状況
同社はこれまで医療従事者派遣・紹介事業の成長戦略として、薬剤師の派遣・紹介事業での成長と、取扱職種の拡大の2つを掲げてきたが、ここにきてその内容が一段と具体化・明確化してきている。すなわち、薬剤師事業における派遣から紹介へのシフトと、取扱職種拡大における医師(紹介)と登録販売者(紹介)の強化だ。
中核の薬剤師事業は、薬剤師の派遣と紹介の2つから成っている。売上高の構成では派遣が82.7%、紹介が17.3%となっているが、粗利益の構成比は派遣が55.9%、紹介が44.7%となり、紹介の利益率が圧倒的に高いことがわかる(数値は2019年3月期第2四半期実績)。また、今第2四半期のセグメント利益が計画を下振れた要因は派遣の原価が予想を上回ったことであるのは前述のとおりだ。
こうした状況を踏まえて同社は、2016年ごろから薬剤師の紹介に力を入れてきたが、営業社員を増強したことで紹介者数が順調に増加してきている。営業社員の教育実施による戦力化が進んで2019年3月期第2四半期には成約数が急増した。派遣はストック型モデル(高い安定性)、紹介はフロー型モデル(高収益性・高成長性)というそれぞれの特長を生かして、ベストミックスを図りながら薬剤師事業の拡大を図る方針だ。
取扱職種の拡大については、医師と登録販売者に注力する方針だ。人材の流動性や市場性などからこの2つの職種に絞り込んだとみられる。医師紹介事業については2017年からスタートしており、2019年3月期第2四半期は営業拠点の追加開設と営業人員の増強を図った。これらは先行投資として2019年3月期第2四半期のセグメント利益を圧迫したが、拠点整備は一旦完了し、今後は広告宣伝の強化へと移る予定だ。登録販売者紹介事業は2018年から本格的にスタートしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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2. 医薬品製造販売事業の成長戦略と進捗状況
日本調剤<3341>は『2030年に向けた長期ビジョン』の中で、医薬品製造販売事業ではシェア15%の獲得を目標に掲げている。15%という数値の意味は、ジェネリック医薬品メーカーが将来的に5〜6社に集約されるとの見方のもと、勝ち残りの1社となることを象徴する数字だと弊社では理解している。
ジェネリック医薬品の需要については、国が2020年9月末までにジェネリック医薬品の使用数量割合を80%に高める政府目標を策定している(日本ジェネリック製薬協会によると2017年度7月−9月期の数量シェアは68.8%)ことに象徴されるように、今後も増加が期待されている。そうした需要拡大を取り込むべく同社は最新鋭のつくば第二工場の建設を進めてきたが、2018年4月に予定どおり竣工した。つくば第二工場の生産設備は複数期に分けて導入予定で、今回は第1期として生産能力33億錠/年の設備が導入された。つくば第二工場に関する設備投資は2017年3月期でピークアウトし、2019年3月期以降の設備投資額は年間25億円前後での安定推移が見込まれている。一方減価償却費も稼働初年度の2019年3月期に前期比8億円増(実額は34億円)と大きく増加する見込みだが、2020年3月期以降は年間1〜2億円の増加と安定推移が見込まれ、大きな減益要因とはならない見通しだ。2019年3月期を1つのターニングポイントとして、今後の焦点はつくば第二工場の最新設備をいかに収益拡大につなげるかに移ることになる。
(1) 売上高拡大への取り組み
売上高の拡大に向けた同社の戦略は、自社の調剤薬局事業とのシナジー追求を図る内部売上高の拡大と、外部売上高の拡大の2つが柱となる。内部売上高については、調剤薬局事業の業容拡大(店舗数増加、ジェネリック医薬品の使用割合の上昇)がストレートに反映されてくることが期待される。前述のように、2019年3月期第2四半期は内部売上高が前年同期比17.0%増と大幅に伸長し、外部売上高の減収をカバーした。外部売上高の減収は採算性を重視した販売政策を徹底した結果でもあるが、そうした姿勢を貫くことができるのも、内部売上高の伸長で工場稼働率を維持できるという裏付けがあるためという見方もできるだろう。
一方、外部売上高については、卸売業者を通じたグループ外の医療機関、薬局、ドラッグストアへの販売に加え、新たな成長ドライバーとして受託事業と導出事業に期待が高まる。受託事業は他のジェネリックメーカーからの開発・製造の受託だ。ジェネリックメーカーは一般に先発薬メーカーと比較して小規模で、設備投資余力のないところも多い。2019年3月期第2四半期の新規受託件数は5件8品目となった。導出事業は他社からの受注による導出品の製造で、2019年3月期第2四半期までに2件2品目の新規導出実績がある。
(2) 生産効率改善の取り組み
上記の販売戦略の多様化と合わせて生産面でも様々な施策が行われている。ポイントは工場稼働率と生産効率の追求だ。つくば第二工場は最新鋭・大規模工場という特色を生かして、大量生産に適した性格を有する。一方つくば工場は少量対応も可能な強みがある。同社はつくば工場からつくば第二工場に生産量の多い品目を中心に生産を移管し、つくば工場の生産余力を受託品製造・導出品製造に振り向けることで生産効率の向上を図っている。
つくば第二工場の完成に伴い同社は施設の集約による効率性改善も進めている。2018年8月には春日部工場をニプロファーマ(株)に売却することを発表した(工場の引き渡しは2019年3月1日の予定)。春日部工場の生産能力は年産9億錠だが、ここでの生産分をつくば第二工場を始めとする既存工場に振り向けることになるため稼働率及び生産効率の向上が期待される。
(3) 利益率向上の取り組み
利益率向上に向けた取り組みでは、採算性を重視した販売の徹底がまず挙げられる。外部の医療機関や薬局に対しては卸売業者を通じて販売しているが、他メーカーとの価格競争にさらされ、十分な採算を確保できないケースもあった。こうした状況に対して同社は採算性重視の販売に努めてきたが、2018年1月に厚労省から流通改善ガイドラインが発表されたことで、医薬品製造販売事業にとって大きな追い風となっている。この流通改善ガイドラインは前述のように国が主導することを明言していることや、その狙いの1つとして薬価毎年改定の実施のための環境整備が含まれていることから、効果が比較的長期にわたって継続するものと弊社では推測している。
中長期的には自社製造品の拡大による利益率改善にも期待が高まる。導入品や他社への製造委託品に比べて自社製造品の採算性が高いのは自明だ。同社は積極的な研究開発投資を行って自社製造品目数の増大を図り、「研究開発⇒自社製造品目増加⇒利益率改善⇒研究開発強化⇒』というスパイラルを確立していく方針だ。同社はまた、「自社承認・他社製造委託品」も200品目以上有している。十分な生産能力を獲得したことで、今後これらの内製化も同時に進める予定だ。
薬剤師事業での「派遣⇒紹介」シフトと、医師・登録販売者の紹介事業への領域拡大で成長を目指す
3. 医療従事者派遣・紹介事業の成長戦略と進捗状況
同社はこれまで医療従事者派遣・紹介事業の成長戦略として、薬剤師の派遣・紹介事業での成長と、取扱職種の拡大の2つを掲げてきたが、ここにきてその内容が一段と具体化・明確化してきている。すなわち、薬剤師事業における派遣から紹介へのシフトと、取扱職種拡大における医師(紹介)と登録販売者(紹介)の強化だ。
中核の薬剤師事業は、薬剤師の派遣と紹介の2つから成っている。売上高の構成では派遣が82.7%、紹介が17.3%となっているが、粗利益の構成比は派遣が55.9%、紹介が44.7%となり、紹介の利益率が圧倒的に高いことがわかる(数値は2019年3月期第2四半期実績)。また、今第2四半期のセグメント利益が計画を下振れた要因は派遣の原価が予想を上回ったことであるのは前述のとおりだ。
こうした状況を踏まえて同社は、2016年ごろから薬剤師の紹介に力を入れてきたが、営業社員を増強したことで紹介者数が順調に増加してきている。営業社員の教育実施による戦力化が進んで2019年3月期第2四半期には成約数が急増した。派遣はストック型モデル(高い安定性)、紹介はフロー型モデル(高収益性・高成長性)というそれぞれの特長を生かして、ベストミックスを図りながら薬剤師事業の拡大を図る方針だ。
取扱職種の拡大については、医師と登録販売者に注力する方針だ。人材の流動性や市場性などからこの2つの職種に絞り込んだとみられる。医師紹介事業については2017年からスタートしており、2019年3月期第2四半期は営業拠点の追加開設と営業人員の増強を図った。これらは先行投資として2019年3月期第2四半期のセグメント利益を圧迫したが、拠点整備は一旦完了し、今後は広告宣伝の強化へと移る予定だ。登録販売者紹介事業は2018年から本格的にスタートしている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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