テラ Research Memo(2):がん免疫療法の1つである樹状細胞ワクチン療法で世界トップクラスの症例実績
[18/12/13]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
1. 事業概要
テラ<2191>はがん免疫療法の1つである樹状細胞ワクチン療法を中心に、医療機関に対する技術・運用ノウハウの提供、及び再生・細胞医療に関する研究開発を行う企業で、2004年に元外科医師で取締役の矢崎雄一郎(やざきゆういちろう)氏によって設立された。事業セグメントは細胞医療事業、医薬品事業、医療支援事業の3事業で構成されており、子会社において医薬品事業、医療支援事業を展開している。各事業セグメントの内容は以下のとおり。
(1) 細胞医療事業
細胞医療事業には、同社が開発する樹状細胞ワクチン療法を中心とした独自のがん治療技術・ノウハウの提供、細胞培養施設の貸与、特許実施権の許諾及び集患支援サービスが含まれる。
売上高の大半は、契約医療機関から樹状細胞ワクチン療法の症例数に応じて得られる技術料や設備貸与料、特許使用料などからなる。契約医療機関にはその契約形態によって、「基盤提携医療機関」「提携医療機関」「連携医療機関」の3つのタイプに分けられる。「基盤提携医療機関」とは、同社が細胞培養施設を当該医療機関に設置・貸与し、技術・ノウハウの提供や特許使用の許諾などを行い、その対価として施設使用料、技術・ノウハウ料、権利使用料を治療数に応じて受け取る医療機関となる。「提携医療機関」とは、細胞培養施設を自身で既に整備している医療機関である。施設使用料がかからないため、1症例当たりの売上高は基盤提携医療機関より少なくなる。「連携医療機関」とは、細胞培養施設を持たず、基盤提携医療機関及び提携医療機関と連携して治療を行う医療機関となる。同社が当該医療機関に対してマーケティング・権利使用許諾などを行い、その対価をコンサルティング料として徴収する。樹状細胞の培養を基盤提携医療機関または提携医療機関で行うため、1症例当たりの当該医療機関から得られる売上は、樹状細胞の培養を実施した基盤提携医療機関または提携医療機関を通じて徴収することになる。
こうした契約医療機関の数は、2018年12月期第3四半期末時点で31施設となっており、日本全国をカバーしている。また、症例数は累計で約11,970症例と樹状細胞ワクチン療法では世界でトップクラスの実績を積み重ねている。がん種別で見ると膵臓がんが約2割と最も多く、次いで大腸がん、肺がんが各1割強となっている。
(2) 医薬品事業
医薬品事業は、樹状細胞ワクチン等の再生医療等製品の研究開発・試験・製造を目的に2014年1月に設立された連結子会社のテラファーマ(株)が担っている。膵臓がんに対する再生医療製等製品としての樹状細胞ワクチンの製造販売承認取得を目指しており、現在は和歌山県立医科大学附属病院で実施している医師主導治験に向けた治験用製品を製造、提供している。
(3) 医療支援事業
医療支援事業は、イメージングCRO(治験支援)事業を行うタイタン(株)、遺伝子検査サービス事業を行う(株)オールジーンなど連結子会社の事業で構成されている。なお、同セグメント売上高の7割強を占めていたBMS(細胞加工施設の運営受託・保守管理サービス、消耗品や細胞培養関連装置等の販売)については、2017年9月に保有株式をすべて売却しており、2017年12月期第4四半期より連結対象から除外されている。
2. 樹状細胞ワクチン療法とは
がんの治療法には一般的に、「外科療法(手術)」「化学療法(抗がん剤治療)」「放射線療法」と3つの標準的な治療法があり、症状に応じてそれぞれ単独で、あるいは複数の治療法を組み合わせながら治療を行っている。同社が提供する樹状細胞ワクチン療法は「第4のがん治療法」と言われる免疫療法の1つであり、これらの標準的な治療法や他の免疫療法と組み合わせることで効果を発揮するがん治療法である。
がんに対する免疫細胞療法とは患者自身の体から血液(免疫細胞)を採取して、それを体外で培養、活性化して再び体に戻し、悪性腫瘍細胞(がん細胞)を攻撃する治療法である。「樹状細胞」は免疫細胞の1つであり、体内で異物を捕食することによりその異物の特徴(抗原)を認識し、リンパ球(異物を攻撃する役割を持つT細胞等)にその特徴を覚え込ませるといった役割を担う。これにより、そのリンパ球が異物(がん細胞)を狙って攻撃することができるようになる。こうした「樹状細胞」とリンパ球の体内での役割・特徴をがん治療に生かしたものが、「樹状細胞ワクチン療法」である。
「樹状細胞ワクチン療法」の最大のメリットは、がん細胞だけを狙って攻撃し、正常細胞を傷つけないため、副作用が軽いという点にある。一方、デメリットは、公的保険適用外であるため治療費が全額自己負担(200〜230万円/1セット)となることである。このため、現状では手術や抗がん剤治療などの一般的な治療法では効果がなくなった進行がん、あるいは膵臓がんのように手術で根治させることが難しいがんの症例数が多くなっている。
3. 同社の強み
樹状細胞ワクチン療法を手掛ける競合が増えるなかで、同社の強みは大きく3つ挙げることができる。1つ目は、ほぼすべてのがん種に発現する「WT1」と呼ばれるたんぱく質をがん抗原とした「WT1ペプチド」の独占的通常実施権を保有しているほか、サーバイビンペプチドなど他のがん抗原の特許権等も保有していること、2つ目は、東京大学医科学研究所発の高品質で安定的な「細胞培養技術」を保有しており、細胞培養施設の保有・導入支援で国内有数の実績を持つこと、そして3つ目は累計症例数で1万症例を超える世界トップクラスの「臨床実績」を誇り、共同研究先などから多数の論文が専門誌等に掲載発表されていることである。さらに、テラファーマが製造している樹状細胞ワクチンで治験が進められており、再生医療等製品として薬事承認が得られれば大きな強みとなる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 事業概要
テラ<2191>はがん免疫療法の1つである樹状細胞ワクチン療法を中心に、医療機関に対する技術・運用ノウハウの提供、及び再生・細胞医療に関する研究開発を行う企業で、2004年に元外科医師で取締役の矢崎雄一郎(やざきゆういちろう)氏によって設立された。事業セグメントは細胞医療事業、医薬品事業、医療支援事業の3事業で構成されており、子会社において医薬品事業、医療支援事業を展開している。各事業セグメントの内容は以下のとおり。
(1) 細胞医療事業
細胞医療事業には、同社が開発する樹状細胞ワクチン療法を中心とした独自のがん治療技術・ノウハウの提供、細胞培養施設の貸与、特許実施権の許諾及び集患支援サービスが含まれる。
売上高の大半は、契約医療機関から樹状細胞ワクチン療法の症例数に応じて得られる技術料や設備貸与料、特許使用料などからなる。契約医療機関にはその契約形態によって、「基盤提携医療機関」「提携医療機関」「連携医療機関」の3つのタイプに分けられる。「基盤提携医療機関」とは、同社が細胞培養施設を当該医療機関に設置・貸与し、技術・ノウハウの提供や特許使用の許諾などを行い、その対価として施設使用料、技術・ノウハウ料、権利使用料を治療数に応じて受け取る医療機関となる。「提携医療機関」とは、細胞培養施設を自身で既に整備している医療機関である。施設使用料がかからないため、1症例当たりの売上高は基盤提携医療機関より少なくなる。「連携医療機関」とは、細胞培養施設を持たず、基盤提携医療機関及び提携医療機関と連携して治療を行う医療機関となる。同社が当該医療機関に対してマーケティング・権利使用許諾などを行い、その対価をコンサルティング料として徴収する。樹状細胞の培養を基盤提携医療機関または提携医療機関で行うため、1症例当たりの当該医療機関から得られる売上は、樹状細胞の培養を実施した基盤提携医療機関または提携医療機関を通じて徴収することになる。
こうした契約医療機関の数は、2018年12月期第3四半期末時点で31施設となっており、日本全国をカバーしている。また、症例数は累計で約11,970症例と樹状細胞ワクチン療法では世界でトップクラスの実績を積み重ねている。がん種別で見ると膵臓がんが約2割と最も多く、次いで大腸がん、肺がんが各1割強となっている。
(2) 医薬品事業
医薬品事業は、樹状細胞ワクチン等の再生医療等製品の研究開発・試験・製造を目的に2014年1月に設立された連結子会社のテラファーマ(株)が担っている。膵臓がんに対する再生医療製等製品としての樹状細胞ワクチンの製造販売承認取得を目指しており、現在は和歌山県立医科大学附属病院で実施している医師主導治験に向けた治験用製品を製造、提供している。
(3) 医療支援事業
医療支援事業は、イメージングCRO(治験支援)事業を行うタイタン(株)、遺伝子検査サービス事業を行う(株)オールジーンなど連結子会社の事業で構成されている。なお、同セグメント売上高の7割強を占めていたBMS(細胞加工施設の運営受託・保守管理サービス、消耗品や細胞培養関連装置等の販売)については、2017年9月に保有株式をすべて売却しており、2017年12月期第4四半期より連結対象から除外されている。
2. 樹状細胞ワクチン療法とは
がんの治療法には一般的に、「外科療法(手術)」「化学療法(抗がん剤治療)」「放射線療法」と3つの標準的な治療法があり、症状に応じてそれぞれ単独で、あるいは複数の治療法を組み合わせながら治療を行っている。同社が提供する樹状細胞ワクチン療法は「第4のがん治療法」と言われる免疫療法の1つであり、これらの標準的な治療法や他の免疫療法と組み合わせることで効果を発揮するがん治療法である。
がんに対する免疫細胞療法とは患者自身の体から血液(免疫細胞)を採取して、それを体外で培養、活性化して再び体に戻し、悪性腫瘍細胞(がん細胞)を攻撃する治療法である。「樹状細胞」は免疫細胞の1つであり、体内で異物を捕食することによりその異物の特徴(抗原)を認識し、リンパ球(異物を攻撃する役割を持つT細胞等)にその特徴を覚え込ませるといった役割を担う。これにより、そのリンパ球が異物(がん細胞)を狙って攻撃することができるようになる。こうした「樹状細胞」とリンパ球の体内での役割・特徴をがん治療に生かしたものが、「樹状細胞ワクチン療法」である。
「樹状細胞ワクチン療法」の最大のメリットは、がん細胞だけを狙って攻撃し、正常細胞を傷つけないため、副作用が軽いという点にある。一方、デメリットは、公的保険適用外であるため治療費が全額自己負担(200〜230万円/1セット)となることである。このため、現状では手術や抗がん剤治療などの一般的な治療法では効果がなくなった進行がん、あるいは膵臓がんのように手術で根治させることが難しいがんの症例数が多くなっている。
3. 同社の強み
樹状細胞ワクチン療法を手掛ける競合が増えるなかで、同社の強みは大きく3つ挙げることができる。1つ目は、ほぼすべてのがん種に発現する「WT1」と呼ばれるたんぱく質をがん抗原とした「WT1ペプチド」の独占的通常実施権を保有しているほか、サーバイビンペプチドなど他のがん抗原の特許権等も保有していること、2つ目は、東京大学医科学研究所発の高品質で安定的な「細胞培養技術」を保有しており、細胞培養施設の保有・導入支援で国内有数の実績を持つこと、そして3つ目は累計症例数で1万症例を超える世界トップクラスの「臨床実績」を誇り、共同研究先などから多数の論文が専門誌等に掲載発表されていることである。さらに、テラファーマが製造している樹状細胞ワクチンで治験が進められており、再生医療等製品として薬事承認が得られれば大きな強みとなる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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