クオールHD Research Memo(6):CMRの質を向上させ、顧客からの信頼獲得で収益拡大につなげる
[18/12/17]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略
3. BPO事業の成長戦略
BPO事業ではCSO事業、派遣紹介事業、CRO事業及び出版関連事業を手掛けている。いずれもクオール薬局との連携を活用しながら業容拡大を目指している。事業主体はアポプラスステーションとメディカルクオールの2社で、アポプラスステーションがCSO事業、派遣紹介事業、及びCRO事業を、メディカルクオールが出版事業を、それぞれ展開している。
(1) CSO事業の成長戦略
CSO事業は、CMR(コントラクトMRの略。派遣で働くMRのこと)を製薬メーカーに派遣する事業だ。CSO事業の事業環境としては今後もCMRへの需要が増加する方向にあるというのがクオールホールディングス<3034>も含めた一般的な認識だ。その背景にあるのは製薬メーカーにおける正社員MRの削減の動きだ。2013年には製薬業界全体で65,752人のMRを抱えていたがそこをピークに減少に転じ、今後も減少基調が続くと予想されている。削減されたMRの仕事はアウトソースされ、同社を始めとするCMR事業者がその受け皿となる構図だ。
こうした事業環境のなか、同社の成長戦略はCMRシェア(CMR総数に占める自社のCMR数の割合)の拡大だ。2018年3月期において同社のシェアは14.2%だった。この数値を2022年3月期には20%に拡大する計画だ。同社はその時点のCMR総数を4,500人〜5,000人と想定し、その20%に相当する900人〜1,000人体制を構築してシェア20%の達成と、CSO業界におけるNo.2ポジションの確立を目指している。
CSO事業で重要なポイントとして、CSO事業は一般的な派遣事業に比較して、業績のボラティリティ(変動性)が高いことがある。CMRへの需要は製薬会社が新薬を発売し、全国の医療機関に販売攻勢をかけるようなプロジェクトベースで高まることが多い。プロジェクトが終わればCMRは派遣元に戻されることになる。問題はその人数で、プロジェクトによっては100人を超える規模であることも珍しくない。すなわち、100人単位のCMRが派遣元と派遣先を比較的短期間に行き来することになり、業績の高ボラティリティへとつながるという構図だ。
こうした業績ボラティリティを抑制する方策の1つは顧客の分散だ。この点については、同社は2018年9月時点で46社にCMRを派遣しており、派遣先会社数で業界No.1の地位をキープしている。さらに同社は安定してCMR需要を取り込むために他社との差別化に取り組んでいるが、その最大のポイントとしてCMRの質の確保に取り組んでいる。質の確保の具体的アクションとして、CMRに専門領域を持たせることを目標に、その領域についての知識アップに取り組んでいる。専門知識を備えたCMRを多数抱えることで顧客からの信頼をさらに高め、人材獲得やCSO事業の収益拡大につながるポジティブスパイラル(正の循環)の確立を急ぐ考えだ。
(2) 派遣紹介事業の成長戦略
派遣紹介事業は連続増収増益が続いており、今後も成長が持続すると期待されている。2021年3月期には売上高が2016年3月期対比で倍増する計画を立てている。
こうした同社の派遣紹介事業の強みは、医療従事者という領域の中で、バラエティーに富んだ取扱職種を有する点にある。現状の職種別内訳として、約60〜65%が薬剤師で、残りの大半を看護師と登録販売者が二分する構造と弊社では推測している。他に管理栄養士や医療事務の派遣・紹介も行っている。一方医師については市場性の違い等を考慮して取り扱っていない。
薬剤師の派遣事業については、業界全体でトップ10に入る規模と推測され、大手調剤薬局チェーンが営む薬剤師派遣事業としては日本調剤(“ファルマスタッフ”ブランドで展開)に次ぐ規模となっている。
今後の成長戦略としては、登録者の拡大がまず第1の施策となるだろう。この点については2019年3月期第2四半期に専門Webサイトのリニューアルを実施し成果を上げた。また、取扱職種がバラエティーに富んでいるという特長を生かし、それぞれの幹を太くする施策も重要となるだろう。この点については営業拠点を拡大し派遣先の増加に取り組む方針だ。一方、業務基幹システムの刷新による効率性アップも実施する予定で、これにより売上高の拡大と利益率の一段の上昇が期待される。
(3) CRO事業
CRO事業は医療用医薬品、OTC薬品、食品等の臨床試験支援サービスだ。国内のCRO市場の規模は約2,000億円とされている。同社の内訳として、医薬品と食品とで大きく2分しており、医薬品の規模が食品を上回っているという状況だ。
同社のCRO事業は食品のCROで強みを発揮しており、売上高の中身としても食品向け売上高がマジョリティを占めている。特定保健用(トクホ)食品市場の拡大で恩恵を享受している状況だ。
今後については医薬品向けCROの拡大を成長エンジンと位置付けている。同社のCRO事業は過去に食品系と医薬品系の事業者をそれぞれ子会社化して成長してきた経緯がある。したがって医薬品向けCROの知見やノウハウは十分にあり、営業強化によって医薬品向けCRO事業は着実に成長すると期待される。
(4) H&B事業
H&BとはHealth & Beautyの略だ。医療機関が取り扱う健康サポート商品の提案や販売促進のサポートを主たる業務としている。アポプラスステーションの多角化・新規事業展開の一環として設置された事業部だ。
現状は他社が製造販売する健康食品やサプリ等の健康サポート商品を、同社グループの薬局や医療機関、サードパーティの薬局等で販売するのが事業内容となっている。主力商材はキリングループが製造販売しているプラズマ乳酸菌の使用を特色とするiMUSE(イミューズ)シリーズの中の医療機関向けiMUSE Professional(プラズマ乳酸菌+バリアビタミンC)となっている。
専門的知識を持って商品提案をする点や、医療従事者への勉強会や販売ノウハウのコンサルティング等のサポート体制が支持されているほか、薬局の「健康サポート機能」構築を支援する役割を果たしている点も評価されている。将来的に取扱商材を拡大しながら成長を追求していくとみられる。
(5) 海外事業
アポプラスステーションは海外事業にも取り組んでおり、医薬品・化粧品等を含むヘルスケア商品のASEAN等への進出をサポートしている。直近の進捗としては、アポプラスステーションタイランドにおいて、富士製薬工業<4554>のタイ事業の支援で契約を締結したことが挙げられる。
富士製薬工業が製造するジェネリックの注射薬に関し、タイ国内での営業・マーケティング支援を担うことになる。同社はこれをきっかけに、他の内・外資系企業のタイ進出をサポートし業容拡大を狙う考えだ。
(6) 出版事業
出版事業はメディカルクオールが担っている。メディカルクオールは元々製薬メーカーの子会社だったこともあり、同社グループ入りしてからは、製薬メーカー側と調剤薬局側の双方のニーズや事情に知見があるという強みを生かして事業を展開している。
直近の進捗としては、時代に則した新規事業としてWeb配信事業を開始したことがある。これはメディカルクオールの社内にスタジオを設置し、そこで、製薬メーカーからの委託に基づき医薬品に関するプロモーションや商品説明等についての動画を撮影するというものだ。顧客はメディカルクオールのスタジオを活用して低コストで動画コンテンツを制作し、それをインターネットを通じて配信するという流れだ。東京における医薬品企業の集積地である日本橋に立地しており、今後の利用拡大が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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3. BPO事業の成長戦略
BPO事業ではCSO事業、派遣紹介事業、CRO事業及び出版関連事業を手掛けている。いずれもクオール薬局との連携を活用しながら業容拡大を目指している。事業主体はアポプラスステーションとメディカルクオールの2社で、アポプラスステーションがCSO事業、派遣紹介事業、及びCRO事業を、メディカルクオールが出版事業を、それぞれ展開している。
(1) CSO事業の成長戦略
CSO事業は、CMR(コントラクトMRの略。派遣で働くMRのこと)を製薬メーカーに派遣する事業だ。CSO事業の事業環境としては今後もCMRへの需要が増加する方向にあるというのがクオールホールディングス<3034>も含めた一般的な認識だ。その背景にあるのは製薬メーカーにおける正社員MRの削減の動きだ。2013年には製薬業界全体で65,752人のMRを抱えていたがそこをピークに減少に転じ、今後も減少基調が続くと予想されている。削減されたMRの仕事はアウトソースされ、同社を始めとするCMR事業者がその受け皿となる構図だ。
こうした事業環境のなか、同社の成長戦略はCMRシェア(CMR総数に占める自社のCMR数の割合)の拡大だ。2018年3月期において同社のシェアは14.2%だった。この数値を2022年3月期には20%に拡大する計画だ。同社はその時点のCMR総数を4,500人〜5,000人と想定し、その20%に相当する900人〜1,000人体制を構築してシェア20%の達成と、CSO業界におけるNo.2ポジションの確立を目指している。
CSO事業で重要なポイントとして、CSO事業は一般的な派遣事業に比較して、業績のボラティリティ(変動性)が高いことがある。CMRへの需要は製薬会社が新薬を発売し、全国の医療機関に販売攻勢をかけるようなプロジェクトベースで高まることが多い。プロジェクトが終わればCMRは派遣元に戻されることになる。問題はその人数で、プロジェクトによっては100人を超える規模であることも珍しくない。すなわち、100人単位のCMRが派遣元と派遣先を比較的短期間に行き来することになり、業績の高ボラティリティへとつながるという構図だ。
こうした業績ボラティリティを抑制する方策の1つは顧客の分散だ。この点については、同社は2018年9月時点で46社にCMRを派遣しており、派遣先会社数で業界No.1の地位をキープしている。さらに同社は安定してCMR需要を取り込むために他社との差別化に取り組んでいるが、その最大のポイントとしてCMRの質の確保に取り組んでいる。質の確保の具体的アクションとして、CMRに専門領域を持たせることを目標に、その領域についての知識アップに取り組んでいる。専門知識を備えたCMRを多数抱えることで顧客からの信頼をさらに高め、人材獲得やCSO事業の収益拡大につながるポジティブスパイラル(正の循環)の確立を急ぐ考えだ。
(2) 派遣紹介事業の成長戦略
派遣紹介事業は連続増収増益が続いており、今後も成長が持続すると期待されている。2021年3月期には売上高が2016年3月期対比で倍増する計画を立てている。
こうした同社の派遣紹介事業の強みは、医療従事者という領域の中で、バラエティーに富んだ取扱職種を有する点にある。現状の職種別内訳として、約60〜65%が薬剤師で、残りの大半を看護師と登録販売者が二分する構造と弊社では推測している。他に管理栄養士や医療事務の派遣・紹介も行っている。一方医師については市場性の違い等を考慮して取り扱っていない。
薬剤師の派遣事業については、業界全体でトップ10に入る規模と推測され、大手調剤薬局チェーンが営む薬剤師派遣事業としては日本調剤(“ファルマスタッフ”ブランドで展開)に次ぐ規模となっている。
今後の成長戦略としては、登録者の拡大がまず第1の施策となるだろう。この点については2019年3月期第2四半期に専門Webサイトのリニューアルを実施し成果を上げた。また、取扱職種がバラエティーに富んでいるという特長を生かし、それぞれの幹を太くする施策も重要となるだろう。この点については営業拠点を拡大し派遣先の増加に取り組む方針だ。一方、業務基幹システムの刷新による効率性アップも実施する予定で、これにより売上高の拡大と利益率の一段の上昇が期待される。
(3) CRO事業
CRO事業は医療用医薬品、OTC薬品、食品等の臨床試験支援サービスだ。国内のCRO市場の規模は約2,000億円とされている。同社の内訳として、医薬品と食品とで大きく2分しており、医薬品の規模が食品を上回っているという状況だ。
同社のCRO事業は食品のCROで強みを発揮しており、売上高の中身としても食品向け売上高がマジョリティを占めている。特定保健用(トクホ)食品市場の拡大で恩恵を享受している状況だ。
今後については医薬品向けCROの拡大を成長エンジンと位置付けている。同社のCRO事業は過去に食品系と医薬品系の事業者をそれぞれ子会社化して成長してきた経緯がある。したがって医薬品向けCROの知見やノウハウは十分にあり、営業強化によって医薬品向けCRO事業は着実に成長すると期待される。
(4) H&B事業
H&BとはHealth & Beautyの略だ。医療機関が取り扱う健康サポート商品の提案や販売促進のサポートを主たる業務としている。アポプラスステーションの多角化・新規事業展開の一環として設置された事業部だ。
現状は他社が製造販売する健康食品やサプリ等の健康サポート商品を、同社グループの薬局や医療機関、サードパーティの薬局等で販売するのが事業内容となっている。主力商材はキリングループが製造販売しているプラズマ乳酸菌の使用を特色とするiMUSE(イミューズ)シリーズの中の医療機関向けiMUSE Professional(プラズマ乳酸菌+バリアビタミンC)となっている。
専門的知識を持って商品提案をする点や、医療従事者への勉強会や販売ノウハウのコンサルティング等のサポート体制が支持されているほか、薬局の「健康サポート機能」構築を支援する役割を果たしている点も評価されている。将来的に取扱商材を拡大しながら成長を追求していくとみられる。
(5) 海外事業
アポプラスステーションは海外事業にも取り組んでおり、医薬品・化粧品等を含むヘルスケア商品のASEAN等への進出をサポートしている。直近の進捗としては、アポプラスステーションタイランドにおいて、富士製薬工業<4554>のタイ事業の支援で契約を締結したことが挙げられる。
富士製薬工業が製造するジェネリックの注射薬に関し、タイ国内での営業・マーケティング支援を担うことになる。同社はこれをきっかけに、他の内・外資系企業のタイ進出をサポートし業容拡大を狙う考えだ。
(6) 出版事業
出版事業はメディカルクオールが担っている。メディカルクオールは元々製薬メーカーの子会社だったこともあり、同社グループ入りしてからは、製薬メーカー側と調剤薬局側の双方のニーズや事情に知見があるという強みを生かして事業を展開している。
直近の進捗としては、時代に則した新規事業としてWeb配信事業を開始したことがある。これはメディカルクオールの社内にスタジオを設置し、そこで、製薬メーカーからの委託に基づき医薬品に関するプロモーションや商品説明等についての動画を撮影するというものだ。顧客はメディカルクオールのスタジオを活用して低コストで動画コンテンツを制作し、それをインターネットを通じて配信するという流れだ。東京における医薬品企業の集積地である日本橋に立地しており、今後の利用拡大が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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