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Iスペース Research Memo(5):2019年9月期も広告規制等の影響が続き、業績は減収減益を見込む

注目トピックス 日本株
■今後の見通し

1. 2019年9月期の業績見通し
インタースペース<2122>の2019年9月期の連結業績は、売上高が前期比3.6%減の27,200百万円、営業利益が同24.9%減の600百万円、経常利益が同25.6%減の600百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同31.4%減の350百万円と減収減益を見込んでいる。

売上高についてはインターネット広告事業において一部商材の広告規制の影響が続くほか、SFAの減収が見込まれること、また、メディア運営事業についてもアップストアの規制強化の影響でコンテンツ事業の減収が見込まれることから、全体では上場来初の減収となる可能性がある。また、営業利益については減収要因に加えて、メディア事業の成長に向けた投資を行うことも減益要因となる。なお、インターネット広告事業、メディア運営事業ともに売上高は保守的に見積もっていることから上振れする可能性があるものの、利益面では今後の成長に向けた事業基盤を構築するための投資を積極的に行う方針のため、会社計画から大きく乖離することはないと思われる。


インターネット広告事業は減収減益、メディア運営事業は増収、利益は横ばいを見込む
2. 事業セグメント別の見通し
(1) インターネット広告事業
インターネット広告事業の売上高は前期比4%減の261億円程度を見込んでいる。売上高の内訳は、アフィリエイト広告が同6%減の210億円、SFAが同15%減の30億円、その他が同55%増の21億円となる。

アフィリエイト広告については、2018年9月期第4四半期のトレンドが継続することを前提にしている。インターネット広告に関しては昨年来、アドフラウド(広告詐欺)が社会問題化したこともあり、今まで以上に質の向上問われており、薬事法や景品表示法などによって規制されるケースも増えてくることが想定されるが、逆風を好機と捉え、質の向上を図ることで再成長を目指して行く考えだ。また、海外のアフィリエイト広告については新たにマレーシア、シンガポールでもサービスを展開していく予定にしており、売上高は前期比2倍増の5億円を見込んでいる(ベトナム含む)。利益面ではタイやベトナムの利益増が続くものの、マレーシアの立ち上げ費用が掛かるため、海外全体では若干の損失が続くと見ている。

SFAの減収については、スマートフォン向けセキュリティ商品の売上計上方法が月額方式になる影響が続く。前第4四半期の売上高が667百万円だったことから、期の後半にかけて売上水準が上がっていくことになる。セキュリティ対策は個人でも重要と感じるユーザーが多いため、同商品の販売は今後も堅調な推移が見込まれる。同社ではSFA事業の拡大に向け、携帯ショップ以外の販路開拓を進めていく考えで、不動産業者や運送業者などと協業しながら宅配水や光通信回線等の商材を拡充し、売上げを伸ばしていく方針だ。

また、その他広告については「X-lift」を通じたネイティブ広告の売上増を見込んでいる。メディア開拓や取扱広告の増加により売上成長は見込まれるが、収益性の向上が引き続き課題となる。

(2) メディア運営事業
メディア運営事業の売上高は前期比19%増の11億円程度、営業利益は横ばい水準を計画している。メディア広告のうち、ネットワーク広告については単価が下落傾向となっており、売上高は前期並みの水準にとどまるが、タイアップ広告の拡大により増収となる見通しだ。特に、4MEEEについては前期比約8割増の1.8億円を見込んでいる。一方、コンテンツ事業は新規タイトルのリリースが減少することを想定し、減収減益で見込んでいる。


将来的に広告事業とメディア事業の利益構成比50:50を目指す
3. 今後の重点施策と目標
同社は2019年9月期の重点施策として「BtoC領域の強化」「グローバル展開の強化」「クリエイティブの品質向上」の3つを掲げており、これらの取り組みを実行していくことで2020年9月期以降の業績再成長を実現していく考えだ。

(1) BtoC領域の強化
同社では将来的にインターネット広告事業とメディア事業の利益構成比50:50を目指しており、これを実現するためにBtoC領域であるメディア事業の強化に取り組んでいく方針となっている。まずは「既存メディアのコンテンツ強化」と「新規メディアの創出」に注力し、その後「新規ビジネスモデルの創出」を実現していくことでメディア事業の収益拡大を目指して行く戦略だ。

「既存メディアのコンテンツ強化」では、「ママスタジアム」や「4MEEE」「KOIMEMO(コイメモ)」(恋愛情報サイト)「mofmo(モフモ)」(ペット情報サイト)などの主要メディアの記事コンテンツの拡充に取り組んでいく。また、将来の有料サービス化に向けた布石としてデータベースの収集と蓄積を進めていくほか、認知度向上のためのプロモーション施策(雑誌、イベント集客)も強化する。同社の強みであるママ領域を主軸に据えてその周辺領域へと横展開を図りながら規模を拡大していく計画で、金融や旅行関連のコンテンツ強化、「KOIMEMO」であればマッチングアプリとの連携、「mofmo」であればペット保険やペットフード等のアフィリエイト広告での展開などを想定している。また、これらのメディアは国内展開だけにとどまっているが、将来的にはグローバル配信も視野に入れている。そのため、宗教観に影響されないコンテンツ作りも目指している。

事業を拡大していくうえで、インターネット広告事業との相互連携も進めていく。例えば、現在は「ママスタジアム」への広告出稿など内部取引高が月間4百万円の規模にとどまっているが、これを月間1億円以上の規模にまで拡大していきたい考えだ。こうした取り組みを進めることで、現在のメディアの月間UU数0.1億人(営業利益1.2億円)を将来的に10倍の1億人(営業利益12億円)まで拡大していくことを目指す。

次に、「新規メディアの創出」については、出版社とのアライアンスによる共同展開を進めていくほか、M&Aの活用、自社開発などにも取り組んでいく。アライアンス戦略では、2018年9月期から(株)セブン&アイ出版との共同事業として、雑誌「ヨガジャーナル」のオンラインニュースメディア「ヨガジャーナルオンライン」の提供を開始したほか、(株)MADUROが発行する男性向けファッション・カルチャー・ライフスタイル誌「MADURO(マデュロ)」オンライン版の共同運営を開始しており、ブランド顧客層の獲得に取り組んでいる。

「新規ビジネスモデルの創出」では、既存市場において新たなビジネスモデルの構築を目指している。具体的な展開としては数年先となるが、例えば比較サイトを作ってユーザーを送客することで成果報酬を得るビジネスモデルや、位置情報等のビッグデータを収集・蓄積して活用する付加価値サービス提供によるユーザー課金モデルなどを想定している。

(2) グローバル展開の強化
アフィリエイトサービスの東南アジアでの展開を広げ、アフィリエイトプラットフォームでアジアNo.1(中国を除く)を目指して行く。タイ、ベトナム、インドネシア、台湾(越境EC用で活用)に加えて、2019年9月期よりマレーシア、シンガポールでもサービス展開を開始する。2018年10月にはマレーシアにも子会社を設立し、事業を開始している。タイ、ベトナム、インドネシア等では前年比2倍増ペースで拡大しており、マレーシアやシンガポールにおいても需要の拡大が見込まれる。また、CJとの連携についても特に、旅行関連のクライアントが好調で着実に増加している。海外事業全体でまだ数億円規模の売上高が、今後、東南アジアでもアフィリエイト広告が普及していく可能性は高く、業界トップの地位を確立できれば、中長期的に収益へ貢献してくるものと期待される。

(3) クリエイティブの品質向上
メディア事業を拡大していくうえで、ブランド広告の獲得も重要な施策となる。現状、アパレルや雑貨等のハイブランド系については、雑誌の広告出稿が中心となっており、インターネット広告はまだ少ない。これはインターネット広告はクリエイティブの質の面での担保が難しく、ブランドイメージを最も大事にするクライアント企業にとってまだリスクが大きいためだ。ただ、ブランド広告については規模が大きいため、顧客を獲得できれば売上増に大きく貢献する可能性がある。このため同社ではクリエイティブの品質管理を強化し(メディア運営のガイドラインを固める)、ユーザー満足度、並びに顧客満足度を最大化できるような高品質なクリエイティブを創る体制の構築に取り組んでいく方針となっている。そういう面でも、出版社とのアライアンスによって共同事業を進めていることは、同社にとってプラスになると考えられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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