ピクセラ Research Memo(4):AV関連事業は4K映像対応STBをベースに新事業を拡大(1)
[18/12/21]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■事業戦略
ピクセラ<6731>は、AV関連事業において自社の強みを生かせる市場として、2018年12月より開始される新4K衛星放送に対応するテレビチューナーの需要拡大のほか、IoT、AI/ビッグデータ、AR/VRの市場拡大を見込んでおり、既に開始しているMVNO事業やFTTH事業等と組み合わせることで、ハードウェアの販売収益のみに依存しない、継続的で利益率の高いサービス収益の基盤を構築していく計画である。
1. 事業構造改革
(1) ECによる直販体制及び自社ブランドの構築
同社は従来、OEM供給への依存度が高く、OEM先の都合で収益が大きく影響されてきた。また、OEM先ブランドでの販売が多く、自社ブランドの認知度が低い状況にあり、さらに自社ブランド品は商社経由での家電量販店における販売が中心であることが、収益拡大において一定の制約となっていた。
そのため、自社で顧客データを保有し、より能動的なマーケティング活動を展開することのできる、ECによる直販体制を構築することが必須と考えている。既に自社ECサイト「NextMall」を運営しているものの、プロモーション等のノウハウが不足しており、自社ECサイトのみでは収益の拡大ペースに限界があることから、既に一定の顧客ベースを有するEC運営企業等とのM&Aを推進する考えである。
また、直販を成功させるには自社ブランドの認知度向上が必要であることから、外部企業からのコンサルティングも受けながら、ブランドの一新を進める。既に、スマートホームハブ向けの新ブランド「PIXELA」、モバイル向けチューナー関連製品の新ブランド「Xit」を発表しているのに加え、2018年5月にはOrchestra Holdings<6533>の子会社である(株)デジタルアイデンティティとの間で、4K映像対応STBの販売を中心にEC通販領域で協業するマーケティングパートナーシップ契約を締結した。
ECによる直販体制を構築するには、同社に不足している、ネットワーク系、サーバ系、Web系のエンジニアの確保も必要となる。エンジニアの採用環境が厳しい現状においては、同社が求める人材リソースを抱えるソフトウェア企業とのM&Aも推進する考えである。
(2) 月額課金型ビジネスモデルの構築
同社は従来、家電・PC周辺機器のメーカーとして、製品を売切りで販売するのみであった。また、同社製品は買い替えまでのライフサイクルが比較的長いものが多く、売上げを継続的に積み上げていくことが難しかった。今後、収益を持続的に拡大していくためには、製品の販売収益に加えて、継続的なサービス収益を獲得できるビジネスモデルを構築していくことが必須と同社では考えている。
同社は既に、MVNOサービス「ピクセラモバイル」、FTTHコラボサービス「ピクセラ光」、ホームIoTサービス「Conteホームサービス」を提供しており、月額課金収入を得ているものの、現時点における全社収益への貢献度はまだ限定的である。月額課金収入の拡大ペースを上げるために、同社は月額課金型ビジネスモデルを既に構築しているEC運営企業やコンテンツ配信企業等とのM&Aを推進する考えである。
(3) A-Stage買収の位置付け
黒物家電を取り扱う同社が白物家電中心のA-Stageを買収したことは、グループとしてプロダクトや顧客層のポートフォリオを充実させた意義が認められる。その一方で、同社が目指している事業構造改革において即効性を有する経営資源を獲得するものとは言えない。
A-Stageは従来、買収される前の親会社であったエスキュービズムのブランドで製品を販売しており、自社ブランドは構築されておらず、販売先との間の混乱を避けるため、買収後1年程度をかけてブランドを構築する予定となっている。また、EC売上比率が高く、ECに適した製品を展開しているものの、大半は大手ECサイト経由であり、自社ECサイトによる直販体制が構築されているとは言えない。さらに、将来的にはスマート家電を通じたサービスビジネスが想定されるものの、現時点において月額課金型のサービスを展開しているわけではない。こうしたことから、A-Stageの買収は、事業構造改革の方針にしたがって実行されたというよりも、あくまで事業上の親和性が高い案件として実行されたものと解釈した方がよい。
2. AV関連事業の新規成長分野
(1) 4K放送対応STB及び関連製品
同社による調査では、4K放送対応テレビの国内市場規模は2016年時点で累計約190万台と見込まれるが、2018年からの実用放送開始により増加し、東京オリンピックが開催される2020年には累計約2,300万台に達するものと予想されている。また、野村総合研究所<4307>によれば、超高精細テレビ及び次世代スマートテレビは年平均50%以上で成長し、2020年には3,300万世帯に普及するものと予測されており、同社は2020年における両テレビの市場規模を2.5兆円と予想している。同社は過去に地上デジタルテレビ市場の拡大に先んじて対応することにより業績を伸ばした経験がある。2018年12月からの新4K衛星放送の開始時点で4K放送を受信できない4K対応テレビは900万台と推定されることから、新4K衛星放送に対応した4K Smart Tuner「PIX-SMB400」をいち早く開発し、2018年9月末から出荷を開始している。
同社は4K Smart Tunerの販売を加速するため、接続される液晶ディスプレイ及びレコーダーの開発・販売も既に開始しており、新4K衛星放送の開始に合わせて、4K Smart Tunerと4KディスプレイをセットにしてAndroidTV搭載4Kテレビとして販売することを計画している。AndroidTV搭載テレビは既に大手メーカーから発売されているものの大画面の高価格帯モデル中心であるため、同社ではより手頃な価格で購入できるパーソナルユースとしての展開を想定している。2018年7月には、Netflix(ネットフリックス)との間で、国内における4Kコンテンツ配信の市場拡大のための戦略的プロモーションパートナーシップ契約を締結し、4K Smart Tunerの販売プロモーションにおいて協業することで合意した。また、新4K衛星放送対応のチューナーを内蔵した液晶テレビの発売を2018年11月末に発表した。
同社の新規事業分野におけるプラットフォームとなる4K映像対応STBは、単に屋内で4K放送を視聴できるだけでなく、家庭内の様々なIoT機器をインターネット環境に接続するためのゲートウェイ機能や、スマートフォンや専用端末でのみ視聴できるVR映像を家庭用のテレビでも視聴できるようにする機能、AIを使った視聴番組のお勧め機能等の開発が進められており、コンシューマ市場に加え、様々なビジネス用途での販売も見込んでいる。
2017年9月にはSTBの拡販を目的として、NTT東日本及びNTT西日本から提供される「フレッツ光ネクスト」相当の回線(最大1Gbps)をプロバイダサービスとセットで利用可能なFTTHコラボサービス「ピクセラ光」の提供を開始した。また、2017年12月よりブロードメディアGC(株)と提携し、STBをブロードメディアGCのクラウドゲームサービス「Gクラスタ」に対応させた。同社では今後も他社サービスとの連携を進めることで、STBの拡販につなげる考えである。
(2) ホームIoT事業
IDC Japan(株)によれば、国内IoT市場は2020年まで年平均16.9%で成長し、市場規模は13.8兆円に達すると予想されており、同社はターゲットとするホームIoT市場をその10%の1.4兆円と予想している。
同社はConteブランドにて、2016年9月期よりSIMフリー対応のLTE対応USBドングルの販売を開始し、さらに2017年9月期より業界最安値水準のMVNOサービス「ピクセラモバイル」を開始した。幅広いOS(オペレーティングシステム)をサポートしていること、バッテリーを内蔵していないことなどから、ビジネス用途での引き合いが強く、バス内やコンビニ内でのデジタルサイネージ(情報・広告表示ディスプレイ)等で既に導入されており、今後も主に法人ユースでの一括導入を狙っていくものと考えられる。
また、2016年9月期よりホームIoTサービスであるConteホームサービスを提供している。同サービスは、2017年7月に、総務省のIoT創出支援事業における「爾後(じご)取付式IoTシステムを用いた民泊向けIoTサービスの実証実験」の委託先の1つに採択されたほか、2018年4月に、楽天コミュニケーションズ(株)が提供する民泊運営支援サービス「あんしんステイIoT」の「IoTプラットフォーム」部分で採用された。ホームIoTサービスの一般家庭への本格的普及にはまだ時間がかかるものと予想され、当面は受託開発を絡めた外部とのサービスの共同開発を軸に展開されるものと考えられる。
同社は、A-Stageの買収とオックスコンサルティングの持分法適用関連会社化により、民泊・ホテル事業者に対して、自社及びグループ会社を通じて、幅広いラインアップのハードウェア製品からIoTサービス・プラットフォーム、運営サポート・インフラまで総合的に提供できることとなった。これにより、ストック型収益モデルを構築・強化し、持続的な収益拡大を期待できる基盤を固めたと言える。同社は今後、東京オリンピックに向けて更なる成長が期待される民泊・ホテル分野に、一層注力していく方針としている。
(3) AI/ビッグデータ事業
EY総合研究所(株)によれば、国内におけるサービス、広告、生活関連情報分野でAIを活用した機器・システム等の市場規模は、2020年に4.5兆円に達すると予測されている。同社は、自社のテレビチューナーを利用する多数のユーザーを既に抱えており、バンドルソフトを通じてテレビの視聴データの収集が可能な状況にあることから、それらのデータや分析結果を、広告の効果測定や配信最適化に活用したい広告主や広告代理店へ販売するほか、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を公開しデータ分析基盤をオープンプラットフォームとして提供することを想定している。同社のiPhone・iPad用Lightningコネクタ接続タイプの地デジフルセグチューナー向けアプリは、どの番組を何人が視聴しているかを、同社のクラウドサービス「テレビ視聴データサービス」で分析し、アプリ上にリアルタイム表示することができるようになっており、Web公開も開始している。視聴データ提供の本格的な事業化のためには、大量のデータを蓄積するとともに、ユーザー属性や他サービスの利用データ等と組み合わせる必要があり、他社との連携が必要になると考えられることから、収益貢献にはまだ時間を要するものと予想される。
(4) AR/VR事業
AR/VR事業においては、360度パノラマ動画を視聴できるスマートフォン用VR無料アプリ「パノミル」を提供しており、プロ野球やJリーグの試合のライブ配信等の実績を積み重ねている。リアルタイムスティッチ(映像の貼合わせ)、エンコード(符号化)、配信、視聴アプリまでを統合的に提供・サポートできるのが同社の強みである。2017年11月には、スウェーデンに本社を置くVoysys ABとの間で、最大8K までの出力に対応するリアルタイムスティッチソフト「Voysys VR」の販売代理店契約を締結した。また、2018年3月に、(株)テクノブラッドとの企業コラボにより、国内600店舗のインターネットカフェに設置されたVRコンテンツプラットフォーム「VIRTUAL GATE(バーチャルゲート)」へパノミルを導入した。600店舗でのフィージビリティスタディの後、VIRTUAL GATEの普及に合わせて国内1,800店舗、韓国10,000店舗への導入を図り、店舗数拡大後の収益化を目指している。数多くのデバイスへの対応とともに、体験可能なユーザーやロケーションを増やしながら、高品質なコンテンツを配信するプラットフォーム化を図り、企業や団体等へ提案していく計画である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 廣田重徳)
<MH>
ピクセラ<6731>は、AV関連事業において自社の強みを生かせる市場として、2018年12月より開始される新4K衛星放送に対応するテレビチューナーの需要拡大のほか、IoT、AI/ビッグデータ、AR/VRの市場拡大を見込んでおり、既に開始しているMVNO事業やFTTH事業等と組み合わせることで、ハードウェアの販売収益のみに依存しない、継続的で利益率の高いサービス収益の基盤を構築していく計画である。
1. 事業構造改革
(1) ECによる直販体制及び自社ブランドの構築
同社は従来、OEM供給への依存度が高く、OEM先の都合で収益が大きく影響されてきた。また、OEM先ブランドでの販売が多く、自社ブランドの認知度が低い状況にあり、さらに自社ブランド品は商社経由での家電量販店における販売が中心であることが、収益拡大において一定の制約となっていた。
そのため、自社で顧客データを保有し、より能動的なマーケティング活動を展開することのできる、ECによる直販体制を構築することが必須と考えている。既に自社ECサイト「NextMall」を運営しているものの、プロモーション等のノウハウが不足しており、自社ECサイトのみでは収益の拡大ペースに限界があることから、既に一定の顧客ベースを有するEC運営企業等とのM&Aを推進する考えである。
また、直販を成功させるには自社ブランドの認知度向上が必要であることから、外部企業からのコンサルティングも受けながら、ブランドの一新を進める。既に、スマートホームハブ向けの新ブランド「PIXELA」、モバイル向けチューナー関連製品の新ブランド「Xit」を発表しているのに加え、2018年5月にはOrchestra Holdings<6533>の子会社である(株)デジタルアイデンティティとの間で、4K映像対応STBの販売を中心にEC通販領域で協業するマーケティングパートナーシップ契約を締結した。
ECによる直販体制を構築するには、同社に不足している、ネットワーク系、サーバ系、Web系のエンジニアの確保も必要となる。エンジニアの採用環境が厳しい現状においては、同社が求める人材リソースを抱えるソフトウェア企業とのM&Aも推進する考えである。
(2) 月額課金型ビジネスモデルの構築
同社は従来、家電・PC周辺機器のメーカーとして、製品を売切りで販売するのみであった。また、同社製品は買い替えまでのライフサイクルが比較的長いものが多く、売上げを継続的に積み上げていくことが難しかった。今後、収益を持続的に拡大していくためには、製品の販売収益に加えて、継続的なサービス収益を獲得できるビジネスモデルを構築していくことが必須と同社では考えている。
同社は既に、MVNOサービス「ピクセラモバイル」、FTTHコラボサービス「ピクセラ光」、ホームIoTサービス「Conteホームサービス」を提供しており、月額課金収入を得ているものの、現時点における全社収益への貢献度はまだ限定的である。月額課金収入の拡大ペースを上げるために、同社は月額課金型ビジネスモデルを既に構築しているEC運営企業やコンテンツ配信企業等とのM&Aを推進する考えである。
(3) A-Stage買収の位置付け
黒物家電を取り扱う同社が白物家電中心のA-Stageを買収したことは、グループとしてプロダクトや顧客層のポートフォリオを充実させた意義が認められる。その一方で、同社が目指している事業構造改革において即効性を有する経営資源を獲得するものとは言えない。
A-Stageは従来、買収される前の親会社であったエスキュービズムのブランドで製品を販売しており、自社ブランドは構築されておらず、販売先との間の混乱を避けるため、買収後1年程度をかけてブランドを構築する予定となっている。また、EC売上比率が高く、ECに適した製品を展開しているものの、大半は大手ECサイト経由であり、自社ECサイトによる直販体制が構築されているとは言えない。さらに、将来的にはスマート家電を通じたサービスビジネスが想定されるものの、現時点において月額課金型のサービスを展開しているわけではない。こうしたことから、A-Stageの買収は、事業構造改革の方針にしたがって実行されたというよりも、あくまで事業上の親和性が高い案件として実行されたものと解釈した方がよい。
2. AV関連事業の新規成長分野
(1) 4K放送対応STB及び関連製品
同社による調査では、4K放送対応テレビの国内市場規模は2016年時点で累計約190万台と見込まれるが、2018年からの実用放送開始により増加し、東京オリンピックが開催される2020年には累計約2,300万台に達するものと予想されている。また、野村総合研究所<4307>によれば、超高精細テレビ及び次世代スマートテレビは年平均50%以上で成長し、2020年には3,300万世帯に普及するものと予測されており、同社は2020年における両テレビの市場規模を2.5兆円と予想している。同社は過去に地上デジタルテレビ市場の拡大に先んじて対応することにより業績を伸ばした経験がある。2018年12月からの新4K衛星放送の開始時点で4K放送を受信できない4K対応テレビは900万台と推定されることから、新4K衛星放送に対応した4K Smart Tuner「PIX-SMB400」をいち早く開発し、2018年9月末から出荷を開始している。
同社は4K Smart Tunerの販売を加速するため、接続される液晶ディスプレイ及びレコーダーの開発・販売も既に開始しており、新4K衛星放送の開始に合わせて、4K Smart Tunerと4KディスプレイをセットにしてAndroidTV搭載4Kテレビとして販売することを計画している。AndroidTV搭載テレビは既に大手メーカーから発売されているものの大画面の高価格帯モデル中心であるため、同社ではより手頃な価格で購入できるパーソナルユースとしての展開を想定している。2018年7月には、Netflix(ネットフリックス
同社の新規事業分野におけるプラットフォームとなる4K映像対応STBは、単に屋内で4K放送を視聴できるだけでなく、家庭内の様々なIoT機器をインターネット環境に接続するためのゲートウェイ機能や、スマートフォンや専用端末でのみ視聴できるVR映像を家庭用のテレビでも視聴できるようにする機能、AIを使った視聴番組のお勧め機能等の開発が進められており、コンシューマ市場に加え、様々なビジネス用途での販売も見込んでいる。
2017年9月にはSTBの拡販を目的として、NTT東日本及びNTT西日本から提供される「フレッツ光ネクスト」相当の回線(最大1Gbps)をプロバイダサービスとセットで利用可能なFTTHコラボサービス「ピクセラ光」の提供を開始した。また、2017年12月よりブロードメディアGC(株)と提携し、STBをブロードメディアGCのクラウドゲームサービス「Gクラスタ」に対応させた。同社では今後も他社サービスとの連携を進めることで、STBの拡販につなげる考えである。
(2) ホームIoT事業
IDC Japan(株)によれば、国内IoT市場は2020年まで年平均16.9%で成長し、市場規模は13.8兆円に達すると予想されており、同社はターゲットとするホームIoT市場をその10%の1.4兆円と予想している。
同社はConteブランドにて、2016年9月期よりSIMフリー対応のLTE対応USBドングルの販売を開始し、さらに2017年9月期より業界最安値水準のMVNOサービス「ピクセラモバイル」を開始した。幅広いOS(オペレーティングシステム)をサポートしていること、バッテリーを内蔵していないことなどから、ビジネス用途での引き合いが強く、バス内やコンビニ内でのデジタルサイネージ(情報・広告表示ディスプレイ)等で既に導入されており、今後も主に法人ユースでの一括導入を狙っていくものと考えられる。
また、2016年9月期よりホームIoTサービスであるConteホームサービスを提供している。同サービスは、2017年7月に、総務省のIoT創出支援事業における「爾後(じご)取付式IoTシステムを用いた民泊向けIoTサービスの実証実験」の委託先の1つに採択されたほか、2018年4月に、楽天コミュニケーションズ(株)が提供する民泊運営支援サービス「あんしんステイIoT」の「IoTプラットフォーム」部分で採用された。ホームIoTサービスの一般家庭への本格的普及にはまだ時間がかかるものと予想され、当面は受託開発を絡めた外部とのサービスの共同開発を軸に展開されるものと考えられる。
同社は、A-Stageの買収とオックスコンサルティングの持分法適用関連会社化により、民泊・ホテル事業者に対して、自社及びグループ会社を通じて、幅広いラインアップのハードウェア製品からIoTサービス・プラットフォーム、運営サポート・インフラまで総合的に提供できることとなった。これにより、ストック型収益モデルを構築・強化し、持続的な収益拡大を期待できる基盤を固めたと言える。同社は今後、東京オリンピックに向けて更なる成長が期待される民泊・ホテル分野に、一層注力していく方針としている。
(3) AI/ビッグデータ事業
EY総合研究所(株)によれば、国内におけるサービス、広告、生活関連情報分野でAIを活用した機器・システム等の市場規模は、2020年に4.5兆円に達すると予測されている。同社は、自社のテレビチューナーを利用する多数のユーザーを既に抱えており、バンドルソフトを通じてテレビの視聴データの収集が可能な状況にあることから、それらのデータや分析結果を、広告の効果測定や配信最適化に活用したい広告主や広告代理店へ販売するほか、API(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)を公開しデータ分析基盤をオープンプラットフォームとして提供することを想定している。同社のiPhone・iPad用Lightningコネクタ接続タイプの地デジフルセグチューナー向けアプリは、どの番組を何人が視聴しているかを、同社のクラウドサービス「テレビ視聴データサービス」で分析し、アプリ上にリアルタイム表示することができるようになっており、Web公開も開始している。視聴データ提供の本格的な事業化のためには、大量のデータを蓄積するとともに、ユーザー属性や他サービスの利用データ等と組み合わせる必要があり、他社との連携が必要になると考えられることから、収益貢献にはまだ時間を要するものと予想される。
(4) AR/VR事業
AR/VR事業においては、360度パノラマ動画を視聴できるスマートフォン用VR無料アプリ「パノミル」を提供しており、プロ野球やJリーグの試合のライブ配信等の実績を積み重ねている。リアルタイムスティッチ(映像の貼合わせ)、エンコード(符号化)、配信、視聴アプリまでを統合的に提供・サポートできるのが同社の強みである。2017年11月には、スウェーデンに本社を置くVoysys ABとの間で、最大8K までの出力に対応するリアルタイムスティッチソフト「Voysys VR」の販売代理店契約を締結した。また、2018年3月に、(株)テクノブラッドとの企業コラボにより、国内600店舗のインターネットカフェに設置されたVRコンテンツプラットフォーム「VIRTUAL GATE(バーチャルゲート)」へパノミルを導入した。600店舗でのフィージビリティスタディの後、VIRTUAL GATEの普及に合わせて国内1,800店舗、韓国10,000店舗への導入を図り、店舗数拡大後の収益化を目指している。数多くのデバイスへの対応とともに、体験可能なユーザーやロケーションを増やしながら、高品質なコンテンツを配信するプラットフォーム化を図り、企業や団体等へ提案していく計画である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 廣田重徳)
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