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サン電子 Research Memo(1):上期業績は減収ながら大幅な損益改善を実現 世界各地で伸びているDIが拡大

注目トピックス 日本株
■要約

1. 会社概要
サン電子<6736>は、情報通信関連事業とエンターテインメント関連事業を2本柱とするIT機器メーカーである。2007年に買収したイスラエルのCellebrite Mobile Synchronization Ltd.(以下、Cellebrite)が展開する携帯端末関連機器が、米国市場中心からグローバル展開へと大きく成長してきた。特に、世界中で需要が拡大している犯罪捜査機関(以下、DI※)向けが同社の成長をけん引している。一方、厳しい事業環境に置かれているエンターテインメント関連事業は減退傾向にあるものの、創業時から脈々と受け継がれるベンチャースピリッツと開発力を武器として、導入実績が増えてきたM2M事業のほか、AR関連(AR技術を生かした業務支援ソリューション)、O2Oソリューション事業など、情報通信分野における新たな成長市場への参入により成長を加速する方針である。新規事業の進捗の遅れ等により、前期業績は低迷したものの、今期(2019年3月期)はAR関連及びVRゲームコンテンツ等の販売が開始(予定)されるほか、M2MやO2Oソリューションも独自の事業モデルが立ち上がってきていることから、順調に拡大しているDIと合わせて、同社は新たな成長ステージに向けた転換期を迎えていると言える。

※Digital Intelligenceの略。裁判等の証拠に用いられるデータ抽出やデータ分析等を展開している。


2. 2019年3月期上期の業績
2019年3月期上期の業績は、売上高が前年同期比3.5%減の12,194百万円、営業損失が184百万円(前年同期は738百万円の損失)と減収ながら大幅な損益改善により、営業損失が縮小した。また、期初予想(レンジ形式)に対しても、売上高、各利益ともにレンジ上限値を上回る進捗となっている。世界各地で需要が伸びているモバイルデータソリューション(DI)が計画を上回るペースで大きく拡大した。ただ、売上高全体が前年同期比で減収となったのは、規則改正の影響等によりエンターテインメント関連が落ち込んだことが理由である。また、M2M事業についても低調であった。損益面では、利益率の高いモバイルデータソリューションの伸びに伴って原価率が大きく改善し、それが営業損失の縮小につながった。なお、モバイルデータソリューションにおけるMLCの事業譲渡(第1四半期末)に伴う譲渡益742百万円を特別利益に計上している。

3. 2019年3月期の業績予想
2019年3月期の業績予想について同社は、レンジ形式の予想開示を採用しているが、期初予想からの変更はない。売上高を24,500百万円(前期比6.8%減)〜25,500百万円(同3.0%減)、営業損失を1,100百万円〜200百万円(前期は1,074百万円の損失)と見込んでいる。売上高は、引き続きDIが大きく拡大する上、上限シナリオでは、新規事業(AR関連及びVRゲームコンテンツ)についても下期での売上計上を見込んでいる。ただ、MLCの事業譲渡による影響やエンターテインメント関連の落ち込みにより、売上高全体では減収となる見通しである。一方、損益面では、新規事業にかかる先行費用が継続するとともに、エンターテインメント関連の落ち込みが利益を押し下げる要因となるものの、DIの売上高の拡大とともに損益改善が進むシナリオである。なお、上期業績が計画を上回ったにもかかわらず、期初予想を据え置いたのは、1)モバイルデータソリューションの売上が一部前倒しとなったこと、2)エンターテインメント関連の先行き不透明感が続いていること、3)下期での業績貢献が期待されるM2MやAR関連等についても不確実性を慎重に見ておく必要があることが理由である。

4. 成長戦略
MLCの事業譲渡に踏み切ったことにより、同社の中期的な成長戦略がより明確になった。すなわち、これまでのDI、M2M、ゲームコンテンツ(スマートフォン)に加えて、需要拡大が予想されるAR関連、VRゲームコンテンツ、O2Oソリューションなどの新たな成長ドライバーの確立により、成長を加速するものである。弊社でも、既にリーディングカンパニーとして世界開拓を進めているDIはもちろん、圧倒的な技術力と業務用途ごとの共通プラットフォームの確立により産業分野でのデファクトスタンダートを目指すAR関連、同社ならではのソリューション提供により裾野拡大への対応を図るM2M関連が、市場の拡大とともに同社の成長をけん引する可能性が高いとみている。2020年3月期以降の成長加速に向けて、M2MやAR関連がどのようなペースで業績貢献してくるのか、今後の動向に注目していきたい。

■Key Points
・2019年3月期上期の業績は減収ながら大幅な損益改善を実現(計画を上回る進捗)
・世界各地で伸びているモバイルデータソリューション(DI)が好調に推移した一方、厳しい事業環境が続くエンターテインメント関連は大幅な落ち込み
・2019年3月期の期初予想(レンジ形式)に変更なく、DIの拡大により損益改善を目指すシナリオ
・M2M(IoTソリューション)やAR関連など、新たな成長軸の立ち上げにより転換期を迎えている

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)



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