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イメージワン Research Memo(3):企業理念を堅持しつつ、時代に応じた最先端ソリューションを提供(1)

注目トピックス 日本株
■事業内容

1. 日々進化する顧客ニーズに対応してきたメディカルシステム
ヘルスケアソリューション事業は全社売上の93%(2018年9月期)を占めるイメージ ワン<2667>の主力事業であり、PACS(Picture Archiving and Communication System<医療画像・保管・配信・表示システム>)を中心とするメディカルシステムとクラウド型ウェアラブル心電計である「duranta」を提供している。

メディカルシステムは、1994年のDICOM(医用画像フォーマット・通信プロトコルの標準規格)サーバ開発を出発点に、マルチモダリティ(CT、MRI、PETなどの医療機器)から得られる画像データを一元管理し、診察室などに設置されたPC等で閲覧を可能とする「PACS(POP-Net Viewer)」、読影業務フローに合わせ自由自在に設定可能で質の高いレポート作成とペーパレスを実現する「放射線部門レポートシステム(Connectio Report)」、放射線科の複雑なワークフローを効率よく管理する「放射線部門情報システム(ConnectioRIS)」、遠隔画像診断支援サービス(Oceanio)など、医療画像分野向け製品のラインナップを充実してきた。

同社メディカルシステムの最終顧客はベッド数300床程度の比較的大規模な病院や専門的な検査施設がメイン、老舗ベンダー(2001年にEBMと国内独占代理店契約を締結し、日本国内の医療の状況や顧客ニーズをタイムリーに反映したシステムを開発・提供)としてPACS導入実績は400病院程度に達している。ただ、国内PACS市場は5年サイクル程度で発生する更新需要の取り込みが中心の成熟市場になっており、こうしたなかで、トモシンセシス対応マンモグラフやiPhone・iPad、クラウドなど新たな技術トレンドに対応したソリューション提供を実現するなど、日々進化する顧客ニーズへの対応は継続しつつ、新規需要が見込まれるプロダクトとして自社開発の「Connectioシリーズ」などを投入してきた。

また、同社のPACS製品は、DICOM完全準拠で設計されているため、VNA(Vender Neutral Archive:標準インターフェイスを備えた標準フォーマットで医用画像を格納する医療機器)としての製品価値が市場で認識されつつある。PACS製品がVNAであれば、1)病院等のユーザーにとっては、連携させるモダリティ(CTやMRI等に代表される医用画像を撮影する装置)等を導入・更新する際に選択の自由度が高まる、2)モダリティメーカーにとっては、自社製品との連携が技術的に担保可能なため、新規顧客に対しても導入提案がしやすい、といったメリットがある。同社は、VNAという自社製品の強みを生かしたマーケティング戦略として、2018年9月期から、モダリティメーカーや医療情報システムメーカーとの協業(お互いの顧客に対して商談の場を提供等)を進めており、その成果が出始めている。

2. ウェアラブル心電計による新領域開拓は順調に見える
ウェアラブル心電計(以下「duranta」)もまた、新規導入による成長が期待されるプロダクトである。「duranta」は同社が国立大学法人東北大学、(株)リアルデザインと共同開発し、JST(独立法人科学技術振興機構)の復興促進プログラム支援を受け、2014年にリリースしたテレメトリー式心電送信機であり、一度の充電で7日間連続計測でき、全データクラウド保存、本体はコードレスで重量35gの軽量・小型、ノイズが少なく装着が手軽、複数のデバイスで同時に情報共有が可能、といった特徴を有している。同社はその特徴を生かし、2014年12月から高齢化社会の進行に伴い需要が高まっている在宅医療・介護福祉分野向けに「在宅医にも優しい見守りシステム」として、2017年秋(出荷開始は2018年1月)からは循環器医療分野では患者負担が小さく有効な検査結果が得やすい「不整脈検出向け長時間心電用データレコーダ」としても、市場開拓に取り組んでいる。

「duranta」のターゲット顧客は、今のところクリニックや介護施設、病院の循環器科・神経内科であり、同社が既に顧客基盤を有する医療画像領域とは異なる。このため、一見、飛び地進出のようにも思えるわけだが、「duranta」投入の背景には、医療業界の老舗ベンダーであり健康領域での社会貢献を企業使命とする同社だからこその必然性がある。

同社は2002年に東北大学医学部附属病院と共同で遠隔診断支援サービスを開始した。奇しくもパートナーは「duranta」と同じ東北大学だが、いずれも先方から共同開発の依頼があったことは、長年蓄積された同社の知見と実績が顧客から一定の評価を得ていることの証左だろう。そして、自社開発の遠隔画像診断支援サービス(Oceanio)はASPサービスとして2006年からサービスを開始し長年にわたり安定稼働してきた実績を有しており、同社はその開発、サービス提供等を通じ、「遠隔」や「クラウド」という新たなコンピタンスを得ることになった。IoT技術の進化により、「遠隔」での高品質な見守りや診断がウェアラブル・デバイスでも可能となるなかで、同社が「duranta」の開発に取り組んだことには事業方針としての一貫性がある。

また、「duranta」を活用した動きとして、同社は2015年12月に聖マリアンナ医科大学神経内科(公益社団法人日本脳卒中協会の神奈川県支部を担う研究・治療拠点)と不整脈を早期発見することで重大な脳卒中の発症や再発を予防するための共同研究を開始した。「脳血管疾患(脳卒中)」は、国内患者数が150万人を超え、日本人の死因上位、要介護状態となる原因第1位となっており、同社がこの分野に進出したことにはCSV型企業としての必然性を感じる。

2018年7月、「duranta」はセコム<9735>が全額出資するセコム医療システム(株)が提供を開始した遠隔診療支援プラットフォーム「セコムVitalook(セコムバイタルック)」に採用された。「セコムVitalook」は、在宅患者の生体データ(心電図、心拍数、RR間隔、血圧、体重、動脈血酸素飽和度、脈拍数)を常時リアルタイムにセコムデータセンターへ収集・蓄積し、医師や看護師、介護士など在宅医療の従事者が遠隔から患者の状態を確認することで、在宅診療医の負担軽減・診療の質向上への貢献を目的としたサービスであり、高齢者医療・在宅医療の重要性が益々高まるなかで、今後、こうしたサービスの浸透が期待される。同社は、在宅医療をフィールドとしたASP(Application Service Provider:アプリケーションソフト等のサービス(機能)をネットワーク経由で提供する事業者)にとって、「duranta」が当該領域におけるデファクトスタンダード的な存在になりつつあるとの手応えを持っており、今後の実需拡大が期待されるだろう。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)



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