イメージワン Research Memo(6):成果に結び付けられるか、実行力が試される新中期経営計画
[18/12/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
1. 新中期経営計画における数値目標はチャレンジングだが、事業戦略は納得度が高い
2018年9月に新たな中期経営計画が発表された。2021年9月期の売上高2,300万円(2018年9月期比39.1%増)、営業利益250百万円(同525.0%増)とした経営数値目標はチャレンジングに見えるが、1)ヘルスケアソリューション、2)ウェアラブルソリューション、3)GEOソリューション、4)CRMソリューション、別に示された事業戦略は納得度が高いと考える。
事業戦略において、とりわけ注目されるのが、「duranta」の「心電解析機能追加」と医療画像診断支援システムの「AI実装」である。成長基調の定着に向けて、イメージ ワン<2667>はその実行力が試される局面を迎えている。
2. 注目されるウェアラブル心電計の「心電解析機能追加」と医療画像診断支援システムの「AI実装」
まず、2019年春の市場投入が予定されているのが、「心電解析機能」を追加した「duranta」の新製品である。この「心電解析機能」の追加により、不整脈から虚血性新疾患等の診断まで有効な「解析付ホルター心電計」分野に進出することになり、「duranta」の需要掘り起こしにとって起爆剤となる可能性があるだろう。
「duranta」事業は、2014年に在宅医療・介護福祉分野の新規事業として出発、2018年1月に不整脈解析ソフトを組み込んだ新製品出荷を果たし、循環器医療分野へと展開領域の拡大を実現した。心電計を用いた検査のうち、不整脈検査が占める比率は90%程度と圧倒的に高いもようであり、軽量・ワイヤレスで本体を直接体に貼付け可能な「duranta」は取扱・装着感ともに患者負担が小さい「duranta」に対するニーズは確実にあると考えられる。
ただ、ホルター心電計を用い解析を伴った検査の診療報酬1,750点に対し、心電データ収集後の解析機能がない現行「duranta」を用いた検査の診療報酬は500点にとどまっている。クリニック等での医療機器導入に際し、診療報酬の高さを重視した選定が行われるケースもあるなかで、低い診療報酬は普及の妨げに成り得る。この点、心電解析機能を追加した新型「duranta」の診療報酬は1,750点となる見込みであり、「duranta」の需要掘り起こしにとって大きな追い風となるだろう。一方、心電解析機能付き「duranta」は、大手医用電子機器企業(日本光電<6849>やフクダ電子<6960>など)が提供する「解析付ホルター心電計」とこれまで以上に競合することになる。
新中期経営計画期間の3年間で、「duranta」を核とするウェアラブルソリューションの増収を6倍強と見込んでいる同社だけに、新型「duranta」の戦略的販売価格設定といったマーケティング戦略にとどまらない、協業をも視野に入れた今後の経営戦略を練っている蓋然性は高く、次に繰り出される一手に注目したい。
次に、2019年9月期後半の商品化完了を目指しているのが、「AI実装」したPACS製品である。この開発・商品化は、同社とエルピクセル(株)、同社パワーユーザの医療機関との三者共同によって進められており、医療機器としての認証時期は2020年〜2022年辺りが有力視されている。
このプロジェクトのカギを握るエルピクセルは、医療領域の画像解析技術開発で高い評価を得ている東大発のベンチャー企業である。同社社長がエルピクセルの技術に惚れ込み、業務提携を申し入れたところ、先方からは、1)DICOM完全準拠の製品展開、2)400件を超える病院や大手検診施設へのPACS導入実績、3)東北大学医学部附属病院と共同で行っている遠隔診断支援サービスの実績(4,000件程度/月)、といった点が高く評価され、契約に至ったとのことである。
今回の共同開発では、MRA(磁気共鳴血管撮影)画像から未破裂脳動脈瘤と類似したパターンを検出することで見落とし防止を目指す「脳動脈瘤の自動検出」が最初のテーマとなる。エルピクセル自体は、「脳血管狭窄」や「正常圧水頭症」、「大脳白質病変」、「乳がん」、「大腸がん」、「胸部X線(肺がん)」といった様々なテーマでも研究開発を進めている。厚生省によると、国内の画像診断医は現在2,500名程度にとどまり、遅滞なく診断を行うには5,000名が必要とのことであり、「AI×遠隔」診断技術の進化は、医師の負担軽減と重大疾患の早期発見を両立する有力なソリューションと言えるだろう。
ところで、「AI」は、ディープラーニングにより常に進化を続けるという性質上、継続課金型事業モデルとの親和性が高い技術と言える。また、顧客から見ると、過去から現在に至る自身の膨大なデータを投入してきた「AI」を実装する製品から他製品に乗り換える際のスイッチングコストは極めて高いと考えられる。更新需要がメインのヘルスケアソリューション事業において、「遠隔」、「ウェアラブル(IoT)」、「継続課金型事業モデル」をキーワードとする新たな事業領域開拓を志向してきた同社にとって、既存事業の主力であるPACS製品に「AI技術」を実装する当プロジェクトは、ヘルスケアソリューション事業の今後を展望するうえで、画期的な第一歩になる可能性を秘めているように感じられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
<MH>
1. 新中期経営計画における数値目標はチャレンジングだが、事業戦略は納得度が高い
2018年9月に新たな中期経営計画が発表された。2021年9月期の売上高2,300万円(2018年9月期比39.1%増)、営業利益250百万円(同525.0%増)とした経営数値目標はチャレンジングに見えるが、1)ヘルスケアソリューション、2)ウェアラブルソリューション、3)GEOソリューション、4)CRMソリューション、別に示された事業戦略は納得度が高いと考える。
事業戦略において、とりわけ注目されるのが、「duranta」の「心電解析機能追加」と医療画像診断支援システムの「AI実装」である。成長基調の定着に向けて、イメージ ワン<2667>はその実行力が試される局面を迎えている。
2. 注目されるウェアラブル心電計の「心電解析機能追加」と医療画像診断支援システムの「AI実装」
まず、2019年春の市場投入が予定されているのが、「心電解析機能」を追加した「duranta」の新製品である。この「心電解析機能」の追加により、不整脈から虚血性新疾患等の診断まで有効な「解析付ホルター心電計」分野に進出することになり、「duranta」の需要掘り起こしにとって起爆剤となる可能性があるだろう。
「duranta」事業は、2014年に在宅医療・介護福祉分野の新規事業として出発、2018年1月に不整脈解析ソフトを組み込んだ新製品出荷を果たし、循環器医療分野へと展開領域の拡大を実現した。心電計を用いた検査のうち、不整脈検査が占める比率は90%程度と圧倒的に高いもようであり、軽量・ワイヤレスで本体を直接体に貼付け可能な「duranta」は取扱・装着感ともに患者負担が小さい「duranta」に対するニーズは確実にあると考えられる。
ただ、ホルター心電計を用い解析を伴った検査の診療報酬1,750点に対し、心電データ収集後の解析機能がない現行「duranta」を用いた検査の診療報酬は500点にとどまっている。クリニック等での医療機器導入に際し、診療報酬の高さを重視した選定が行われるケースもあるなかで、低い診療報酬は普及の妨げに成り得る。この点、心電解析機能を追加した新型「duranta」の診療報酬は1,750点となる見込みであり、「duranta」の需要掘り起こしにとって大きな追い風となるだろう。一方、心電解析機能付き「duranta」は、大手医用電子機器企業(日本光電<6849>やフクダ電子<6960>など)が提供する「解析付ホルター心電計」とこれまで以上に競合することになる。
新中期経営計画期間の3年間で、「duranta」を核とするウェアラブルソリューションの増収を6倍強と見込んでいる同社だけに、新型「duranta」の戦略的販売価格設定といったマーケティング戦略にとどまらない、協業をも視野に入れた今後の経営戦略を練っている蓋然性は高く、次に繰り出される一手に注目したい。
次に、2019年9月期後半の商品化完了を目指しているのが、「AI実装」したPACS製品である。この開発・商品化は、同社とエルピクセル(株)、同社パワーユーザの医療機関との三者共同によって進められており、医療機器としての認証時期は2020年〜2022年辺りが有力視されている。
このプロジェクトのカギを握るエルピクセルは、医療領域の画像解析技術開発で高い評価を得ている東大発のベンチャー企業である。同社社長がエルピクセルの技術に惚れ込み、業務提携を申し入れたところ、先方からは、1)DICOM完全準拠の製品展開、2)400件を超える病院や大手検診施設へのPACS導入実績、3)東北大学医学部附属病院と共同で行っている遠隔診断支援サービスの実績(4,000件程度/月)、といった点が高く評価され、契約に至ったとのことである。
今回の共同開発では、MRA(磁気共鳴血管撮影)画像から未破裂脳動脈瘤と類似したパターンを検出することで見落とし防止を目指す「脳動脈瘤の自動検出」が最初のテーマとなる。エルピクセル自体は、「脳血管狭窄」や「正常圧水頭症」、「大脳白質病変」、「乳がん」、「大腸がん」、「胸部X線(肺がん)」といった様々なテーマでも研究開発を進めている。厚生省によると、国内の画像診断医は現在2,500名程度にとどまり、遅滞なく診断を行うには5,000名が必要とのことであり、「AI×遠隔」診断技術の進化は、医師の負担軽減と重大疾患の早期発見を両立する有力なソリューションと言えるだろう。
ところで、「AI」は、ディープラーニングにより常に進化を続けるという性質上、継続課金型事業モデルとの親和性が高い技術と言える。また、顧客から見ると、過去から現在に至る自身の膨大なデータを投入してきた「AI」を実装する製品から他製品に乗り換える際のスイッチングコストは極めて高いと考えられる。更新需要がメインのヘルスケアソリューション事業において、「遠隔」、「ウェアラブル(IoT)」、「継続課金型事業モデル」をキーワードとする新たな事業領域開拓を志向してきた同社にとって、既存事業の主力であるPACS製品に「AI技術」を実装する当プロジェクトは、ヘルスケアソリューション事業の今後を展望するうえで、画期的な第一歩になる可能性を秘めているように感じられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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