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日本電技 Research Memo(3):計装とエンジニアリングを併せ持つ

注目トピックス 日本株
■事業概要

1. 事業内容
日本電技<1723>の事業は、空調計装関連事業と産業計装関連事業に大別される。空調計装関連事業は、主にビルや工場、病院、クリーンルームなどを対象に空調に関する計装を手掛ける事業で、さらに建物の建設時に空調計装工事を行う新設事業と既設建物のメンテナンスやリニューアル工事を行う既設事業に分けることができる。産業計装関連事業は、工場の生産ラインや搬送ラインなどに対する計装のほか、産業用ロボットなどへと事業領域を拡大している。売上高に占める割合は、空調計装関連事業87.1%、産業計装関連事業12.9%となっている(2019年3月期第2四半期)。

ちなみに、「計装(Instrumentation)」とは、ビルや工場などにおいて、空調や生産ラインなどの各種設備・機械装置を、計測・監視・制御の手法によって有機的に機能させることである。例えば、ビル空調であれば「最少のエネルギーで快適な環境を実現する」技術と位置付けられ、温度・湿度・圧力などを計測、計測された情報をコンピュータで監視、一定の環境を維持するために機器を制御しながら設備全体をコントロール、快適性や省エネ化を実現することである。計装そのものは戦後の石油産業復興の時代に始まったと言われるほどの「オールド・エコノミー」だが、近年は省エネ化に必須の技術として注目され、最新のIT技術を用いた計測・監視システムが開発されたり、「地域冷暖房」のコア技術として利用されるなど、「古くて新しい技術」として進歩を続けている。一方、「エンジニアリング(engineering)」とは、部分最適に陥りがちな設備やユーティリティなどを、ユーザーにとって全体最適化する技術力を指す。こうした「計装」と「エンジニアリング」の機能を併せ持つユニークな専業として、「計装エンジニアリング」自体が同社の強みとなっている。


自動制御システムをトータルプロデュース
2. 空調計装関連事業
空調計装とは、熱源制御、空調制御、動力制御、中央監視装置等によって、ビルの自動制御システムをトータルプロデュースすることである。最適なビルの自動制御システムにより快適なビル空間を実現、また、設備・機器の更新提案、建物のエネルギー管理の補助、省エネ化提案などを行うことで、顧客のライフサイクルコストの低減をサポートする。同社の空調計装関連事業は、ビルシステム事業とソリューション事業に分けられる。

ビルシステム事業は同社の主軸であり、建物建築時に導入される空調・給排水衛生設備などビルディング・オートメーションシステムの設計、施工監理、引渡し前の試運転・調整、引渡し時の取扱説明をワンストップで行っている。また、建物が完成した後も、納入した設備・機器の保守・保全に携わることで、エネルギー使用量の管理・分析、省エネ化を目的とした設備改修・更新の提案をするなど継続的な支援を行っている。こうして、顧客の建物資産の保全やライフサイクルコストの低減といった要求に応えるのである。また、開示上のセグメント区分ではないが、ソリューション事業では、空調計装関連事業(既設)のうち、施主やエンドユーザーなどと直接取引・契約をし、省エネ化などの課題に対して計装技術を用いて解決を提案するビジネスである。建設業界における空調計装は下請けということになるが、ソリューション事業は言わば「元請け」であり、同社として現在、最も注力している事業の1つである。


産業計装では工場全体を自動制御
3. 産業計装関連事業
産業計装は、プロセス(生産工程)と搬送、そして工場全体の自動制御を行うインダストリー・オートメーションのことで、製品管理や品質保持、工場全体のプロセス最適化、環境への配慮などあらゆるニーズに対応することである。同社は、制御システムの設計から制御盤の制作、施工、メンテナンスまでの、計装エンジニアリング技術に裏付けられたトータルプロデュース力に定評があり、食品や薬品などの製造現場での安全性の確保や仕分け作業の精度向上、効率性向上をサポートしている。加えて、エネルギーソリューションでは、設備の内容に応じて、システムの見直しやヒートポンプ乾燥システム「WECON」の利用などにより、環境負荷低減や工場・プラントでの省エネ化対策、運用コスト削減などをサポートしている。ロボットソリューションでは、ABB製や三菱電機<6503>製のロボットを中核に、主に食品業界向けに、生産性の向上や人材不足の解消、安心・安全(フードディフェンス)といった多種多様のニーズに応える最適なシステムを提案している。

また、近年ではエネルギー自由化により、地区単位での総合エネルギーネットワークが形成され、エネルギーを効率的に利用する都市計画が進展している。こうした状況下において、地域冷暖房プラントにおける計装自動制御システムも提案している。

なお、同社のテクニカルセンター(東京・東陽町)では、ABB IRB 360「FlexPicker®」や、三菱電機製 垂直多関節形ロボットなど実験用のロボットを導入し、ロボットのシステム開発を行っている。組立工程、ピッキング工程を自動化することが可能な実際のロボットで、見学からシミュレーション、ワークテストまで行うことができる。また、同社では、ビルディング・オートメーションやプロセス・オートメーションの実現に欠かすことのできないシステム制御パネルを、ISO9001を取得した工場で自社製造している。このため、システムの引き渡し時のみならずメンテナンスに至るまで、安定した品質と十分なサポートを提供することができる。さらに、工場と各事業が連携することで、自動制御設計、施工、パネル製造、調整、保守などとの一元管理が可能で、製品からのワンストップサービスを提供している。


「計装エンジニアリング」自体が強み
4. 強みと特徴
同社は、経験が物を言う計装の大手で、かつ唯一のエンジニアリング専業会社である。このユニークなポジションが同社最大の強みと言える。「計装エンジニアリング」会社であるため、顧客の要求する品質・安全性・スペックなどに合わせつつローコスト化や省エネ改修工事にも対応可能で、地球環境問題への関心がますます高まるなか、将来的にも優位な事業展開が可能と考えられる。また、空調計装分野で培った技術力を産業計装分野でも展開しており、「総合」エンジニアリング会社としても、今後の成長が楽しみである。

なお、特に弱みというわけではないが、収益上の特徴が2点ある。1つは業績に季節性があり、収益の計上が下期に偏重することである。資金力があるため資金繰りに問題はないが、通期の業績見込みがしにくい。2つ目は特定仕入先アズビルへの依存度の高さである。ビルディング・オートメーションで圧倒的なシェアを持つアズビルの特約店であるため、信頼性の高いアズビル製品が多くなるのは当然である。しかし、ファクトリー・オートメーションでは、ユーザーの要望に応じてアズビル以外の製品も多用している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)



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