ジンズメイト Research Memo(5):第2四半期としては11期ぶりに営業利益で着地
[18/12/28]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向と今後の見通し
1. 2019年3月期第2四半期決算の概要
ジーンズメイト<7448>の2019年3月期第2四半期決算は、売上高4,252百万円、営業利益179百万円、経常利益188百万円、四半期純利益125百万円で着地した。
同社は2018年3月期に決算期を2月から3月に変更して13ヶ月と11日の変則決算を行った。その影響で2019年3月期の第2四半期は2018年3月期第2四半期とは決算期が約1ヶ月ずれているため、前年同期比較はない。しかし、前期の近似の期間との比較には理解を補助するうえで一定の意義はあるため、以下では2017年2月21日−2017年8月20日を前年同期として比較を述べる。
売上高は前年同期比1.1%(47百万円)の減収となったが、これは店舗数の減少によるものと考えらえる。同社の既存店売上高は2018年10月まで15ヶ月間連続で前年比プラスが継続している。
前述のように、店舗戦略では『Jeans Mate』業態においてはレディース向け品ぞろえやPB比率を高めた派生業態の『jM』の出店を加速させた。また『OUTDOOR PRODUCTS』業態においてもSC立地や女性・ファミリー対応を強化した。これらの取り組みは新規出店ではもちろんこと、既存店舗においても推進し(一部では『Jeans Mate』から『jM』への業態転換も実施)、これが既存店押し上げ及び全店ベースでの売上確保に貢献したとみられる。
利益面では、売上総利益率(粗利率)が2019年3月期第2四半期は50.4%と、前年同期の47.3%から3.1ポイント改善した。その結果、売上高が減少したにもかかわらず、売上総利益は前年同期比107百万円の増益となった。売上総利益率の改善の理由は、大きく2つある。1つはNBのジーンズの販売構成比を下げたことだ。これらは仕入原価割合が高いため、これらの比率を低下させたことで製品ミクスが改善し売上総利益率の改善につながった。
もう1つはMD改革の一環で値下げ・値引きの抑制に努めたことだ。同社は従来、チラシによる広告宣伝を行っていたが、その際には大きく値下げした目玉商品を設定する施策がとられていた。また、来店した顧客に対して複数購入割引を行う施策も常態化していた。こうした販売手法を改めたことも売上総利益率の改善につながった。
販管費は前年同期比で344百万円減少した。不採算店を中心に店舗を閉鎖したことが主たる要因だ。同社は2018年8月に本社を移転したが、この効果は2019年3月期下期から本格的に出てくるとみられるが、本社移転に伴う費用削減額は年間で20百万円程度のもようだ。
以上の結果、営業利益は前年同期比451百万円改善し、第2四半期(累計期間)としては11期ぶりに営業利益となった。
2019年3月期下期は構造改革の最後の仕上げとして在庫の整理を実施予定。通期ベースでは営業利益確保を目指す
2. 2019年3月期通期見通し
2019年3月期通期について同社は、売上高9,200百万円、営業利益70百万円、経常利益80百万円、当期純利益30百万円を予想している。これらの数値は期初予想から変更はない。
なお、前述のように、同社の2018年3月期は変則決算のため正確な前期比較はないが、以下では参考のため前期比の数値にも適宜言及している。
同社は2019年3月期通期の出退店計画について、新規出店20店舗、退店15店舗を計画している。2019年3月期第2四半期については新規出店が5店舗に対して退店が11店舗となり、2018年9月末の店舗数は期初の81店から6店純減し、75店となった。
退店が計画線で順調に進捗しているのに対して新規出店は計画に対して遅れている。この理由は収益性を重視した結果であり、妥当な判断と評価できるが、新規出店の遅れにより、売上高については計画を下回る可能性があることを想定しておくべきであると弊社では考えている。
2019年3月期の同社は、事業構造改革の途中にある。その中で店舗については不採算店舗の整理を進めつつ、純減から純増への切り替えを狙っている。また店づくりの面でも『Jeans Mate』業態の新規派生業態の開発や、SC出店強化(主力となる立地の変更)を進めている。こうした同社の取り組み状況に照らすと、売上高の絶対値以上に、1)既存店売上高の前年比プラスをどこまで継続できるかと、2)同社が目指す店づくりとその数的拡大をどこまで両立できるかがより重要だと考えている。
2019年3月期下期の動向で売上高以上に注目なのが利益の動向だ。前述のように2019年3月期第2四半期は営業利益で着地したが、2019年3月期下期は再度営業損失になる見通しとなっている。これは同社が2019年3月期下期に不良在庫の処分を計画していることが理由だ。2017年2月のRIZAPグループ入りに際して、固定資産については減損を行ったが、商品在庫については手が打たれていなかった。今回これに着手するということだ。
弊社ではこの在庫適正化の取り組みは、2020年3月期以降、黒字定着を実現させていく上で避けて通れないプロセスだと考えている。同社は2018年3月期と2019年3月期を構造改革の2年間と位置付けてきた。店舗展開やMD改革同様、バランスシートの改革もまた、この2年間における大きなテーマであり、短期的な業績に左右されることなくやるべきことをやりきることが今の同社には最も重要なことだと考えている。
同社は期初に通期予想のみを開示していたため、2019年3月期第2四半期決算の業績が計画に対してどうだったかは明確にはわからない。しかし15ヶ月連続の既存店プラスなどは想定以上の成果だと考えられることや、2019年3月期第2四半期の退店数が11店に上ったことなどから、2019年3月期第2四半期の決算は同社の計画を上回る内容だったのではないかと推測している。この見方が正しいならば、同社は下期における在庫適正化と通期ベースでの営業利益の確保の両立について、余裕を持つことができたのではないかとみている。
構造改革の一環で着手した様々な施策の効果で、利益を確保できるかどうかが最大の注目点
3. 2020年3月期の考え方
2020年3月期の具体的な業績数値については何も持ち合わせてはいないが、2020年3月期業績を見る視点を整理して挙げておきたい。
出退店の計画では出退店のグロス値と純増純減の2つが重要だ。グロスの退店が2019年3月期の15店から大きく減少するようであれば、想定どおり不採算店舗の整理が進んだとの推測が成り立つ。出店については純増を意識した数になると思われるが、2019年3月期のように期初に大きな数を打ち出しながら進捗が遅れるという状況は、裏を返せば計画の精度の低さを示唆するという見方もできるため、注意が必要だ。
店舗の業態・立地については、『Jeans Mate』と『OUTDOOR PRODUCTS』が半々の割合で店舗を伸ばすとみられる。その中で『Jeans Mate』は派生業態の『jM』及び『JEM』による出店が中心になると同時に、一部の『Jeans Mate』から『jM』及び『JEM』への業態転換も行われるとみている。
MDについてはランキングMDの効果の確認が重要な視点だ。ランキングMDは2018年秋口から本格的にスタートした施策であるため、より正確な評価・分析は1年が経過した2020年3月期になるのではないかと考えている。店舗展開との関係では、2020年3月期は『jM』及び『JEM』が2周目に入る店舗も出てくるため、そうした店舗で既存店売上高の前年比プラスを確保できるか、そこにランキングMDを始めとするMD改革の施策がどの程度貢献したのか、といった点に注目したい。
業績的にはその水準はともかく利益を確保できるかどうかが大きなカギだと考えている。2020年3月期は構造改革が一旦終了し、平常時のなかで成長に向けた取り組みが本格スタートする年となる。そこできっちりと利益を確保できるかどうかが最大の注目点と言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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1. 2019年3月期第2四半期決算の概要
ジーンズメイト<7448>の2019年3月期第2四半期決算は、売上高4,252百万円、営業利益179百万円、経常利益188百万円、四半期純利益125百万円で着地した。
同社は2018年3月期に決算期を2月から3月に変更して13ヶ月と11日の変則決算を行った。その影響で2019年3月期の第2四半期は2018年3月期第2四半期とは決算期が約1ヶ月ずれているため、前年同期比較はない。しかし、前期の近似の期間との比較には理解を補助するうえで一定の意義はあるため、以下では2017年2月21日−2017年8月20日を前年同期として比較を述べる。
売上高は前年同期比1.1%(47百万円)の減収となったが、これは店舗数の減少によるものと考えらえる。同社の既存店売上高は2018年10月まで15ヶ月間連続で前年比プラスが継続している。
前述のように、店舗戦略では『Jeans Mate』業態においてはレディース向け品ぞろえやPB比率を高めた派生業態の『jM』の出店を加速させた。また『OUTDOOR PRODUCTS』業態においてもSC立地や女性・ファミリー対応を強化した。これらの取り組みは新規出店ではもちろんこと、既存店舗においても推進し(一部では『Jeans Mate』から『jM』への業態転換も実施)、これが既存店押し上げ及び全店ベースでの売上確保に貢献したとみられる。
利益面では、売上総利益率(粗利率)が2019年3月期第2四半期は50.4%と、前年同期の47.3%から3.1ポイント改善した。その結果、売上高が減少したにもかかわらず、売上総利益は前年同期比107百万円の増益となった。売上総利益率の改善の理由は、大きく2つある。1つはNBのジーンズの販売構成比を下げたことだ。これらは仕入原価割合が高いため、これらの比率を低下させたことで製品ミクスが改善し売上総利益率の改善につながった。
もう1つはMD改革の一環で値下げ・値引きの抑制に努めたことだ。同社は従来、チラシによる広告宣伝を行っていたが、その際には大きく値下げした目玉商品を設定する施策がとられていた。また、来店した顧客に対して複数購入割引を行う施策も常態化していた。こうした販売手法を改めたことも売上総利益率の改善につながった。
販管費は前年同期比で344百万円減少した。不採算店を中心に店舗を閉鎖したことが主たる要因だ。同社は2018年8月に本社を移転したが、この効果は2019年3月期下期から本格的に出てくるとみられるが、本社移転に伴う費用削減額は年間で20百万円程度のもようだ。
以上の結果、営業利益は前年同期比451百万円改善し、第2四半期(累計期間)としては11期ぶりに営業利益となった。
2019年3月期下期は構造改革の最後の仕上げとして在庫の整理を実施予定。通期ベースでは営業利益確保を目指す
2. 2019年3月期通期見通し
2019年3月期通期について同社は、売上高9,200百万円、営業利益70百万円、経常利益80百万円、当期純利益30百万円を予想している。これらの数値は期初予想から変更はない。
なお、前述のように、同社の2018年3月期は変則決算のため正確な前期比較はないが、以下では参考のため前期比の数値にも適宜言及している。
同社は2019年3月期通期の出退店計画について、新規出店20店舗、退店15店舗を計画している。2019年3月期第2四半期については新規出店が5店舗に対して退店が11店舗となり、2018年9月末の店舗数は期初の81店から6店純減し、75店となった。
退店が計画線で順調に進捗しているのに対して新規出店は計画に対して遅れている。この理由は収益性を重視した結果であり、妥当な判断と評価できるが、新規出店の遅れにより、売上高については計画を下回る可能性があることを想定しておくべきであると弊社では考えている。
2019年3月期の同社は、事業構造改革の途中にある。その中で店舗については不採算店舗の整理を進めつつ、純減から純増への切り替えを狙っている。また店づくりの面でも『Jeans Mate』業態の新規派生業態の開発や、SC出店強化(主力となる立地の変更)を進めている。こうした同社の取り組み状況に照らすと、売上高の絶対値以上に、1)既存店売上高の前年比プラスをどこまで継続できるかと、2)同社が目指す店づくりとその数的拡大をどこまで両立できるかがより重要だと考えている。
2019年3月期下期の動向で売上高以上に注目なのが利益の動向だ。前述のように2019年3月期第2四半期は営業利益で着地したが、2019年3月期下期は再度営業損失になる見通しとなっている。これは同社が2019年3月期下期に不良在庫の処分を計画していることが理由だ。2017年2月のRIZAPグループ入りに際して、固定資産については減損を行ったが、商品在庫については手が打たれていなかった。今回これに着手するということだ。
弊社ではこの在庫適正化の取り組みは、2020年3月期以降、黒字定着を実現させていく上で避けて通れないプロセスだと考えている。同社は2018年3月期と2019年3月期を構造改革の2年間と位置付けてきた。店舗展開やMD改革同様、バランスシートの改革もまた、この2年間における大きなテーマであり、短期的な業績に左右されることなくやるべきことをやりきることが今の同社には最も重要なことだと考えている。
同社は期初に通期予想のみを開示していたため、2019年3月期第2四半期決算の業績が計画に対してどうだったかは明確にはわからない。しかし15ヶ月連続の既存店プラスなどは想定以上の成果だと考えられることや、2019年3月期第2四半期の退店数が11店に上ったことなどから、2019年3月期第2四半期の決算は同社の計画を上回る内容だったのではないかと推測している。この見方が正しいならば、同社は下期における在庫適正化と通期ベースでの営業利益の確保の両立について、余裕を持つことができたのではないかとみている。
構造改革の一環で着手した様々な施策の効果で、利益を確保できるかどうかが最大の注目点
3. 2020年3月期の考え方
2020年3月期の具体的な業績数値については何も持ち合わせてはいないが、2020年3月期業績を見る視点を整理して挙げておきたい。
出退店の計画では出退店のグロス値と純増純減の2つが重要だ。グロスの退店が2019年3月期の15店から大きく減少するようであれば、想定どおり不採算店舗の整理が進んだとの推測が成り立つ。出店については純増を意識した数になると思われるが、2019年3月期のように期初に大きな数を打ち出しながら進捗が遅れるという状況は、裏を返せば計画の精度の低さを示唆するという見方もできるため、注意が必要だ。
店舗の業態・立地については、『Jeans Mate』と『OUTDOOR PRODUCTS』が半々の割合で店舗を伸ばすとみられる。その中で『Jeans Mate』は派生業態の『jM』及び『JEM』による出店が中心になると同時に、一部の『Jeans Mate』から『jM』及び『JEM』への業態転換も行われるとみている。
MDについてはランキングMDの効果の確認が重要な視点だ。ランキングMDは2018年秋口から本格的にスタートした施策であるため、より正確な評価・分析は1年が経過した2020年3月期になるのではないかと考えている。店舗展開との関係では、2020年3月期は『jM』及び『JEM』が2周目に入る店舗も出てくるため、そうした店舗で既存店売上高の前年比プラスを確保できるか、そこにランキングMDを始めとするMD改革の施策がどの程度貢献したのか、といった点に注目したい。
業績的にはその水準はともかく利益を確保できるかどうかが大きなカギだと考えている。2020年3月期は構造改革が一旦終了し、平常時のなかで成長に向けた取り組みが本格スタートする年となる。そこできっちりと利益を確保できるかどうかが最大の注目点と言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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