芙蓉リース Research Memo(3):営業資産残高の積み上げ等により、事業本来の業績を示す差引利益は増益基調
[19/01/10]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■決算動向
1. 業績を見るポイント
芙蓉総合リース<8424>の売上高は、全体の85%前後を占めるリース料収入のほか、割賦販売による収入や営業貸付による受取利息などによって構成されている。売上高は基本的には「営業資産残高」に伴って増減することから、売上高の拡大のためには「契約実行高」を増やし、「営業資産残高」を積み上げることが必要となる。ただ、主力のリース料収入については、売買取引に準じた会計処理となっており、リース物件の価格部分が含まれていることに注意が必要である。したがって、金融としての本来の業績の伸びを判断するためには、売上高からリース物件の取得原価を除いた「差引利益」の動きを見るのが妥当である。なお、「差引利益」は「営業資産残高」と「資産粗利率」の掛け算となるため、両方の動きによって影響を受ける。また、最近では、「ノンアセット収益」の拡大にも取り組んでおり、「その他」セグメントの動きにも注目する必要がある。
一方、本業における収益性を判断するためには、「差引利益」から「資金原価(資金調達コスト)」のほか、「人件費及び物件費」や「貸倒関連費用(戻入れ益を含む)」※などを除いた「経常利益」の動きを見るのが最も合理的であると考えられる。
※貸倒引当金繰入額(販管費)と貸倒引当金戻入益(営業外収益)をネットしたもの。
2. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、売上高は「営業資産残高(特にリース営業資産)」の積み上げに伴っておおむね右肩上がりに推移してきた。一方、「差引利益」は2013年3月期から2014年3月期にかけて一旦低下傾向をたどったが、2015年3月期以降は増益基調に転じている。なお、「差引利益」の落ち込みは、2008年のリース会計基準変更に伴う利益の前倒し効果の剥落、及び競争激化によるリース料率の引下げに伴う「資産粗利率」の低下によるものであるが、「営業資産残高」の積み上げと「資産粗利率」の改善により回復を図ってきた。特に、「資産粗利率」の改善は、比較的利回りの高い「不動産リース」及び「航空機リース」の拡大が寄与したものと見られる。
一方、費用面を見ると、「調達原価」はほぼ横ばいで推移してきた。調達総額が増加しているものの、市中金利の影響により調達利回りが低下していることが要因である。また、「人件費及び物件費」を一定水準に抑えるとともに、「貸倒関連費用」も低位にて推移しており、同社の強みであるローコストオペレーションも発揮されている。その結果、「経常利益」は4期連続で増益となった。
また、有利子負債は「営業資産残高」の積み上げに伴い増加してきたが、自己資本比率は10%前後で安定的に推移している。自己資本比率10%の水準は、流動性の高い営業資産を大量に保有するリース業界においては他社と比べて見劣りするものではなく、財務基盤の安定性に懸念を生じさせるものではない。
ROA(総資産経常利益率)は金利競争が激化するなかでも1.4%の水準を維持してきた。一方、資本効率を示すROEは低下傾向にあったが、2016年3月期からは利益水準の引上げとともに改善の兆しが見られる。
営業キャッシュ・フローはマイナスの状況が続いており、特に直近4期におけるマイナス幅が大きくなっている。これは、将来の収益源となる「営業資産残高」を積極的に積み上げていることが要因であり、同社の成長性を反映したものと見るのが妥当である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 業績を見るポイント
芙蓉総合リース<8424>の売上高は、全体の85%前後を占めるリース料収入のほか、割賦販売による収入や営業貸付による受取利息などによって構成されている。売上高は基本的には「営業資産残高」に伴って増減することから、売上高の拡大のためには「契約実行高」を増やし、「営業資産残高」を積み上げることが必要となる。ただ、主力のリース料収入については、売買取引に準じた会計処理となっており、リース物件の価格部分が含まれていることに注意が必要である。したがって、金融としての本来の業績の伸びを判断するためには、売上高からリース物件の取得原価を除いた「差引利益」の動きを見るのが妥当である。なお、「差引利益」は「営業資産残高」と「資産粗利率」の掛け算となるため、両方の動きによって影響を受ける。また、最近では、「ノンアセット収益」の拡大にも取り組んでおり、「その他」セグメントの動きにも注目する必要がある。
一方、本業における収益性を判断するためには、「差引利益」から「資金原価(資金調達コスト)」のほか、「人件費及び物件費」や「貸倒関連費用(戻入れ益を含む)」※などを除いた「経常利益」の動きを見るのが最も合理的であると考えられる。
※貸倒引当金繰入額(販管費)と貸倒引当金戻入益(営業外収益)をネットしたもの。
2. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、売上高は「営業資産残高(特にリース営業資産)」の積み上げに伴っておおむね右肩上がりに推移してきた。一方、「差引利益」は2013年3月期から2014年3月期にかけて一旦低下傾向をたどったが、2015年3月期以降は増益基調に転じている。なお、「差引利益」の落ち込みは、2008年のリース会計基準変更に伴う利益の前倒し効果の剥落、及び競争激化によるリース料率の引下げに伴う「資産粗利率」の低下によるものであるが、「営業資産残高」の積み上げと「資産粗利率」の改善により回復を図ってきた。特に、「資産粗利率」の改善は、比較的利回りの高い「不動産リース」及び「航空機リース」の拡大が寄与したものと見られる。
一方、費用面を見ると、「調達原価」はほぼ横ばいで推移してきた。調達総額が増加しているものの、市中金利の影響により調達利回りが低下していることが要因である。また、「人件費及び物件費」を一定水準に抑えるとともに、「貸倒関連費用」も低位にて推移しており、同社の強みであるローコストオペレーションも発揮されている。その結果、「経常利益」は4期連続で増益となった。
また、有利子負債は「営業資産残高」の積み上げに伴い増加してきたが、自己資本比率は10%前後で安定的に推移している。自己資本比率10%の水準は、流動性の高い営業資産を大量に保有するリース業界においては他社と比べて見劣りするものではなく、財務基盤の安定性に懸念を生じさせるものではない。
ROA(総資産経常利益率)は金利競争が激化するなかでも1.4%の水準を維持してきた。一方、資本効率を示すROEは低下傾向にあったが、2016年3月期からは利益水準の引上げとともに改善の兆しが見られる。
営業キャッシュ・フローはマイナスの状況が続いており、特に直近4期におけるマイナス幅が大きくなっている。これは、将来の収益源となる「営業資産残高」を積極的に積み上げていることが要因であり、同社の成長性を反映したものと見るのが妥当である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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