シュッピン Research Memo(5):売上拡大のためのプラットフォームが完成
[19/01/17]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期成長に向けた施策と進捗状況
2. 売上拡大のための仕組みづくり
シュッピン<3179>が2017年3月期と2018年3月期の2期にわたり注力してきたのは、売上高拡大のための仕組みづくりだ。その仕組みは、顧客を引き寄せ、囲い込むための“プラットフォーム”と、顧客を活性化させるための“One-to-Oneマーケティング”の2つから成っている。2018年3月期までにこれらがともに完成し、同社が収益拡大にまい進できる仕組みが整った。
同社のプラットフォームの全容と、同社がやろうとしていることのすべてはこの図に集約されている。これは最も売上構成比が高いカメラ事業を念頭において作られているが、基本的なアプローチは時計やその他の商材も同じだ。
(1) プラットフォームについて
同社は、顧客の行動について“購入前⇒購入時⇒購入後”と段階を分けて考え、それぞれの段階において同社がどのように関わっていけば顧客を引き寄せ、囲い込めるかに取り組んできた。その結果同社が導入したのが、“購入前”については機種選定に有効なブログ(スタッフブログ「Map Times」)やフォトプレビューサイト(「Kasyapa」)、であり、“購入時”については質の高い口コミ情報「コミュレビ」、「見積りSNS」や「下取交換」や「先取交換」の導入などだ。そして“購入後”に向けてはカメラで撮影した写真をアップできる場としての「EVERYBODY × PHOTOGRAPHER.com」(略称「エビフォト」)をローンチした。エビフォトに自身で撮影した写真をアップして楽しむと同時に、そこで他者からの刺激や新たな情報を受けることで、また新たなカメラや交換レンズの購入意欲を刺激し、次の取引につなげようというのがプラットフォームの概略だ。プラットフォームのポイントは、1)顧客の消費行動を“購入前⇒購入時⇒購入”という直線運動から“購入前⇒購入時⇒購入後⇒購入前⇒・・・”という円運動に変えることと、2)消費の円運動を“シュッピン商圏”上において発生させ、かつ留め置く、という2つだ。
(2) One-to-Oneマーケティングについて
エビフォトのローンチで完成したプラットフォームは、それだけでは収益拡大につながりにくい。プラットフォームで引き寄せ、囲い込んだ顧客を、活性化するために同社が導入したのが「パーソナルレコメンド」だ。これは同社のプラットフォーム上を滞留する顧客の行動から顧客のニーズを読み取り、ニーズに合った商品や関連商品などをレコメンドする仕組みだ。個人のニーズに直接ヒットする形でのレコメンデーションを行う点に着目して同社はこれを“One-to-Oneマーケティング”と呼称してきた。その最終ゴールはこのパーソナルレコメンドにあるが、一足飛びにそれは実現できないと考えた同社は、「グループターゲット」(過去の取引データをもとにした顧客のグループ化。Phase 1.0と位置付け)、「パーソナルリクエスト」(顧客が「欲しいリスト」に入れた商品について価格変更や入荷案内情報などを提供。Phase 2.0と位置付け)と段階を踏んで導入し、最終的にPhase 3.0であるパーソナルレコメンドを2018年3月期に完成させた。前述した同社の経営の緻密さ、周到さはこうした進め方にも如実に表れている。なお、2019年3月期の取組みであるPhase 4.0については後述する。
(3) 売上拡大プラットフォームの効果
前述のように、売上拡大プラットフォーム(ここではOne-to-Oneマーケティングも含んだ広義の意)が完成したことで、同社のKPIも変わってきている。それぞれのKPIの内容は以下に詳述するが、ポイントは、1)それぞれのKPIが期待どおりの推移をしていることと、2)先行指標的な意味合いを持つものが多く将来の動向を示唆するものとして重要だということだ。
a) 購入会員数とアクティブ率
同社は同社のサイトで会員登録した顧客を「会員」としており、一度会員になると基本的にそのまま会員としてのステータスが維持される。したがって“会員数の伸び”というのはその増加分が新規購入者(新規会員)を意味する。この会員数増加の重要度は今も昔も変わってはいないが、同社が現在取り組むのは既存会員の活性化だ。前述の売上拡大プラットフォームはそのための仕組みだ。同社が既存会員の活性化に注力する理由は、効率性の高さだ。同社は2018年9月末時点で382,760人の会員を有している。月間3,000人台のペースで増加しているが1年間で10%弱の増加でしかない。他方、既存会員で現にアクティブな会員がもう1回購入を増やしてくれるだけで同社の売上高は30%増という計算が成り立つ。
この観点で同社が注目しているのが購入会員数とアクティブ率という指標だ。購入会員数は、各四半期に同社の自社サイトで購入した会員のうち新規会員を除いた数、すなわち既存会員の中の現に購入した会員ということだ。アクティブ率は各四半期初めの会員数に対するその四半期の購入会員数の割合だ。これまでの推移を見ると、購入会員数は着実に右肩上がりで推移している。アクティブ率は分母の会員数自体も増加しているため購入会員数ほど明確ではないが、こちらもトレンドラインは緩やかに右肩上がりとなっていることが読み取れる。
b) 欲しいリスト商品登録状況と入荷お知らせメール登録数
アクティブ率上昇に貢献しているのが「欲しいリスト」への商品登録と「入荷お知らせメール」への登録だ。欲しいリストは実際に購入されるとリストから外してリセットするので上下しているが、安定的に4万人前後が登録していることがわかる。入荷お知らせメール登録者数も毎月1,500人前後が安定的に積み上がっている状況にある。欲しいリストも入荷お知らせメールもともに、既存会員が購入方向の興味を有しているサインであり、これに向けて最後の一押しの情報(価格変動情報など)を提供することでコンバージョン率上昇につなげている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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2. 売上拡大のための仕組みづくり
シュッピン<3179>が2017年3月期と2018年3月期の2期にわたり注力してきたのは、売上高拡大のための仕組みづくりだ。その仕組みは、顧客を引き寄せ、囲い込むための“プラットフォーム”と、顧客を活性化させるための“One-to-Oneマーケティング”の2つから成っている。2018年3月期までにこれらがともに完成し、同社が収益拡大にまい進できる仕組みが整った。
同社のプラットフォームの全容と、同社がやろうとしていることのすべてはこの図に集約されている。これは最も売上構成比が高いカメラ事業を念頭において作られているが、基本的なアプローチは時計やその他の商材も同じだ。
(1) プラットフォームについて
同社は、顧客の行動について“購入前⇒購入時⇒購入後”と段階を分けて考え、それぞれの段階において同社がどのように関わっていけば顧客を引き寄せ、囲い込めるかに取り組んできた。その結果同社が導入したのが、“購入前”については機種選定に有効なブログ(スタッフブログ「Map Times」)やフォトプレビューサイト(「Kasyapa」)、であり、“購入時”については質の高い口コミ情報「コミュレビ」、「見積りSNS」や「下取交換」や「先取交換」の導入などだ。そして“購入後”に向けてはカメラで撮影した写真をアップできる場としての「EVERYBODY × PHOTOGRAPHER.com」(略称「エビフォト」)をローンチした。エビフォトに自身で撮影した写真をアップして楽しむと同時に、そこで他者からの刺激や新たな情報を受けることで、また新たなカメラや交換レンズの購入意欲を刺激し、次の取引につなげようというのがプラットフォームの概略だ。プラットフォームのポイントは、1)顧客の消費行動を“購入前⇒購入時⇒購入”という直線運動から“購入前⇒購入時⇒購入後⇒購入前⇒・・・”という円運動に変えることと、2)消費の円運動を“シュッピン商圏”上において発生させ、かつ留め置く、という2つだ。
(2) One-to-Oneマーケティングについて
エビフォトのローンチで完成したプラットフォームは、それだけでは収益拡大につながりにくい。プラットフォームで引き寄せ、囲い込んだ顧客を、活性化するために同社が導入したのが「パーソナルレコメンド」だ。これは同社のプラットフォーム上を滞留する顧客の行動から顧客のニーズを読み取り、ニーズに合った商品や関連商品などをレコメンドする仕組みだ。個人のニーズに直接ヒットする形でのレコメンデーションを行う点に着目して同社はこれを“One-to-Oneマーケティング”と呼称してきた。その最終ゴールはこのパーソナルレコメンドにあるが、一足飛びにそれは実現できないと考えた同社は、「グループターゲット」(過去の取引データをもとにした顧客のグループ化。Phase 1.0と位置付け)、「パーソナルリクエスト」(顧客が「欲しいリスト」に入れた商品について価格変更や入荷案内情報などを提供。Phase 2.0と位置付け)と段階を踏んで導入し、最終的にPhase 3.0であるパーソナルレコメンドを2018年3月期に完成させた。前述した同社の経営の緻密さ、周到さはこうした進め方にも如実に表れている。なお、2019年3月期の取組みであるPhase 4.0については後述する。
(3) 売上拡大プラットフォームの効果
前述のように、売上拡大プラットフォーム(ここではOne-to-Oneマーケティングも含んだ広義の意)が完成したことで、同社のKPIも変わってきている。それぞれのKPIの内容は以下に詳述するが、ポイントは、1)それぞれのKPIが期待どおりの推移をしていることと、2)先行指標的な意味合いを持つものが多く将来の動向を示唆するものとして重要だということだ。
a) 購入会員数とアクティブ率
同社は同社のサイトで会員登録した顧客を「会員」としており、一度会員になると基本的にそのまま会員としてのステータスが維持される。したがって“会員数の伸び”というのはその増加分が新規購入者(新規会員)を意味する。この会員数増加の重要度は今も昔も変わってはいないが、同社が現在取り組むのは既存会員の活性化だ。前述の売上拡大プラットフォームはそのための仕組みだ。同社が既存会員の活性化に注力する理由は、効率性の高さだ。同社は2018年9月末時点で382,760人の会員を有している。月間3,000人台のペースで増加しているが1年間で10%弱の増加でしかない。他方、既存会員で現にアクティブな会員がもう1回購入を増やしてくれるだけで同社の売上高は30%増という計算が成り立つ。
この観点で同社が注目しているのが購入会員数とアクティブ率という指標だ。購入会員数は、各四半期に同社の自社サイトで購入した会員のうち新規会員を除いた数、すなわち既存会員の中の現に購入した会員ということだ。アクティブ率は各四半期初めの会員数に対するその四半期の購入会員数の割合だ。これまでの推移を見ると、購入会員数は着実に右肩上がりで推移している。アクティブ率は分母の会員数自体も増加しているため購入会員数ほど明確ではないが、こちらもトレンドラインは緩やかに右肩上がりとなっていることが読み取れる。
b) 欲しいリスト商品登録状況と入荷お知らせメール登録数
アクティブ率上昇に貢献しているのが「欲しいリスト」への商品登録と「入荷お知らせメール」への登録だ。欲しいリストは実際に購入されるとリストから外してリセットするので上下しているが、安定的に4万人前後が登録していることがわかる。入荷お知らせメール登録者数も毎月1,500人前後が安定的に積み上がっている状況にある。欲しいリストも入荷お知らせメールもともに、既存会員が購入方向の興味を有しているサインであり、これに向けて最後の一押しの情報(価格変動情報など)を提供することでコンバージョン率上昇につなげている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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