冨士ダイス Research Memo(5):持続的成長を目指し、業務効率化を進め国内市場の深耕、海外売上拡大を目指す
[19/01/28]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略
1. 成長力・収益力の強化
冨士ダイス<6167>はこれまできめ細かい顧客対応を実行するために、積極的に生産拠点づくりを行ってきたが、IT化や物流網の進化などを考慮し、国内は生産特性を考慮した製品や生産拠点の集約及び再構築を進めている。既に熊本製造所に新工場を建設し複雑形状製品を中心に集約。また郡山製造所は単純丸物形状の製品を主力に、光学部品向け超精密加工品なども手掛ける工場に、岡山製造所は大型製品に注力する。加えてIT化による情報一元化やロボット導入による自動化ラインの構築などにより、生産効率10%以上の改善施策を実行中である。
2. 成長分野へ注力し、新製品群も豊富に抱える
同社は成長分野への研究・開発に注力することで、高付加価値な製品の売上拡大を目指している。具体的には次世代自動車、航空・宇宙、医療・化粧品、環境・エネルギー、その他新素材開発などである。
会社側では成長分野の進捗状況を開示しているが、期初の説明会以降に大きな変化がないものの、具体的にサンプル出荷を始めたものや、実際に販売を始めたものも多い。
なかでも注目できるのが次世代自動車向けに開発しているモーターコア用抜き金型だ。モーターコアは、モーター性能の向上のために電磁鋼板の薄肉化が進み、それを打抜く超硬合金製の金型形状精度の向上が求められ、放電加工性に優れ、耐チッピング性(加工中に突発欠損すること)に優れた超硬合金を必要とする。同社は耐食性、破壊靭性に優れる放電加工に適したフジロイVシリーズ超硬合金(代表的にはVD45、TVD55)を開発、既に多くのユーザーに供給している。現状、HEVからEVへ開発の重点が移っており、EV用モーターコア金型はHEVに対して薄肉化して高出力を出す必要性が高いことから、更なる耐摩耗性、耐チッピングモーターの要求が高まっている。このようななかで同社は両方の性能を満たす新素材の開発に成功し、現在サンプル出荷中で、2019年には販売開始を狙う。またその他分野では赤外線レンズ用金型も注目度が高い。同社は従来から一眼レフなどの光学レンズ用超精密金型で高い納入実績を誇ってきたが、今後、自動車の自動運転、防犯システムとしての防犯カメラニーズの高まりから、赤外線光学レンズの需要拡大をにらみ、開発を加速させていた。赤外線光学レンズにおいては金型成形用にガラス母材としてカルコゲナイドガラスが使われているが、これに対応するバインダーレス超硬合金製の金型は、ガラス母材と熱膨張率が異なるために熱プレス成形後の冷却時にレンズの形状などによりレンズに引張り応力が作用してレンズが割れる問題が生じていた。この問題に対し同社は熱膨張率が似通った耐酸化性硬質サーメットを開発、2017年11月には特許公開となり、現在性能評価中である。同市場も、自動運転、セキュリティ分野など潜在成長力が高い分野だけに、具体化となれば楽しみな新製品と言える。このほかにも同社の高い技術力を背景に新製品・新技術が開花しつつあり、中長期的に同社収益を支えることとなるだろう。
3. 海外展開の加速
同社はこれまで、多品種少量生産、受注生産直販システムを売り物として、国内での確固たる顧客基盤のもとで成長を実現してきたが、今後の成長のためにグローバル展開も模索してきた。過去3期間は伸び悩んでいたが、2019年3月期上期は前年同期比6.4%増の1,492百万円と着実な伸びを示した。その背景にはタイで複雑形状や高精度製品などの生産力強化による販売拡大などが寄与、海外売上高比率も16.4%と0.5ポイント向上した。なお、同社が得意としている光学レンズ向けなどの超精密、耐摩耗性能を必要とする顧客は国内ヘの発注でも実際は海外で利用されている事例が多く、同社は2018年10月1日付で海外事業管理部を新設した。実質的な海外売上比率が30%近くあると推計されるなかで、海外展開の強化、加速を図る方針である。
■株主還元策
連結配当性向50%を目途に適切な利益配分を実施
同社は株主還元策として配当を実施している。配当の基本方針としては、連結配当性向50%を目途に適切な利益配分を実施している。2019年3月期の1株当たり配当金は24円と、会社予想EPS48.00円に対して50%と、配当性向50%水準を予定している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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1. 成長力・収益力の強化
冨士ダイス<6167>はこれまできめ細かい顧客対応を実行するために、積極的に生産拠点づくりを行ってきたが、IT化や物流網の進化などを考慮し、国内は生産特性を考慮した製品や生産拠点の集約及び再構築を進めている。既に熊本製造所に新工場を建設し複雑形状製品を中心に集約。また郡山製造所は単純丸物形状の製品を主力に、光学部品向け超精密加工品なども手掛ける工場に、岡山製造所は大型製品に注力する。加えてIT化による情報一元化やロボット導入による自動化ラインの構築などにより、生産効率10%以上の改善施策を実行中である。
2. 成長分野へ注力し、新製品群も豊富に抱える
同社は成長分野への研究・開発に注力することで、高付加価値な製品の売上拡大を目指している。具体的には次世代自動車、航空・宇宙、医療・化粧品、環境・エネルギー、その他新素材開発などである。
会社側では成長分野の進捗状況を開示しているが、期初の説明会以降に大きな変化がないものの、具体的にサンプル出荷を始めたものや、実際に販売を始めたものも多い。
なかでも注目できるのが次世代自動車向けに開発しているモーターコア用抜き金型だ。モーターコアは、モーター性能の向上のために電磁鋼板の薄肉化が進み、それを打抜く超硬合金製の金型形状精度の向上が求められ、放電加工性に優れ、耐チッピング性(加工中に突発欠損すること)に優れた超硬合金を必要とする。同社は耐食性、破壊靭性に優れる放電加工に適したフジロイVシリーズ超硬合金(代表的にはVD45、TVD55)を開発、既に多くのユーザーに供給している。現状、HEVからEVへ開発の重点が移っており、EV用モーターコア金型はHEVに対して薄肉化して高出力を出す必要性が高いことから、更なる耐摩耗性、耐チッピングモーターの要求が高まっている。このようななかで同社は両方の性能を満たす新素材の開発に成功し、現在サンプル出荷中で、2019年には販売開始を狙う。またその他分野では赤外線レンズ用金型も注目度が高い。同社は従来から一眼レフなどの光学レンズ用超精密金型で高い納入実績を誇ってきたが、今後、自動車の自動運転、防犯システムとしての防犯カメラニーズの高まりから、赤外線光学レンズの需要拡大をにらみ、開発を加速させていた。赤外線光学レンズにおいては金型成形用にガラス母材としてカルコゲナイドガラスが使われているが、これに対応するバインダーレス超硬合金製の金型は、ガラス母材と熱膨張率が異なるために熱プレス成形後の冷却時にレンズの形状などによりレンズに引張り応力が作用してレンズが割れる問題が生じていた。この問題に対し同社は熱膨張率が似通った耐酸化性硬質サーメットを開発、2017年11月には特許公開となり、現在性能評価中である。同市場も、自動運転、セキュリティ分野など潜在成長力が高い分野だけに、具体化となれば楽しみな新製品と言える。このほかにも同社の高い技術力を背景に新製品・新技術が開花しつつあり、中長期的に同社収益を支えることとなるだろう。
3. 海外展開の加速
同社はこれまで、多品種少量生産、受注生産直販システムを売り物として、国内での確固たる顧客基盤のもとで成長を実現してきたが、今後の成長のためにグローバル展開も模索してきた。過去3期間は伸び悩んでいたが、2019年3月期上期は前年同期比6.4%増の1,492百万円と着実な伸びを示した。その背景にはタイで複雑形状や高精度製品などの生産力強化による販売拡大などが寄与、海外売上高比率も16.4%と0.5ポイント向上した。なお、同社が得意としている光学レンズ向けなどの超精密、耐摩耗性能を必要とする顧客は国内ヘの発注でも実際は海外で利用されている事例が多く、同社は2018年10月1日付で海外事業管理部を新設した。実質的な海外売上比率が30%近くあると推計されるなかで、海外展開の強化、加速を図る方針である。
■株主還元策
連結配当性向50%を目途に適切な利益配分を実施
同社は株主還元策として配当を実施している。配当の基本方針としては、連結配当性向50%を目途に適切な利益配分を実施している。2019年3月期の1株当たり配当金は24円と、会社予想EPS48.00円に対して50%と、配当性向50%水準を予定している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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