学研HD Research Memo(4):グループ力を結集し、教育と医療福祉の2つのエンジンで成長を目指す。
[19/01/31]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中期経営計画:『Gakken 2020』
1. 中期経営計画『Gakken 2020』について
学研ホールディングス<9470>は2009年に持株会社体制に移行した。以来、ほぼ1年おきに2年間の中期経営計画を策定し、その着実な実行を通じて中長期的な持続的成長を実現することを目指している。前中期経営計画の『Gakken 2018』は2018年9月期で終了し、2019年9月期からは新中期経営計画“『Gakken 2020』〜次代を拓くグループ力の結集〜”に取り組んでいる。
(1) 経営方針
前中期経営計画『Gakken 2018』の経営方針では、全社ベースの課題として“経営基盤の強化”と“資本効率の向上と株主還元”が掲げられ、2つの事業分野については、“ブランドの再構築による更なる成長と収益基盤の盤石化”(教育分野)、“事業拡大と収益力の向上”(医療福祉分野)が掲げられた。その実績と評価として同社は、“経営基盤の強化”と教育分野について課題を残した一方、“資本効率の向上と株主還元”と医療福祉分野については及第点としている。
これを踏まえて新中期経営計画『Gakken 2020』では、全社ベースでは前回同様、“経営基盤の強化”と“資本効率の向上と株主還元”に取り組むとしている。一方、2つの事業分野については、“「2つの成長エンジン」で次代を拓く”をスローガンに掲げ、教育分野では“自ら事業を変革させ新しい学びをけん引”、医療福祉分野では“サービス拡大と更なる品質向上の追求”をそれぞれ目標に掲げている。
(2) 『Gakken 2020』の業績計画
『Gakken 2020』の業績計画について同社は、中期経営計画2年目の2020年9月において売上高1,400億円、営業利益50億円、営業利益率3.6%を達成することを経営目標として掲げている。
詳細は業績動向と今後の見通しの項で述べるが、新中期経営計画初年度の2019年9月期の医療福祉サービス事業セグメントは大きく増収増益となる一方、教育分野の3セグメントがいずれも減収減益となり、全社ベースの営業利益は前期比4.0%増と小幅な伸びにとどまる計画だ。
2年目(最終年度)の2020年9月期は教育分野の3セグメントがいずれも増収増益に転じ、順調な拡大が続く医療福祉サービス事業と合わせて全4セグメントの増益によって全社の営業利益が50億円の大台に到達することを計画している。そしてその3年後の2023年9月期においては、営業利益率5%、ROE8%、配当性向30%以上の実現を目標としている。
同社は過去最高営業利益が100億円を超えていた。50億円というのはその中間点でもあり、重要な節目と言える。まずはその着実な達成を期待したい。
(3) 経営基盤の強化のための7つの経営施策
2つの事業分野の具体的取り組みについては後に詳述するが、各事業分野での取り組み以上に弊社が注目するのは、新中期経営計画において“経営基盤の強化”という全社ベースの課題に関して、その実現に向けた7項目の経営施策が掲げられたことだ。そして、それら7つの経営施策によって“グループ力の結集”の実現を目指すとしていることも印象的だ。
“経営基盤の強化”と“グループ力の結集”とが同義であり、“経営基盤の強化”をあえて“グループ力の結集”に言い換えたのではないだろうか。なぜこうした表現が出てきたのかについて考えてみたい。
“グループ力の結集”という表現は、新中期経営計画『Gakken 2020』のサブタイトル“次代を拓くグループ力の結集”に由来すると考えられる。結集は「ばらばらになっているものを集めて1つにすること」であり、前に“グループ力の”が付くことから、同社グループの数多い子会社の力を結集させようということまでは読み取ることができる。結集の反対語は散開であり、現状はグループ企業が散開状態にあるものを結集へと転換することで持続的成長を実現しようというのがここに込められた思いと言える。
では、どういうところが“散開”の状態にあるのか。その視点で同社の事業を俯瞰すると特に教育分野において簡単に見出すことができる。
同社の教育分野におけるサービスは、「知・徳・体」のバランスのとれた「学び」を追求しており、広く遍く経済格差や地域格差のない「学び」の提供を目指してきた。各セグメントが同じ志を持ち、異なる顧客を対象に各々事業を拡大してきたが、近年はこれが非効率や、競合関係に陥るケースがあることも否定できない。
前述したことからわかるように、現在の同社グループは分散状態、換言すれば遠心力が働いた状態にあると言える。それを結集、すなわち求心力が働いた状態にすべく、同社本体がこれまで以上にグループ会社に対する関与を強めることの具体的なアクションが前掲の経営施策ということになる。
経営施策はいずれも重要な項目ではあるが、特に、事業戦略モニタリング、組織人事改革、ポートフォリオ変革、財務戦略、投資評価の各項目が、求心力実現に向けで重要な役割を果たすものと弊社では考えている。
2009年に持株会社体制に移行して以来、各事業会社がそれぞれ業容拡大を目指して邁進してきたという意味で、同社グループには遠心力が相当強く働いていたと想像される。その力を180度方向転換させるのは、ヒト・カネ・モノとあらゆる観点から求心力へと転換を図る経営施策をもってしても、決して容易ではない。同社が持株会社体制へとガバナンス上の大転換を図ったことで生まれた遠心力であるため、その修正にも同様の大きな“力”が必要になるのではないかと弊社では考えている。
こうした転換の必要性が同社の中期経営計画に織り込まれたことは、大きな一歩であることに疑いはない。業績面での進捗とともに、組織体制や企業カルチャーがどのように変わっていくのかにも注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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1. 中期経営計画『Gakken 2020』について
学研ホールディングス<9470>は2009年に持株会社体制に移行した。以来、ほぼ1年おきに2年間の中期経営計画を策定し、その着実な実行を通じて中長期的な持続的成長を実現することを目指している。前中期経営計画の『Gakken 2018』は2018年9月期で終了し、2019年9月期からは新中期経営計画“『Gakken 2020』〜次代を拓くグループ力の結集〜”に取り組んでいる。
(1) 経営方針
前中期経営計画『Gakken 2018』の経営方針では、全社ベースの課題として“経営基盤の強化”と“資本効率の向上と株主還元”が掲げられ、2つの事業分野については、“ブランドの再構築による更なる成長と収益基盤の盤石化”(教育分野)、“事業拡大と収益力の向上”(医療福祉分野)が掲げられた。その実績と評価として同社は、“経営基盤の強化”と教育分野について課題を残した一方、“資本効率の向上と株主還元”と医療福祉分野については及第点としている。
これを踏まえて新中期経営計画『Gakken 2020』では、全社ベースでは前回同様、“経営基盤の強化”と“資本効率の向上と株主還元”に取り組むとしている。一方、2つの事業分野については、“「2つの成長エンジン」で次代を拓く”をスローガンに掲げ、教育分野では“自ら事業を変革させ新しい学びをけん引”、医療福祉分野では“サービス拡大と更なる品質向上の追求”をそれぞれ目標に掲げている。
(2) 『Gakken 2020』の業績計画
『Gakken 2020』の業績計画について同社は、中期経営計画2年目の2020年9月において売上高1,400億円、営業利益50億円、営業利益率3.6%を達成することを経営目標として掲げている。
詳細は業績動向と今後の見通しの項で述べるが、新中期経営計画初年度の2019年9月期の医療福祉サービス事業セグメントは大きく増収増益となる一方、教育分野の3セグメントがいずれも減収減益となり、全社ベースの営業利益は前期比4.0%増と小幅な伸びにとどまる計画だ。
2年目(最終年度)の2020年9月期は教育分野の3セグメントがいずれも増収増益に転じ、順調な拡大が続く医療福祉サービス事業と合わせて全4セグメントの増益によって全社の営業利益が50億円の大台に到達することを計画している。そしてその3年後の2023年9月期においては、営業利益率5%、ROE8%、配当性向30%以上の実現を目標としている。
同社は過去最高営業利益が100億円を超えていた。50億円というのはその中間点でもあり、重要な節目と言える。まずはその着実な達成を期待したい。
(3) 経営基盤の強化のための7つの経営施策
2つの事業分野の具体的取り組みについては後に詳述するが、各事業分野での取り組み以上に弊社が注目するのは、新中期経営計画において“経営基盤の強化”という全社ベースの課題に関して、その実現に向けた7項目の経営施策が掲げられたことだ。そして、それら7つの経営施策によって“グループ力の結集”の実現を目指すとしていることも印象的だ。
“経営基盤の強化”と“グループ力の結集”とが同義であり、“経営基盤の強化”をあえて“グループ力の結集”に言い換えたのではないだろうか。なぜこうした表現が出てきたのかについて考えてみたい。
“グループ力の結集”という表現は、新中期経営計画『Gakken 2020』のサブタイトル“次代を拓くグループ力の結集”に由来すると考えられる。結集は「ばらばらになっているものを集めて1つにすること」であり、前に“グループ力の”が付くことから、同社グループの数多い子会社の力を結集させようということまでは読み取ることができる。結集の反対語は散開であり、現状はグループ企業が散開状態にあるものを結集へと転換することで持続的成長を実現しようというのがここに込められた思いと言える。
では、どういうところが“散開”の状態にあるのか。その視点で同社の事業を俯瞰すると特に教育分野において簡単に見出すことができる。
同社の教育分野におけるサービスは、「知・徳・体」のバランスのとれた「学び」を追求しており、広く遍く経済格差や地域格差のない「学び」の提供を目指してきた。各セグメントが同じ志を持ち、異なる顧客を対象に各々事業を拡大してきたが、近年はこれが非効率や、競合関係に陥るケースがあることも否定できない。
前述したことからわかるように、現在の同社グループは分散状態、換言すれば遠心力が働いた状態にあると言える。それを結集、すなわち求心力が働いた状態にすべく、同社本体がこれまで以上にグループ会社に対する関与を強めることの具体的なアクションが前掲の経営施策ということになる。
経営施策はいずれも重要な項目ではあるが、特に、事業戦略モニタリング、組織人事改革、ポートフォリオ変革、財務戦略、投資評価の各項目が、求心力実現に向けで重要な役割を果たすものと弊社では考えている。
2009年に持株会社体制に移行して以来、各事業会社がそれぞれ業容拡大を目指して邁進してきたという意味で、同社グループには遠心力が相当強く働いていたと想像される。その力を180度方向転換させるのは、ヒト・カネ・モノとあらゆる観点から求心力へと転換を図る経営施策をもってしても、決して容易ではない。同社が持株会社体制へとガバナンス上の大転換を図ったことで生まれた遠心力であるため、その修正にも同様の大きな“力”が必要になるのではないかと弊社では考えている。
こうした転換の必要性が同社の中期経営計画に織り込まれたことは、大きな一歩であることに疑いはない。業績面での進捗とともに、組織体制や企業カルチャーがどのように変わっていくのかにも注目したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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