学研HD Research Memo(6):出版では強みをさらに磨き、出版以外の分野ではTGGとオンライン英会話を強化
[19/01/31]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中期経営計画:『Gakken 2020』
3. 教育コンテンツ事業の事業戦略
学研ホールディングス<9470>の教育コンテンツ事業は“カテゴリートップ実現と業態転換”をテーマに掲げ、主要なサブセグメントごとにそれに沿った事業戦略を打ち出している。
出版分野では英検対策書をメインに新刊を投入し、シェア拡大を狙う方針だ。大学入試での民間試験導入に備えた動きである。学習参考書は2020年からの指導要領改訂に伴い、一時的に発刊を絞るが、2020年からは需要も増すと見込まれ、ここでシェアを伸ばすということだ。
同社は中学学習参考書ではトップシェアであり、児童書などの教育関連書籍も、それぞれ高シェア・高収益の商材が多く、出版事業の中で収益源になっているとみられる。それらの貢献もあり、サブセグメントとしての出版事業の2018年9月期業績は売上高23,797百万円、営業利益2,131百万円となった。この営業利益はサブセグメントベースでは同社の中で最大の値となっており、引き続き各々のカテゴリーでトップを目指す。一方で、不採算の雑誌・書籍がまだ残されており、同社は今後、これらの整理を継続して進める方針だ。出版事業には、特に利益においてまだ改善・成長の余地があると言える。
出版以外の事業の2018年9月期の業績は売上高6,262百万円、営業損失1,581百万円となった。この大きな要因はデジタル教材の学研ゼミ(主として小学生向け)と映像授業の学研プライムゼミ(主として高校生向け)だ。同社は学研ゼミの撤退と学研プライムゼミの事業方針の転回(BtoBtoC中心からBtoC強化へ)を決定した。これにより赤字幅の減少が期待される。
一方、同社が目指す業態転換は、慢性的な出版業界の衰退を見据えたものだ。コンテンツ制作力を紙の出版以外に生かし、徐々に出版に依存する比率を下げる方針だ。トップライングロース(売上高の成長)を伴う今後成長戦略の中核としては、出版以外でも英語教育の強化を打ち出してきた。具体的には、オンライン英会話とTGGの2つを軸に強化・展開を図る方針だ。オンライン英会話については前中期経営計画の『Gakken 2018』においても学校・自治体向けに拡販に取り組んでいたが、新中期経営計画においてもそれが引き継がれた形となっている。
TGGは同社を中心とする5社コンソーシアムが東京都「英語村」事業に応募し、最優秀事業応募者に決定してスタートしたものだ。国内最大級(同時に600人収容)、少人数で圧倒的な会話量、実際の生活に則した状況での英語活用、などの特長を有している。2018年9月に開業し、順調な予約・入場が続いている。
幼児教育ではオリジナル商材や幼児教室の強化で、学校教育では教科書事業の着実な拡大で、それぞれ成長を目指す
4. 教育ソリューション事業の事業戦略
教育ソリューション事業では“筋肉質の事業体に変革”をテーマに掲げている。収益性の改善を目指しているという意味では、前中期経営計画のテーマを継承したものと言うことができる。事業戦略の具体的アクションについても、前中期経営計画からの継続性が保たれた内容となっている。
幼児教育(幼稚園・保育園)向けでは、オリジナル商品の販売強化と、幼児教室における知育・科学・英語の拡大の2つが掲げられている。前中期経営計画においては保育基幹商品の再構築と成長戦略立案に取り組んだ。新中期経営計画ではそこで開発された保育基幹商品やオリジナル商品の販売強化に取り組むという流れだ。
幼児教室は保育園・幼稚園の園内において同社が知育や科学などのカリキュラムを提供するサービスだ。オンサイト(現地)型の学習塾ということができる。希望者のみが個人で利用料を負担して受講する課外教室と、園が指導料を負担して園児全員が受講できる正課教室の2つのタイプで展開している。幼児教室の潜在的ニーズは強く、成長分野であるが、園単位で見た場合やコースによっては不採算のものもあるのが実情だ。同社はそうした不採算案件への対応を前中期経営計画で行った。新中期経営計画では、潜在的ニーズを着実に取り込んで業容拡大につなげるべく、英語分野の強化などに取り組む方針だ。
学校教育(小中高校)向けでは、主力商材である小・中学校の道徳・保健体育の教科書販売が成長戦略の中心となっている。このうち、保健体育については、同社は小学校・保健と中学校・保健体育でともにトップシェアを有しており、その地位を維持しながら収益拡大を図る方針だ。
新中期経営計画期間中に注目されるのは、道徳の教科書のシェア拡大戦略だ。学習指導要領が改定されて、道徳が教科化され、「特別の教科 道徳」が新たにできた。これに伴い小・中学校の道徳の教科書の検定がそれぞれ2016年、2017年に実施された。これらは言わば臨時の教科書検定であり、小学校・道徳については2018年に、中学校・道徳については2019年に、他の教科同様の通常のスケジュールとして検定が実施される。結果的に、前中期経営計画と新中期経営計画の4年間は、道徳の教科書に関して通常より教科書検定の回数が多くなっており、同社にとってはシェア拡大につなげる好機となったと言える。
道徳の教科化に当たっては、教科である以上は評価する必要性が生じるが、どう評価するかは非常に難しい問題だ。それゆえ、道徳というマイナー教科ではあっても、他の教科同様に商機が拡大する可能性があると期待される。
道徳教科における同社のシェア(採択部数ベース)は小学校で14.8%(第4位)、中学校で5.7%(第5位)となっている。改訂を機に同社がどの程度シェアを伸ばすか注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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3. 教育コンテンツ事業の事業戦略
学研ホールディングス<9470>の教育コンテンツ事業は“カテゴリートップ実現と業態転換”をテーマに掲げ、主要なサブセグメントごとにそれに沿った事業戦略を打ち出している。
出版分野では英検対策書をメインに新刊を投入し、シェア拡大を狙う方針だ。大学入試での民間試験導入に備えた動きである。学習参考書は2020年からの指導要領改訂に伴い、一時的に発刊を絞るが、2020年からは需要も増すと見込まれ、ここでシェアを伸ばすということだ。
同社は中学学習参考書ではトップシェアであり、児童書などの教育関連書籍も、それぞれ高シェア・高収益の商材が多く、出版事業の中で収益源になっているとみられる。それらの貢献もあり、サブセグメントとしての出版事業の2018年9月期業績は売上高23,797百万円、営業利益2,131百万円となった。この営業利益はサブセグメントベースでは同社の中で最大の値となっており、引き続き各々のカテゴリーでトップを目指す。一方で、不採算の雑誌・書籍がまだ残されており、同社は今後、これらの整理を継続して進める方針だ。出版事業には、特に利益においてまだ改善・成長の余地があると言える。
出版以外の事業の2018年9月期の業績は売上高6,262百万円、営業損失1,581百万円となった。この大きな要因はデジタル教材の学研ゼミ(主として小学生向け)と映像授業の学研プライムゼミ(主として高校生向け)だ。同社は学研ゼミの撤退と学研プライムゼミの事業方針の転回(BtoBtoC中心からBtoC強化へ)を決定した。これにより赤字幅の減少が期待される。
一方、同社が目指す業態転換は、慢性的な出版業界の衰退を見据えたものだ。コンテンツ制作力を紙の出版以外に生かし、徐々に出版に依存する比率を下げる方針だ。トップライングロース(売上高の成長)を伴う今後成長戦略の中核としては、出版以外でも英語教育の強化を打ち出してきた。具体的には、オンライン英会話とTGGの2つを軸に強化・展開を図る方針だ。オンライン英会話については前中期経営計画の『Gakken 2018』においても学校・自治体向けに拡販に取り組んでいたが、新中期経営計画においてもそれが引き継がれた形となっている。
TGGは同社を中心とする5社コンソーシアムが東京都「英語村」事業に応募し、最優秀事業応募者に決定してスタートしたものだ。国内最大級(同時に600人収容)、少人数で圧倒的な会話量、実際の生活に則した状況での英語活用、などの特長を有している。2018年9月に開業し、順調な予約・入場が続いている。
幼児教育ではオリジナル商材や幼児教室の強化で、学校教育では教科書事業の着実な拡大で、それぞれ成長を目指す
4. 教育ソリューション事業の事業戦略
教育ソリューション事業では“筋肉質の事業体に変革”をテーマに掲げている。収益性の改善を目指しているという意味では、前中期経営計画のテーマを継承したものと言うことができる。事業戦略の具体的アクションについても、前中期経営計画からの継続性が保たれた内容となっている。
幼児教育(幼稚園・保育園)向けでは、オリジナル商品の販売強化と、幼児教室における知育・科学・英語の拡大の2つが掲げられている。前中期経営計画においては保育基幹商品の再構築と成長戦略立案に取り組んだ。新中期経営計画ではそこで開発された保育基幹商品やオリジナル商品の販売強化に取り組むという流れだ。
幼児教室は保育園・幼稚園の園内において同社が知育や科学などのカリキュラムを提供するサービスだ。オンサイト(現地)型の学習塾ということができる。希望者のみが個人で利用料を負担して受講する課外教室と、園が指導料を負担して園児全員が受講できる正課教室の2つのタイプで展開している。幼児教室の潜在的ニーズは強く、成長分野であるが、園単位で見た場合やコースによっては不採算のものもあるのが実情だ。同社はそうした不採算案件への対応を前中期経営計画で行った。新中期経営計画では、潜在的ニーズを着実に取り込んで業容拡大につなげるべく、英語分野の強化などに取り組む方針だ。
学校教育(小中高校)向けでは、主力商材である小・中学校の道徳・保健体育の教科書販売が成長戦略の中心となっている。このうち、保健体育については、同社は小学校・保健と中学校・保健体育でともにトップシェアを有しており、その地位を維持しながら収益拡大を図る方針だ。
新中期経営計画期間中に注目されるのは、道徳の教科書のシェア拡大戦略だ。学習指導要領が改定されて、道徳が教科化され、「特別の教科 道徳」が新たにできた。これに伴い小・中学校の道徳の教科書の検定がそれぞれ2016年、2017年に実施された。これらは言わば臨時の教科書検定であり、小学校・道徳については2018年に、中学校・道徳については2019年に、他の教科同様の通常のスケジュールとして検定が実施される。結果的に、前中期経営計画と新中期経営計画の4年間は、道徳の教科書に関して通常より教科書検定の回数が多くなっており、同社にとってはシェア拡大につなげる好機となったと言える。
道徳の教科化に当たっては、教科である以上は評価する必要性が生じるが、どう評価するかは非常に難しい問題だ。それゆえ、道徳というマイナー教科ではあっても、他の教科同様に商機が拡大する可能性があると期待される。
道徳教科における同社のシェア(採択部数ベース)は小学校で14.8%(第4位)、中学校で5.7%(第5位)となっている。改訂を機に同社がどの程度シェアを伸ばすか注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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