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農業総合研究所 Research Memo(7):最終年度に当たり、更なる流通総額拡大を図る

注目トピックス 日本株
■中期経営計画の概要

農業総合研究所<3541>は、2017年8月期からの3ヶ年を、流通総額拡大のための投資フェーズと位置付け、中期経営計画を策定した。第二期となる2018年8月期は、先行投資を更に積極的に進め、営業損失予算を立て、投資を実行した。2019年8月期は、トップライン重層化に向けた「物流」「IT」「人材」への投資計画を行うこととしている。

中期経営計画策定の前提として、市場環境に関しては、スーパー等の需要の引き合いが旺盛である一方、同社は供給に対する事業体制が対応できていないとして、事業の急拡大と更なる成長加速に向けて「物流」「IT」「人材」の再整備が経営課題として考えている。今回の中期経営計画では、2017年8月期からの3ヶ年を流通総額拡大のための投資フェーズと位置付け、2018年8月期は当初より先行投資をさらに積極的に進めることを前提に営業損失予算を立てた。そして、2018年8月期は、スーパー等の供給に対する事業体制の再整備を行うため、将来の体制固めに向けた「物流」「IT」「人材」への積極的な投資計画を実施した。

2018年8月期は想定通りの投資が進み、損失の計上も予定通りであったが、投資成果は著しいものがある。投資計画の進捗を見ていく。

1. 物流投資
「物流」投資に関しては、大田市場(東京都大田区)内に自社センターを開設、2018年5月から稼働を開始。遠方産地における出荷店舗の物流の制約を大幅に解消でき、機会損失を大幅に縮小することができ、今後は、パッキング等の機能をセンターに付加し、大型、中型生産者からの集荷強化を狙うことになる。

2. IT投資
「IT」投資に関しては、生産者向けにトレーサビリティ機能を拡充し、商品価値を高めた農産物の提供を可能にした。農薬使用履歴管理アプリケーション「畑メモ」の提供を新たに開始した。また、外食向けECサービス「彩直」を開始した。2019年8月期は基幹システム刷新に向けて開発を継続しており、ローンチは2019年8月期末を予定している。小売店バイヤー向けアプリ「直ぽ」(生産者と小売店バイヤーを直接結び受発注できるシステム)の開発も進めており、小売店向けITプラットフォームの強化も図る。なお、将来的には需要予測や決済機能など、同社の基幹システムの一部を他社向けに販売することも検討している。

3. 人材投資
「人材」投資に関しては、従業員数は前期末比36名増の105名の体制となった。即戦力採用を中心にして、物流・IT・青果バイヤーなどの専門職を採用、活躍している。全国を網羅する体制を強化すべく、2019年8月期も人材の採用は継続的に行っていく。

2019年8月期は、トップライン重層化に向けた「物流」「IT」「人材」への投資を行う。従来、様々な業務提携や新ビジネスの案件が持ち込まれてきたものの、それに対応しきれる事業体制が整っていなかったが、再構築が着実に進捗し、財務基盤も整ったことから、投資計画に基づく、投資を行いながら重層化を図る。重層化とは既存ビジネス、既存のプラットフォーム以外にプラスアルファの売上の上がるビジネスを重層的に加えていくことである。流通総額が100億円を超える見込みなので、既存のプラットフォームも積極的に利活用していく。小売店向け流通プラットフォームを進化させ、直売所事業の枠を超える事業展開を行ったり、外食向けプラットフォームなどの新規事業の基盤を構築していく。例えば、物流面では自社センターを使った更なる事業展開を構築し、IT面では小売店バイヤー向けのアプリ開発を行い、人材面では全国の有力生産地を網羅できる体制を構築できる。同社のプラットフォームを使い実際の商品がスーパー等で販売されるという、言わば「リアルアマゾン」になるような戦略も考えている。そのため、今後、委託販売だけでなく、積極的に買取りを増やし、安定的な供給ができる体制作りを検討している。運輸関連業務、野菜、果物以外の商品の取扱いも視野に入ってきた。実際に定款に貨物自動車利用運送事業を追加し、チャーターしているトラックの空きスペースを利用して運送する業務を手掛ける予定だ。またスーパー等の青果売り場のシェアを高めるべくプロパー商品も生産者から買い取っていこうと考えている。

2019年8月期は中期経営計画の最終フェーズであり、物流、IT、人材への投資は継続しながら、投資計画の収益化により経常利益は60百万円を見込んでいる。具体的な投資内容としては、物流面では、自社の物流センターを横展開させ、ITに関しては、営業システムを強化、基幹システムを刷新する。特に、2019年8月度は消費税増税を盛り込んだシステム構築を行う。また人材に関しては、流通総額拡大のため、2019年8月期は15名の新規採用を行う予定である。

中期的な流通総額については、引き続き店舗数の増加を見込んでいるため、2019年8月期は12,000百万円、2020年8月期は16,000百万円と、2018年8月期が8,778百万円であるので、今後毎年前期比30%以上の増加を見込んでいる。


■株主還元

成長投資のための内部留保が基本方針
株主に対する利益還元については、同社は成長過程にあるため、配当による利益還元よりも、内部留保の充実を図り、事業の効率化と事業拡大のための投資に充当することの方が、株主に対する最大の利益還元につながると考えている。このため創業以来配当は実施しておらず、今後においても、経営体質強化、事業拡大のための内部留保を確保することを基本方針としている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 福田 徹)



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