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エルテス Research Memo(1):2019年2月期第3四半期は増収も、新規事業への先行費用により減益

注目トピックス 日本株
■要約

エルテス<3967>は、「リスクを解決する社会インフラの創出」をミッションに掲げ、リスク検知に特化したビッグデータ解析ソリューションを展開している。主力の「ソーシャルリスク関連サービス」は、SNSやブログ、検索サイトなどWeb上の様々なメディアに起因するリスクに対するソリューションを提供するものである。インターネットの普及やデジタルデバイスの進化により、利便性の向上と引き換えに様々なリスク(不適切な投稿等に伴う風評被害やネット炎上等)が顕在化するなか、ソーシャルメディアの監視から緊急対応、その後の対応まで、顧客のリスクマネジメントをワンストップで支援する独自のポジショニングにより高成長を実現してきた。最近では、企業内のログデータを対象として情報漏えいなどを検知する「内部脅威検知サービス」が大きく伸びている。

独自のデータ解析技術に加え、他社に先駆けて蓄積してきた教師データ(リスク事例)やコンサルティング力に強みがあり、有力ブランドを持つ大手企業を中心に累計400社(650ブランド)を超える導入実績を誇る。また、需要拡大が予想される「イベント安全サービス」や「デジタル信用調査」、「情報銀行向けソリューション」などの分野においても新サービスの提供を開始しており、同社は新たな成長フェーズに入ってきたと言える。

1. 2019年2月期第3四半期(累計)決算の概要
ただ、2019年2月期第3四半期(累計)の連結業績は、売上高が前年同期比2.7%増の1,231百万円、営業利益が同41.5%減の26百万円と緩やかな増収にとどまるとともに、新規事業への先行費用により減益となった。新たに注力している「内部脅威検知サービス」の拡大が増収に寄与。一方、緩やかな増収にとどまったのは、主力の「ソーシャルリスク事業」において、潜在顧客の掘り起し等に取り組んでいるものの、人員不足の影響等により進捗に遅れが生じていることが理由である。もっとも、継続率の高い「モニタリングサービス」への移行は順調に進んでおり、積み上げ型の収益構造に転換してきたところは評価すべきポイントと言える。損益面では、AIの活用(リスク判定等)による業務効率化を進めているものの、新規事業への先行費用の増加により、想定を下回る営業減益となった。したがって、第3四半期までの状況を総括すると、業績面では進捗の遅れがみられるものの、「内部脅威検知サービス」が大きく伸びてきたことや、「ソーシャルリスク事業」における収益構造の転換が着実に進んでいること、新規事業(イベント安全サービスやデジタル信用調査、本人認証技術の活用等)についても様々の進展がみられたことは、今後に向けて大きな成果と言っても良いだろう。

2. 2019年2月期の業績予想
2019年2月期の連結業績予想について同社は、修正予想(2018年7月12日付)を据え置き、売上高を前期比11.9%増の1,800百万円、営業利益を同39.5%増の100百万円と増収増益を見込んでいる。弊社では、第3四半期までの実績を鑑みれば、新規事業への積極投資を継続していることや、「ソーシャルリスク事業」の進捗に遅れがみられることから、業績予想の達成は簡単ではないとみている。もっとも、最大の注目点は、足元の業績よりも来期以降の成長加速に向けた活動の成果にある。すなわち、将来的な市場拡大を見据え、いかに他社に先駆けることができるか(更なる先行者利益の追求)が、今後の成長性を判断するうえで重要なポイントになると捉えている。特に、潜在顧客の掘り起しをどのように効率的に行っていくのか、足元で大きく伸びてきた「内部脅威検知サービス」の成長ペースをどこまで維持・向上させていくことができるか、ポテンシャルの大きな新規事業をいかに立ち上げていくのか、などに注目したい。また、「情報銀行」や「デジタルファースト法案」の成立を見据えた動きにも注意する必要がある。

3. 成長戦略
今後も、IoTやブロックチェーン、仮想通貨、自動運転など、新しいテクノロジーが出るたびに、新たなデジタルリスクの発生が予想されるが、それらのデジタルリスクに対応する形で事業領域の拡張を目指す方向性である。その方向性を示す指針として、形態を選択せずあらゆるデータを収集し、独自のリスク分析アルゴリズムをベースに各ソリューションを提供する「Eltes Data Intelligence構想」を掲げている。加えて、デジタルリスクから派生する新たな社会課題(テロ対策、電子政府化、金融犯罪対策等)の解決にも貢献していく方針である。

弊社では、デジタル化の進展に伴う新たなリスク対策ニーズの拡大や東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた社会的リスクの高まりなど外部環境が一段と追い風となるなか、他社に先行して優位性を構築してきた同社にとって、中長期的にも高い成長率を持続することは可能であるとみている。


■Key Points
・2019年2月期第3四半期(累計)は緩やかな増収にとどまるとともに、新規事業への先行費用により減益決算となった
・ただ、新たに注力している「内部脅威検知サービス」が大きく伸びてきたことや、需要拡大を見据えた新サービスの提供開始などでは大きな成果を残した
・今後も、テクノロジーの発展に伴う様々なデジタルリスクに対応する形で事業領域の拡張を目指す方向性を描いている
・特に、「情報銀行」や「デジタルファースト法案」の成立を見据えた動きにも注目したい

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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