エクスモーション Research Memo(3):開発現場でのワンストップ提供をするビジネスモデルが強み
[19/02/27]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■会社概要
2. 事業内容と同社の強み、主要顧客
(1) 事業内容
エクスモーション<4394>は自動車やロボット、医療機器等の製品に組み込まれる「組込みソフトウェア」の品質改善に特化したコンサルティングサービスを行っている。具体的には、企業が抱える組込みソフトウェアの様々な問題に対して、当該ソフトウェアの品質診断を行い、問題点を抽出・分析して解決策を提案するだけでなく、実際に開発現場においてコンサルティングを担当する同社社員が品質改善に必要となる技術支援(ソースコードの改善、Simulinkモデル、UMLモデルの作成・改善、部品化再利用に向けた総合的支援等)を行うことで、問題を確実に解決し、改善につなげるサービスを提供している。
特に、現在の主要顧客である自動車メーカーではCASE(接続性、自動運転、シェアリング、電動化)をテーマとした新たな開発が活発化するなかで、組込みソフトウェアも大規模化・複雑化が加速している。製品に新機能を追加する際には、組込みソフトウェアそのものが正常に作動するだけでなく、その他の機能の動作にも支障を与えず、また拡張性を持たせた設計を行う必要がある。ただ、実際には製品化するまでの時間やコストの問題で全体最適を実現するように開発はできておらず、結果として、ソフトウェアの構造を複雑なものにしてしまい、その後の機能追加を行う際の開発の生産性を低下させる要因となっている。こうした問題を解決するためには、ソフトウェアの「システムアーキテクチャ(設計構造)」を根底から見直す作業が必要となるが、その際には「設計のしやすさ」だけでなく「テストのしやすさ」「将来の拡張性」「運用・保守」に至るまで様々な利用シーンを考慮してシステム設計を行うことが必要不可欠となる。しかし、こうした全体最適を実現するシステム設計技術は、メーカーやその開発委託先(システム開発会社)が注力していない領域であり、同社が「技術参謀」として顧客の開発現場に入ってコンサルティングすることで解決している。
また、開発現場における人材育成サービス(トレーニング・セミナー等)や実際に業務で使用する品質診断ツール等の販売も行っているが、現状は同社のコンサルティングサービスを体験してもらうためのドアオープナー的な位置付けとしており、収益への影響は軽微となっている。人材育成により顧客がスキルアップすれば、同社に対するコンサルティングニーズがなくなるとの見方もあるが、システム設計技術は年々進化していること、また顧客よりも幅広い知識と豊富な品質改善ノウハウを持つことから、同社に対する引き合いはなくならないと言う。実際、直近3ヶ年の受注プロジェクトにおける「継続率+リピート率」は平均で約90%と高水準となっており、同社のサービスが高い評価を受けている証左と言える。
安定したリピート受注が見込めるため、同社のサービスはストック型ビジネスに近いという見方もできる。プロジェクトの契約期間は通常3〜6ヶ月だが、約90%が継続し、開発現場の要望で4〜5年といった長期で関与する場合もある。また、既存顧客内での他部門からの紹介や新規顧客からの新たな受注も獲得している。契約時期は顧客の決算期の関係もあって4月と10月が多い。現状は同社のコンサルティング要員がほぼフル稼働の状況であり、新規プロジェクトを追加で獲得する余力が限定的なことから、4月または10月が終わった段階でほぼ半年先までの売上高が見える状況となっている。
このうち、新規顧客については、同社が毎年11月に開催される組込みシステム技術の展示会に出展することで商談の機会を得ている。同社ブースを訪問した来場者にソリューションガイドブックを配布し、後日、Web経由などで問い合わせがあった中から受注につながる可能性が高い見込み顧客に対して、コンサルティングを担当する社員が要望や条件面などを確認した上で受注、契約を結ぶ格好となる。このため現状、同社には営業専任者はなく、コンサルティングを担当する社員が営業を兼務する体制となっている。受注額に関しては、プロジェクトに要する人数・期間で決めており、プロジェクト当たりの粗利率は45〜50%を適正水準として設定している。
通常、同社が業務を行う場合は、プロジェクトを管理するコンサルタント1名とコンサルタントの指示で作業を行うエンジニア数名の構成となっている。コンサルタントは2件程度のプロジェクトを同時並行で担当しており、週の半分をA社、残り半分をB社の開発現場に訪問して業務を行うスタイルが一般的となっている。また、全体の業務時間のうち、1割は最新技術動向に関する情報収集や教育等のスキル向上に充当している。コンサルティング要員については自動車業界からのニーズが強くなっていることから、2016年度以降採用活動を強化し始め、年間7名ペースで増やしている。ただ、それでも需要に対して供給が追い付かない状態が続いている。今回、株式上場を行ったのも、認知度の向上により優秀な人材を新卒・中途採用問わず多く採用することが目的の1つとなっている。実際、採用活動も上場以前よりはしやすくなっているようで、今後は年間10名程度のペースで人員を増やしていく予定にしている。
同社の場合、コンサルティング要員を採用する場合、当初はエンジニアとして採用し、一定期間(中途採用は1ヶ月、新卒採用は1年)研修を行った後に現場に配属している。エンジニアからコンサルタントに昇格するには、高度な知識だけでなく、コンサルタントとしての問題解決能力や顧客とのコミュニケーション能力等、多様なスキルが求められる。ハードルは高いものの、プロの技術者としてのやりがいもまた大きく、相応の報酬を得ることも可能となる。一般的にメーカーの開発部門やシステム開発会社では、エンジニアのキャリアアップとして、一定の経験を積めばプロジェクトマネージャーやプロダクトマネージャーに昇格するが、その先はマネジメント職しかなく、技術職としてのハイクラスなポジションは用意されていない。同社ではこうした経験値の高い優秀な技術者や成長志向の高い技術者等を集結させることで、組込みソフトウェア開発分野のコンサルティング会社としてリーディングカンパニーになることを目指している。2018年11月末のコンサルティングを担当する社員(コンサルタント及びエンジニア)は43名で、うち、コンサルタントは13名となっている。
なお、同社の業績は新規プロジェクトが4月からスタートするケースが多いこと、人員採用が上期に偏ることなどから、売上高、利益ともにやや下期偏重型となる傾向にある。
(2) 同社の強みと主要顧客
同社の強みは、専門性の高い人材により、組込みソフトウェアに特化したコンサルティング事業をワンストップで提供していることにある。特に、コンサルティング業務においては、実際に開発現場で同社社員が品質改善を実践し、顧客と一緒になってプロジェクトを成功に導くオンリーワンのビジネスモデルを構築していることが最大の強みとなっている。競合先としては、IT系コンサルティング会社や受託型SIベンダーなどが挙げられるが、IT系コンサルティグ会社の場合は問題の発見・要因分析から解決策の提案までは行うが、それを実践するのは全て顧客自身であり、実際に解決できるかどうかは不明である。また、SIベンダーの場合は、受託した部分についての問題解決は可能だが、システム全体を俯瞰できるわけではないので、全体最適によるシステム設計ができない。
このため、同社のコンサルティングサービスは顧客企業から実践的かつ効果的であるとの高い評価を受けており、日本の製造業を代表する大企業、とりわけ自動車メーカーが主要顧客となっている。2018年11月期の売上高構成比で見れば、SUBARUが36.4%、本田技術研究所が16.4%、ネクスティエレクトロニクス(トヨタ自動車)が15.7%と上位3社で7割近くを占めている。なかでもSUBARUは同社の最大顧客として毎年2〜3億円の売上げを安定してキープしている。ここ数年、SUBARUは好調な業績が続いてきたが、同社が開発面で技術参謀として携わってきたことも少なからず貢献したとの見方もできる。その他では、電装品や二輪車、農業機械、建設機械、産業機械等の分野でも大企業が同社の顧客となっている。なお、2019年1月時点で抱えているプロジェクト数は37プロジェクト、顧客数は19社となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<HN>
2. 事業内容と同社の強み、主要顧客
(1) 事業内容
エクスモーション<4394>は自動車やロボット、医療機器等の製品に組み込まれる「組込みソフトウェア」の品質改善に特化したコンサルティングサービスを行っている。具体的には、企業が抱える組込みソフトウェアの様々な問題に対して、当該ソフトウェアの品質診断を行い、問題点を抽出・分析して解決策を提案するだけでなく、実際に開発現場においてコンサルティングを担当する同社社員が品質改善に必要となる技術支援(ソースコードの改善、Simulinkモデル、UMLモデルの作成・改善、部品化再利用に向けた総合的支援等)を行うことで、問題を確実に解決し、改善につなげるサービスを提供している。
特に、現在の主要顧客である自動車メーカーではCASE(接続性、自動運転、シェアリング、電動化)をテーマとした新たな開発が活発化するなかで、組込みソフトウェアも大規模化・複雑化が加速している。製品に新機能を追加する際には、組込みソフトウェアそのものが正常に作動するだけでなく、その他の機能の動作にも支障を与えず、また拡張性を持たせた設計を行う必要がある。ただ、実際には製品化するまでの時間やコストの問題で全体最適を実現するように開発はできておらず、結果として、ソフトウェアの構造を複雑なものにしてしまい、その後の機能追加を行う際の開発の生産性を低下させる要因となっている。こうした問題を解決するためには、ソフトウェアの「システムアーキテクチャ(設計構造)」を根底から見直す作業が必要となるが、その際には「設計のしやすさ」だけでなく「テストのしやすさ」「将来の拡張性」「運用・保守」に至るまで様々な利用シーンを考慮してシステム設計を行うことが必要不可欠となる。しかし、こうした全体最適を実現するシステム設計技術は、メーカーやその開発委託先(システム開発会社)が注力していない領域であり、同社が「技術参謀」として顧客の開発現場に入ってコンサルティングすることで解決している。
また、開発現場における人材育成サービス(トレーニング・セミナー等)や実際に業務で使用する品質診断ツール等の販売も行っているが、現状は同社のコンサルティングサービスを体験してもらうためのドアオープナー的な位置付けとしており、収益への影響は軽微となっている。人材育成により顧客がスキルアップすれば、同社に対するコンサルティングニーズがなくなるとの見方もあるが、システム設計技術は年々進化していること、また顧客よりも幅広い知識と豊富な品質改善ノウハウを持つことから、同社に対する引き合いはなくならないと言う。実際、直近3ヶ年の受注プロジェクトにおける「継続率+リピート率」は平均で約90%と高水準となっており、同社のサービスが高い評価を受けている証左と言える。
安定したリピート受注が見込めるため、同社のサービスはストック型ビジネスに近いという見方もできる。プロジェクトの契約期間は通常3〜6ヶ月だが、約90%が継続し、開発現場の要望で4〜5年といった長期で関与する場合もある。また、既存顧客内での他部門からの紹介や新規顧客からの新たな受注も獲得している。契約時期は顧客の決算期の関係もあって4月と10月が多い。現状は同社のコンサルティング要員がほぼフル稼働の状況であり、新規プロジェクトを追加で獲得する余力が限定的なことから、4月または10月が終わった段階でほぼ半年先までの売上高が見える状況となっている。
このうち、新規顧客については、同社が毎年11月に開催される組込みシステム技術の展示会に出展することで商談の機会を得ている。同社ブースを訪問した来場者にソリューションガイドブックを配布し、後日、Web経由などで問い合わせがあった中から受注につながる可能性が高い見込み顧客に対して、コンサルティングを担当する社員が要望や条件面などを確認した上で受注、契約を結ぶ格好となる。このため現状、同社には営業専任者はなく、コンサルティングを担当する社員が営業を兼務する体制となっている。受注額に関しては、プロジェクトに要する人数・期間で決めており、プロジェクト当たりの粗利率は45〜50%を適正水準として設定している。
通常、同社が業務を行う場合は、プロジェクトを管理するコンサルタント1名とコンサルタントの指示で作業を行うエンジニア数名の構成となっている。コンサルタントは2件程度のプロジェクトを同時並行で担当しており、週の半分をA社、残り半分をB社の開発現場に訪問して業務を行うスタイルが一般的となっている。また、全体の業務時間のうち、1割は最新技術動向に関する情報収集や教育等のスキル向上に充当している。コンサルティング要員については自動車業界からのニーズが強くなっていることから、2016年度以降採用活動を強化し始め、年間7名ペースで増やしている。ただ、それでも需要に対して供給が追い付かない状態が続いている。今回、株式上場を行ったのも、認知度の向上により優秀な人材を新卒・中途採用問わず多く採用することが目的の1つとなっている。実際、採用活動も上場以前よりはしやすくなっているようで、今後は年間10名程度のペースで人員を増やしていく予定にしている。
同社の場合、コンサルティング要員を採用する場合、当初はエンジニアとして採用し、一定期間(中途採用は1ヶ月、新卒採用は1年)研修を行った後に現場に配属している。エンジニアからコンサルタントに昇格するには、高度な知識だけでなく、コンサルタントとしての問題解決能力や顧客とのコミュニケーション能力等、多様なスキルが求められる。ハードルは高いものの、プロの技術者としてのやりがいもまた大きく、相応の報酬を得ることも可能となる。一般的にメーカーの開発部門やシステム開発会社では、エンジニアのキャリアアップとして、一定の経験を積めばプロジェクトマネージャーやプロダクトマネージャーに昇格するが、その先はマネジメント職しかなく、技術職としてのハイクラスなポジションは用意されていない。同社ではこうした経験値の高い優秀な技術者や成長志向の高い技術者等を集結させることで、組込みソフトウェア開発分野のコンサルティング会社としてリーディングカンパニーになることを目指している。2018年11月末のコンサルティングを担当する社員(コンサルタント及びエンジニア)は43名で、うち、コンサルタントは13名となっている。
なお、同社の業績は新規プロジェクトが4月からスタートするケースが多いこと、人員採用が上期に偏ることなどから、売上高、利益ともにやや下期偏重型となる傾向にある。
(2) 同社の強みと主要顧客
同社の強みは、専門性の高い人材により、組込みソフトウェアに特化したコンサルティング事業をワンストップで提供していることにある。特に、コンサルティング業務においては、実際に開発現場で同社社員が品質改善を実践し、顧客と一緒になってプロジェクトを成功に導くオンリーワンのビジネスモデルを構築していることが最大の強みとなっている。競合先としては、IT系コンサルティング会社や受託型SIベンダーなどが挙げられるが、IT系コンサルティグ会社の場合は問題の発見・要因分析から解決策の提案までは行うが、それを実践するのは全て顧客自身であり、実際に解決できるかどうかは不明である。また、SIベンダーの場合は、受託した部分についての問題解決は可能だが、システム全体を俯瞰できるわけではないので、全体最適によるシステム設計ができない。
このため、同社のコンサルティングサービスは顧客企業から実践的かつ効果的であるとの高い評価を受けており、日本の製造業を代表する大企業、とりわけ自動車メーカーが主要顧客となっている。2018年11月期の売上高構成比で見れば、SUBARUが36.4%、本田技術研究所が16.4%、ネクスティエレクトロニクス(トヨタ自動車)が15.7%と上位3社で7割近くを占めている。なかでもSUBARUは同社の最大顧客として毎年2〜3億円の売上げを安定してキープしている。ここ数年、SUBARUは好調な業績が続いてきたが、同社が開発面で技術参謀として携わってきたことも少なからず貢献したとの見方もできる。その他では、電装品や二輪車、農業機械、建設機械、産業機械等の分野でも大企業が同社の顧客となっている。なお、2019年1月時点で抱えているプロジェクト数は37プロジェクト、顧客数は19社となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<HN>