Shinwa Research Memo(4):改正FIT法の影響等により、拡大してきたエネルギー関連事業が後退
[19/03/13]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 過去の業績推移
Shinwa Wise Holdings<2437>の上場後の業績推移を振り返ると、2006年5月期をピークとして2014年5月までは伸び悩みを続けてきた。特に2009年5月期はリーマンショックに伴う景気後退の影響を受けたことから取扱高及び売上高ともに大きく落ち込み、2期連続の営業赤字につながった。2011年5月期に黒字に転じたものの、その後も長引くデフレ経済の影響で、主力の近代美術オークションにおける平均落札単価が低迷し続けたことから、業績は停滞感のなかで推移してきた。
一方、2014年5月期から新たな収益の柱として参入したエネルギー関連事業が連結化されると、2015年5月期以降、大幅な事業拡大により同社の業績の伸びをけん引し、2017年5月期は過去最高の売上高を更新した。しかしながら、前期(2018年5月期)は、オークション関連事業において注力するプライベートセール(相対取引)などが伸びたものの、改正FIT法施行の影響により太陽光発電施設の販売が失速し、業績は大きく落ち込んだ。
財務面では、2013年5月期まではほぼ無借金経営を続けており、自己資本比率もおおむね70〜80%の高い水準を維持してきた。エネルギー関連事業及び医療機関向け支援事業を連結化した2014年5月期以降は、太陽光発電施設の販売拡大に伴う運転資金や自社保有分を有利子負債で賄ったことから自己資本比率は大きく低下してきたが、財務基盤の安定性に懸念を生じさせる水準ではない。むしろ、これまでの手堅い財務方針が、成長に向けた攻めの姿勢に転じたことを反映したものとして捉えることができる。
2019年5月期上期は大幅な増収増益(営業黒字化)を実現。オークション関連事業の伸びや損益改善への取組みが奏功
2. 2019年5月期上期業績の概要
2019年5月期上期の業績は、売上高は前年同期比62.1%増の1,962百万円、営業利益が50百万円(前年同期は38百万円の損失)、経常利益が31百万円(同65百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失が10百万円(同73百万円の損失)と大幅な増収増益となり、営業黒字化を実現した。
売上高は、すべての事業セグメントが伸長した。ただ、「オークション関連事業」が計画を上回るペースで拡大した一方、「エネルギー関連事業」及び「その他」は計画には届かなかった。特に、太陽光発電施設販売事業については、政府による電力買取価格(FIT)の引き下げの影響により、収益目線で投資対象となる新たな案件の確保が難しい状況にあるようだ。また、「その他」についても、マイクロファイナンス事業(ミャンマー)が順調に立ち上がってきたものの、中古不動産物件紹介事業(米国テキサス州)が伸び悩んだ。
利益面では、「オークション関連事業」の伸びなどにより営業黒字化を実現した。また、「エネルギー関連事業」については、前期に大幅な赤字を計上したPKS事業(マレーシア)の損益改善に取組み、損失幅が縮小したものの、依然改善が必要な状況が続いている。
財務状態については、現金及び預金や売掛金の減少等により総資産が前期末比14.6%減の5,228百万円に縮小した一方、自己資本は新株予約権の行使により同2.9%増の1,933百万円に増加したことから、自己資本比率は37.0%(前期末は30.7%)に改善した。有利子負債残高も前期末比20.5%減の2,044百万円に減少。流動比率も160.0%(前期末は144.5%)を確保しており、財務面での安全性に懸念はない。
各事業の決算概要は以下のとおりである。
(1) オークション関連事業
オークション関連事業は、取扱高が前年同期比44.6%増の2,840百万円、売上高が同63.6%増の1,369百万円、セグメント利益が同239.4%増の109百万円と計画を上回る大幅な増収増益となった。「オークション事業」においては、オークション会場改装工事の影響によりオークション開催回数が11回(前年同期は13回)に減少したが、近代陶芸オークション、その他オークション(ワインオークションや新たなジャンルとして開催したMANGAオークション等)などが好調であった。また、「オークション関連その他事業」についても、プライベートセール部門が大きく拡大。今期から本格的に手掛けているShinwa Priveの画廊事業にて大型案件の成約があったほか、新たに画廊スペースを設け、顧客ニーズに細やかに対応する体制を整えたことが奏功した。その他、高額ダイヤモンド販売事業も好調に推移しているようだ。
(2) エネルギー関連事業
エネルギー関連事業は、売上高が前年同期比50.3%増の546百万円、セグメント損失が28百万円(前年同期は67百万円)と増収となり、損失幅が縮小したが、計画にはとどかなかった。太陽光発電施設の販売については15基(前年同期は13基)と微増にとどまり、販売計画(通期目標52基)を大きく下回る進捗となった。利回り商品としての優良な発電施設に対する購入需要は根強いものの、購入希望者のニーズに合う案件の仕入れが進まない状況にあることが背景となっている。一方、PKS事業(マレーシア)は1万トンを販売。子会社保有の太陽光発電施設による売電事業も堅調に推移した。利益面では、前期に大幅な赤字を計上したPKS事業の損益改善(仕入原価等の見直し)に取組んだ結果、損失幅は縮小したものの、依然改善が必要な状況が続いている。
(3) その他
その他は、売上高が46百万円(前年同期は10百万円)、セグメント利益が26百万円(前年同期は2百万円の損失)と小規模ながら増収となり、黒字化を実現した。ただ、計画に対しては下回る進捗となっている。マイクロファイナンス事業(マレーシア)については順調に立ち上がっており、2019年1月からは2支店から4支店へと拠点を増やし、顧客数1万人体制を確立した。ただ、米国テキサス州の中古不動産物件紹介事業については販売実績が8件(通期目標17件)と伸び悩んだ。金融機関による購入者向けの融資が実行までに時間を要していることや、税制改正の動向に様子見ムードが広がったことが影響しているようだ。
以上から、上期業績を総括すると、すべての事業セグメントで増収増益を実現したが、計画に対しては太陽光発電施設販売事業や中古不動産紹介事業の下振れを「オークション関連事業」の上振れでカバーする格好となった。評価すべきポイントは、新たに設置した画廊スペースの貢献等により、注力するプライベートセール部門が大きく伸びてきたことや、高額ダイヤモンド販売事業、マイクロファイナンス事業などポテンシャルの大きな新規事業についても着実に立ち上がってきたところである。すなわち、ホールディング化による効果(事業ポートフォリオの確立)が形になってきたものとして捉えることができるだろう。一方、課題として残ったのは、これまでの成長をけん引してきた太陽光発電施設販売の失速(及びそれに代わる収益ドライバーの早期育成)とPKS事業の更なる損益改善に向けた取組みと言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 過去の業績推移
Shinwa Wise Holdings<2437>の上場後の業績推移を振り返ると、2006年5月期をピークとして2014年5月までは伸び悩みを続けてきた。特に2009年5月期はリーマンショックに伴う景気後退の影響を受けたことから取扱高及び売上高ともに大きく落ち込み、2期連続の営業赤字につながった。2011年5月期に黒字に転じたものの、その後も長引くデフレ経済の影響で、主力の近代美術オークションにおける平均落札単価が低迷し続けたことから、業績は停滞感のなかで推移してきた。
一方、2014年5月期から新たな収益の柱として参入したエネルギー関連事業が連結化されると、2015年5月期以降、大幅な事業拡大により同社の業績の伸びをけん引し、2017年5月期は過去最高の売上高を更新した。しかしながら、前期(2018年5月期)は、オークション関連事業において注力するプライベートセール(相対取引)などが伸びたものの、改正FIT法施行の影響により太陽光発電施設の販売が失速し、業績は大きく落ち込んだ。
財務面では、2013年5月期まではほぼ無借金経営を続けており、自己資本比率もおおむね70〜80%の高い水準を維持してきた。エネルギー関連事業及び医療機関向け支援事業を連結化した2014年5月期以降は、太陽光発電施設の販売拡大に伴う運転資金や自社保有分を有利子負債で賄ったことから自己資本比率は大きく低下してきたが、財務基盤の安定性に懸念を生じさせる水準ではない。むしろ、これまでの手堅い財務方針が、成長に向けた攻めの姿勢に転じたことを反映したものとして捉えることができる。
2019年5月期上期は大幅な増収増益(営業黒字化)を実現。オークション関連事業の伸びや損益改善への取組みが奏功
2. 2019年5月期上期業績の概要
2019年5月期上期の業績は、売上高は前年同期比62.1%増の1,962百万円、営業利益が50百万円(前年同期は38百万円の損失)、経常利益が31百万円(同65百万円の損失)、親会社株主に帰属する四半期純損失が10百万円(同73百万円の損失)と大幅な増収増益となり、営業黒字化を実現した。
売上高は、すべての事業セグメントが伸長した。ただ、「オークション関連事業」が計画を上回るペースで拡大した一方、「エネルギー関連事業」及び「その他」は計画には届かなかった。特に、太陽光発電施設販売事業については、政府による電力買取価格(FIT)の引き下げの影響により、収益目線で投資対象となる新たな案件の確保が難しい状況にあるようだ。また、「その他」についても、マイクロファイナンス事業(ミャンマー)が順調に立ち上がってきたものの、中古不動産物件紹介事業(米国テキサス州)が伸び悩んだ。
利益面では、「オークション関連事業」の伸びなどにより営業黒字化を実現した。また、「エネルギー関連事業」については、前期に大幅な赤字を計上したPKS事業(マレーシア)の損益改善に取組み、損失幅が縮小したものの、依然改善が必要な状況が続いている。
財務状態については、現金及び預金や売掛金の減少等により総資産が前期末比14.6%減の5,228百万円に縮小した一方、自己資本は新株予約権の行使により同2.9%増の1,933百万円に増加したことから、自己資本比率は37.0%(前期末は30.7%)に改善した。有利子負債残高も前期末比20.5%減の2,044百万円に減少。流動比率も160.0%(前期末は144.5%)を確保しており、財務面での安全性に懸念はない。
各事業の決算概要は以下のとおりである。
(1) オークション関連事業
オークション関連事業は、取扱高が前年同期比44.6%増の2,840百万円、売上高が同63.6%増の1,369百万円、セグメント利益が同239.4%増の109百万円と計画を上回る大幅な増収増益となった。「オークション事業」においては、オークション会場改装工事の影響によりオークション開催回数が11回(前年同期は13回)に減少したが、近代陶芸オークション、その他オークション(ワインオークションや新たなジャンルとして開催したMANGAオークション等)などが好調であった。また、「オークション関連その他事業」についても、プライベートセール部門が大きく拡大。今期から本格的に手掛けているShinwa Priveの画廊事業にて大型案件の成約があったほか、新たに画廊スペースを設け、顧客ニーズに細やかに対応する体制を整えたことが奏功した。その他、高額ダイヤモンド販売事業も好調に推移しているようだ。
(2) エネルギー関連事業
エネルギー関連事業は、売上高が前年同期比50.3%増の546百万円、セグメント損失が28百万円(前年同期は67百万円)と増収となり、損失幅が縮小したが、計画にはとどかなかった。太陽光発電施設の販売については15基(前年同期は13基)と微増にとどまり、販売計画(通期目標52基)を大きく下回る進捗となった。利回り商品としての優良な発電施設に対する購入需要は根強いものの、購入希望者のニーズに合う案件の仕入れが進まない状況にあることが背景となっている。一方、PKS事業(マレーシア)は1万トンを販売。子会社保有の太陽光発電施設による売電事業も堅調に推移した。利益面では、前期に大幅な赤字を計上したPKS事業の損益改善(仕入原価等の見直し)に取組んだ結果、損失幅は縮小したものの、依然改善が必要な状況が続いている。
(3) その他
その他は、売上高が46百万円(前年同期は10百万円)、セグメント利益が26百万円(前年同期は2百万円の損失)と小規模ながら増収となり、黒字化を実現した。ただ、計画に対しては下回る進捗となっている。マイクロファイナンス事業(マレーシア)については順調に立ち上がっており、2019年1月からは2支店から4支店へと拠点を増やし、顧客数1万人体制を確立した。ただ、米国テキサス州の中古不動産物件紹介事業については販売実績が8件(通期目標17件)と伸び悩んだ。金融機関による購入者向けの融資が実行までに時間を要していることや、税制改正の動向に様子見ムードが広がったことが影響しているようだ。
以上から、上期業績を総括すると、すべての事業セグメントで増収増益を実現したが、計画に対しては太陽光発電施設販売事業や中古不動産紹介事業の下振れを「オークション関連事業」の上振れでカバーする格好となった。評価すべきポイントは、新たに設置した画廊スペースの貢献等により、注力するプライベートセール部門が大きく伸びてきたことや、高額ダイヤモンド販売事業、マイクロファイナンス事業などポテンシャルの大きな新規事業についても着実に立ち上がってきたところである。すなわち、ホールディング化による効果(事業ポートフォリオの確立)が形になってきたものとして捉えることができるだろう。一方、課題として残ったのは、これまでの成長をけん引してきた太陽光発電施設販売の失速(及びそれに代わる収益ドライバーの早期育成)とPKS事業の更なる損益改善に向けた取組みと言える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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