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Shinwa Research Memo(7):富裕層向けビジネスの展開等により事業ポートフォリオを確立

注目トピックス 日本株
■成長戦略とその進捗

1. 前中期経営計画の総括
Shinwa Wise Holdings<2437>は、前期(2018年5月期)を最終年度とする中期経営計画(5ヶ年計画)を推進してきた。「オークション事業の拡大」と「新規事業の育成による安定収益源の確保」「アジア戦略」の3つを成長戦略の柱に掲げ、日本の美術品オークション市場の再生に貢献するとともに、「アートから始まる富裕層向けセレクトサービスカンパニー」へと事業ドメインを拡充することにより、安定収益源の確保と財務基盤の強化に取組んできた。しかしながら、オークション事業の本格的な回復に遅れが生じたなかで、新たな収益源として業績の伸びをけん引してきた太陽光発電施設の販売についても改正FIT法施行の影響等により失速し、最終年度の目標値(売上高145億円)を大きく下回る結果となった。もっとも、太陽光発電施設の販売拡大を契機として、戦略子会社構想の実現や様々な新規事業の展開、ホールディングス化による事業ポートフォリオの整備など、今後の富裕層向けビジネスの展開に向けた体制づくりにおいては大きな成果を残したと評価しても良いだろう。特に、「ダイヤモンド倶楽部」「PKS」「マイクロファイナンス」など、今後の成長軸となり得る新しい事業に取組み、持続的な成長に向けた体制が整ってきた。

2. グループ事業戦略の方向性
ホールディングス体制への移行に伴い、グループ事業戦略における今後の方向性が示された。ただ、第1次中期経営計画からの流れに大きな変更はないようだ。引き続き、1)日本近代美術再生プロジェクト、2)富裕層ネットワークの活用、のほか、3)次世代の社会インフラを担うプラットフォームの構築、を戦略の根幹に据えるとともに、富裕層向けビジネスから派生する新たな展開により、事業ポートフォリオの確立(新たな組織づくり)に取組む方針である。

(1) 日本近代美術再生プロジェクト
同社は、長期間にわたるデフレ経済の下で停滞してきたオークション市場の回復、ひいては本来あるべき市場規模に再評価されることを目標に、「日本近代美術再生プロジェクト」と銘打ち、資本力を駆使した大きなプラットフォームを構築することでオークション事業の拡大に取組む方針である。具体的には、同社がマーケットメイク機能※を果たすことで市場に厚みを持たせ、取引の活性化と市場の拡大に結び付ける戦略である。加えて、自ら取引の当事者となることは、富裕層とのネットワークを構築する上でもプラスの効果が働くと考えている。同社は、日本の美術品オークション市場は最低でも1,500億円(現在の約10倍)の規模が適正な水準と考えており、その市場規模を支えるためには、最低150億円の純資産を確保し、安心できるプラットフォームの運用を実現しなければならないとしている。

※同社が当事者として取引に参加することで市場の流動性や効率性を高める手法のこと。


(2) 富裕層ネットワークの活用
同社は、これまでオークションから派生する富裕層向けビジネスとして、太陽光発電施設の販売をはじめ、独自の「医療ツーリズム」及び「アンチエイジング(サプリメント販売など)」のほか、資産防衛を目的とした「シンワダイヤモンド倶楽部」の発足、海外不動産の紹介など、富裕層マーケティングが生かせる分野へと事業領域を拡大することで安定収益源の確保と財務基盤の強化に取組んできた。今後も、これまで培ってきた富裕層ネットワークとグループ一体となった営業力をさらに強化し、富裕層ニーズを的確に捉えた同社ならではの新事業を展開していく方針である。

(3) 次世代の社会インフラを担うプラットフォームの構築
さらには、決済機能として期待される仮想通貨取引所への投資※1、ブロックチェーンを活用した美術品認証や取引(スマートコントラクト)※2のほか、マイクロファイナンスや新たなメディカル分野、インターネットオークションなど、次世代の社会インフラを担う様々なプラットフォームの開発・運営を行う構想を描いている。

※1 2017年4月にフィスコ仮想通貨取引所と資本業務提携契約を締結している。
※2 2018年3月には、フィスコ仮想通貨取引所の子会社であるレジストアートと資本業務提携契約を締結している。レジストアートは、ブロックチェーン上に芸術作品を登録し、会員向けに作品の検索・照合・販売サービスを行うプラットフォームのシステム構築を目指している。


弊社でも、富裕層向けビジネスの展開により財務基盤の強化と富裕層ネットワークの拡大を図りながら、「日本近代美術再生プロジェクト」を成功に導く戦略シナリオは理にかなっていると評価している。また、これまでの活動を振り返ると、グループとしての事業構造に加えて、戦略子会社を中心として企業カルチャーにおいても大きな変化(待ちから攻めへのマインドセットなど)が生まれてきたことはプラスに評価して良いだろう。今期(2019年5月期)はPKS事業の立て直し等により損益改善を優先する方針だが、ホールディングス体制による効果を含め、富裕層向けビジネスの拡大に向けた展開スピードやグループシナジーの発現、新たな収益ドライバーの育成のほか、美術品市場の活性化に向けたプライベート取引(アートディーリング)の進展やアジア戦略についても、中長期的な視点から今後の動向に注目していきたい。特に、独自分野でのプラットフォーム構想は、先行者利益の獲得が期待でき、他社に先駆けて展開する同社にとっては、大きなアドバンテージとポテンシャルを有するものとみている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)



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