ソフトブレーン Research Memo(6):フロー型からストック型へ、2021年以降成長スピードが一段と加速
[19/03/15]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中期経営計画
1. 基本方針と経営数値目標
ソフトブレーン<4779>は、2018年1月に2020年12月期を最終年度とする3ヶ年の中期経営計画を発表した。基本方針としては、2021年以降の急成長を目指すため、「フロー型からストック型の収益モデル」への構造改革に取り組むことを掲げ、また、重点施策としては既存ビジネスにおける継続的な成長と、新規ビジネスによる成長のための構造改革を進めていく方針を打ち出している。
また、経営数値目標としては2020年12月期に連結売上高113億円、営業利益15億円、営業利益率14%を掲げている。主力の営業イノベーション事業やフィールドマーケティング事業が収益のけん引役となるが、システム開発事業や出版事業も堅調な推移を見込んでいる。
「eセールスマネージャー」は新製品投入により顧客層を拡大することで2021年以降成長が加速
2. 事業別成長戦略
(1) 営業イノベーション事業
営業イノベーション事業における市場環境は、引き続き追い風が続く見通しだ。国内の生産年齢人口が減少傾向をたどるなかで、企業にとっては「生産性向上」と「売上拡大」が経営の重要課題となっており、それを解決するソリューションとして、同社の「eセールスマネージャー」(仕組みづくり)や営業コンサルティング、トレーニングサービス(型づくり)の成長余地は大きいと見られる。SFA(営業支援ソフト)を提供する競合企業は多いが、コンサルティングやトレーニング、サポート等の導入前・導入後のサービスまでトータルソリューションとして提案できる企業は少なく、同社の強みの1つとなる。
対象市場のポテンシャルは、日本の全企業(約410万社)、総営業員数260万人のうち、IT投資余力のある「大企業」と「黒字の中堅・中小企業」となり、社数で見れば約22万社、営業人員で160万人がターゲットとなる。同社の推計によれば、SFAの導入比率はターゲットとする約22万社のうち14%程度とまだ低く、また、導入してもアクティブにその機能を使いこなせている企業は全体の3.5%にしか過ぎないと見ている。アクティブ率に関しては、同社が営業活動を行うなかで他社製品を利用している企業の利用状況などから推計している。こうした状況を鑑みると、SFAの成長ポテンシャルは依然大きいと言えるだろう。
同社ではこうした市場環境下で、「既存モデルの強化」に加えて、従来アプローチしきれていなかった「中堅・中小企業」と規制産業・特殊業務が発生する「特定業種」向けに最適な製品・サービスをカスタマイズして開発、提供していくことで、顧客層の拡大を図り収益成長を目指していく戦略となっている。
「中堅・中小企業」向けの製品としては、前述したようにセルフサーブ型の「eセールスマネージャーRemix MS」を今後拡販していく予定になっている。問い合わせから導入、各種設定、契約まですべてをインターネットで完結するため、従来品とほぼ同等の機能で約6割の月額利用料金(3,500円〜/ID)を実現したことで、中堅・中小企業でも導入の敷居を低くしている。30日間の無料トライアル期間で同社製品の「使い勝手」の良さを実感してもらい、本契約に結び付けていく考えだ。現在はユーザーの声を反映させ機能の改良・拡充を進めている段階にあり、完成度が高まった段階で販促活動を本格的に開始する予定にしている。
また、「特定業種」向けの製品については業界大手で既に同社の顧客となっている企業の協力を仰ぎながら、当該業界でベストなSFAツールを開発、標準化し、業界内での顧客開拓を進めていく戦略となっている。従来は、顧客ごとのニーズに合わせて個別に開発していたが、標準化することで開発コストを低減し、価格競争力向上によって顧客を開拓していく戦略だ。対象業種としては、金融、製薬、不動産業界等の営業人員を多く抱える業界をターゲットとしており、既に個別で開発を進めているが、標準化の時期についてはまだ未定となっている。
中期経営計画での業績目標は、2020年12月期に売上高65億円、営業利益で12億円、営業利益率18%を掲げており、目標値には「中堅・中小企業」「特定業種」向け新製品の収益貢献については織り込んでおらず、既存モデルの成長を前提とした数値となっている。営業利益率に関しては開発投資を継続的に行っていくため18%の水準を維持していく計画となっているが、ストック収益の売上比率に関しては2018年12月期実績の5割弱から7割程度まで引き上げていく考えで、収益の安定性は向上するものと予想される。2021年以降は、企業でのSFAの普及が一段と加速化するほか、新製品の収益貢献も見込まれることから、売上成長率は年率20〜30%と加速化し、高成長フェーズに入ると会社側では見ている。
(2) フィールドマーケティング事業
フィールドマーケティング事業を取り巻く市場環境は、少子高齢化の進展や企業の働き方改革への取り組み、アウトソーシングの活用などによって今後も追い風が続くと予想される。特に、女性活躍推進法など女性労働力の活用を促進する法整備が進んでいることもあり、新たな労働力として主婦層の活用が進むと見られる。
同社の推計によれば、消費財メーカーの店舗ラウンダーの市場規模は1,000億円程度(潜在需要含む)と見られ、このうち同社の売上げは37億円と約3%の水準となっている。今後も消費財メーカーにおけるラウンダー業務のアウトソーシング化の流れは続くため、同市場だけでも成長余地は大きいが、同社では更なる成長を目指すため、フィールド(営業)市場のアウトソーシング需要も取り込んでいくことを計画している。前述したとおり既にBtoB企業に対して営業代行業務の受注実績が出始めており、今後も特定スキルが要求されない分野で積極的にフィールドマーケティングの提案を推進し、受注獲得につなげていく方針だ。こうしたフィールド市場全体で見れば2兆円の市場規模(アウトソーシング率10%と仮定)があると見られ、潜在的なポテンシャルは大きい。また、長期的には全国の地域コミュニティに張り巡らされた主婦ネットワークを最大活用することで、地域コミュニティの活性化につながるサービスを提供していくことも想定している。高齢者に対する買い物や家事等の生活支援サービスなどが考えられる。
そのほか、新サービスとして取り組んでいる「Point of Buy®」(購買理由データ提供サービス)についても注目される。現在は消費者購買データ量の拡充を進めるための先行投資段階だが、データ収集体制が構築できれば付加価値の高いサービスとして収益柱に育つ可能性がある。同社の計画では購買理由付きデータの収集体制を2019年に月間180万枚、2020年に同300万枚まで拡大することを目指している。月間300万枚の購買理由付きデータを収集することができれば日本で最大級のデータ量となり、既存のPOSデータを使った購買データと信頼性はほぼ遜色がなくなるだけでなく、購買理由といった付加価値データが加わるため、企業のマーケティング戦略上、有効なデータとして活用される可能性が高まると考えられる。企業側から見れば、自社及び競合商品の販売動向だけでなく、消費者の購買理由なども分析することが可能になるためだ。このため、同社では現在、約25.6万人のアンケート会員を増やすため、会員を多く抱える企業との業務提携を推進していく方針となっている。
中期経営計画での業績目標は、2020年12月期に売上高39億円、営業利益で3.4億円、営業利益率9%を掲げているが、前述したとおり2018年12月期が計画を上回るペースとなっており、今後も中期経営計画を上回るペースで推移する可能性が高い。また、同事業についても2021年以降はBtoB企業向けの受注拡大や「Point of Buy®」サービスが立ち上がることによって、売上成長率は年率10〜20%と加速していく見通しとなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 基本方針と経営数値目標
ソフトブレーン<4779>は、2018年1月に2020年12月期を最終年度とする3ヶ年の中期経営計画を発表した。基本方針としては、2021年以降の急成長を目指すため、「フロー型からストック型の収益モデル」への構造改革に取り組むことを掲げ、また、重点施策としては既存ビジネスにおける継続的な成長と、新規ビジネスによる成長のための構造改革を進めていく方針を打ち出している。
また、経営数値目標としては2020年12月期に連結売上高113億円、営業利益15億円、営業利益率14%を掲げている。主力の営業イノベーション事業やフィールドマーケティング事業が収益のけん引役となるが、システム開発事業や出版事業も堅調な推移を見込んでいる。
「eセールスマネージャー」は新製品投入により顧客層を拡大することで2021年以降成長が加速
2. 事業別成長戦略
(1) 営業イノベーション事業
営業イノベーション事業における市場環境は、引き続き追い風が続く見通しだ。国内の生産年齢人口が減少傾向をたどるなかで、企業にとっては「生産性向上」と「売上拡大」が経営の重要課題となっており、それを解決するソリューションとして、同社の「eセールスマネージャー」(仕組みづくり)や営業コンサルティング、トレーニングサービス(型づくり)の成長余地は大きいと見られる。SFA(営業支援ソフト)を提供する競合企業は多いが、コンサルティングやトレーニング、サポート等の導入前・導入後のサービスまでトータルソリューションとして提案できる企業は少なく、同社の強みの1つとなる。
対象市場のポテンシャルは、日本の全企業(約410万社)、総営業員数260万人のうち、IT投資余力のある「大企業」と「黒字の中堅・中小企業」となり、社数で見れば約22万社、営業人員で160万人がターゲットとなる。同社の推計によれば、SFAの導入比率はターゲットとする約22万社のうち14%程度とまだ低く、また、導入してもアクティブにその機能を使いこなせている企業は全体の3.5%にしか過ぎないと見ている。アクティブ率に関しては、同社が営業活動を行うなかで他社製品を利用している企業の利用状況などから推計している。こうした状況を鑑みると、SFAの成長ポテンシャルは依然大きいと言えるだろう。
同社ではこうした市場環境下で、「既存モデルの強化」に加えて、従来アプローチしきれていなかった「中堅・中小企業」と規制産業・特殊業務が発生する「特定業種」向けに最適な製品・サービスをカスタマイズして開発、提供していくことで、顧客層の拡大を図り収益成長を目指していく戦略となっている。
「中堅・中小企業」向けの製品としては、前述したようにセルフサーブ型の「eセールスマネージャーRemix MS」を今後拡販していく予定になっている。問い合わせから導入、各種設定、契約まですべてをインターネットで完結するため、従来品とほぼ同等の機能で約6割の月額利用料金(3,500円〜/ID)を実現したことで、中堅・中小企業でも導入の敷居を低くしている。30日間の無料トライアル期間で同社製品の「使い勝手」の良さを実感してもらい、本契約に結び付けていく考えだ。現在はユーザーの声を反映させ機能の改良・拡充を進めている段階にあり、完成度が高まった段階で販促活動を本格的に開始する予定にしている。
また、「特定業種」向けの製品については業界大手で既に同社の顧客となっている企業の協力を仰ぎながら、当該業界でベストなSFAツールを開発、標準化し、業界内での顧客開拓を進めていく戦略となっている。従来は、顧客ごとのニーズに合わせて個別に開発していたが、標準化することで開発コストを低減し、価格競争力向上によって顧客を開拓していく戦略だ。対象業種としては、金融、製薬、不動産業界等の営業人員を多く抱える業界をターゲットとしており、既に個別で開発を進めているが、標準化の時期についてはまだ未定となっている。
中期経営計画での業績目標は、2020年12月期に売上高65億円、営業利益で12億円、営業利益率18%を掲げており、目標値には「中堅・中小企業」「特定業種」向け新製品の収益貢献については織り込んでおらず、既存モデルの成長を前提とした数値となっている。営業利益率に関しては開発投資を継続的に行っていくため18%の水準を維持していく計画となっているが、ストック収益の売上比率に関しては2018年12月期実績の5割弱から7割程度まで引き上げていく考えで、収益の安定性は向上するものと予想される。2021年以降は、企業でのSFAの普及が一段と加速化するほか、新製品の収益貢献も見込まれることから、売上成長率は年率20〜30%と加速化し、高成長フェーズに入ると会社側では見ている。
(2) フィールドマーケティング事業
フィールドマーケティング事業を取り巻く市場環境は、少子高齢化の進展や企業の働き方改革への取り組み、アウトソーシングの活用などによって今後も追い風が続くと予想される。特に、女性活躍推進法など女性労働力の活用を促進する法整備が進んでいることもあり、新たな労働力として主婦層の活用が進むと見られる。
同社の推計によれば、消費財メーカーの店舗ラウンダーの市場規模は1,000億円程度(潜在需要含む)と見られ、このうち同社の売上げは37億円と約3%の水準となっている。今後も消費財メーカーにおけるラウンダー業務のアウトソーシング化の流れは続くため、同市場だけでも成長余地は大きいが、同社では更なる成長を目指すため、フィールド(営業)市場のアウトソーシング需要も取り込んでいくことを計画している。前述したとおり既にBtoB企業に対して営業代行業務の受注実績が出始めており、今後も特定スキルが要求されない分野で積極的にフィールドマーケティングの提案を推進し、受注獲得につなげていく方針だ。こうしたフィールド市場全体で見れば2兆円の市場規模(アウトソーシング率10%と仮定)があると見られ、潜在的なポテンシャルは大きい。また、長期的には全国の地域コミュニティに張り巡らされた主婦ネットワークを最大活用することで、地域コミュニティの活性化につながるサービスを提供していくことも想定している。高齢者に対する買い物や家事等の生活支援サービスなどが考えられる。
そのほか、新サービスとして取り組んでいる「Point of Buy®」(購買理由データ提供サービス)についても注目される。現在は消費者購買データ量の拡充を進めるための先行投資段階だが、データ収集体制が構築できれば付加価値の高いサービスとして収益柱に育つ可能性がある。同社の計画では購買理由付きデータの収集体制を2019年に月間180万枚、2020年に同300万枚まで拡大することを目指している。月間300万枚の購買理由付きデータを収集することができれば日本で最大級のデータ量となり、既存のPOSデータを使った購買データと信頼性はほぼ遜色がなくなるだけでなく、購買理由といった付加価値データが加わるため、企業のマーケティング戦略上、有効なデータとして活用される可能性が高まると考えられる。企業側から見れば、自社及び競合商品の販売動向だけでなく、消費者の購買理由なども分析することが可能になるためだ。このため、同社では現在、約25.6万人のアンケート会員を増やすため、会員を多く抱える企業との業務提携を推進していく方針となっている。
中期経営計画での業績目標は、2020年12月期に売上高39億円、営業利益で3.4億円、営業利益率9%を掲げているが、前述したとおり2018年12月期が計画を上回るペースとなっており、今後も中期経営計画を上回るペースで推移する可能性が高い。また、同事業についても2021年以降はBtoB企業向けの受注拡大や「Point of Buy®」サービスが立ち上がることによって、売上成長率は年率10〜20%と加速していく見通しとなっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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