馬渕磨理子が実践!トレードステーション利用術:再生医療元年から5年目、『市場が本格化の兆し』
[19/03/20]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
皆さま、こんにちは。フィスコ企業リサーチレポーターの馬渕磨理子です。
『馬渕磨理子が実践!トレードステーション利用術』と題して、私が普段のトレードで使っている分析ツール「トレードステーション」について、その活用方法を、最新のニュース情報も交えながらお話しする連載です。
☆バイオ関連の中でも再生医療に注目
■「再生医療」商用化がスタート
バイオ関連は、再生医療分野・遺伝子治療分野・創薬ベンチャー分野に分けることが可能です。今回は、特に「再生医療分野」に注目してみましょう。
再生医療等安全性確保法が施行された2014年は、業界では「再生医療元年」と呼ばれています。それから5年目を迎える今年は、高齢化などに伴う「膝関節の病気」において、その治療で応用する再生医療がいよいよ商用化の段階に入ります。
各社が着目するのは膝関節の病気「変形性膝関節症」で、潜在患者数は高齢者を中心に国内だけで2,500万人いるといわれています。これまでは手術で人工関節を導入するしか根治する方法はありませんでしたが、患者数が多いこの病気に再生医療を応用することで、市場が一気に広がりそうです。治療法が浸透し関連産業が活性化すれば、再生医療で日本が世界をリードする可能性もあります。経産省は、世界の再生医療関連市場の規模が2012年の2,400億円から、2030年には5兆2,000億円へ拡大すると予測しています。
■再生医療への応用が期待される『幹細胞』
再生医療は、幹細胞等を用いて、壊れた臓器や組織を再生し、失われた人体機能の回復をめざす医療です。幹細胞は、細胞をつくりだす能力を有しており、細胞分裂の際に自分と同じ能力の幹細胞に分裂することも、他の細胞に分化することも可能といわれています。
幹細胞には大きく2種類があり、ひとつは特定の組織や臓器に存在するタイプの幹細胞(組織幹細胞)です。例えば造血幹細胞は血液系の細胞のみ、というように決まった種類の細胞をつくりだします。もうひとつは、体内の細胞であればどの細胞でもつくりだす事ができるタイプの幹細胞(多能性幹細胞)です。なお、ノーベル賞受賞で話題となったiPS細胞は人工的に作成した多能性幹細胞のことです。
■Muse(ミューズ)細胞の存在にも注目が集まる
三菱ケミカルホールディングス<4188>の子会社である生命科学インスティテュートが開発を続けている「Muse細胞」にも、再生医療の可能性が期待されています。Muse細胞はもともと体内に存在している自然の幹細胞なので、腫瘍を形成する可能性が低いこと、さらに、点滴投与なので体への負担が少ないことや、一つのMuse細胞製剤で多くの疾患に適用可能などのメリットがあります。
Muse細胞は、2010年に東北大学の出澤真理教授らのグループにより発見された多能性幹細胞で、2018年1月にはMuse細胞製剤を用いた急性心筋梗塞の臨床試験を、同年9月には脳梗塞患者を対象とした治験開始を発表しています。表皮水疱症の治療に向けた探索的臨床試験も開始されており、今後もMuse細胞を用いた再生医療の研究に注目が集まると考えられます。
■再生医療関連の注目銘柄
JCRファーマ<4552>は、主力の遺伝子組換えヒト成長ホルモン製剤「グロウジェクト」の伸長に加え、日本初の他家由来の再生医療等製品である「テムセル」も実績を伸ばしています。テムセルは造血幹細胞移植後に発症する重篤な合併症である急性GVHDの治療製品として、開発が進められてきたものです。同社は13年3月期以降、今期予想を含め7期連続で増収増益であり、バイオ関連の好業績銘柄としても注目されます。
膝関節の再生医療分野では、グンゼ<3002>が今年1月に軟骨再生を促す繊維シートを欧州で発売しています。オリンパス<7733>は1月に患者の軟骨を培養し体内に戻す治験を国内で始め、2023年3月までに承認申請する予定です。中外製薬<4519>もスタートアップ企業のツーセルと膝軟骨再生細胞治療製品の研究を続けており、2021年にも承認を得たい考えです。旭化成<3407>は軟骨の治療にiPS細胞を使う権利を京都大学などから獲得しています。
膝軟骨以外では、ニプロ<8086>が開発した脊髄損傷の治療用の細胞が昨年12月、再生医療等製品として厚労省に承認されています。塩野義製薬<4507>は、昨年9月にロート製薬<4527>とライセンス契約を締結しており、ロート製薬が肝硬変を対象に再生医療の開発を進めている製品候補の独占的な開発・販売権を獲得しています。ロート製薬は製品の供給を、塩野義製薬は開発・販売および製造販売後調査等を実施することで両社は連携していく考えです。
バイオベンチャー企業だけでなく、大手企業も参入し、市場はますます盛り上がることが予想されます。ただ、値動きの激しい側面もありますので注意も必要ですね。
(その他の代表的な『再生医療関連』の銘柄リストは、『マネックス証券トレードステーションのHP コラム・レポートのページ』からダウンロードできます。)
次回も、このような形で、話題のニュースから読み解いたテーマとトレードステーションのツールについてお話しします。
※「馬渕磨理子が実践!トレードステーション利用術」は、米国TradeStation Groupが開発したトレーディングツール「トレードステーション」の日本語版(マネックス証券が提供)を馬渕磨理子の見解で注目し、コメントしたものです。開発会社や日本語版提供会社との見解とは異なる場合があります。
(フィスコ企業リサーチレポーター 馬渕磨理子)
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『馬渕磨理子が実践!トレードステーション利用術』と題して、私が普段のトレードで使っている分析ツール「トレードステーション」について、その活用方法を、最新のニュース情報も交えながらお話しする連載です。
☆バイオ関連の中でも再生医療に注目
■「再生医療」商用化がスタート
バイオ関連は、再生医療分野・遺伝子治療分野・創薬ベンチャー分野に分けることが可能です。今回は、特に「再生医療分野」に注目してみましょう。
再生医療等安全性確保法が施行された2014年は、業界では「再生医療元年」と呼ばれています。それから5年目を迎える今年は、高齢化などに伴う「膝関節の病気」において、その治療で応用する再生医療がいよいよ商用化の段階に入ります。
各社が着目するのは膝関節の病気「変形性膝関節症」で、潜在患者数は高齢者を中心に国内だけで2,500万人いるといわれています。これまでは手術で人工関節を導入するしか根治する方法はありませんでしたが、患者数が多いこの病気に再生医療を応用することで、市場が一気に広がりそうです。治療法が浸透し関連産業が活性化すれば、再生医療で日本が世界をリードする可能性もあります。経産省は、世界の再生医療関連市場の規模が2012年の2,400億円から、2030年には5兆2,000億円へ拡大すると予測しています。
■再生医療への応用が期待される『幹細胞』
再生医療は、幹細胞等を用いて、壊れた臓器や組織を再生し、失われた人体機能の回復をめざす医療です。幹細胞は、細胞をつくりだす能力を有しており、細胞分裂の際に自分と同じ能力の幹細胞に分裂することも、他の細胞に分化することも可能といわれています。
幹細胞には大きく2種類があり、ひとつは特定の組織や臓器に存在するタイプの幹細胞(組織幹細胞)です。例えば造血幹細胞は血液系の細胞のみ、というように決まった種類の細胞をつくりだします。もうひとつは、体内の細胞であればどの細胞でもつくりだす事ができるタイプの幹細胞(多能性幹細胞)です。なお、ノーベル賞受賞で話題となったiPS細胞は人工的に作成した多能性幹細胞のことです。
■Muse(ミューズ)細胞の存在にも注目が集まる
三菱ケミカルホールディングス<4188>の子会社である生命科学インスティテュートが開発を続けている「Muse細胞」にも、再生医療の可能性が期待されています。Muse細胞はもともと体内に存在している自然の幹細胞なので、腫瘍を形成する可能性が低いこと、さらに、点滴投与なので体への負担が少ないことや、一つのMuse細胞製剤で多くの疾患に適用可能などのメリットがあります。
Muse細胞は、2010年に東北大学の出澤真理教授らのグループにより発見された多能性幹細胞で、2018年1月にはMuse細胞製剤を用いた急性心筋梗塞の臨床試験を、同年9月には脳梗塞患者を対象とした治験開始を発表しています。表皮水疱症の治療に向けた探索的臨床試験も開始されており、今後もMuse細胞を用いた再生医療の研究に注目が集まると考えられます。
■再生医療関連の注目銘柄
JCRファーマ<4552>は、主力の遺伝子組換えヒト成長ホルモン製剤「グロウジェクト」の伸長に加え、日本初の他家由来の再生医療等製品である「テムセル」も実績を伸ばしています。テムセルは造血幹細胞移植後に発症する重篤な合併症である急性GVHDの治療製品として、開発が進められてきたものです。同社は13年3月期以降、今期予想を含め7期連続で増収増益であり、バイオ関連の好業績銘柄としても注目されます。
膝関節の再生医療分野では、グンゼ<3002>が今年1月に軟骨再生を促す繊維シートを欧州で発売しています。オリンパス<7733>は1月に患者の軟骨を培養し体内に戻す治験を国内で始め、2023年3月までに承認申請する予定です。中外製薬<4519>もスタートアップ企業のツーセルと膝軟骨再生細胞治療製品の研究を続けており、2021年にも承認を得たい考えです。旭化成<3407>は軟骨の治療にiPS細胞を使う権利を京都大学などから獲得しています。
膝軟骨以外では、ニプロ<8086>が開発した脊髄損傷の治療用の細胞が昨年12月、再生医療等製品として厚労省に承認されています。塩野義製薬<4507>は、昨年9月にロート製薬<4527>とライセンス契約を締結しており、ロート製薬が肝硬変を対象に再生医療の開発を進めている製品候補の独占的な開発・販売権を獲得しています。ロート製薬は製品の供給を、塩野義製薬は開発・販売および製造販売後調査等を実施することで両社は連携していく考えです。
バイオベンチャー企業だけでなく、大手企業も参入し、市場はますます盛り上がることが予想されます。ただ、値動きの激しい側面もありますので注意も必要ですね。
(その他の代表的な『再生医療関連』の銘柄リストは、『マネックス証券トレードステーションのHP コラム・レポートのページ』からダウンロードできます。)
次回も、このような形で、話題のニュースから読み解いたテーマとトレードステーションのツールについてお話しします。
※「馬渕磨理子が実践!トレードステーション利用術」は、米国TradeStation Groupが開発したトレーディングツール「トレードステーション」の日本語版(マネックス証券が提供)を馬渕磨理子の見解で注目し、コメントしたものです。開発会社や日本語版提供会社との見解とは異なる場合があります。
(フィスコ企業リサーチレポーター 馬渕磨理子)
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