アイエスビー Research Memo(2):自動車電話の開発プロジェクトへの参画を契機に、モバイル市場とともに成長
[19/03/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
1. 沿革
アイ・エス・ビー<9702>は1970年、汎用系及び業務系のシステム開発・運用を手掛ける情報サービス事業を目的に、株式会社インフォメイション・サービス・ビューローとして設立された。その後、ソフトウェアの自社開発、受託開発、システム構築(SI)を中心に業容を拡大していった。
1980年代にアナログ交換機の事業を手掛けていた縁でNEC<6701>のプロジェクトに参画し、自動車電話の開発に関与したことが今日の同社の基礎を築いたと言える。そこでソフトウェア開発力が評価され「モバイルのISB」という評価を確立した。その後90年代には三菱電機<6503>、富士通<6702>、ソニー<6758>といった国内大手携帯電話機メーカーと全方位的にビジネスを行い、モバイル関連を主要な事業ドメインとして業容を拡大させた。
同社はシステムの構築・保守・運営からソフトウェアの受託開発まで幅広い情報サービスを提供しているが、ソフトウェア開発が中核となっている。特に強みを有するのが、ハードウェアの基本的な制御をつかさどるファームウェアと呼ばれる組込みソフトウェアの領域だ。同社の顧客は、モバイル関係のみならず、自動車、医療・介護、金融、官公庁・自治体など、幅広い分野に及んでいることも特長の1つだ。
株式市場には1990年に店頭登録を行い、株式公開を果たした。その後2004年のJASDAQ上場、2008年の東証2部上場を経て、2015年3月に東証1部に上場を果たした。
情報サービスとセキュリティシステムの2事業セグメント体制。モバイル関連から拡大して多様な領域をカバー
2. 事業の概要とグループ企業
同社は2017年1月にセキュリティ事業を手掛ける(株)アートを子会社化した。この結果、従来は情報サービス事業の単独セグメントであったが、アートの事業をセキュリティシステム事業とし、情報サービスと合わせて2セグメント体制へと変更された。
2018年12月期実績ベースの売上構成比は、情報サービス事業が81%、セキュリティシステム事業が19%となっている。一方、営業利益の構成比は情報サービス事業が83%、セキュリティシステム事業が17%となっている(いずれも調整額を除いたベースでの構成比)。近年は情報サービス事業の採算性が向上し、セキュリティシステム事業と同水準に達している。なお、セキュリティシステム事業の営業利益はアート買収に伴うのれん償却費を負担後の数値であり、5年間の償却期間が終了した後は営業利益率がさらに上昇する見込みだ。
事業セグメントの開示に加えて、同社は売上高について、ユーザー、用途、事業タイプといった観点で分類した分野別売上高を開示している。決算の詳細はこの分野別売上高に基づいて説明されている。現状は「携帯端末」、「モバイルインフラ」、「組込み」、「金融」、「公共」、「業務システム」、「フィールドサービス」、及び「プロダクト事業」の8つに分類されている。
8分野のうち、「携帯端末」、「モバイルインフラ」、「組込み」、の3分野は基本的にはファームウェア(組込みシステムのためのソフトウェア、組込みソフトウェアなどとも呼ばれる)を中心としたソフトウェアの開発がその業務内容となっている。歴史的経緯から売上構成比が高かった携帯電話・スマートフォン向けと基地局向けをそれぞれ、「携帯端末」と「モバイルインフラ」として切り出し、それ以外の車載機器や医療機器、家電機器、産業機器などの各分野向けはすべて、「組込み」としてまとめた形になっている。
一方、「金融」、「公共」、「業務システム」及び「フィールドサービス」はSI(システムインテグレーション)に代表される広義の情報サービス業務だ。上記のファームウェアの分類と同様に、「業務システム」を中核として、顧客の業種別(「金融」、「公共」)あるいは業務内容(「フィールドサービス」)に応じて切り出して細分化した形となっている。
「プロダクト事業」は、ファームウェアを中心とするソフトウェアの受託開発やシステムインテグレーションといった情報サービス事業(同社はこれらを“既存事業”と呼称することもある)に対するもので、“ソフトウェアを活用した製品やサービスの提供”である点がポイントだ。自社開発にこだわらず外部から導入したサービス・商材も含まれている。従来は“新事業”という分類名でセンサーデバイス向け無線規格のWi-SUNや医療向けITソリューションのL-Shareなどを展開していたが、2017年にアートを買収したことでセキュリティシステム事業が加わり、プロダクト事業の規模が一気に拡大した。
同社はM&Aに対しても積極的だ。特定分野で強みを有し、同社と補完関係にあるか、相乗効果を狙える会社の子会社化を進めてきている。最近では2015年7月に(株)インフィックスを完全子会社化した。インフィックスは公共分野や、金融業界の中でも特に銀行向けに強みを有しており、証券会社に強い同社と補完関係を構築できることが買収の決め手となった。その後同社は補完関係を利用して課題解決を図るべく、2019年1月にインフィックスと(株)札幌システムサイエンスを合併させ(札幌システムサイエンスが存続会社)、社名を(株)スリーエスに変更した。
インフィックスに続いて2017年1月には出入室管理システムでリーディングカンパニーの一角を占めるアートを子会社化した。アートの子会社化により、同社が成長分野と位置付ける新事業(現在は“プロダクト事業”と改称)の収益規模が一気に拡大した。
2019年1月には情報サービス事業において2つのM&Aを実施した。1つは1月7日付で実施したコンピュータハウス(株)の完全子会社化だ。中小企業向けのビジネスアプリケーション・ソフト開発を行ってきた企業で、同社の分野別分類では業務システムと事業内容が重なる。もう1つは1月30日付で実施した(株)テイクスの完全子会社化だ。こちらは大手SIを始め多数のIT企業をクライアントに持ち、コンピュータシステムの企画・設計・開発・運用・保守などのサービスを提供している企業で、同社とも一部で取引関係にあった。同社の分野別売上高としては、フィールドサービス、金融、業務システムなど幅広い分野にまたがって貢献が期待されている。
以上のような一連のM&Aやグループ再編の結果、2019年2月末現在では同社本体と国内外の9社のグループ企業で企業グループが構成されている。同社のM&Aへのスタンスとしては、今後も自社の成長に適切と判断する案件が出てくれば、積極姿勢で臨む方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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1. 沿革
アイ・エス・ビー<9702>は1970年、汎用系及び業務系のシステム開発・運用を手掛ける情報サービス事業を目的に、株式会社インフォメイション・サービス・ビューローとして設立された。その後、ソフトウェアの自社開発、受託開発、システム構築(SI)を中心に業容を拡大していった。
1980年代にアナログ交換機の事業を手掛けていた縁でNEC<6701>のプロジェクトに参画し、自動車電話の開発に関与したことが今日の同社の基礎を築いたと言える。そこでソフトウェア開発力が評価され「モバイルのISB」という評価を確立した。その後90年代には三菱電機<6503>、富士通<6702>、ソニー<6758>といった国内大手携帯電話機メーカーと全方位的にビジネスを行い、モバイル関連を主要な事業ドメインとして業容を拡大させた。
同社はシステムの構築・保守・運営からソフトウェアの受託開発まで幅広い情報サービスを提供しているが、ソフトウェア開発が中核となっている。特に強みを有するのが、ハードウェアの基本的な制御をつかさどるファームウェアと呼ばれる組込みソフトウェアの領域だ。同社の顧客は、モバイル関係のみならず、自動車、医療・介護、金融、官公庁・自治体など、幅広い分野に及んでいることも特長の1つだ。
株式市場には1990年に店頭登録を行い、株式公開を果たした。その後2004年のJASDAQ上場、2008年の東証2部上場を経て、2015年3月に東証1部に上場を果たした。
情報サービスとセキュリティシステムの2事業セグメント体制。モバイル関連から拡大して多様な領域をカバー
2. 事業の概要とグループ企業
同社は2017年1月にセキュリティ事業を手掛ける(株)アートを子会社化した。この結果、従来は情報サービス事業の単独セグメントであったが、アートの事業をセキュリティシステム事業とし、情報サービスと合わせて2セグメント体制へと変更された。
2018年12月期実績ベースの売上構成比は、情報サービス事業が81%、セキュリティシステム事業が19%となっている。一方、営業利益の構成比は情報サービス事業が83%、セキュリティシステム事業が17%となっている(いずれも調整額を除いたベースでの構成比)。近年は情報サービス事業の採算性が向上し、セキュリティシステム事業と同水準に達している。なお、セキュリティシステム事業の営業利益はアート買収に伴うのれん償却費を負担後の数値であり、5年間の償却期間が終了した後は営業利益率がさらに上昇する見込みだ。
事業セグメントの開示に加えて、同社は売上高について、ユーザー、用途、事業タイプといった観点で分類した分野別売上高を開示している。決算の詳細はこの分野別売上高に基づいて説明されている。現状は「携帯端末」、「モバイルインフラ」、「組込み」、「金融」、「公共」、「業務システム」、「フィールドサービス」、及び「プロダクト事業」の8つに分類されている。
8分野のうち、「携帯端末」、「モバイルインフラ」、「組込み」、の3分野は基本的にはファームウェア(組込みシステムのためのソフトウェア、組込みソフトウェアなどとも呼ばれる)を中心としたソフトウェアの開発がその業務内容となっている。歴史的経緯から売上構成比が高かった携帯電話・スマートフォン向けと基地局向けをそれぞれ、「携帯端末」と「モバイルインフラ」として切り出し、それ以外の車載機器や医療機器、家電機器、産業機器などの各分野向けはすべて、「組込み」としてまとめた形になっている。
一方、「金融」、「公共」、「業務システム」及び「フィールドサービス」はSI(システムインテグレーション)に代表される広義の情報サービス業務だ。上記のファームウェアの分類と同様に、「業務システム」を中核として、顧客の業種別(「金融」、「公共」)あるいは業務内容(「フィールドサービス」)に応じて切り出して細分化した形となっている。
「プロダクト事業」は、ファームウェアを中心とするソフトウェアの受託開発やシステムインテグレーションといった情報サービス事業(同社はこれらを“既存事業”と呼称することもある)に対するもので、“ソフトウェアを活用した製品やサービスの提供”である点がポイントだ。自社開発にこだわらず外部から導入したサービス・商材も含まれている。従来は“新事業”という分類名でセンサーデバイス向け無線規格のWi-SUNや医療向けITソリューションのL-Shareなどを展開していたが、2017年にアートを買収したことでセキュリティシステム事業が加わり、プロダクト事業の規模が一気に拡大した。
同社はM&Aに対しても積極的だ。特定分野で強みを有し、同社と補完関係にあるか、相乗効果を狙える会社の子会社化を進めてきている。最近では2015年7月に(株)インフィックスを完全子会社化した。インフィックスは公共分野や、金融業界の中でも特に銀行向けに強みを有しており、証券会社に強い同社と補完関係を構築できることが買収の決め手となった。その後同社は補完関係を利用して課題解決を図るべく、2019年1月にインフィックスと(株)札幌システムサイエンスを合併させ(札幌システムサイエンスが存続会社)、社名を(株)スリーエスに変更した。
インフィックスに続いて2017年1月には出入室管理システムでリーディングカンパニーの一角を占めるアートを子会社化した。アートの子会社化により、同社が成長分野と位置付ける新事業(現在は“プロダクト事業”と改称)の収益規模が一気に拡大した。
2019年1月には情報サービス事業において2つのM&Aを実施した。1つは1月7日付で実施したコンピュータハウス(株)の完全子会社化だ。中小企業向けのビジネスアプリケーション・ソフト開発を行ってきた企業で、同社の分野別分類では業務システムと事業内容が重なる。もう1つは1月30日付で実施した(株)テイクスの完全子会社化だ。こちらは大手SIを始め多数のIT企業をクライアントに持ち、コンピュータシステムの企画・設計・開発・運用・保守などのサービスを提供している企業で、同社とも一部で取引関係にあった。同社の分野別売上高としては、フィールドサービス、金融、業務システムなど幅広い分野にまたがって貢献が期待されている。
以上のような一連のM&Aやグループ再編の結果、2019年2月末現在では同社本体と国内外の9社のグループ企業で企業グループが構成されている。同社のM&Aへのスタンスとしては、今後も自社の成長に適切と判断する案件が出てくれば、積極姿勢で臨む方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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