テックファム Research Memo(3):2019年6月期第2四半期累計業績はSI事業がけん引して大幅増収増益に
[19/03/26]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2019年6月期第2四半期累計の業績概要
テックファームホールディングス<3625>の2019年6月期第2四半期累計の連結業績は、売上高が前年同期比15.1%増の3,015百万円、営業利益が同78.0%増の207百万円、経常利益が同73.9%増の203百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同176.0%増の137百万円と大幅増収増益となり、第2四半期累計として過去最高業績を更新した。また、EBITDA(償却前営業利益)についても前年同期比41.2%増の309百万円となり、EBITDAマージンは8.4%から10.3%に上昇している。
売上高はIoT・AI技術を活用したサービスの開発需要が旺盛で、SI事業が前年同期比24.2%増と好調に推移し、自動車アフターマーケット事業の減収分をカバーした。また、営業利益の増減要因を見ると、SI事業の増収効果で151百万円、生産性向上等による利益率の改善により155百万円の増益要因となり、SI事業の販管費増5百万円や、自動車アフターマーケット事業の利益減159百万円、全社の販管費増51百万円といった減益要因を吸収した大幅増益となった。第2四半期累計の会社計画は開示されていないものの、売上高、利益ともに上回って推移したと見られる。なお、親会社株主に帰属する四半期純利益の増益率が経常増益率と比較して大きくなっているが、これは子会社のEBEの収益が悪化したことで、非支配株主に帰属する四半期純損失が前年同期の1百万円から30百万円に拡大したことが要因となっている。
特定顧客・業種や高付加価値案件の受注獲得に取り組むことでSI事業が高収益事業に変貌
2. 事業セグメント別の動向
(1) SI事業(ソフトウェア受託開発事業)
SI事業の売上高は前年同期比24.2%増の2,446百万円、セグメント利益は同88.6%増の639百万円と大幅増収増益となった。セグメント利益率では前年同期の17.2%から26.2%と大きく上昇した。四半期ベースで見ても、当第2四半期(2018年10月−12月)はいずれも過去最高水準を更新している。IT投資拡大という追い風が続いていることもあるが、同社固有の理由として営業戦略を従来の労働集約型から高付加価値提供型にシフトさせたことが大きい。
従来は様々な開発案件を受注することで売上は確保するものの、生産性が上がらず結果的に低収益構造となっていた。こうした状況を打破するために2年ほど前から受注活動をIoT・AI関連等の高付加価値案件を中心に取り組み、また、大手顧客との取引深耕や特定業界へのアプローチを強化している。こうした取り組みが売上げの拡大と収益性向上につながったと考えられる。
結果、顧客の新しいビジネスをカタチにするサービスデザインの設計段階から受注する案件や、コンセプト動画制作など新たな領域での受注が進んだ。IoT・AI関連では三菱UFJ信託銀行(株)が実証実験を開始した情報銀行「DPRIME(仮称)」プロジェクト※にサービスデザインの段階から参画したほか、(株)西武プロパティーズが進めるビル内の全フロアのトイレの空室状況が把握できる「トイレIoT」なども開発、導入した。IoT・AIの開発ニーズは旺盛でサービスデザイン段階から受注するケースが大半のため付加価値も高く、顧客当たり売上単価の上昇(前年同期比15%アップ)にもつながっている。また、不採算案件の発生件数も、既存顧客への深耕営業や特定業界へのアプローチを強化したことで開発ノウハウを共有化でき、結果的に低く抑えることに成功している。
※個人の意志で購買履歴等のパーソナルデータ(PD)を蓄積・管理し、PDの開示先(PDを利用できる企業)に提供することで対価を受け取ることができるデータプラットフォームのこと。2018年11月にβ版をリリース、協力会社10社、合計1,000人が実験実験(1ヶ月間)に参加した。
IoT・AI関連の売上高は前年同期比2割増の約8億円となり、同事業セグメントの3割強を占める。また、顧客・業種別の売上動向を見ると、NTTドコモ向けについてはAI系案件を中心に前年同期比26.7%増の817百万円となり、金融系で同18.1%増の509百万円、エンタメ系※で同87.4%増の208百万円とそれぞれ伸張した。その他売上についても同16.4%増の892百万円と拡大が続いている。
※エンタメ系とは芸能人やアスリート等のファンサイトの制作・運営等が中心となっている。
ホテル客室向けee-TaB*事業については、当第2四半期末の導入ホテル数が27棟(前年同期比5棟増)、客室数で4,668室(同38.0%増)と順調に拡大している。「京王プラザホテル」や「ホテルニューオータニ 東京」で追加導入されたほか、新たに「ホテルグランヴィア 広島」、「ホテルグリーンプラザ 箱根」、「相鉄フレッサイン 日本橋茅場町」などに新規導入され、今後も導入ホテルは堅調に増えていくことが予想される。
(2) 自動車アフターマーケット
自動車アフターマーケット事業の売上高は前年同期比12.5%減の606百万円、セグメント損失は139百万円(前年同期は19百万円の利益)となった。主力製品となる自動車整備システムは、西日本豪雨や北海道地震などの影響で営業活動が停滞したものの、販売ネットワークを強化した効果もあり前年同期並みの販売件数を維持した。一方で、販売単価の高いガラス商向けシステムや部品商向けシステムの販売が落ち込んだことが減収要因となった。
損益面では、前期より本格的に販売を開始した大規模顧客向け部品商システムで不具合が発生し、システム改修を行ったことが悪化要因となったが、ほぼ期初計画の範囲内で推移した。部品商システムの不具合については、従前、数名規模の会社に販売していたシステムを改良し、数十名規模の会社へ展開を始めたが、機能面でのミスマッチが生じたことが原因のようだ。現在は数百名規模の利用でも耐えられるシステムに改修を行っており、当第4四半期中に再リリースできる見込みとなっている。また、ユーザーの利便性向上とプラットフォームビジネスの展開を目的として、自動車整備システムのクラウド化に向けた開発にも着手している。クラウドサービスについては2020年7月以降のリリースを目標としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2019年6月期第2四半期累計の業績概要
テックファームホールディングス<3625>の2019年6月期第2四半期累計の連結業績は、売上高が前年同期比15.1%増の3,015百万円、営業利益が同78.0%増の207百万円、経常利益が同73.9%増の203百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同176.0%増の137百万円と大幅増収増益となり、第2四半期累計として過去最高業績を更新した。また、EBITDA(償却前営業利益)についても前年同期比41.2%増の309百万円となり、EBITDAマージンは8.4%から10.3%に上昇している。
売上高はIoT・AI技術を活用したサービスの開発需要が旺盛で、SI事業が前年同期比24.2%増と好調に推移し、自動車アフターマーケット事業の減収分をカバーした。また、営業利益の増減要因を見ると、SI事業の増収効果で151百万円、生産性向上等による利益率の改善により155百万円の増益要因となり、SI事業の販管費増5百万円や、自動車アフターマーケット事業の利益減159百万円、全社の販管費増51百万円といった減益要因を吸収した大幅増益となった。第2四半期累計の会社計画は開示されていないものの、売上高、利益ともに上回って推移したと見られる。なお、親会社株主に帰属する四半期純利益の増益率が経常増益率と比較して大きくなっているが、これは子会社のEBEの収益が悪化したことで、非支配株主に帰属する四半期純損失が前年同期の1百万円から30百万円に拡大したことが要因となっている。
特定顧客・業種や高付加価値案件の受注獲得に取り組むことでSI事業が高収益事業に変貌
2. 事業セグメント別の動向
(1) SI事業(ソフトウェア受託開発事業)
SI事業の売上高は前年同期比24.2%増の2,446百万円、セグメント利益は同88.6%増の639百万円と大幅増収増益となった。セグメント利益率では前年同期の17.2%から26.2%と大きく上昇した。四半期ベースで見ても、当第2四半期(2018年10月−12月)はいずれも過去最高水準を更新している。IT投資拡大という追い風が続いていることもあるが、同社固有の理由として営業戦略を従来の労働集約型から高付加価値提供型にシフトさせたことが大きい。
従来は様々な開発案件を受注することで売上は確保するものの、生産性が上がらず結果的に低収益構造となっていた。こうした状況を打破するために2年ほど前から受注活動をIoT・AI関連等の高付加価値案件を中心に取り組み、また、大手顧客との取引深耕や特定業界へのアプローチを強化している。こうした取り組みが売上げの拡大と収益性向上につながったと考えられる。
結果、顧客の新しいビジネスをカタチにするサービスデザインの設計段階から受注する案件や、コンセプト動画制作など新たな領域での受注が進んだ。IoT・AI関連では三菱UFJ信託銀行(株)が実証実験を開始した情報銀行「DPRIME(仮称)」プロジェクト※にサービスデザインの段階から参画したほか、(株)西武プロパティーズが進めるビル内の全フロアのトイレの空室状況が把握できる「トイレIoT」なども開発、導入した。IoT・AIの開発ニーズは旺盛でサービスデザイン段階から受注するケースが大半のため付加価値も高く、顧客当たり売上単価の上昇(前年同期比15%アップ)にもつながっている。また、不採算案件の発生件数も、既存顧客への深耕営業や特定業界へのアプローチを強化したことで開発ノウハウを共有化でき、結果的に低く抑えることに成功している。
※個人の意志で購買履歴等のパーソナルデータ(PD)を蓄積・管理し、PDの開示先(PDを利用できる企業)に提供することで対価を受け取ることができるデータプラットフォームのこと。2018年11月にβ版をリリース、協力会社10社、合計1,000人が実験実験(1ヶ月間)に参加した。
IoT・AI関連の売上高は前年同期比2割増の約8億円となり、同事業セグメントの3割強を占める。また、顧客・業種別の売上動向を見ると、NTTドコモ向けについてはAI系案件を中心に前年同期比26.7%増の817百万円となり、金融系で同18.1%増の509百万円、エンタメ系※で同87.4%増の208百万円とそれぞれ伸張した。その他売上についても同16.4%増の892百万円と拡大が続いている。
※エンタメ系とは芸能人やアスリート等のファンサイトの制作・運営等が中心となっている。
ホテル客室向けee-TaB*事業については、当第2四半期末の導入ホテル数が27棟(前年同期比5棟増)、客室数で4,668室(同38.0%増)と順調に拡大している。「京王プラザホテル」や「ホテルニューオータニ 東京」で追加導入されたほか、新たに「ホテルグランヴィア 広島」、「ホテルグリーンプラザ 箱根」、「相鉄フレッサイン 日本橋茅場町」などに新規導入され、今後も導入ホテルは堅調に増えていくことが予想される。
(2) 自動車アフターマーケット
自動車アフターマーケット事業の売上高は前年同期比12.5%減の606百万円、セグメント損失は139百万円(前年同期は19百万円の利益)となった。主力製品となる自動車整備システムは、西日本豪雨や北海道地震などの影響で営業活動が停滞したものの、販売ネットワークを強化した効果もあり前年同期並みの販売件数を維持した。一方で、販売単価の高いガラス商向けシステムや部品商向けシステムの販売が落ち込んだことが減収要因となった。
損益面では、前期より本格的に販売を開始した大規模顧客向け部品商システムで不具合が発生し、システム改修を行ったことが悪化要因となったが、ほぼ期初計画の範囲内で推移した。部品商システムの不具合については、従前、数名規模の会社に販売していたシステムを改良し、数十名規模の会社へ展開を始めたが、機能面でのミスマッチが生じたことが原因のようだ。現在は数百名規模の利用でも耐えられるシステムに改修を行っており、当第4四半期中に再リリースできる見込みとなっている。また、ユーザーの利便性向上とプラットフォームビジネスの展開を目的として、自動車整備システムのクラウド化に向けた開発にも着手している。クラウドサービスについては2020年7月以降のリリースを目標としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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