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シノケンG Research Memo(4):今後は顧客のライフ全般に関わる事業の育成に注力(3)

注目トピックス 日本株
■シノケングループ<8909>の会社概要

(4) エネルギー事業
エネルギー事業ではLPガス及び電力の小売販売を行っており、そのほとんどは同社グループが販売したアパートメント、マンションの入居者に対するものとなる。担当する事業会社は(株)エスケーエナジー(福岡)、(株)エスケーエナジー名古屋、(株)エスケーエナジー東京、(株)エスケーエナジー仙台、(株)エスケーエナジー大阪の5社となり、各エリアで事業展開している。

2018年12月期末の契約件数はLPガスが32,899件、電力が16,472件となっている。電力については2017年4月から販売を開始したため、まだ契約件数はLPガスと比較して少ない。同社が販売するアパートメントはLPガスを使用するため、今後もアパートメントの累積販売数に連動して契約件数も増加していくことになる。また、電力についてもLPガスとのセット販売によるコストメリットや、支払い手続きの簡素化などを訴求していくことで契約件数を伸ばしていく戦略となっている。

(5) ライフケア事業
ライフケア事業は、2012年12月に子会社の(株)シノケンウェルネスを新設して開始した事業となる。また、2015年2月にはグループホーム施設運営及び介護サービスを展開する(株)フレンド、2016年1月には訪問介護を東京、福岡で展開する(株)アップルケアをそれぞれM&Aで取得し、(株)シノケンウェルネスの完全子会社としている。要介護度に応じて幅広いサービスをグループ内でワンストップ提供できることが特徴と言える。

ライフケア事業の介護部門の統括会社となっている(株)シノケンウェルネスでは、既存の賃貸マンションやアパートメントの空室をリニューアルし、24時間介護サービスの付いた高齢者向け賃貸住宅とする「寿らいふプラン」というサービスを展開している。有料老人ホームよりも料金が格段にリーズナブルで、生活の自由度も高く、同サービスは2013年度にビジネスモデルのグッドデザイン賞も受賞している。また、東京と福岡で3棟のサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)を保有、運営している。3棟合計で301戸、入居率は2018年12月期末時点で100.0%(実入居率)となっている。一方、(株)フレンドでは東京、大阪、福岡にてグループホーム7施設(うち2施設で小規模多機能型居宅介護)で合計144居室を主として保有し、運営を行っている。2018年12月期末時点での入居率は97.9%(実入居率)とこちらも高稼働率となっている。

(6) その他の事業
その他の事業には海外事業のほか新規育成事業が含まれる。海外は中国、シンガポール、インドネシアの3ヶ国で展開しており、このうち中国とシンガポールは不動産賃貸・売買仲介事業、インドネシアについては(株)小川建設のサポートによる建設関連事業のほか、2018年3月に連結子会社化した地場ゼネコンのPT Mustika Cipta Kharisma(以下、ムスティカ)が2018年12月期第1四半期から加わっている。ムスティカは3年前よりシノケングループ傘下の(株)小川建設から技術指導を受けながら建設技術及び工事品質の向上に取り組んできた会社で、その効果もあって高速道路工事や大規模発電所工事の受注を獲得するなどここ数年で着実に成長を続けている。この春、ジャカルタ中心エリアにおいて「桜テラス第1号」をシノケングループの一気通貫体制で竣工、4月下旬にグランドオープンする。売上規模は年間数億円規模とまだ小さいが、今後はインドネシアで不動産開発事業を本格的に展開していくことから子会社化した。

3. ビジネスモデルと強み
(1) 土地を持たないサラリーマン・公務員層をターゲットとした投資用アパートメント経営のパイオニア
アパートメント経営と言うと地主が相続税対策や遊休資産の活用のために行うものというイメージが強く、実際、大手ハウスメーカーや大東建託(株)<1878>などは地主に対し、そのような提案をし、アパートメント建築を請負っている。こうしたなか、同社は土地を持たず自己資金も少ない普通の会社員、公務員層を主要ターゲットに、老後に向けた資産形成の一手段として土地付きアパートメントを提案するという業界の常識を覆す独自のビジネスモデルを展開してきた。地主向けのアパートメント建築請負も地主から特に要望があった場合などに限り行っているが、年に数棟程度に過ぎない。経営資源の効率活用の観点から、同社から地主に積極的に営業をかけることはしていない。

(2) 約29年のトラックレコードを背景に競争優位性を維持
土地から購入してアパートメント経営が成立するのかという疑念が持たれるところだが、創業来約29年にわたり、同社グループが販売してきた5,000棟以上のアパートメントで経営破綻を起こしたことは一例もない。高い入居率を維持してきたこと、アパートメントローンは変動金利だが、創業来、総じて低金利が続いてきたことなどによる。高い入居率の維持を可能としているのは、1)全国主要都市圏の市街地で駅から徒歩10分圏で賃貸需要が確実に見込めるエリアに限って物件供給をしてきたこと、2)若年層に訴求するデザイン性に優れた物件を供給してきたこと、3)狭小地や変形地などを生かすプラニング力に優れ(木造はプレハブに比べ土地の形状に合わせて設計しやすい)、比較的用地を安く取得してきたこと、4)大手ハウスメーカーに比べ建築費が安いため競争力の高い家賃設定が可能なこと、などによる。

居住用の住宅ローンと異なり、アパートメントローンについては、借り手の信用力だけでなく販売会社の実績を金融機関は重視する傾向にある。こうした約29年にわたるトラックレコードの積み重ねにより、金融機関との提携ローンについても比較的低い利率で顧客に提供することが可能となっている。

土地付きアパートメント販売の競合会社としては、2016年12月に東証1部に上場した(株)TATERU<1435>や、比較的大きな未上場企業、同社グループからスピンアウトした社員が起業した小規模な会社などここ数年で増えてきたが、フロントランナーとしての実績を背景にした複数の金融機関との提携アパートメントローンによる融資条件や、狭小地や変形地におけるプラニング力の高さなどの点において、同社の競争優位性は高いと判断される。

また、同社では一旦、用地を自ら取得するのに対し、同業他社は自らのB/Sを通さず仲介の形で投資家に土地を紹介している。B/Sを通すビジネスモデルの方が、当然資金負担は重くなるが、1)迅速な土地仕入れができる、2)土地を分筆して複数棟開発するなど柔軟な企画が可能、3)顧客投資家がアパートメントローンの審査を否認されたような場合、その後の対応が容易、などの利点がある。

(3) コンプライアンス重視のプル型の営業スタイル
投資用マンションの営業スタイルは、業界では電話営業が一般的となっているが、電話営業は消費者とのトラブルを引き起こしやすいという側面がある。また、地主向けのアパートメント建築の営業スタイルは、訪問営業(飛び込み営業)が基本であり、これも過去、度々メディア等で批判にさらされてきた。

これらに対して同社の営業スタイルは、創業時からセミナーの開催やインターネット広告、自社Webサイトを中心としたプル型営業を貫いてきた。また、営業面で競合他社において銀行からの融資を受けやすくするため、投資家の預金残高を改ざんするといった不正問題が発覚したが、同社においては社内の管理体制により、こうした不正な営業活動が行えない仕組みとなっていることも強みと言える。

(4) フロービジネスでの販売に連動してストックビジネスが拡大するビジネスモデル
ストックビジネスのうち、不動産サービス事業とエネルギー事業は、不動産セールス事業で販売するアパートメントやマンションのオーナーまたは入居者が契約者となるため、販売に連動して自動的に積み上がる仕組みとなっている。フロービジネスがここ数年高成長を続けてきたため、これらストックビジネスの伸びが目立たないが、収益は年率2ケタ増収増益ペースが続いている。ちなみに、ストックビジネス(不動産サービス事業+エネルギー事業+ライフケア事業)の営業利益※に占める構成比を見ると、2018年12月期は全体の22.6%(前期は12.2%)を占めるまでになっている。

※全社費用控除前営業利益

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)




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