ナレッジスイート Research Memo(5):2019年9月期第1四半期業績は順調な滑り出し
[19/04/10]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2018年9月期及び2019年9月期第1四半期の業績状況
(1) 2018年9月期業績
ナレッジスイート<3999>の2018年9月期の業績動向について見ると、単独ベースの売上高は前期比5.6%増の834百万円、営業利益は同48.6%減の79百万円、経常利益は同50.7%減の74百万円、当期純利益は同64.8%減の51百万円と増収減益決算となった。
クラウドサービスの売上高は、主力サービスである「Knowledge Suite」において同社最大の大口契約が第2四半期末で終了したことにより約40千万円の減収要因となったものの、新規顧客の獲得が過去最大のペースで進んだことで、前期比11.3%増の553百万円となった。一方、ソリューションサービスの売上高はクラウドインテグレーションにおける新規案件の受注が好調だったものの、Webマーケティング支援サービスの減少により同4.2%減の280百万円となった。
なお、「Knowledge Suite」のOEM先であるKDDI向けの売上高は前期比0.4%減の265百万円とほぼ横ばい水準にとどまった。KDDI向け売上の大半はクラウドサービスに含まれると見られため、KDDIを除いた直販ベースの売上成長率は20%以上だったと試算される。さらに、解約した大口顧客の影響を除いたベースで見れば40%前後の大幅成長だったことがうかがえる。
売上総利益率はクラウドサービスの構成比上昇により前期比1.1ポイン上昇の68.8%となり、売上総利益は同7.3%増の574百万円となった。ただ、営業体制強化に伴う人件費増やM&A関連費用などの先行投資を実施したほか、株式上場関連費用や本社移転関連費用なども重なり、販売費及び一般管理費が前期比30.2%増の494百万円となり、営業利益の減益要因となった。
また、当期より新たに開始した連結業績については、子会社のフジソフトサービスの業績が第3四半期より加算されており、売上高で967百万円、営業利益で48百万円、経常利益で43百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で59百万円となった。フジソフトサービスの子会社化に伴い、のれん費用が前期比11百万円増加した(10年定額償却)。特別利益として子会社の保険解約返戻金45百万円を計上したことにより、経常利益よりも当期純利益が上回る格好となっている。
セグメント業績については、クラウドソリューション事業が売上高で834百万円、セグメント利益で333百万円となり、システムエンジニアリング事業については、売上高で144百万円、セグメント利益で22百万円となった。システムエンジニアリング事業については、既存顧客との取引深耕が進んだほか、新規顧客の開拓も進んだことにより順調に推移した。
(2) 2019年9月期第1四半期業績
2019年9月期第1四半期の連結業績は、売上高で543百万円、営業利益で15百万円、経常利益で16百万円、親会社株主に帰属する四半期純損失で1百万円となった。通期計画に対する進捗率では売上高で24.7%、営業利益で25.6%、経常利益で31.8%と順調に推移している。同社の収益柱であるクラウドサービスが顧客の増加に伴い右肩上がりに収益が拡大していくことを考えると、営業利益や経常利益については計画を上回るペースとなっている。なお、親会社株主に帰属する四半期純利益が損失計上となっているが、これはM&Aに伴う法人税等の増加による一時的な要因で、通期ではM&Aに伴う特別利益を計上する見込みとなっていることから、問題のない進捗と言える。
事業セグメント別で見ると、クラウドソリューション事業は売上高で前年同期比7.7%増の217百万円、セグメント利益で79百万円となった。中堅・中小企業向けに「Knowledge Suite」の顧客獲得が順調に進み、クラウドサービスの売上高が同7.4%増の146百万円となったほか、ソリューションサービスも「Knowledge Suite」の導入支援コンサルティングやWebマーケティング支援の受注案件が増加したことで同8.3%増の71百万円となった。
クラウドサービスの伸び率が鈍化したように見えるが、これまで前述した大口顧客の解約前の売上と比較しても、前年同期比20.6%増と好調に推移している。また、大口顧客売上を除いたペースで見れば40%超の増収になったと見られる。直販ベースの新規契約社数が前年同期比27.4%増と前期に引き続き過去最高ペースで推移していることや、既存顧客でのARPUが上昇していることが要因だ。新規顧客獲得が好調な背景には、中堅・中小企業でも「働き方改革」への取組み気運が高まっており、営業部門の生産性向上に寄与するSFA/CRMツールを活用する企業が増え始めていること、その中で「Knowledge Suite」が高い支持を得られていることが挙げられる。また、経済産業省が実施する「サービス等生産性向上IT導入支援事業」において、「Knowledge Suite」が「IT導入補助金」※の対象製品として2018年4月に選定されたことも一因と考えられる。直近では毎月の問い合わせ件数は約800件と2018年前半の約400件から2倍に増加しており、繁忙状況が続いている。
※ITツール(ソフトウェア、サービス等)のサービスを導入しようとする中小企業や小規模事業者を対象に、導入費用の一部を補助することにより経営力向上を図ることを目的とした制度で、2017年度より導入された。申請企業は、案件総額の1/2、最大50万円までを補助金で賄うことができる。
また、当第1四半期で注目すべき点は「Knowledge Suite」の導入コンサルティング売上高が前年同期比58.8%増の10百万円と伸びたことにある。売上げの水準そのものは小さいが、導入コンサルティングを行うことで、その後の解約率を抑制でき、クラウドサービスの売上増に貢献するためだ。従来は直販の新規顧客のうち、導入コンサルティングの付帯率は30%台であったが、当第1四半期は約60%まで上昇しており、今後の解約率低下に寄与するものと思われる。過去データによれば、導入コンサルティングを行った企業の1年後の解約率で2%前後まで抑制できることが確認されている。
一方のシステムエンジニアリング事業は売上高で325百万円、セグメント利益で35百万円となった。前第4四半期は売上高で75百万円、セグメント利益で0百万円だったが、新たに加わったビクタスの業績が上乗せされている。
なお、営業利益の増減要因を前年同期の単独営業利益との比較で見ると、売上高で341百万円の増加に対し、売上原価で281百万円の増加、販売費及び一般管理費で84百万円の増加となり、営業利益は24百万円の減益となっている。引き続き成長に向けた先行投資負担の増加が減益要因となっている。売上原価では人件費(内部エンジニア)の増加で110百万円、委託費(外部エンジニア)の増加で165百万円と増加要因の大半を占め、また、販売費及び一般管理費では人件費の増加(新卒他営業要員)で23百万円、のれん償却費の増加で11百万円、M&Aの仲介手数料(スポット)で12百万円の費用増要因となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<MH>
1. 2018年9月期及び2019年9月期第1四半期の業績状況
(1) 2018年9月期業績
ナレッジスイート<3999>の2018年9月期の業績動向について見ると、単独ベースの売上高は前期比5.6%増の834百万円、営業利益は同48.6%減の79百万円、経常利益は同50.7%減の74百万円、当期純利益は同64.8%減の51百万円と増収減益決算となった。
クラウドサービスの売上高は、主力サービスである「Knowledge Suite」において同社最大の大口契約が第2四半期末で終了したことにより約40千万円の減収要因となったものの、新規顧客の獲得が過去最大のペースで進んだことで、前期比11.3%増の553百万円となった。一方、ソリューションサービスの売上高はクラウドインテグレーションにおける新規案件の受注が好調だったものの、Webマーケティング支援サービスの減少により同4.2%減の280百万円となった。
なお、「Knowledge Suite」のOEM先であるKDDI向けの売上高は前期比0.4%減の265百万円とほぼ横ばい水準にとどまった。KDDI向け売上の大半はクラウドサービスに含まれると見られため、KDDIを除いた直販ベースの売上成長率は20%以上だったと試算される。さらに、解約した大口顧客の影響を除いたベースで見れば40%前後の大幅成長だったことがうかがえる。
売上総利益率はクラウドサービスの構成比上昇により前期比1.1ポイン上昇の68.8%となり、売上総利益は同7.3%増の574百万円となった。ただ、営業体制強化に伴う人件費増やM&A関連費用などの先行投資を実施したほか、株式上場関連費用や本社移転関連費用なども重なり、販売費及び一般管理費が前期比30.2%増の494百万円となり、営業利益の減益要因となった。
また、当期より新たに開始した連結業績については、子会社のフジソフトサービスの業績が第3四半期より加算されており、売上高で967百万円、営業利益で48百万円、経常利益で43百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で59百万円となった。フジソフトサービスの子会社化に伴い、のれん費用が前期比11百万円増加した(10年定額償却)。特別利益として子会社の保険解約返戻金45百万円を計上したことにより、経常利益よりも当期純利益が上回る格好となっている。
セグメント業績については、クラウドソリューション事業が売上高で834百万円、セグメント利益で333百万円となり、システムエンジニアリング事業については、売上高で144百万円、セグメント利益で22百万円となった。システムエンジニアリング事業については、既存顧客との取引深耕が進んだほか、新規顧客の開拓も進んだことにより順調に推移した。
(2) 2019年9月期第1四半期業績
2019年9月期第1四半期の連結業績は、売上高で543百万円、営業利益で15百万円、経常利益で16百万円、親会社株主に帰属する四半期純損失で1百万円となった。通期計画に対する進捗率では売上高で24.7%、営業利益で25.6%、経常利益で31.8%と順調に推移している。同社の収益柱であるクラウドサービスが顧客の増加に伴い右肩上がりに収益が拡大していくことを考えると、営業利益や経常利益については計画を上回るペースとなっている。なお、親会社株主に帰属する四半期純利益が損失計上となっているが、これはM&Aに伴う法人税等の増加による一時的な要因で、通期ではM&Aに伴う特別利益を計上する見込みとなっていることから、問題のない進捗と言える。
事業セグメント別で見ると、クラウドソリューション事業は売上高で前年同期比7.7%増の217百万円、セグメント利益で79百万円となった。中堅・中小企業向けに「Knowledge Suite」の顧客獲得が順調に進み、クラウドサービスの売上高が同7.4%増の146百万円となったほか、ソリューションサービスも「Knowledge Suite」の導入支援コンサルティングやWebマーケティング支援の受注案件が増加したことで同8.3%増の71百万円となった。
クラウドサービスの伸び率が鈍化したように見えるが、これまで前述した大口顧客の解約前の売上と比較しても、前年同期比20.6%増と好調に推移している。また、大口顧客売上を除いたペースで見れば40%超の増収になったと見られる。直販ベースの新規契約社数が前年同期比27.4%増と前期に引き続き過去最高ペースで推移していることや、既存顧客でのARPUが上昇していることが要因だ。新規顧客獲得が好調な背景には、中堅・中小企業でも「働き方改革」への取組み気運が高まっており、営業部門の生産性向上に寄与するSFA/CRMツールを活用する企業が増え始めていること、その中で「Knowledge Suite」が高い支持を得られていることが挙げられる。また、経済産業省が実施する「サービス等生産性向上IT導入支援事業」において、「Knowledge Suite」が「IT導入補助金」※の対象製品として2018年4月に選定されたことも一因と考えられる。直近では毎月の問い合わせ件数は約800件と2018年前半の約400件から2倍に増加しており、繁忙状況が続いている。
※ITツール(ソフトウェア、サービス等)のサービスを導入しようとする中小企業や小規模事業者を対象に、導入費用の一部を補助することにより経営力向上を図ることを目的とした制度で、2017年度より導入された。申請企業は、案件総額の1/2、最大50万円までを補助金で賄うことができる。
また、当第1四半期で注目すべき点は「Knowledge Suite」の導入コンサルティング売上高が前年同期比58.8%増の10百万円と伸びたことにある。売上げの水準そのものは小さいが、導入コンサルティングを行うことで、その後の解約率を抑制でき、クラウドサービスの売上増に貢献するためだ。従来は直販の新規顧客のうち、導入コンサルティングの付帯率は30%台であったが、当第1四半期は約60%まで上昇しており、今後の解約率低下に寄与するものと思われる。過去データによれば、導入コンサルティングを行った企業の1年後の解約率で2%前後まで抑制できることが確認されている。
一方のシステムエンジニアリング事業は売上高で325百万円、セグメント利益で35百万円となった。前第4四半期は売上高で75百万円、セグメント利益で0百万円だったが、新たに加わったビクタスの業績が上乗せされている。
なお、営業利益の増減要因を前年同期の単独営業利益との比較で見ると、売上高で341百万円の増加に対し、売上原価で281百万円の増加、販売費及び一般管理費で84百万円の増加となり、営業利益は24百万円の減益となっている。引き続き成長に向けた先行投資負担の増加が減益要因となっている。売上原価では人件費(内部エンジニア)の増加で110百万円、委託費(外部エンジニア)の増加で165百万円と増加要因の大半を占め、また、販売費及び一般管理費では人件費の増加(新卒他営業要員)で23百万円、のれん償却費の増加で11百万円、M&Aの仲介手数料(スポット)で12百万円の費用増要因となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<MH>