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AOITYOHold Research Memo(5):実行利益率の改善に取り組む一方、新領域への積極投資を継続

注目トピックス 日本株
■AOI TYO Holdings<3975>の活動実績

1. 広告映像制作事業
テレビCMなど従来メディアの広告制作市場がほぼ横ばいで推移するなかで、広告映像制作事業の売上高は前期比12.1%減の43,331百万円と大きく落ち込んだ。採算性重視の収益管理の徹底や働き方改革※1に伴う受注コントロールに加えて、プリントレス化の進展※2による影響が減収要因となった。ただ、四半期ごとの売上高推移で見ると、第1四半期に大きくブレーキを踏んだものの、第2四半期以降はおおむね横ばいで推移しており、政策的意図(受注コントロール等)に基づく影響はおおむね一巡したものと考えられる。また、利益面では、採算性重視の営業管理体制(案件受注段階からの厳格な精査・選別、外部支出原価の管理徹底など)の構築により、実行利益率(CM制作部門のみ)は35.5%(前期は33.4%)に大きく改善しており、その点は評価すべきポイントと言える。

※1 働き方改革の影響については、1)大手広告代理店(発注側)の働き方改革(労働時間削減)によるものと、2)同社自身の働き方改革による受注コントロール(案件の絞り込み)の2つの要因が挙げられる。なお、2)の影響により同社が受注しなかった案件については、他の同業者(中堅・中小)へ流れている可能性があるが、働き方改革は業界全体の動きとなってきていることから、一時的な市場のゆがみはやがて解消(調整)されるものと見ている。
※2 プリント売上高は1,924百万円(前期比730百万円減)となった。なお、この残った部分については、プリントレス化の進展度合により、今後も売上高を下押しする要因として捉える必要がある。


2. その他制作事業
その他制作事業の売上高は前期比3.5%減の8,463百万円と縮小した。Web制作子会社の売却による影響(約8億円の減収要因)が大きかったが、イベント、PR等が大きく伸びたほか、同社グループが出資・制作した映画※の配当収入(約2億円)があったことなどから約3億円程度の減収幅にとどまった。

※AOI Pro.が出資・制作し、是枝裕和(これえだひろかず)氏が監督を務めた映画「万引き家族」が、「第71回カンヌ国際映画祭」コンペティション部門にて最高賞であるパルムドールを受賞。また、ドイツの「第36回ミュンヘン国際映画祭」シネマスターズ・コンペティション部門で、アリ・オスラム賞(最優秀賞)を獲得した(日本映画として初の受賞)。国内では、「第42回日本アカデミー賞」で最優秀作品賞のほか計8部門で最優秀賞を受賞し、最多受賞となる8冠を果たした。同社は、エンタテイメントコンテンツと広告映像が融合する時代を見据え、エンタテイメントコンテンツへの取り組みを継続するとともに、更なる事業の広がりを目指す方針である。


3. ソリューション事業
ソリューション事業の売上高は前期比6.0%減の7,585百万円となった。ただ、売上からテレビCMのメディア費を除くとほぼ横ばいで推移している。そのうちTYOオファリングマネジメント部門の売上高(メディア費を除く)は前期比6.9%増の3,717百万円と堅調であった一方、AOI Pro.の子会社Quark tokyoによる売上高は同7.8%減の2,226百万円と伸び悩んだ。動画広告の制作は増加しているものの、前期にあった大型案件(企画・コンサルを含む)のはく落が減収要因となった。成長分野として位置付けているものの、専門性の高い人材の確保など体制面の強化が課題となっているようだ。

一方、今後の更なる事業展開に向けては、バイタルセンシングデータを活用した体験設計ソリューション等のサービスを提供する新会社SOOTHの設立※1や、ビッグデータを活用した電力管理を実現するパネイル※2との業務提携(ブランディング・広報・広告戦略の全面的な支援等)など、一定の成果を残すことができた。また、2019年2月12日にはQuark tokyoが(株)サイバー・コミュニケーションズ(以下、CCI)と戦略的パートナーシップを構築。若年層をターゲットとしたデジタルプロモーションにおいて多くの実績を誇るQuark tokyoと、CCIの持つメディアソリューションとを組み合わせることで、メディアの新たなコンテンツ開発及び企業と消費者のエンゲージメント構築に向けたサービスの拡充を図るところに狙いがある。

※1 AOI Pro.体験設計部が手掛けてきた事業を引き継ぐ形により2018年2月1日に設立。これまで、1)VR/AR/MRをはじめとする最新テクノロジーを取り入れたコンテンツの企画・制作、2)新たなデータや感情データを含むナレッジの蓄積などを進めてきたが、ここからさらに、3)統合マーケティング事業(ブランド戦略立案から効果測定・分析までを統合したソリューション提供)への展開、4)データ活用による高付加価値事業への発展を目指すことが、新会社設立(別会社化)の狙いであり、事業拡大への手応えをつかんだ証左とも言える。本格的な業績貢献には長期的視点が必要であるが、応用範囲を含めてポテンシャルは大きい。
※2 パネイルは、独自に研究・開発した国内初のAIとビッグデータを活用した電力流通クラウドプラットフォーム「パネイルクラウド」を提供している。2018年4月には、東京電力エナジーパートナー(株)との共同出資により新会社を設立するなど、エネルギーに関するIT技術を駆使したサービス開発を進め、電力業界だけでなくエネルギー業界全体においても注目されている。なお、本件に伴い、パネイルに対して、TYOとフィールドマネジメントが共同で設立したベンチャーファンドAd Hack Venturesより5億円の出資も実施。IPOも視野に入れた高い事業性評価に基づく投資リターンの追求のほか、より強いパートナーシップ構築に狙いがあると考えられる。


4. 海外事業
海外事業の売上高は前期比38.7%増の4,038百万円と大きく拡大した。広告市場が拡大している東南アジアでのオーガニックな成長に加えて、マレーシアの大手広告制作会社DTTグループの連結子会社化※が事業拡大に寄与した。

※2018年3月にDTTグループを傘下とする持株会社Reserve Tankの株式を取得した。なお、DTTグループは設立から10年を経てマレーシアにおいて五指に入る規模の映像プロダクションに成長。マレーシアのクアラルンプールに加え、インドネシアのジャカルタにも拠点があり、中国など近隣諸国の案件も数多く受注している。したがって、マレーシアでの日系及び現地企業向けの拡大はもちろん、インドネシアなどの近隣諸国への進出にも狙いがあると見られる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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