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AOITYOHold Research Memo(7):持続的成長に向けて、「規模より質」の経営への転換を図る

注目トピックス 日本株
■成長戦略

AOI TYO Holdings<3975>は、経営統合から2年が経過し、急激な環境変化への対応を図るため、新たに中期経営方針を公表した。これまでとの大きな違いは、「規模より質」の経営への転換である。すなわち、如何なる時代にも対応できる力強い企業体であり続けるため、ニーズや変化に対応した事業を展開すること、人材の力を最大限活用すること、適切な収益を上げ続けることを、目指す姿として掲げている。また、規模から質への転換や急激な環境変化を踏まえ、これまで推進してきた数値目標※1については一旦取り下げるとともに、今後は売上・利益等の数値目標をKPIとはしない方針である。ただ、持続可能性や株主還元等は継続して重視しており、株主資本コスト※2を上回るROEの確保を目指していく。

※1 2016年12月(経営統合直前)に公表した成長戦略では、2021年12月期の目標として、EBITDA80億円、ROE12%以上、DOE4%目途を掲げてきた。
※2 AOI TYO Holdingsでは、現状の株主資本コストを約9%と認識している。


1. 事業展開の方向性
これまで同様、同社の強みとするブランディングを目的としたクオリティの高い動画・映像制作をさらに「掘り下げる」ことで圧倒的なポジショニングを確立するとともに、周辺ソリューション(プロモーション及びコンテンツ領域)を強化し「拡げる」方向性を描いている。特に、軸となる動画広告については、これまでの主戦場であるテレビCM制作市場でNo.1企業として残存者利益を確保する一方、大きく伸びているオンライン動画市場においては高単価映像を中心にシェア獲得を目指す。また、データ分析・活用により動画制作と配信(リーチ)の最適化を実現するほか、様々な機能強化や外部連携により市場の囲い込み(イベントやPR、インフルエンサー・マーケティング、動画配信等)を狙う戦略を描いている。一方、周辺ソリューションについては、コンテンツとしての動画を強化(IP開発など)するとともに、M&Aや資本提携等によりイベントやPR関連領域の機能強化や、動画を活用したソリューションの開発等により、高付加価値なビジネスモデルの実現を目指す方針である。

2. 人材について
統合的コミュニケーションを提案・実現可能な多くの人材や、各コミュニケーション手法のプロフェッショナルの獲得を目指す。そのための施策として、統合的施策の実現に素養のある人材の採用、専門チームの組成(統合コミュニケーション専門チームやオンライン動画専門チームの設立など)、出向・人材交流による育成(ローテーション/FA制度の採用、異機能グループ会社への出向など)、教育制度の充実(座学に加え、OJTによる統合コミュニケーション案件の機会の拡充など)に取り組む方針である。

3. 海外事業
成長著しいアジア(中国及び東南アジア等)への展開については、拠点間の連携強化により「点」ではなく「面」としての動きを強化するとともに、独自の「売り物」や合理的な資本構成(不採算拠点の整理を含む、拠点ごとの収益性に応じた資本配分)に基づく強固な収益体制の構築を目指す。特に、「面」とするための動きについては、既に海外戦略部の新設(2018年7月)やアジアミーティングの開催、インフラ/コミュニケーションツールの導入などに取り組んでおり、次第に成果が出てきたようだ。また、独自の「売り物」の開発については、日本で開発・提携したIP資産やテクノロジーをソリューションとしてパッケージ化する戦略を描いている。さらには、アジア以外の展開の可能性も今後検討していく。

弊社では、働き方改革への対応やプリントレス化の進展など、外部要因が足元の業績にマイナス要因となっているものの、様々な構造的な変化(メディアの多様化やテクノロジーの進化等)は、中長期的に見れば同社にとって大きなチャンスとなる可能性が高いと見ている。特に、同社の強みであるクオリティの高い動画制作を軸としたビジネスモデルや圧倒的なポジショニングを生かした戦略は、同社でなければできないアドバンテージと言える。課題は、プロモーションやコンテンツ領域といった周辺ソリューションの強化を図りながら、いかに市場を囲い込んでいくかにある。また、新しいテクノロジー(VRコンテンツやデータ活用等)による高付加価値化もポイントとなるだろう。したがって、M&Aを含めた外部との連携や専門性の高い人材の確保など、事業拡大に向けた体制強化をいかに進めていくのかが、今後の成長性を判断するうえで重要なカギを握ると考えられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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