3Dマトリック Research Memo(1):止血材の欧州全域での販売提携契約交渉が大詰め段階に
[19/04/18]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
スリー・ディー・マトリックス<7777>は2004年に設立されたバイオマテリアル(医療用材料)のベンチャー企業である。米マサチューセッツ工科大学において開発された「自己組織化ペプチド技術」を使って外科医療分野の吸収性局所止血材(以下、止血材)や粘膜隆起材、再生医療分野の歯槽骨再建材や創傷治癒材のほか、医薬品分野では核酸医薬向け等のDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)の開発を国内外で進めている。
1. 2019年4月期第3四半期累計業績
2019年4月期第3四半期累計(2018年5月-2019年1月)の事業収益は前年同期比16.0%増の193百万円、営業損失は1,637百万円(前年同期は1,353百万円の損失)となった。止血材の売上げは欧州向けが前年同期比18%増の123百万円、アジア・オセアニア向けが同14%増の66百万円と順調に増加した。全体の進捗率は計画をやや下回っているものの、ドイツやオーストラリアの販売増が続いているほか、イギリスでも販売代理店であるアクイラントによる営業活動が軌道に乗り、販売が伸び始めている。また、カナダでCEマーク認証を取得し、販売代理店契約を締結した。営業損失の拡大要因は、国内止血材の臨床試験費用を中心に研究開発費が前年同期比185百万円増加したことによる。
2. 主要パイプラインの開発動向
国内で実施されている止血材の臨床試験は、2020年4月期第1四半期中に予定症例数の組入れが完了し、製造販売承認申請を行う見通しだ。また、粘膜隆起材については2020年4月期にPMDAと承認申請形態や臨床プトロコルの方向性について協議を進めていく方針。欧州では2018年12月に後出血予防材としてCEマークの適応追加承認を受け、今後、止血材とのクロスセルによる販売拡大が見込まれる。米国では、耳鼻咽喉科領域を対象とした癒着防止材の510(k)申請※を2018年10月に行い、2019年4月16日付で販売承認が得られたことを発表している。今後、直販で売上実績を積み重ねた後に、大手医療機器メーカーとの販売ライセンス契約締結を目指して行く考えだ。米国での同領域における潜在市場は100〜200億円と推計されているだけに、今後の収益貢献が期待される。
※510(k)申請とは市販前届出制度のこと。米国内で医療機器を販売する際に、既に販売されている類似製品があれば安全性や有効性において同等以上であることのデータをFDA(米国食品医薬品局)に提出することで、販売の許認可が得られる制度。申請後、FDAが90日以内に販売承認の可否の判断を行う(質問・追加データ要請等の時間を除く)。
3. 業績見通し
2019年4月期の事業収益は512〜2,562百万円(前期は228百万円)、営業利益は2,217百万円の損失から203百万円の利益(同1,874百万円の損失)を計画している。事業収益の幅は契約一時金及びマイルストーン収入の有無によるもので、主に欧州市場での止血材の包括的販売提携契約で2,000百万円を見込んでいる。また、止血材の売上高は欧州、オーストラリアを中心に前期比2.2倍増の512百万円を目指す。オーストラリアについては代理店契約終了の影響が懸念されたが、医療機関からのニーズが強く、直販体制に移行した2019年2月には過去最高売上げを更新するなど好調が続いている。なお、最大の焦点であった欧州全域を対象とした包括的販売提携の交渉については4月末までに締結すべく、複数社と大詰めの協議を進めている段階にある。契約一時金は最低購買量や対象領域などの条件によって、同社が想定した金額に届かない可能性もあるが、2020年4月期以降は提携パートナーを通じた止血材及び後出血予防材の本格的な販売拡大につながる見通しだ。
■Key Points
・止血材は欧州、オーストラリアで前年同期比2ケタ増収と着実に成長
・国内止血材は2020年4月期第1四半期に承認申請、米国癒着防止材は販売承認取得により営業活動をスタート
・2021年4月期に製品売上高だけで57億円を達成し、営業利益の黒字化を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<SF>
スリー・ディー・マトリックス<7777>は2004年に設立されたバイオマテリアル(医療用材料)のベンチャー企業である。米マサチューセッツ工科大学において開発された「自己組織化ペプチド技術」を使って外科医療分野の吸収性局所止血材(以下、止血材)や粘膜隆起材、再生医療分野の歯槽骨再建材や創傷治癒材のほか、医薬品分野では核酸医薬向け等のDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)の開発を国内外で進めている。
1. 2019年4月期第3四半期累計業績
2019年4月期第3四半期累計(2018年5月-2019年1月)の事業収益は前年同期比16.0%増の193百万円、営業損失は1,637百万円(前年同期は1,353百万円の損失)となった。止血材の売上げは欧州向けが前年同期比18%増の123百万円、アジア・オセアニア向けが同14%増の66百万円と順調に増加した。全体の進捗率は計画をやや下回っているものの、ドイツやオーストラリアの販売増が続いているほか、イギリスでも販売代理店であるアクイラントによる営業活動が軌道に乗り、販売が伸び始めている。また、カナダでCEマーク認証を取得し、販売代理店契約を締結した。営業損失の拡大要因は、国内止血材の臨床試験費用を中心に研究開発費が前年同期比185百万円増加したことによる。
2. 主要パイプラインの開発動向
国内で実施されている止血材の臨床試験は、2020年4月期第1四半期中に予定症例数の組入れが完了し、製造販売承認申請を行う見通しだ。また、粘膜隆起材については2020年4月期にPMDAと承認申請形態や臨床プトロコルの方向性について協議を進めていく方針。欧州では2018年12月に後出血予防材としてCEマークの適応追加承認を受け、今後、止血材とのクロスセルによる販売拡大が見込まれる。米国では、耳鼻咽喉科領域を対象とした癒着防止材の510(k)申請※を2018年10月に行い、2019年4月16日付で販売承認が得られたことを発表している。今後、直販で売上実績を積み重ねた後に、大手医療機器メーカーとの販売ライセンス契約締結を目指して行く考えだ。米国での同領域における潜在市場は100〜200億円と推計されているだけに、今後の収益貢献が期待される。
※510(k)申請とは市販前届出制度のこと。米国内で医療機器を販売する際に、既に販売されている類似製品があれば安全性や有効性において同等以上であることのデータをFDA(米国食品医薬品局)に提出することで、販売の許認可が得られる制度。申請後、FDAが90日以内に販売承認の可否の判断を行う(質問・追加データ要請等の時間を除く)。
3. 業績見通し
2019年4月期の事業収益は512〜2,562百万円(前期は228百万円)、営業利益は2,217百万円の損失から203百万円の利益(同1,874百万円の損失)を計画している。事業収益の幅は契約一時金及びマイルストーン収入の有無によるもので、主に欧州市場での止血材の包括的販売提携契約で2,000百万円を見込んでいる。また、止血材の売上高は欧州、オーストラリアを中心に前期比2.2倍増の512百万円を目指す。オーストラリアについては代理店契約終了の影響が懸念されたが、医療機関からのニーズが強く、直販体制に移行した2019年2月には過去最高売上げを更新するなど好調が続いている。なお、最大の焦点であった欧州全域を対象とした包括的販売提携の交渉については4月末までに締結すべく、複数社と大詰めの協議を進めている段階にある。契約一時金は最低購買量や対象領域などの条件によって、同社が想定した金額に届かない可能性もあるが、2020年4月期以降は提携パートナーを通じた止血材及び後出血予防材の本格的な販売拡大につながる見通しだ。
■Key Points
・止血材は欧州、オーストラリアで前年同期比2ケタ増収と着実に成長
・国内止血材は2020年4月期第1四半期に承認申請、米国癒着防止材は販売承認取得により営業活動をスタート
・2021年4月期に製品売上高だけで57億円を達成し、営業利益の黒字化を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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