TKP Research Memo(3):市場創造型のビジネスモデルにより高い成長性を実現
[19/05/24]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■事業概要等
1. ビジネスモデル
ティーケーピー<3479>のビジネスモデルは、不動産オーナーから遊休資産・低収益物件・不採算資産を割安で借り上げ、会議室や宴会場などに「空間」を「再生」し、シェアリングエコノミーとして付加価値を提供するというものである。不動産オーナーから大口取引で不動産を賃貸などで割安に仕入れ、物件を貸会議室などに利用できるように照明・カーペット・壁紙などリノベーションを行い貸会議室仕様にする。同社の顧客は主に会議室利用を求める法人であり、顧客側にとっては自社で会議室を保有するのに比べ、費用の削減、業務の集約化、多目的の利用が可能になるなどのメリットが多い。同社の事業は、大口取引を望む供給側と小口販売・シェアリングを望む需要側をうまくつないでいる。また、最近では、グレードの高いオフィスビルの企画・設計の段階から、当社の仕様による会議室をあらかじめ設けることにより、共有部分の有効活用(収益化等)を手掛ける新しいシェアリングの形も増えているようだ。
同社のビジネスモデルの特徴の1つに「持たざる経営」が挙げられる。仕入れは賃貸契約を主軸としているため、同社業績における不動産価格の変動による影響は小さく、通常の不動産会社が有するリスクとは異なっていることに注意したい(ただ、安定的に高稼働率が期待できるホテル事業については、あえて一部を自社所有することにより高収益性を確保している)。
2. 法人向け貸会議室
法人向け貸会議室はグレード別に展開しているのも同社の特徴の1つだ。グレードは、単価の高いものから、ガーデンシティPREMIUM(GCP)、ガーデンシティ(GC)、カンファレンスセンター(CC)、ビジネスセンター(BC)、スター貸会議室があり、GCPとGCはフラッグシップの位置付けで、CCはスタンダードとなっている。GCPは新築・築浅物件だが、ほかはすべてリノベーションが中心だ。GCPはマルチ活用できるスタイリッシュな複合施設で、GCは同社における最高品質の多目的ホールとなっている。2019年2月期末時点で、GCPは20拠点に223室、GCは46拠点に458室、スタンダード会議室のCCは、拠点数・室数で最大となる87拠点992 室を有する。一方、ライトユーズとして展開しているBCとスター貸会議室のうち、BCはリーズナブルな会議室で50拠点に319室あり、スター貸会議室は小規模会議室で40拠点に93室ある。同社は低価格での会議室利用で顧客を獲得し、利便性などのメリットを顧客に認識させ、次の高グレードな貸会議室への利用につなげていく戦略を取っており、その幅広いグレード及び拠点数・室数の会議室利用で顧客単価及びリピート率の向上を実現している。
3. 拠点と貸会議室・宴会場数
合計2,137室(うち、海外33室)の貸会議室・宴会場を展開(2019年2月期末時点)している。全国に会議室を展開していることで、大学入試や大手企業の全国採用など、大口案件を一斉に引き受けることが可能となっている。海外ではニューヨーク、ニュージャージー、香港、シンガポール、台湾に進出し、33室を展開している。
4. 周辺事業
同社が他の貸会議室ビジネスを行っている企業との差別化要因の1 つに、周辺サービスの展開が挙げられる。同社は、料飲、オプション、宿泊、その他にも展開、顧客の幅広いニーズに応えている。料飲については、ケータリング、弁当、カフェ、レストランから成り、特にケータリングや弁当は貸会議室での懇親会など食事を伴う用途展開に欠かせない周辺サービスである。駅に近いシティホテルでは宿泊施設はあるが会議室や食事を提供するための大規模キッチンを設けるだけのスペースがないことが多い。同社がケータリングや弁当事業として抱えることで、駅にアクセスしやすい物件においても会議室のスペースさえあれば食事の提供や懇親会会場にも転用が可能なことは特筆すべきだろう。また、同社は、幅広いオプションも提供しており、それには、同時通訳システムやテレビ会議システムの提供、映像・音響・照明機材の設置・運用、オフィス家具や機材レンタルなどがあり、顧客の利便性を高める内容となっている。また、メジャースの子会社化(2017年9月)によりイベントプロデュース事業へも参入し、イベント運営の支援も手掛けている。
さらに、同社は顧客からの要望により宿泊も提供している。研修旅行や社員旅行として使用されており、リゾート型セミナーホテルである「レクトーレ」(9拠点)、ハイクラスなリゾート型セミナー旅館の「石のや」(伊豆長岡温泉旅館)、ホテルと会議室のハイブリッド施設として「アパホテル」(7拠点)、コンパクトホテルと会議室のハイブリッド施設の「ファーストキャビン」(2拠点)、都市型リゾート宿泊施設の「アジュール竹芝」の合計5ブランド20拠点を展開している。
昨今は大企業であっても、宿泊施設を自社で保有していることは少なく、また保有していてもコスト上、運営が難しいことが多い。同社はそのような企業ニーズを取り込み、リピート率の向上を狙う。また、高級旅館として有名な「石亭」は稼働率の低さから経営不振に陥っていたが、同社が「石のや」としてリブランドし、平日の法人需要を取り込むことで、経営が改善するなど資産の有効活用の観点からもメリットが多い。加えて、貸会議室だけでなく、食事・機器・宿泊場所・交通手配までワンストップで一連のサービスが提供され、顧客にとって利便性の高い内容となっているのが、同社が幅広い顧客に支持されているゆえんと言える。
5. 顧客
年間利用企業は約26,000社で、うち約2,000社が上場企業となっており、上場会社の半数以上が同社の貸会議室を利用している。年間延べ利用企業は約100,000社。裾野の広い顧客基盤を有する一方、売上上位500社の平均年間利用施設数は1社当たり100施設となっており、非常にロングテールな構造と言える。特に、ヘビーユーザーに対してはVIP営業担当者の積極的な提案・細やかな対応により顧客の深掘りを図る一方、単発利用のライトユーザーについてはコールセンターやクラウドスペースを活用したオペレーションで効率化を図っている。また、既存顧客が売上高の約85%を占めており、高いリピート率を誇る。
利用目的は幅広く、件数の割合は会議が21%、セミナー・講演会が19%、研修が18%、採用関連が11%、試験が6%、懇親会が6%、展示会・式典が3%、その他が16%という構成になっている。以前は懇親会にはホテルの宴会場という選択肢しかなかったが、同社の格安料金設定及び料飲事業への拡大により顧客側の選択肢が広がった。また、学習塾や予備校の模試会場、大学の入試会場などの新規需要の獲得も進んでおり、季節要因(繁閑差)の解消にもつながっている。また、今回の日本リージャス買収に伴い、今後はこれまでの会議室利用(時間貸し)から短中期のオフィス利用(月貸し等)へと用途拡充を図る方針である。既に一定規模に達している成長性の高いベンチャー企業向けを始め、大手企業向けの短・中期的なオフィス需要(サテライトオフィスやプロジェクト単位での利用等)に対して、柔軟性(特に契約期間や面積等)やコストパフォーマンスに優れたオフィススペースを提供することにより、稼働率の向上を目指す。
6. 収益構造
2019年2月期におけるサービス別売上高構成比は、「会議室料」が49.6%、「オプション」が9.5%、「料飲」が20.5%、「宿泊」が11.4%、「その他」が9.0%となっており、「会議室料」が最も高い構成比であることはもちろんだが、「料飲」が「会議室料」に次ぐ稼ぎ手となっている。グレード別では、フラッグシップの位置付けのガーデンシティPREMIUM(GCP)とガーデンシティ(GC)が合わせて38.9%を占めるほか、スタンダードのカンファレンスセンター(CC)が31.1%、ライトユーズのビジネスセンター(BC)が5.8%、スター貸会議室が0.7%、宿泊・研修施設が14.1%、その他が9.4%となっており、上位3グレードだけで約69.9%に達する。また、上位グレードの伸びに連動して、「料飲」等の周辺サービスが拡大する構造となっており、高付加価値化が同社戦略の方向性となっている。
会議室料の売上総利益率は約25%、オプションは80%超、料飲は45%前後。したがって、周辺サービスの拡大が収益性をさらに高める構造となっている。また、広告宣伝費・不動産賃料・運営人件費等の固定費を低く抑えているため、損益分岐点が低いのも特徴だ。具体的な料金を見ると、一般的なホテルの宴会場で会議と食事をすると、立食であっても1人当たり10,000円程度かかるが、同社のホテルグレードの会議室だと、4,500円〜5,000円の負担で済むなど、同社の価格優位性は圧倒的に高い。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<YM>
1. ビジネスモデル
ティーケーピー<3479>のビジネスモデルは、不動産オーナーから遊休資産・低収益物件・不採算資産を割安で借り上げ、会議室や宴会場などに「空間」を「再生」し、シェアリングエコノミーとして付加価値を提供するというものである。不動産オーナーから大口取引で不動産を賃貸などで割安に仕入れ、物件を貸会議室などに利用できるように照明・カーペット・壁紙などリノベーションを行い貸会議室仕様にする。同社の顧客は主に会議室利用を求める法人であり、顧客側にとっては自社で会議室を保有するのに比べ、費用の削減、業務の集約化、多目的の利用が可能になるなどのメリットが多い。同社の事業は、大口取引を望む供給側と小口販売・シェアリングを望む需要側をうまくつないでいる。また、最近では、グレードの高いオフィスビルの企画・設計の段階から、当社の仕様による会議室をあらかじめ設けることにより、共有部分の有効活用(収益化等)を手掛ける新しいシェアリングの形も増えているようだ。
同社のビジネスモデルの特徴の1つに「持たざる経営」が挙げられる。仕入れは賃貸契約を主軸としているため、同社業績における不動産価格の変動による影響は小さく、通常の不動産会社が有するリスクとは異なっていることに注意したい(ただ、安定的に高稼働率が期待できるホテル事業については、あえて一部を自社所有することにより高収益性を確保している)。
2. 法人向け貸会議室
法人向け貸会議室はグレード別に展開しているのも同社の特徴の1つだ。グレードは、単価の高いものから、ガーデンシティPREMIUM(GCP)、ガーデンシティ(GC)、カンファレンスセンター(CC)、ビジネスセンター(BC)、スター貸会議室があり、GCPとGCはフラッグシップの位置付けで、CCはスタンダードとなっている。GCPは新築・築浅物件だが、ほかはすべてリノベーションが中心だ。GCPはマルチ活用できるスタイリッシュな複合施設で、GCは同社における最高品質の多目的ホールとなっている。2019年2月期末時点で、GCPは20拠点に223室、GCは46拠点に458室、スタンダード会議室のCCは、拠点数・室数で最大となる87拠点992 室を有する。一方、ライトユーズとして展開しているBCとスター貸会議室のうち、BCはリーズナブルな会議室で50拠点に319室あり、スター貸会議室は小規模会議室で40拠点に93室ある。同社は低価格での会議室利用で顧客を獲得し、利便性などのメリットを顧客に認識させ、次の高グレードな貸会議室への利用につなげていく戦略を取っており、その幅広いグレード及び拠点数・室数の会議室利用で顧客単価及びリピート率の向上を実現している。
3. 拠点と貸会議室・宴会場数
合計2,137室(うち、海外33室)の貸会議室・宴会場を展開(2019年2月期末時点)している。全国に会議室を展開していることで、大学入試や大手企業の全国採用など、大口案件を一斉に引き受けることが可能となっている。海外ではニューヨーク、ニュージャージー、香港、シンガポール、台湾に進出し、33室を展開している。
4. 周辺事業
同社が他の貸会議室ビジネスを行っている企業との差別化要因の1 つに、周辺サービスの展開が挙げられる。同社は、料飲、オプション、宿泊、その他にも展開、顧客の幅広いニーズに応えている。料飲については、ケータリング、弁当、カフェ、レストランから成り、特にケータリングや弁当は貸会議室での懇親会など食事を伴う用途展開に欠かせない周辺サービスである。駅に近いシティホテルでは宿泊施設はあるが会議室や食事を提供するための大規模キッチンを設けるだけのスペースがないことが多い。同社がケータリングや弁当事業として抱えることで、駅にアクセスしやすい物件においても会議室のスペースさえあれば食事の提供や懇親会会場にも転用が可能なことは特筆すべきだろう。また、同社は、幅広いオプションも提供しており、それには、同時通訳システムやテレビ会議システムの提供、映像・音響・照明機材の設置・運用、オフィス家具や機材レンタルなどがあり、顧客の利便性を高める内容となっている。また、メジャースの子会社化(2017年9月)によりイベントプロデュース事業へも参入し、イベント運営の支援も手掛けている。
さらに、同社は顧客からの要望により宿泊も提供している。研修旅行や社員旅行として使用されており、リゾート型セミナーホテルである「レクトーレ」(9拠点)、ハイクラスなリゾート型セミナー旅館の「石のや」(伊豆長岡温泉旅館)、ホテルと会議室のハイブリッド施設として「アパホテル」(7拠点)、コンパクトホテルと会議室のハイブリッド施設の「ファーストキャビン」(2拠点)、都市型リゾート宿泊施設の「アジュール竹芝」の合計5ブランド20拠点を展開している。
昨今は大企業であっても、宿泊施設を自社で保有していることは少なく、また保有していてもコスト上、運営が難しいことが多い。同社はそのような企業ニーズを取り込み、リピート率の向上を狙う。また、高級旅館として有名な「石亭」は稼働率の低さから経営不振に陥っていたが、同社が「石のや」としてリブランドし、平日の法人需要を取り込むことで、経営が改善するなど資産の有効活用の観点からもメリットが多い。加えて、貸会議室だけでなく、食事・機器・宿泊場所・交通手配までワンストップで一連のサービスが提供され、顧客にとって利便性の高い内容となっているのが、同社が幅広い顧客に支持されているゆえんと言える。
5. 顧客
年間利用企業は約26,000社で、うち約2,000社が上場企業となっており、上場会社の半数以上が同社の貸会議室を利用している。年間延べ利用企業は約100,000社。裾野の広い顧客基盤を有する一方、売上上位500社の平均年間利用施設数は1社当たり100施設となっており、非常にロングテールな構造と言える。特に、ヘビーユーザーに対してはVIP営業担当者の積極的な提案・細やかな対応により顧客の深掘りを図る一方、単発利用のライトユーザーについてはコールセンターやクラウドスペースを活用したオペレーションで効率化を図っている。また、既存顧客が売上高の約85%を占めており、高いリピート率を誇る。
利用目的は幅広く、件数の割合は会議が21%、セミナー・講演会が19%、研修が18%、採用関連が11%、試験が6%、懇親会が6%、展示会・式典が3%、その他が16%という構成になっている。以前は懇親会にはホテルの宴会場という選択肢しかなかったが、同社の格安料金設定及び料飲事業への拡大により顧客側の選択肢が広がった。また、学習塾や予備校の模試会場、大学の入試会場などの新規需要の獲得も進んでおり、季節要因(繁閑差)の解消にもつながっている。また、今回の日本リージャス買収に伴い、今後はこれまでの会議室利用(時間貸し)から短中期のオフィス利用(月貸し等)へと用途拡充を図る方針である。既に一定規模に達している成長性の高いベンチャー企業向けを始め、大手企業向けの短・中期的なオフィス需要(サテライトオフィスやプロジェクト単位での利用等)に対して、柔軟性(特に契約期間や面積等)やコストパフォーマンスに優れたオフィススペースを提供することにより、稼働率の向上を目指す。
6. 収益構造
2019年2月期におけるサービス別売上高構成比は、「会議室料」が49.6%、「オプション」が9.5%、「料飲」が20.5%、「宿泊」が11.4%、「その他」が9.0%となっており、「会議室料」が最も高い構成比であることはもちろんだが、「料飲」が「会議室料」に次ぐ稼ぎ手となっている。グレード別では、フラッグシップの位置付けのガーデンシティPREMIUM(GCP)とガーデンシティ(GC)が合わせて38.9%を占めるほか、スタンダードのカンファレンスセンター(CC)が31.1%、ライトユーズのビジネスセンター(BC)が5.8%、スター貸会議室が0.7%、宿泊・研修施設が14.1%、その他が9.4%となっており、上位3グレードだけで約69.9%に達する。また、上位グレードの伸びに連動して、「料飲」等の周辺サービスが拡大する構造となっており、高付加価値化が同社戦略の方向性となっている。
会議室料の売上総利益率は約25%、オプションは80%超、料飲は45%前後。したがって、周辺サービスの拡大が収益性をさらに高める構造となっている。また、広告宣伝費・不動産賃料・運営人件費等の固定費を低く抑えているため、損益分岐点が低いのも特徴だ。具体的な料金を見ると、一般的なホテルの宴会場で会議と食事をすると、立食であっても1人当たり10,000円程度かかるが、同社のホテルグレードの会議室だと、4,500円〜5,000円の負担で済むなど、同社の価格優位性は圧倒的に高い。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<YM>