DDHD Research Memo(3):ブランドマネジメント制と好立地に集中的に出店するドミナント展開に強み
[19/05/27]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■企業特長
DDホールディングス<3073>の特長(強み)として、以下の6点を挙げることができるが、それぞれが相互に機能し合うことで、同社独自の価値創造を実現している。
1. 独自のブランドマネジメントによる収益の安定と成長の両立
業態開発力を生かした保有ブランドの多様性(ブランドポートフォリオ)は、環境変化への機動的な対応や主力ブランドのライフサイクルの分散を図ることで、収益の安定と持続的な成長の両立を実現するものである。同社のブランドポートフォリオは、ブランドごとの特性やグループ内の役割から、「多店舗展開予備軍ブランド&少数展開ブランド」「多店舗展開によるスケールメリット追求」「フラグシップブランド等によるコーポレートブランディング」と明確化されている。店舗それぞれで役割及び特性が異なるほか、客単価設定や出店方針も差別化することで、ブランドポートフォリオの最適化が図られている。
2. ドミナント展開による効率性及び回遊性の向上
同社は、保有ブランドの多様性を生かしたドミナント展開を基本としている。好立地への集中出店は、集客面で有利であることに加えて、物流コストの削減など効率性を高めることが可能となる。特に、同社の場合は、ブランドの役割や特性が異なることから、立地に見合ったブランドでの出店が可能な上、ブランド間競合(カニバリゼーション)が少なく、ブランド間で顧客の回遊性を高める相乗効果も発揮されている。今後は、関東圏以外の主要都市へ出店エリアの拡大が考えられるが、そこでもドミナント出店を基本に据える方針のようだ。
3. 独自のコンセプトに基づく個性的な店舗づくり
独自発想による業態開発並びに店舗づくりも同社の特長(強み)である。「コンセプト」「空間」「ストーリー」を重視した個性的な店舗づくりやスタッフが歌を唄い顧客を熱狂させる「宴」の演出は、他社との差別化要因となってきた。同社の既存店売上高が、厳しい業界環境のなかで比較的好調であるのは、固定ファンの心をつかんでいる証左と言えるだろう。また同社は、「世界に誇る『オープンイノベーション企業』」を経営理念に掲げており、異業種を含めた外部資源との融合による新しい価値創造にも挑戦する方針である。
4. 顧客を囲い込むCRM(顧客管理システム)戦略
同社は、「DD予約オンライン(24時間オンライン予約システム)」「予約コールセンター(宴会コンシェルジュ)」等の仕組みで構成されるCRM予約管理システム(以下、当システム)を構築している※。「DD予約オンライン」では、インターネット上で24時間予約が可能なほか、「予約コールセンター(宴会コンシェルジュ)」では午前9時半から午後10時まで自社コールセンターでの対応を受け付けており、希望条件に合った店舗を紹介してもらうことができる。
※2015年5月に、同社のCRMシステムが、米国の国際的なビジネスアワードである「アジアパシフィックスティービーアワード」の「カンパニー・オブ・ザ・イヤー部門」で「ブロンズ賞」を獲得。
これらによって、予約の電話がつながらない、予約したいがどの店が空いているかわからないといった顧客にとっての不便を解消するとともに、同社にとっても機会ロスの減少(空いている店舗への誘導を含む)が図られている。また、当システムの利用の有無にかかわらず会計の10%相当(各店に定められた固定POINT)がポイント付与されることから、「DD POINT」会員※1として囲い込むことができ、リピート率の向上にもつながっている。なお、「DD POINT(旧DDマイル)」は2012年12月にスタートし、2019年2月末の会員数は12.0万人を超えている。また、ゼットン及び商業藝術、エスエルディーを含め、グループ全体で442店舗※2での利用が可能となっている。会員基盤の積み上げは、機会ロスの削減とリピート率の向上により、同社の既存店売上高を下支えする要因となっている。
※1 「DD POINT」とは同社グループ独自のポイント制度であり、1POINT=1円として1POINT単位から店舗の飲食代金として利用したり、旅行や家電などの賞品と交換することができる。2017年11月20日より、「DD マイル」から「DD POINT」に名称が変更された。
※2 エスエルディー店舗(一部を除く)についても2018年9月よりポイント利用が可能となっている。また、ポイント付与についても2019年3月1日より順次サービスを開始している。
また、店舗情報管理システムとオンライン予約管理システム、CRMデータベースなどを連携した「DD Webマーケティングシステム」や店舗別Webサイトの運用にも注力している。顧客の利便性をさらに高めるとともに、他社グルメ情報サイトへの依存度を軽減し、収益力の高い自社でのオンライン予約の獲得に狙いがある。特に、ユーザビリティの向上については、店舗情報管理を行うCMS※を新たに開発し、「DD予約オンライン」とのデータ連携により、これまでの空席情報に加えて、店舗情報、コース(プラン)情報、座席情報、店舗写真など、最新の情報をWebで確認した上でオンライン予約が可能となり、顧客ロイヤリティの向上にも取り組む。
※Contents Management Systemの略称。Webコンテンツを構成するデジタルコンテンツを統合し、管理・処理するシステム。
5. 充実した人材育成体制の確立
独自のコンセプトに基づく業態を展開する同社にとって、経営理念及びビジョンの共有は最重要事項である。同社は、全社員が集う「DDグループコンベンション(全社員総会)」を年1回開催するとともに、社内報の配信、社長ランチ(毎週1回)の開催などにより理念浸透に取り組んでいる。また、「DDGサービスグランプリ(自社グループ内サービスコンテスト)」や「スマイルプロジェクト(店舗オペレーション力向上プロジェクト)」による組織力向上、「DDゼミナール(Off-JT)」や「外部研修」などによるスキルアップにも積極的に取り組んでおり、人材不足が成長のボトルネックとして懸念されている業界において長期的に人材育成を行う基盤が確立している。
特に、「LIVE UNIVERSE」は『より短期間で、より多くの従業員に、より効率的かつ効果的に教育が行える仕組み』として役立っている。スマートデバイスで利用可能な企業向け教育のクラウドサービスで、従来のSNSとは異なり、文章化しにくい業務ノウハウを動画でSNS及びクラウド上に保存することで、従業員は当該サービスを自分の都合の良い時間や場所を選び、利用できる。さらに、個々の進捗状況等をWeb上で共有し、コメントや「いいね!」を追加してコミュニケーションを取り合うこともでき、指導者からの評価も受けられるため、効率的に課題解決及びスキルアップを図ることが可能となっている。このシステムの導入によりアルバイトの定着率が大幅に改善しているようだ。
6. 数々のM&Aを成功に導いてきた組織能力
同社の成長を支えてきた要因として、M&Aも重要な役割を担ってきた。規模拡大のみならず、バグースの買収によるアミューズメント事業への参入や、ゼットン及び商業藝術の買収によるカフェ業態の獲得など、事業領域の拡大(業態ポートフォリオの最適化)に向けた足掛かりになるとともに、同社グループの経営理念や経営資源、運営ノウハウなどを共有することにより、グループ一体となった価値創造を実現してきたところは高く評価できる。また、そこで培ってきた経験則や組織能力は、今後のM&A戦略においても大きなアドバンテージになるものと考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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DDホールディングス<3073>の特長(強み)として、以下の6点を挙げることができるが、それぞれが相互に機能し合うことで、同社独自の価値創造を実現している。
1. 独自のブランドマネジメントによる収益の安定と成長の両立
業態開発力を生かした保有ブランドの多様性(ブランドポートフォリオ)は、環境変化への機動的な対応や主力ブランドのライフサイクルの分散を図ることで、収益の安定と持続的な成長の両立を実現するものである。同社のブランドポートフォリオは、ブランドごとの特性やグループ内の役割から、「多店舗展開予備軍ブランド&少数展開ブランド」「多店舗展開によるスケールメリット追求」「フラグシップブランド等によるコーポレートブランディング」と明確化されている。店舗それぞれで役割及び特性が異なるほか、客単価設定や出店方針も差別化することで、ブランドポートフォリオの最適化が図られている。
2. ドミナント展開による効率性及び回遊性の向上
同社は、保有ブランドの多様性を生かしたドミナント展開を基本としている。好立地への集中出店は、集客面で有利であることに加えて、物流コストの削減など効率性を高めることが可能となる。特に、同社の場合は、ブランドの役割や特性が異なることから、立地に見合ったブランドでの出店が可能な上、ブランド間競合(カニバリゼーション)が少なく、ブランド間で顧客の回遊性を高める相乗効果も発揮されている。今後は、関東圏以外の主要都市へ出店エリアの拡大が考えられるが、そこでもドミナント出店を基本に据える方針のようだ。
3. 独自のコンセプトに基づく個性的な店舗づくり
独自発想による業態開発並びに店舗づくりも同社の特長(強み)である。「コンセプト」「空間」「ストーリー」を重視した個性的な店舗づくりやスタッフが歌を唄い顧客を熱狂させる「宴」の演出は、他社との差別化要因となってきた。同社の既存店売上高が、厳しい業界環境のなかで比較的好調であるのは、固定ファンの心をつかんでいる証左と言えるだろう。また同社は、「世界に誇る『オープンイノベーション企業』」を経営理念に掲げており、異業種を含めた外部資源との融合による新しい価値創造にも挑戦する方針である。
4. 顧客を囲い込むCRM(顧客管理システム)戦略
同社は、「DD予約オンライン(24時間オンライン予約システム)」「予約コールセンター(宴会コンシェルジュ)」等の仕組みで構成されるCRM予約管理システム(以下、当システム)を構築している※。「DD予約オンライン」では、インターネット上で24時間予約が可能なほか、「予約コールセンター(宴会コンシェルジュ)」では午前9時半から午後10時まで自社コールセンターでの対応を受け付けており、希望条件に合った店舗を紹介してもらうことができる。
※2015年5月に、同社のCRMシステムが、米国の国際的なビジネスアワードである「アジアパシフィックスティービーアワード」の「カンパニー・オブ・ザ・イヤー部門」で「ブロンズ賞」を獲得。
これらによって、予約の電話がつながらない、予約したいがどの店が空いているかわからないといった顧客にとっての不便を解消するとともに、同社にとっても機会ロスの減少(空いている店舗への誘導を含む)が図られている。また、当システムの利用の有無にかかわらず会計の10%相当(各店に定められた固定POINT)がポイント付与されることから、「DD POINT」会員※1として囲い込むことができ、リピート率の向上にもつながっている。なお、「DD POINT(旧DDマイル)」は2012年12月にスタートし、2019年2月末の会員数は12.0万人を超えている。また、ゼットン及び商業藝術、エスエルディーを含め、グループ全体で442店舗※2での利用が可能となっている。会員基盤の積み上げは、機会ロスの削減とリピート率の向上により、同社の既存店売上高を下支えする要因となっている。
※1 「DD POINT」とは同社グループ独自のポイント制度であり、1POINT=1円として1POINT単位から店舗の飲食代金として利用したり、旅行や家電などの賞品と交換することができる。2017年11月20日より、「DD マイル」から「DD POINT」に名称が変更された。
※2 エスエルディー店舗(一部を除く)についても2018年9月よりポイント利用が可能となっている。また、ポイント付与についても2019年3月1日より順次サービスを開始している。
また、店舗情報管理システムとオンライン予約管理システム、CRMデータベースなどを連携した「DD Webマーケティングシステム」や店舗別Webサイトの運用にも注力している。顧客の利便性をさらに高めるとともに、他社グルメ情報サイトへの依存度を軽減し、収益力の高い自社でのオンライン予約の獲得に狙いがある。特に、ユーザビリティの向上については、店舗情報管理を行うCMS※を新たに開発し、「DD予約オンライン」とのデータ連携により、これまでの空席情報に加えて、店舗情報、コース(プラン)情報、座席情報、店舗写真など、最新の情報をWebで確認した上でオンライン予約が可能となり、顧客ロイヤリティの向上にも取り組む。
※Contents Management Systemの略称。Webコンテンツを構成するデジタルコンテンツを統合し、管理・処理するシステム。
5. 充実した人材育成体制の確立
独自のコンセプトに基づく業態を展開する同社にとって、経営理念及びビジョンの共有は最重要事項である。同社は、全社員が集う「DDグループコンベンション(全社員総会)」を年1回開催するとともに、社内報の配信、社長ランチ(毎週1回)の開催などにより理念浸透に取り組んでいる。また、「DDGサービスグランプリ(自社グループ内サービスコンテスト)」や「スマイルプロジェクト(店舗オペレーション力向上プロジェクト)」による組織力向上、「DDゼミナール(Off-JT)」や「外部研修」などによるスキルアップにも積極的に取り組んでおり、人材不足が成長のボトルネックとして懸念されている業界において長期的に人材育成を行う基盤が確立している。
特に、「LIVE UNIVERSE」は『より短期間で、より多くの従業員に、より効率的かつ効果的に教育が行える仕組み』として役立っている。スマートデバイスで利用可能な企業向け教育のクラウドサービスで、従来のSNSとは異なり、文章化しにくい業務ノウハウを動画でSNS及びクラウド上に保存することで、従業員は当該サービスを自分の都合の良い時間や場所を選び、利用できる。さらに、個々の進捗状況等をWeb上で共有し、コメントや「いいね!」を追加してコミュニケーションを取り合うこともでき、指導者からの評価も受けられるため、効率的に課題解決及びスキルアップを図ることが可能となっている。このシステムの導入によりアルバイトの定着率が大幅に改善しているようだ。
6. 数々のM&Aを成功に導いてきた組織能力
同社の成長を支えてきた要因として、M&Aも重要な役割を担ってきた。規模拡大のみならず、バグースの買収によるアミューズメント事業への参入や、ゼットン及び商業藝術の買収によるカフェ業態の獲得など、事業領域の拡大(業態ポートフォリオの最適化)に向けた足掛かりになるとともに、同社グループの経営理念や経営資源、運営ノウハウなどを共有することにより、グループ一体となった価値創造を実現してきたところは高く評価できる。また、そこで培ってきた経験則や組織能力は、今後のM&A戦略においても大きなアドバンテージになるものと考えられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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