DDHD Research Memo(8):新たな連結中期経営計画を公表、高収益体質への転換や利益の創造などに取り組む
[19/05/27]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■中期経営計画
DDホールディングス<3073>は、ゼットン及び商業藝術、エスエルディーのグループ会社化のほか、業界を取り巻く環境変化等を踏まえ、新たに3ヶ年の連結中期経営計画を公表した。「現存規模を最大限生かした高収益企業グループへの体質改善のための利益追求及び、ガバナンス体制強化をスピード感をもって挑む」という基本方針の下、後述する7つの施策「SUPER 7 PROJECT」を推進することで、企業価値の最大化を図る方針である。特に、「既存営業利益率の向上」、「将来利益の創造」、「コーポレート体制強化」を中期事業戦略の柱に掲げ、2022年2月期の連結売上高600億円(年平均増収率5.6%)、連結営業利益率7%、配当性向15%以上を目指す内容となっている。
1. 前中期経営計画及び2019年2月期の振り返り
(1) 定量及び定性面における主な成果
前回の中期経営計画(2016年2月期〜2018年2月期)については数値目標をすべて達成※1するとともに、それに続く2019年2月期についても、M&A実施後のPMIなどに取り組み、十分な成果※2を残すことができたと言える。
※1 最終年度(2018年2月期)の売上高450億円(計画比120%)、営業利益22.0億円(計画比116%)、親会社株主に帰属する当期純利益10.1億円(計画比101%)、EBITDA35.4億円(計画比114%)、店舗数425店舗(計画比118%)とすべての数値目標をクリアした。
※2 2019年2月期の各社開示情報を見ると、ゼットンの営業利益は前期比8.3%増の463百万円、エスエルディーの営業損失は12百万円(前期は110百万円の損失)とそれぞれ着実に損益改善が図られている。
また、定性面でも、3つの大型M&Aや新規事業の立ち上げなどを通じて、事業基盤強化及び周辺事業拡張に取り組んだ結果、業績季節変動の平準化及びノンアルコール業態補強によるポートフォリオの拡充、東京オリンピックに向けた山手線沿線を中心としたドミナント展開のさらなる強化、関東圏以外の商圏での店舗展開の拡充など、展開領域(エリア/時間)及び事業領域の拡大において成果を残すとともに、新卒採用大幅増員の達成や人材教育の強化など、人的リソースにおいても増強を図ることができた。
(2) 前提となる課題認識
一方、課題としては、原材料の高騰リスク、労働力不足、人口減少によるアルコール消費減少、消費税増税、健康増進法(受動喫煙)対応、中食業界(GMS、コンビニ)の台頭など、業界を取り巻く環境は一層厳しくなっており、そのための対応が求められている。
2. 新中期経営計画の位置づけ
これまでの取り組みにより、持続的な成長に向けた事業基盤が整ってきたことから、今後は事業基盤を早期に軌道に乗せ、高収益体質への転換を図るとともに、将来に向けた新たな価値創造にも注力する方針である。したがって、同社グループがこれから大きく飛躍するための転換期と位置付けることができる。特に、利益率向上に向けては、1年目を検証フェーズ、2年目を選択と集中、3年目を成長加速と位置づけ、3段構えでの実現を描いている。
3. 具体的な7つの施策「SUPER 7 PROJECT」について
同社は、中期事業戦略(既存営業利益率の向上、将来利益の創造、コーポレート体制強化)を推進するにあたって、以下の7つの施策「SUPER 7 PROJECT」に取り組む。
(1)既存営業利益率の向上に向けて
1) 既存事業高収益体質への転換及び既存事業高付加価値ビジネスへの成長
・スクラップ&ビルドによる低収益店舗の改善施策強化
・グループ仕入れの最適化及び集客施策(DD POINT等)仕組み強化
・オペレーション等の最適化によるさらなる利益率の向上
・ウェディング事業を含む新規事業の早期黒字化
・新たな事業プロダクトへの挑戦
2)本社機能のPMI推進他による本社コストの比率引き下げ及び働き方改革対応
(2) 将来利益の創造に向けて
3) 外部コラボレーション・アライアンスの強化
・店舗資産の新たな活用による更なる収益化※1
4) CVC※2による新たな経営資源の創出
・オープンイノベーションの実現に向けたベンチャー投資※3
5) 対象事業領域の拡大による利益率向上のためのM&Aの推進
・再生型M&Aから多角化及び連結収益モデルの多様化を実現
※1 「モノ消費」から「コト消費」へと消費者の関心が移りつつあるなかで、同社ではグループ内の優良立地及び運営力を活かし、外部IP(キャラクターやタレント等)とのコラボレーションを進め、新たな集客施設(コラボイベント特化型業態など)の実現を行うと同時に、外部企業とのアライアンスにより新たな事業領域の拡大を目指している
※2 CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)とは、事業会社がベンチャー企業とのシナジーを求めて投資を行うために設立したVCのこと。
※3 同社の連結子会社である(株)DDホールディングスベンチャーキャピタル(DDHDVC)は、先進的な事業を展開しているベンチャー企業等への投資を通じて、同社グループ独自のインキュベーション機能の発揮や将来の業務提携により、ともに成長していくことを目的として、2019年3月28日付で「DD Holdings Open Innovation Fund投資事業有限責任組合」を設立した。同ファンドは、同社及びDDHDVCの出資の他に、外部の投資家からも資金を調達し、ファンド総額を上限10億円としている。
(3)コーポレート体制強化に向けて
6) コーポレートガバナンスの更なる強化による企業統治の醸成
・業績連動型役員報酬の導入による報酬制度の明確化
・社外取締役の拡充によるガバナンス体制強化
7) 配当政策等の変更による株主還元強化
・期末配当のみから、中間配当を実施し年2回の配当
・DOE3%の配当方針から配当性向15%以上を目指す
弊社では、事業目標の中でも、連結営業利益率7%の達成が一番高いハードルとみている。もっとも、同社の収益性向上(高収益体質への転換)の道筋には、1)低収益店舗の改善(整理)、2)先行投資段階にある新規事業(ウェディング事業等)の収益化、3)グループシナジーのさらなる追求、4)新たな価値の創造、の大きく4つの要素がカギを握るものと捉えているが、1)及び2)の推進、すなわち同社本来の収益力に戻すだけでも、営業利益率6%程度への改善は可能であると評価している。したがって、3)及び4)の発現により、どれだけ上乗せができるかがポイントになるであろう。また、厳しい業界環境が続くなかで、さらに先を見据えた「将来利益の創造」についても重要なテーマと考えられる。いかに同社ならではのイノベーション(業界の枠を超えた新たな価値の創出等)を生み出すか、他社とのアライアンスやM&Aの動向にも注目したい。特に、新たに開始した「コラボレーションイベント特化型業態」※については、好立地空間を確保したいIP提供者からの引き合いが強いうえ、同社にとっても店舗資産の有効活用(空き時間の収益化等)や、これまでの飲食中心から物販(グッズ販売など)が加わることによる収益性向上につながることから、非常に理にかなった戦略と言える。
※2019年4月1日に、同社の連結子会社であるエスエルディーが、IPコンテンツを活用したコラボレーションイベント特化型業態「Collabo_Index(コラボスペースインデックス)」を2店舗出店(業態変更)した。第一弾として、女性アイドルグループとのコラボレーションを実施している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<ST>
DDホールディングス<3073>は、ゼットン及び商業藝術、エスエルディーのグループ会社化のほか、業界を取り巻く環境変化等を踏まえ、新たに3ヶ年の連結中期経営計画を公表した。「現存規模を最大限生かした高収益企業グループへの体質改善のための利益追求及び、ガバナンス体制強化をスピード感をもって挑む」という基本方針の下、後述する7つの施策「SUPER 7 PROJECT」を推進することで、企業価値の最大化を図る方針である。特に、「既存営業利益率の向上」、「将来利益の創造」、「コーポレート体制強化」を中期事業戦略の柱に掲げ、2022年2月期の連結売上高600億円(年平均増収率5.6%)、連結営業利益率7%、配当性向15%以上を目指す内容となっている。
1. 前中期経営計画及び2019年2月期の振り返り
(1) 定量及び定性面における主な成果
前回の中期経営計画(2016年2月期〜2018年2月期)については数値目標をすべて達成※1するとともに、それに続く2019年2月期についても、M&A実施後のPMIなどに取り組み、十分な成果※2を残すことができたと言える。
※1 最終年度(2018年2月期)の売上高450億円(計画比120%)、営業利益22.0億円(計画比116%)、親会社株主に帰属する当期純利益10.1億円(計画比101%)、EBITDA35.4億円(計画比114%)、店舗数425店舗(計画比118%)とすべての数値目標をクリアした。
※2 2019年2月期の各社開示情報を見ると、ゼットンの営業利益は前期比8.3%増の463百万円、エスエルディーの営業損失は12百万円(前期は110百万円の損失)とそれぞれ着実に損益改善が図られている。
また、定性面でも、3つの大型M&Aや新規事業の立ち上げなどを通じて、事業基盤強化及び周辺事業拡張に取り組んだ結果、業績季節変動の平準化及びノンアルコール業態補強によるポートフォリオの拡充、東京オリンピックに向けた山手線沿線を中心としたドミナント展開のさらなる強化、関東圏以外の商圏での店舗展開の拡充など、展開領域(エリア/時間)及び事業領域の拡大において成果を残すとともに、新卒採用大幅増員の達成や人材教育の強化など、人的リソースにおいても増強を図ることができた。
(2) 前提となる課題認識
一方、課題としては、原材料の高騰リスク、労働力不足、人口減少によるアルコール消費減少、消費税増税、健康増進法(受動喫煙)対応、中食業界(GMS、コンビニ)の台頭など、業界を取り巻く環境は一層厳しくなっており、そのための対応が求められている。
2. 新中期経営計画の位置づけ
これまでの取り組みにより、持続的な成長に向けた事業基盤が整ってきたことから、今後は事業基盤を早期に軌道に乗せ、高収益体質への転換を図るとともに、将来に向けた新たな価値創造にも注力する方針である。したがって、同社グループがこれから大きく飛躍するための転換期と位置付けることができる。特に、利益率向上に向けては、1年目を検証フェーズ、2年目を選択と集中、3年目を成長加速と位置づけ、3段構えでの実現を描いている。
3. 具体的な7つの施策「SUPER 7 PROJECT」について
同社は、中期事業戦略(既存営業利益率の向上、将来利益の創造、コーポレート体制強化)を推進するにあたって、以下の7つの施策「SUPER 7 PROJECT」に取り組む。
(1)既存営業利益率の向上に向けて
1) 既存事業高収益体質への転換及び既存事業高付加価値ビジネスへの成長
・スクラップ&ビルドによる低収益店舗の改善施策強化
・グループ仕入れの最適化及び集客施策(DD POINT等)仕組み強化
・オペレーション等の最適化によるさらなる利益率の向上
・ウェディング事業を含む新規事業の早期黒字化
・新たな事業プロダクトへの挑戦
2)本社機能のPMI推進他による本社コストの比率引き下げ及び働き方改革対応
(2) 将来利益の創造に向けて
3) 外部コラボレーション・アライアンスの強化
・店舗資産の新たな活用による更なる収益化※1
4) CVC※2による新たな経営資源の創出
・オープンイノベーションの実現に向けたベンチャー投資※3
5) 対象事業領域の拡大による利益率向上のためのM&Aの推進
・再生型M&Aから多角化及び連結収益モデルの多様化を実現
※1 「モノ消費」から「コト消費」へと消費者の関心が移りつつあるなかで、同社ではグループ内の優良立地及び運営力を活かし、外部IP(キャラクターやタレント等)とのコラボレーションを進め、新たな集客施設(コラボイベント特化型業態など)の実現を行うと同時に、外部企業とのアライアンスにより新たな事業領域の拡大を目指している
※2 CVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)とは、事業会社がベンチャー企業とのシナジーを求めて投資を行うために設立したVCのこと。
※3 同社の連結子会社である(株)DDホールディングスベンチャーキャピタル(DDHDVC)は、先進的な事業を展開しているベンチャー企業等への投資を通じて、同社グループ独自のインキュベーション機能の発揮や将来の業務提携により、ともに成長していくことを目的として、2019年3月28日付で「DD Holdings Open Innovation Fund投資事業有限責任組合」を設立した。同ファンドは、同社及びDDHDVCの出資の他に、外部の投資家からも資金を調達し、ファンド総額を上限10億円としている。
(3)コーポレート体制強化に向けて
6) コーポレートガバナンスの更なる強化による企業統治の醸成
・業績連動型役員報酬の導入による報酬制度の明確化
・社外取締役の拡充によるガバナンス体制強化
7) 配当政策等の変更による株主還元強化
・期末配当のみから、中間配当を実施し年2回の配当
・DOE3%の配当方針から配当性向15%以上を目指す
弊社では、事業目標の中でも、連結営業利益率7%の達成が一番高いハードルとみている。もっとも、同社の収益性向上(高収益体質への転換)の道筋には、1)低収益店舗の改善(整理)、2)先行投資段階にある新規事業(ウェディング事業等)の収益化、3)グループシナジーのさらなる追求、4)新たな価値の創造、の大きく4つの要素がカギを握るものと捉えているが、1)及び2)の推進、すなわち同社本来の収益力に戻すだけでも、営業利益率6%程度への改善は可能であると評価している。したがって、3)及び4)の発現により、どれだけ上乗せができるかがポイントになるであろう。また、厳しい業界環境が続くなかで、さらに先を見据えた「将来利益の創造」についても重要なテーマと考えられる。いかに同社ならではのイノベーション(業界の枠を超えた新たな価値の創出等)を生み出すか、他社とのアライアンスやM&Aの動向にも注目したい。特に、新たに開始した「コラボレーションイベント特化型業態」※については、好立地空間を確保したいIP提供者からの引き合いが強いうえ、同社にとっても店舗資産の有効活用(空き時間の収益化等)や、これまでの飲食中心から物販(グッズ販売など)が加わることによる収益性向上につながることから、非常に理にかなった戦略と言える。
※2019年4月1日に、同社の連結子会社であるエスエルディーが、IPコンテンツを活用したコラボレーションイベント特化型業態「Collabo_Index(コラボスペースインデックス)」を2店舗出店(業態変更)した。第一弾として、女性アイドルグループとのコラボレーションを実施している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<ST>