Jトラスト Research Memo(5):貸倒引当金の大幅積み増しにより、不確実性の払拭を図る(3)
[19/06/06]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■Jトラスト<8508>の業績動向
(3) 東南アジア金融事業
東南アジア金融事業では、東南アジアで最大の人口を持つインドネシアで銀行業及び債権回収事業などを展開する。ライツ・オファリングで得た資金により、銀行業の現PT Bank JTrust Indonesia, Tbk.(以下、Jトラスト銀行インドネシア)を傘下に収めた。現在は同行の業績悪化に苦しんでいるが、将来的には債権回収業のPT JTRUST INVESTMENTS Indonesia(以下、Jトラストインベストメンツインドネシア)、マルチファイナンス会社のJTOとともに、同社グループでは東南アジア金融事業が第3の収益の柱に成長し、グループの業績をけん引することを期待している。
2019年3月期は、銀行業における貸出金減少に伴い利息収益が減少したこと等により、東南アジア金融事業の営業収益は13,025百万円(前期比553百万円減)となった。また、銀行業において不良債権を一括処理したこと等により、セグメント損失17,712百万円(前期は1,545百万円の利益)を計上した。
長期間にわたって預金保険機構の管理下にあったJトラスト銀行インドネシアについては、同社グループでは最優先課題の1つとして、再生に取り組んでいる。これまでに、同行の増資を行うとともに、不良債権の回収に特化した新会社Jトラストインベストメンツインドネシアを設立して、同行から不良債権を切り離して譲渡することにより、財務体質の改善を図るなど、銀行再生を加速してきた。ただ、銀行再生が計画どおりに進まなかったことから、2019年3月期決算において抜本的な対応に踏み切った。すなわち、Jトラスト銀行インドネシアでは買収前からの負の遺産を含めた不良債権を前倒しで一括処理することを決断した。このように抜本的な不良債権処理を断行することで、東南アジア金融事業の業績急回復を実現するための基盤を整えた。回収及び不良債権売却を進めた結果、2019年3月の銀行の貸出残高は84,142億ルピア(約64,789百万円)に減少したが、融資残高の急激な減少等により90日以上延滞債権の割合は5.6%に上昇している。現在、銀行単体での積極的な貸付は停止しており、今後はJTOを主軸として貸出資産を増加させ、とりあえず収支均衡を図る計画である。韓国で潰れた銀行を再生させたグループの精鋭メンバーをインドネシアに派遣しており、Jトラスト銀行インドネシアの問題点を明確にし、再建に取り組む計画である。
マルチファイナンス会社のJTOについては、2018年10月に株式60%を取得しグループ傘下に収めた。JTOはオートローン業界の老舗として高い知名度があり、インドネシア全土の支店網や取引金融機関との豊富なネットワークを有している。既に提携先等のパートナーも増えており、従来の中古車ローンに加え農機ローンや新車ローンなど新しい商品の提供を始めている。また、Jトラスト銀行インドネシアのバランスシートを活用し、資金調達の安定化、資本効率の向上を進めつつ、銀行の再建にも寄与する見通しである。グループ入り以降の半年間で、農機具ディーラー数は30社から47社に、貸付件数は519件から793件に、貸付金額も550億ルピアから1,038億ルピア(約799百万円)に拡大している。JTOのグループ入りに伴い、韓国に続きインドネシアでも、銀行、債権回収会社、ファイナンスカンパニーの三位一体の事業セグメントが構築され、幅広いエリアにおける多様なニーズに応えられる体制が整ったことになる。
加えて、カンボジアの商業銀行で2017年12月末の資産規模は、業界7位(約1,120億円)のANZRの株式55%を2019年7〜9月中にも取得予定である。ANZRは優良銀行であり、安定した利益を計上していることから、同社グループに対する早期の利益貢献が期待される。こうした最近の買収から、東南アジア金融事業を今後のグループ成長ドライバーと位置付ける、同社の戦略がうかがわれる。
(4) 投資事業
投資事業では、シンガポールを拠点に、事業のシナジー性や商品力などを総合的に判断し、投資先を選定する。特に、金融事業あるいは金融事業とシナジー効果が見込める事業に投資している。
2019年3月期の投資事業は、前期にGL転換社債取消に伴う債権分類変更による収益計上した反動から、営業収益は1,036百万円(前期比6,254百万円減)となり、またセグメント損失は現在係争中のJトラストアジアが保有するGLに対する債権の全額について貸倒引当金繰入額を計上したこと等により拡大し、20,568百万円の損失(前期は2,852百万円の損失)となった。グループ全体の業績悪化を招き、改めて海外企業への投資の難しさを示す結果となった。ただ、貸倒引当金を引き当てたことで、今後は将来の回収金は利益計上されることになるため、回収に尽力することでグループ全体の業績回復に貢献する計画である。
(5) 非金融事業
同社グループでは、非金融事業として総合エンターテインメント事業、不動産事業、システム事業などを展開している。ライブ・エンタメ事業を中心に展開する子会社のKeyHolder<4712>(2017年10月1日にアドアーズ(株)より商号変更)では、2018年3月に子会社のアドアーズを売却した。さらに2018年10月にはJトラストは子会社であるハイライツ・エンタテインメント(株)を売却し、グループ経営資源の選択と集中を進めた。一方で2019年3月にアイドルグループ「SKE48」の事業を承継し、KeyHolderグループは劇場、マネジメント、テレビ、プランニングなど多彩な機能を持ち合わせた総合エンターテインメント企業集団となっている。
ハイライツ・エンタテインメントの売却決議に伴い前期実績が非継続事業に分類された結果、総合エンターテインメント事業、不動産事業を合算した非金融事業では、営業収益は7,961百万円(前期比1,054百万円増)、セグメント利益76百万円(同583百万円減)となった。ただ、同社の本業である金融事業とのシナジーを考えると、非金融事業は今後もさらに見直しの余地が大きい事業分野と言えるだろう。
3. 財政状況と経営指標
2019年3月期末の資産合計は、前期末比11,416百万円増の668,377百万円になった。これは主に、営業債権及びその他の債権、銀行業における有価証券が増加したことなどによる。一方、負債合計は、同51,466百万円増の557,650百万円になった。これは主に、銀行業における預金、社債及び借入金が増加したことなどによる。資本合計については、同40,049百万円減の110,727百万円となった。これは主に、親会社の所有者に帰属する当期損失を計上したことに加えて、会計方針の変更による影響により利益剰余金が減少したことによるものである。
以上の結果、2019年3月期末の親会社所有者帰属持分比率は15.6%であった。資産合計が拡大した一方、資本合計が減少したことから、同比率は前期末の22.0%から低下したが、2020年12月期以降は利益の積み上げに伴い、改善に向かうと予想される。
2019年3月期のキャッシュ・フローの状況では、現金及び現金同等物は前期末比2,426百万円増の87,150百万円になった。営業活動によるキャッシュ・フローの増加18,831百万円は、主に税引前損失計上の一方で、銀行業における預金の増加などにより資金が増加したためである。投資活動によるキャッシュ・フローの減少15,190百万円は、銀行業における有価証券の取得による支出が、銀行業における有価証券の売却による収入を上回ったことが主因である。また、財務活動によるキャッシュ・フローの減少は、525百万円となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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(3) 東南アジア金融事業
東南アジア金融事業では、東南アジアで最大の人口を持つインドネシアで銀行業及び債権回収事業などを展開する。ライツ・オファリングで得た資金により、銀行業の現PT Bank JTrust Indonesia, Tbk.(以下、Jトラスト銀行インドネシア)を傘下に収めた。現在は同行の業績悪化に苦しんでいるが、将来的には債権回収業のPT JTRUST INVESTMENTS Indonesia(以下、Jトラストインベストメンツインドネシア)、マルチファイナンス会社のJTOとともに、同社グループでは東南アジア金融事業が第3の収益の柱に成長し、グループの業績をけん引することを期待している。
2019年3月期は、銀行業における貸出金減少に伴い利息収益が減少したこと等により、東南アジア金融事業の営業収益は13,025百万円(前期比553百万円減)となった。また、銀行業において不良債権を一括処理したこと等により、セグメント損失17,712百万円(前期は1,545百万円の利益)を計上した。
長期間にわたって預金保険機構の管理下にあったJトラスト銀行インドネシアについては、同社グループでは最優先課題の1つとして、再生に取り組んでいる。これまでに、同行の増資を行うとともに、不良債権の回収に特化した新会社Jトラストインベストメンツインドネシアを設立して、同行から不良債権を切り離して譲渡することにより、財務体質の改善を図るなど、銀行再生を加速してきた。ただ、銀行再生が計画どおりに進まなかったことから、2019年3月期決算において抜本的な対応に踏み切った。すなわち、Jトラスト銀行インドネシアでは買収前からの負の遺産を含めた不良債権を前倒しで一括処理することを決断した。このように抜本的な不良債権処理を断行することで、東南アジア金融事業の業績急回復を実現するための基盤を整えた。回収及び不良債権売却を進めた結果、2019年3月の銀行の貸出残高は84,142億ルピア(約64,789百万円)に減少したが、融資残高の急激な減少等により90日以上延滞債権の割合は5.6%に上昇している。現在、銀行単体での積極的な貸付は停止しており、今後はJTOを主軸として貸出資産を増加させ、とりあえず収支均衡を図る計画である。韓国で潰れた銀行を再生させたグループの精鋭メンバーをインドネシアに派遣しており、Jトラスト銀行インドネシアの問題点を明確にし、再建に取り組む計画である。
マルチファイナンス会社のJTOについては、2018年10月に株式60%を取得しグループ傘下に収めた。JTOはオートローン業界の老舗として高い知名度があり、インドネシア全土の支店網や取引金融機関との豊富なネットワークを有している。既に提携先等のパートナーも増えており、従来の中古車ローンに加え農機ローンや新車ローンなど新しい商品の提供を始めている。また、Jトラスト銀行インドネシアのバランスシートを活用し、資金調達の安定化、資本効率の向上を進めつつ、銀行の再建にも寄与する見通しである。グループ入り以降の半年間で、農機具ディーラー数は30社から47社に、貸付件数は519件から793件に、貸付金額も550億ルピアから1,038億ルピア(約799百万円)に拡大している。JTOのグループ入りに伴い、韓国に続きインドネシアでも、銀行、債権回収会社、ファイナンスカンパニーの三位一体の事業セグメントが構築され、幅広いエリアにおける多様なニーズに応えられる体制が整ったことになる。
加えて、カンボジアの商業銀行で2017年12月末の資産規模は、業界7位(約1,120億円)のANZRの株式55%を2019年7〜9月中にも取得予定である。ANZRは優良銀行であり、安定した利益を計上していることから、同社グループに対する早期の利益貢献が期待される。こうした最近の買収から、東南アジア金融事業を今後のグループ成長ドライバーと位置付ける、同社の戦略がうかがわれる。
(4) 投資事業
投資事業では、シンガポールを拠点に、事業のシナジー性や商品力などを総合的に判断し、投資先を選定する。特に、金融事業あるいは金融事業とシナジー効果が見込める事業に投資している。
2019年3月期の投資事業は、前期にGL転換社債取消に伴う債権分類変更による収益計上した反動から、営業収益は1,036百万円(前期比6,254百万円減)となり、またセグメント損失は現在係争中のJトラストアジアが保有するGLに対する債権の全額について貸倒引当金繰入額を計上したこと等により拡大し、20,568百万円の損失(前期は2,852百万円の損失)となった。グループ全体の業績悪化を招き、改めて海外企業への投資の難しさを示す結果となった。ただ、貸倒引当金を引き当てたことで、今後は将来の回収金は利益計上されることになるため、回収に尽力することでグループ全体の業績回復に貢献する計画である。
(5) 非金融事業
同社グループでは、非金融事業として総合エンターテインメント事業、不動産事業、システム事業などを展開している。ライブ・エンタメ事業を中心に展開する子会社のKeyHolder<4712>(2017年10月1日にアドアーズ(株)より商号変更)では、2018年3月に子会社のアドアーズを売却した。さらに2018年10月にはJトラストは子会社であるハイライツ・エンタテインメント(株)を売却し、グループ経営資源の選択と集中を進めた。一方で2019年3月にアイドルグループ「SKE48」の事業を承継し、KeyHolderグループは劇場、マネジメント、テレビ、プランニングなど多彩な機能を持ち合わせた総合エンターテインメント企業集団となっている。
ハイライツ・エンタテインメントの売却決議に伴い前期実績が非継続事業に分類された結果、総合エンターテインメント事業、不動産事業を合算した非金融事業では、営業収益は7,961百万円(前期比1,054百万円増)、セグメント利益76百万円(同583百万円減)となった。ただ、同社の本業である金融事業とのシナジーを考えると、非金融事業は今後もさらに見直しの余地が大きい事業分野と言えるだろう。
3. 財政状況と経営指標
2019年3月期末の資産合計は、前期末比11,416百万円増の668,377百万円になった。これは主に、営業債権及びその他の債権、銀行業における有価証券が増加したことなどによる。一方、負債合計は、同51,466百万円増の557,650百万円になった。これは主に、銀行業における預金、社債及び借入金が増加したことなどによる。資本合計については、同40,049百万円減の110,727百万円となった。これは主に、親会社の所有者に帰属する当期損失を計上したことに加えて、会計方針の変更による影響により利益剰余金が減少したことによるものである。
以上の結果、2019年3月期末の親会社所有者帰属持分比率は15.6%であった。資産合計が拡大した一方、資本合計が減少したことから、同比率は前期末の22.0%から低下したが、2020年12月期以降は利益の積み上げに伴い、改善に向かうと予想される。
2019年3月期のキャッシュ・フローの状況では、現金及び現金同等物は前期末比2,426百万円増の87,150百万円になった。営業活動によるキャッシュ・フローの増加18,831百万円は、主に税引前損失計上の一方で、銀行業における預金の増加などにより資金が増加したためである。投資活動によるキャッシュ・フローの減少15,190百万円は、銀行業における有価証券の取得による支出が、銀行業における有価証券の売却による収入を上回ったことが主因である。また、財務活動によるキャッシュ・フローの減少は、525百万円となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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