日本調剤 Research Memo(5):『2030年に向けた長期ビジョン』のもと、売上高1兆円を目指す
[19/06/10]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期成長戦略の進捗状況
1. 中長期成長戦略の概要
日本調剤<3341>は2018年4月に『2030年に向けた長期ビジョン』を公表した。その内容の詳細は2018年6月11日付レポートに詳しいが、ポイントとしては、国内の社会構造の変化(超高齢化社会の進行など)や医療費削減の要請の増大、薬局に要求される機能の高度化と調剤薬局の淘汰などの環境変化を乗り切り、調剤薬局事業を始めとして各事業を飛躍的に拡大させ、2030年をめどとした企業規模を売上高1兆円にまで高めることが骨子となっている。1兆円の売上高に対する営業利益の内訳として、調剤薬局事業が50%、医薬品製造販売事業、医療従事者派遣紹介事業等の合計で残り50%という構成を想定している。調剤薬局事業だけでなく医薬品製造販売事業を始めとするそれ以外の事業においても高成長を目指す強い意思が込められている。
『2030年に向けた長期ビジョン』のもとで進める各事業部門の成長戦略については以下に詳述するが、基本的には従来から大きな変更はなく、各事業部門ともに着実に進捗している。一方で、同社にとっての最も影響が大きい外部環境要因とも言える制度変更の動きがいくつか出てきているので簡単に整理しておく。
(1) 薬機法の一部改正案
現在開会中の第198回通常国会(2019年1月28日−6月26日)に薬機法の一部改正案が提出されている。調剤薬局事業に関連する事項としては、薬局を機能の観点から、1)地域において在宅医療対応や薬物療法の一元管理などを行う「地域連携型」と、2)がん等の薬物療法に関して医療機関との連携のもとで専門性の高いサービスを提供する「専門医療機関連携型」の2つの類型が括り出され、そうした類型が法律で規定される(法制化)点が大きな変化と言える。
これらの薬局類型自体は、国が『患者のための薬局ビジョン』において今後の薬局のあり方として示してきたものであり、特段のサプライズはない。しかしこれらが法制化されるということは、これまでは「薬局」として一括りだったものが複数の類型に細分化されることを意味し、さらにその先には、国が政策の推進に向けて薬局の類型ごとに、(調剤報酬なども含めて)様々な点で区別化・差別化をしてくることが想定される。調剤薬局事業者としては、国が推進する薬局類型に沿った店づくりを着実に進めることの重要性が、一段と高まったと言える。
今回の薬機法の一部改正案は今国会での成立が見送られる可能性もある。しかしその場合であっても、国が考える薬局・薬剤師のあり方が明確となっておりそれに沿った形で政策遂行が図られるのは疑いない。調剤薬局の側の対応も停止・後退は許されないと言えるだろう。
(2) 2020年4月の薬価・調剤報酬の改定
2020年4月に予定される薬価・調剤報酬の改定は、前述の薬機法の一部改正案の提出とも一部通じるが、過去に例を見ない厳しいものとなるという見方が出てきている。2018年4月の改定も、門前薬局の調剤基本料引き下げとそれに対するリカバリーのためのハードルの高さから“過去に例のない厳しい改定”と言われたが、それとは次元の違うような厳しさになる、という見方だ。
詳細は改定の発表を待つしかないが、仮にそうなった場合には、かねて言われてきた業界の大再編時代がいよいよ幕を開けることになる。これまでも調剤薬局業界ではM&Aが活発に行われてきたが、今後は薬局数が明確に減少するステージへと移行するということだ。2020年4月改定がそのトリガーとなるかどうかは確実ではないものの、その前提で準備を進めておく必要があることに異論の余地はないであろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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1. 中長期成長戦略の概要
日本調剤<3341>は2018年4月に『2030年に向けた長期ビジョン』を公表した。その内容の詳細は2018年6月11日付レポートに詳しいが、ポイントとしては、国内の社会構造の変化(超高齢化社会の進行など)や医療費削減の要請の増大、薬局に要求される機能の高度化と調剤薬局の淘汰などの環境変化を乗り切り、調剤薬局事業を始めとして各事業を飛躍的に拡大させ、2030年をめどとした企業規模を売上高1兆円にまで高めることが骨子となっている。1兆円の売上高に対する営業利益の内訳として、調剤薬局事業が50%、医薬品製造販売事業、医療従事者派遣紹介事業等の合計で残り50%という構成を想定している。調剤薬局事業だけでなく医薬品製造販売事業を始めとするそれ以外の事業においても高成長を目指す強い意思が込められている。
『2030年に向けた長期ビジョン』のもとで進める各事業部門の成長戦略については以下に詳述するが、基本的には従来から大きな変更はなく、各事業部門ともに着実に進捗している。一方で、同社にとっての最も影響が大きい外部環境要因とも言える制度変更の動きがいくつか出てきているので簡単に整理しておく。
(1) 薬機法の一部改正案
現在開会中の第198回通常国会(2019年1月28日−6月26日)に薬機法の一部改正案が提出されている。調剤薬局事業に関連する事項としては、薬局を機能の観点から、1)地域において在宅医療対応や薬物療法の一元管理などを行う「地域連携型」と、2)がん等の薬物療法に関して医療機関との連携のもとで専門性の高いサービスを提供する「専門医療機関連携型」の2つの類型が括り出され、そうした類型が法律で規定される(法制化)点が大きな変化と言える。
これらの薬局類型自体は、国が『患者のための薬局ビジョン』において今後の薬局のあり方として示してきたものであり、特段のサプライズはない。しかしこれらが法制化されるということは、これまでは「薬局」として一括りだったものが複数の類型に細分化されることを意味し、さらにその先には、国が政策の推進に向けて薬局の類型ごとに、(調剤報酬なども含めて)様々な点で区別化・差別化をしてくることが想定される。調剤薬局事業者としては、国が推進する薬局類型に沿った店づくりを着実に進めることの重要性が、一段と高まったと言える。
今回の薬機法の一部改正案は今国会での成立が見送られる可能性もある。しかしその場合であっても、国が考える薬局・薬剤師のあり方が明確となっておりそれに沿った形で政策遂行が図られるのは疑いない。調剤薬局の側の対応も停止・後退は許されないと言えるだろう。
(2) 2020年4月の薬価・調剤報酬の改定
2020年4月に予定される薬価・調剤報酬の改定は、前述の薬機法の一部改正案の提出とも一部通じるが、過去に例を見ない厳しいものとなるという見方が出てきている。2018年4月の改定も、門前薬局の調剤基本料引き下げとそれに対するリカバリーのためのハードルの高さから“過去に例のない厳しい改定”と言われたが、それとは次元の違うような厳しさになる、という見方だ。
詳細は改定の発表を待つしかないが、仮にそうなった場合には、かねて言われてきた業界の大再編時代がいよいよ幕を開けることになる。これまでも調剤薬局業界ではM&Aが活発に行われてきたが、今後は薬局数が明確に減少するステージへと移行するということだ。2020年4月改定がそのトリガーとなるかどうかは確実ではないものの、その前提で準備を進めておく必要があることに異論の余地はないであろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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