アジア投資 Research Memo(1):2019年3月期業績はプロジェクト資産の積み上げなどに一定の成果
[19/06/11]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
1. 会社概要
日本アジア投資<8518>は、日本とアジアにまたがる独立系の総合投資会社として、プライベートエクイティ投資(以下、PE投資)や再生可能エネルギー等のプロジェクト投資を手掛けている。1981年に(公社)経済同友会を母体として設立され、豊富な投資経験とブランド、ネットワーク、人材、事業パートナーなどの事業基盤に強みがある。革新的な技術やビジネスモデルを持ち、高い成長力を有するベンチャー企業及び中堅・中小企業等への投資や成長支援を通じて、日本とアジアの両地域における産業活性化や経済連携の拡大などに貢献をしてきた。同社グループが管理運用等を行っているファンド運用残高は16,494百万円(10ファンド)、同社グループの自己資金及び運用ファンドによる投資残高は13,951百万円となっている(2019年3月末現在)。ただ、主力のPE投資事業については、VC業界を取り巻く環境が変化するなかで、新たなファンド設立に苦戦しており、ファンド運用残高の縮小とともに、投資残高も減少傾向にある。
2. 中期経営計画
同社は、2019年3月期より3ヶ年の中期経営計画をスタート。環境変化への対応や課題解決に向けて、投資方針(本体投資分)の抜本的な見直しを行い、収益拡大に向けた足掛かりを築く内容となっている。特に、ファンドでの投資は、現状のファンドの投資方針を継続する一方、本体投資は、取り組むべき事業テーマを明確に持ち、そのテーマを軸に「企業への投資」(PE投資)と「事業への投資」(プロジェクト投資)を組み合わせる戦略的投資を推進する方針である。すなわち、今後は事業テーマに基づくプロジェクト投資(再生可能エネルギーのほか、スマートアグリやヘルスケア)の積み上げにより、安定収益の確保と財務バランスの強化を図るとともに、PE投資(本体投資分)についても、事業テーマに関連するパートナー企業への戦略投資にシフトする方向性と言える。
3. 2019年3月期決算の概要
2019年3月期の業績(ファンド連結基準)※は、営業収益が前期比57.8%減の3,503百万円、営業利益が同76.2%減の294百万円と前期における大型プロジェクト売却の反動などにより減収減益となった。
※同社は2007年3月期より、「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」を適用し、同社グループが管理運用する投資事業組合等を連結範囲に加えるファンド連結基準に移行している。ただ、ファンド連結基準は同社以外の外部出資者の持分が含まれていることやファンドごとの財務方針が反映されるところに注意する必要がある。同社では、投資家からの要望に応じて従来連結基準も同時に開示しているが、弊社でも、より実態を示しているとの判断から従来連結基準による分析を行っている。
従来連結基準でも、営業収益が前期比54.2%減の2,475百万円、営業利益が同82.6%減の177百万円と計画を下回る減収減益となった。プロジェクト投資事業が、2018年3月期における大型プロジェクト売却の反動などにより大きく落ち込んだが、そこは想定内である。一方、PE投資事業についても、第4四半期に見込んでいた株式売却に遅れが生じ、それが計画未達の要因となった。ただ、他社ファンドからの持分利益や特別利益の発生等により、最終利益では計画を超える水準を確保している。また、PE投資資産の売却は、投資先のIPOや売却交渉の遅れにより計画どおりに進まなかったものの、プロジェクト投資資産の積み上げには一定の成果を残し、安定収益の拡大や財務バランスの強化に向けて順調に進捗している。
4. 2020年3月期の業績見通し
同社は、業績予想(ファンド連結基準)について、株式市場等の変動要因による影響が極めて大きく、合理的な業績予想が困難である事業特性であることから公表を行っていない。ただ、2020年3月期については、ある一定の前提を元に策定した「従来連結基準による見込値」を参考情報として開示している。
同社の「従来連結基準による見込値」によれば、営業収益を前期比41.4%増の3,500百万円、営業利益を同350.9%増の800百万円と大幅な増収増益を見込んでいる。国内外での投資先のIPOを含む、株式売却が大幅な増収及び営業増益に寄与する想定となっているが、同時に、株式市場や経済情勢の不確実性等に備え、プロジェクト資産の売却による収益の底支えについても視野に入れているようだ。
■Key Points
・2019年3月期は、前期における大型プロジェクト売却の反動や株式売却の遅れなどにより減収減益
・一方、プロジェクト投資資産の積み上げによる安定収益の拡大や財務バランスの強化については順調に進捗
・2020年3月期は、投資先のIPOを含む、株式売却益の実現等により大幅な増収及び営業増益を見込む
・今後の収益拡大に向けて3ヶ年の中期経営計画をスタート。事業テーマに基づく戦略PE投資への入れ替えやプロジェクト投資資産の積み上げにより財務基盤の強化を図る方針
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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1. 会社概要
日本アジア投資<8518>は、日本とアジアにまたがる独立系の総合投資会社として、プライベートエクイティ投資(以下、PE投資)や再生可能エネルギー等のプロジェクト投資を手掛けている。1981年に(公社)経済同友会を母体として設立され、豊富な投資経験とブランド、ネットワーク、人材、事業パートナーなどの事業基盤に強みがある。革新的な技術やビジネスモデルを持ち、高い成長力を有するベンチャー企業及び中堅・中小企業等への投資や成長支援を通じて、日本とアジアの両地域における産業活性化や経済連携の拡大などに貢献をしてきた。同社グループが管理運用等を行っているファンド運用残高は16,494百万円(10ファンド)、同社グループの自己資金及び運用ファンドによる投資残高は13,951百万円となっている(2019年3月末現在)。ただ、主力のPE投資事業については、VC業界を取り巻く環境が変化するなかで、新たなファンド設立に苦戦しており、ファンド運用残高の縮小とともに、投資残高も減少傾向にある。
2. 中期経営計画
同社は、2019年3月期より3ヶ年の中期経営計画をスタート。環境変化への対応や課題解決に向けて、投資方針(本体投資分)の抜本的な見直しを行い、収益拡大に向けた足掛かりを築く内容となっている。特に、ファンドでの投資は、現状のファンドの投資方針を継続する一方、本体投資は、取り組むべき事業テーマを明確に持ち、そのテーマを軸に「企業への投資」(PE投資)と「事業への投資」(プロジェクト投資)を組み合わせる戦略的投資を推進する方針である。すなわち、今後は事業テーマに基づくプロジェクト投資(再生可能エネルギーのほか、スマートアグリやヘルスケア)の積み上げにより、安定収益の確保と財務バランスの強化を図るとともに、PE投資(本体投資分)についても、事業テーマに関連するパートナー企業への戦略投資にシフトする方向性と言える。
3. 2019年3月期決算の概要
2019年3月期の業績(ファンド連結基準)※は、営業収益が前期比57.8%減の3,503百万円、営業利益が同76.2%減の294百万円と前期における大型プロジェクト売却の反動などにより減収減益となった。
※同社は2007年3月期より、「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」を適用し、同社グループが管理運用する投資事業組合等を連結範囲に加えるファンド連結基準に移行している。ただ、ファンド連結基準は同社以外の外部出資者の持分が含まれていることやファンドごとの財務方針が反映されるところに注意する必要がある。同社では、投資家からの要望に応じて従来連結基準も同時に開示しているが、弊社でも、より実態を示しているとの判断から従来連結基準による分析を行っている。
従来連結基準でも、営業収益が前期比54.2%減の2,475百万円、営業利益が同82.6%減の177百万円と計画を下回る減収減益となった。プロジェクト投資事業が、2018年3月期における大型プロジェクト売却の反動などにより大きく落ち込んだが、そこは想定内である。一方、PE投資事業についても、第4四半期に見込んでいた株式売却に遅れが生じ、それが計画未達の要因となった。ただ、他社ファンドからの持分利益や特別利益の発生等により、最終利益では計画を超える水準を確保している。また、PE投資資産の売却は、投資先のIPOや売却交渉の遅れにより計画どおりに進まなかったものの、プロジェクト投資資産の積み上げには一定の成果を残し、安定収益の拡大や財務バランスの強化に向けて順調に進捗している。
4. 2020年3月期の業績見通し
同社は、業績予想(ファンド連結基準)について、株式市場等の変動要因による影響が極めて大きく、合理的な業績予想が困難である事業特性であることから公表を行っていない。ただ、2020年3月期については、ある一定の前提を元に策定した「従来連結基準による見込値」を参考情報として開示している。
同社の「従来連結基準による見込値」によれば、営業収益を前期比41.4%増の3,500百万円、営業利益を同350.9%増の800百万円と大幅な増収増益を見込んでいる。国内外での投資先のIPOを含む、株式売却が大幅な増収及び営業増益に寄与する想定となっているが、同時に、株式市場や経済情勢の不確実性等に備え、プロジェクト資産の売却による収益の底支えについても視野に入れているようだ。
■Key Points
・2019年3月期は、前期における大型プロジェクト売却の反動や株式売却の遅れなどにより減収減益
・一方、プロジェクト投資資産の積み上げによる安定収益の拡大や財務バランスの強化については順調に進捗
・2020年3月期は、投資先のIPOを含む、株式売却益の実現等により大幅な増収及び営業増益を見込む
・今後の収益拡大に向けて3ヶ年の中期経営計画をスタート。事業テーマに基づく戦略PE投資への入れ替えやプロジェクト投資資産の積み上げにより財務基盤の強化を図る方針
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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