東都水産 Research Memo(1):豊洲市場移転を機に収益構造改善へ
[19/06/17]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
東都水産<8038>は、豊洲市場の水産物卸売業者の独立系大手である。同社主力の水産物卸売事業は、本マグロをはじめ各種マグロを扱う大物部、日本近海や世界各国から集められた鮮魚・養殖魚などを扱う鮮魚部、ウニやアワビ、活魚など業務用高級魚がメインの特種部、アジの開きなど幅広い種類の干物・練製品・合物を扱う加工品部、冷凍品から伝統的な塩蔵品までを扱う冷凍塩魚部の5つに大別される。水産物卸売事業のほかには、冷蔵倉庫業及びその関連事業、不動産賃貸事業を展開しており、子会社では地方市場での水産物卸売、カナダでの水産加工品の製造などを行っている。同社は豊かで健康的な家庭の食生活を支える企業と言えるだろう。
水産物卸売市場には、水産物流通の中で卸売業者が荷を受けてから仲卸が小売りへ販売するまでの集荷、価格形成、分荷という役割がある。かつて漁業大国と称された日本も、高齢化や食の多様化などにより魚の消費量が長期的に減少傾向にある。水産物卸売市場もまた、水産資源の減少や世界的な魚食志向の高まりなどから魚価の上昇、水産資源の減少や魚の回遊水域の変化による漁獲量の減少、食の多様化や人口減少に伴う国内の魚需要減少、市場外流通の拡大といった課題に直面している。厳しい環境ではあるが、同社は、強靭な収益構造と強固な財務体質を確立することで、水産物卸売事業の持続的成長を経営の最優先課題として取り組んでいる。
2019年3月期は売上高が116,382百万円(前期比0.7%減)、営業利益が1,362百万円(同3.2%減)となった。昨季のサンマの記録的不漁からの回復に加え、魚種に応じた積極的な集荷、量販店など市場外取引の拡大、海外事業部の強化、営業開発部の新設などにより東都水産単体で数量が2ケタ増加、水産物卸売部門は増収となった。東水フーズ(株)解散により売上高は減少したが、コストも減少したため一部原価高を吸収、営業利益を微減益にとどめることができた。2020年3月期業績見通しについて、同社は売上高120,000百万円(前期比3.1%増)、営業利益1,200百万円(同11.9%減)を見込んでいる。引き続き海外事業などの貢献で増収を図るが、原価高に加え豊洲市場のユーティリティコストなど販売費及び一般管理費を保守的に見たことから、増収減益という予想となった。
同社は、豊洲市場移転を機に収益構造を改善しようとしている。今まで慎重だった大手量販店などとの取引を積極化する一方、海外事業にも本腰を入れている。業界が縮小するなかでの2ケタの数量増は評価できるし、2020年3月期には売上高が増加へ転じる見込みである。そろそろ将来の姿を見通したいが、開場して1年を経過していないため豊洲市場における費用の詳細がいまだつかめず、業績見通しを策定しにくくなっている。中期経営計画も先送りせざるを得ない状況と言える。豊洲市場への移転のメリットも、明確化するにはやはりもう少し時間が必要そうだ。2019年10月には豊洲市場開場1周年となり、1年を通じて発生する収益もコストも目途が立つだろう。そうなれば数字への落とし込みが容易になり、中期成長のイメージも湧いてくると考える。
■Key Points
・豊洲市場の水産物卸売業者で独立系大手
・豊洲市場移転を機に収益構造を改善、場外・海外を活発化
・海外事業部の強化や営業開発部の新設で成長に弾み
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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東都水産<8038>は、豊洲市場の水産物卸売業者の独立系大手である。同社主力の水産物卸売事業は、本マグロをはじめ各種マグロを扱う大物部、日本近海や世界各国から集められた鮮魚・養殖魚などを扱う鮮魚部、ウニやアワビ、活魚など業務用高級魚がメインの特種部、アジの開きなど幅広い種類の干物・練製品・合物を扱う加工品部、冷凍品から伝統的な塩蔵品までを扱う冷凍塩魚部の5つに大別される。水産物卸売事業のほかには、冷蔵倉庫業及びその関連事業、不動産賃貸事業を展開しており、子会社では地方市場での水産物卸売、カナダでの水産加工品の製造などを行っている。同社は豊かで健康的な家庭の食生活を支える企業と言えるだろう。
水産物卸売市場には、水産物流通の中で卸売業者が荷を受けてから仲卸が小売りへ販売するまでの集荷、価格形成、分荷という役割がある。かつて漁業大国と称された日本も、高齢化や食の多様化などにより魚の消費量が長期的に減少傾向にある。水産物卸売市場もまた、水産資源の減少や世界的な魚食志向の高まりなどから魚価の上昇、水産資源の減少や魚の回遊水域の変化による漁獲量の減少、食の多様化や人口減少に伴う国内の魚需要減少、市場外流通の拡大といった課題に直面している。厳しい環境ではあるが、同社は、強靭な収益構造と強固な財務体質を確立することで、水産物卸売事業の持続的成長を経営の最優先課題として取り組んでいる。
2019年3月期は売上高が116,382百万円(前期比0.7%減)、営業利益が1,362百万円(同3.2%減)となった。昨季のサンマの記録的不漁からの回復に加え、魚種に応じた積極的な集荷、量販店など市場外取引の拡大、海外事業部の強化、営業開発部の新設などにより東都水産単体で数量が2ケタ増加、水産物卸売部門は増収となった。東水フーズ(株)解散により売上高は減少したが、コストも減少したため一部原価高を吸収、営業利益を微減益にとどめることができた。2020年3月期業績見通しについて、同社は売上高120,000百万円(前期比3.1%増)、営業利益1,200百万円(同11.9%減)を見込んでいる。引き続き海外事業などの貢献で増収を図るが、原価高に加え豊洲市場のユーティリティコストなど販売費及び一般管理費を保守的に見たことから、増収減益という予想となった。
同社は、豊洲市場移転を機に収益構造を改善しようとしている。今まで慎重だった大手量販店などとの取引を積極化する一方、海外事業にも本腰を入れている。業界が縮小するなかでの2ケタの数量増は評価できるし、2020年3月期には売上高が増加へ転じる見込みである。そろそろ将来の姿を見通したいが、開場して1年を経過していないため豊洲市場における費用の詳細がいまだつかめず、業績見通しを策定しにくくなっている。中期経営計画も先送りせざるを得ない状況と言える。豊洲市場への移転のメリットも、明確化するにはやはりもう少し時間が必要そうだ。2019年10月には豊洲市場開場1周年となり、1年を通じて発生する収益もコストも目途が立つだろう。そうなれば数字への落とし込みが容易になり、中期成長のイメージも湧いてくると考える。
■Key Points
・豊洲市場の水産物卸売業者で独立系大手
・豊洲市場移転を機に収益構造を改善、場外・海外を活発化
・海外事業部の強化や営業開発部の新設で成長に弾み
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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