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東都水産 Research Memo(6):水産物卸売事業は積極策で数量増の増収増益

注目トピックス 日本株
■業績動向

1. 2019年3月期の業績動向
東都水産<8038>の2019年3月期の業績は、売上高116,382百万円(前期比0.7%減)、営業利益1,362百万円(同3.2%減)、経常利益1,707百万円(同15.1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益1,381百万円(同41.1%増)となった。

世界経済の先行き不透明感、物流コストの上昇や原材料価格の上昇、消費者の低価格・節約志向など厳しい環境のなか、水産物卸売市場業界では、海外での需要増加による仕入価格の高止まり、水産資源の減少や魚の回遊水域の変化による漁獲量の減少、さらに市場外流通の多様化などから取扱数量の減少が続いている。一方、2018年10月に築地市場から豊洲市場への移転が実施され、物流の多様なニーズへの対応や徹底した衛生・温度管理などが図られるようになり、特に安全・安心面において取引先や消費者の高い要求に応えられるようになった。また、「波崎地区6次産業化推進プロジェクト」の運営会社であるトウスイの事業開始や、連結子会社である埼玉県魚市場の新物流センターの稼働開始など、水産事業の更なる国際化や多様化する物流ニーズへの対応も着実に進めた。

全社売上高は微減だったが、主因は豊洲移転を機に東京冷凍工場を閉鎖したことにある。主力の水産物卸売事業の売上高はむしろ1.6%の増加となった。卸売部門(単体)の平均単価は8.6%減だったが、数量が12.2%増と大幅に伸びたことが要因で、数量増加は、もともと集荷力に定評があったところに、海外事業や新組織の営業開発でプロジェクトが始動し冷凍魚の売上高が大きく伸びたこと、量販店など市場外流通や流通加工(1次加工)を強化したことが背景にあり、既存事業ベースでも増収となったもようだ。業界の数量が落ちるなか、2ケタの数量増は誇るべきことだろう。一方単価の減少は、薄利多売の海外向けが増えたこと、高級魚種の扱いが減ったこと、市場原理(数量が増えれば価格が下がる)などが要因と思われる。

利益面では、国内での原料高やカナダでの資源管理の強化などから売上総利益率は低下し、一方、債権回収が順調に進んで貸倒引当金の戻入が発生したこと、メバチマグロ加工の東水フーズ解散によるコスト減、開場後初の決算で豊洲市場内コストを保守的に見ていたことなどから販管費率は改善した。このため営業利益率は横ばいとなったものの、減収分減益となった。しかし、経常利益は受取配当金の増加や為替差益の計上などにより2ケタ増益、特別損失の計上がなくなったことにより当期純利益はさらに大幅な増益となった。なお、期中で営業利益以下各利益を上方修正したが、貸倒引当金の戻入と豊洲市場内コストを保守的に見ていたこと、為替差益の発生が当初の前提と異なったことが理由である。

事業部門別では、水産物卸売事業は取扱数量109,151トン(前期比7.8%増)、取扱金額108,297百万円(同1.6%増)、営業利益549百万円(同193.8%増)となった。また、冷蔵倉庫及びその関連事業部門は売上高7,479百万円(同25.1%減)、営業利益は579百万円(同39.0%減)、不動産賃貸事業部門は売上高605百万円(同4.7%減)、営業利益224百万円(同16.3%減)となった。卸売事業の品目別の売上高状況は、特種部と冷凍塩魚部、加工品部が減収となったが、主力の鮮魚部と大物部が増収となった上、海外事業部が大きくオン、新設の営業開発部も増収に貢献した。

鮮魚は、量販店への販売強化によりカレイ、イカ、50年ぶりと言われた記録的不漁から回復したサンマが増収となった。単価安のイワシ、サバは積極的な集荷で取扱数量を伸ばし、ウニは新販路を開拓して増収を確保した。カツオやアジは数量が微増だったものの単価安の影響、ハマチなどの養殖魚は収益性を重視したことによる取扱数量の減少で減収となった。主力商品のマグロは不漁の国内天然物に代わって国内外の養殖物の集荷でカバー、生鮮マグロ全体では増収を確保した。アニサキス食中毒の報道や水揚量の減少の影響が一部魚種で生じたが、積極的な集荷・販売により数量・金額とも前期を上回ることができた。

冷凍魚は、単価の高止まりによる冷鮭鱒、冷カレイの数量減を、大幅な単価上昇後に反動安となった冷ギンダラの数量増でカバーできず減収となった。冷カニはロシアによる輸出規制強化、冷タコは世界的な需要増加と不漁による単価上昇で、ともに数量・金額が前期を下回った。冷マグロは加工業者向け販売に注力した結果、数量を伸ばし増収を確保、冷エビは2018年9月に新設した営業開発部での取組開始により数量・金額とも前期を上回った。冷サバ、冷イワシ、冷ブリは海外事業部における取扱数量が拡大して大幅増収となった。冷凍魚全体では、相場が強含んで売上げを落とす魚種も一部にあったが、営業開発部や海外事業部における取扱数量の拡大により、数量・金額とも前期を上回った。

塩干加工品は、前期同様不漁のシラスや秋鮭、秋鮭の卵を原料とするイクラが減収となった。ウナギ製品はシラスウナギの漁獲が再び減ったこと、干物類は原料不足により減収となった。一方、塩鮭は海外取引先との積極的な取り組みにより増収となった。練製品等加工食品は、販売促進チームとの連携を強化し積極的な営業を続けたが、仕入価格の上昇を背景に減収となった。塩干加工品全体では、単価上昇・高止まりの一方、取扱数量が減少して減収となった。

冷蔵倉庫及びその関連事業部門では、豊洲市場への移転を機に築地市場で運営していた東京冷凍工場を閉鎖した影響で減収減益となった。不動産賃貸事業部門では、賃料が概ね前期並みで推移するなか、管理物件の稼働率向上を見込んだが、老朽化対策コストなども発生して減収減益となった。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)




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