Jリース Research Memo(1):2019年3月期は大幅な増収と利益のV字回復を達成
[19/06/19]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
ジェイリース<7187>は、家賃債務保証業界の大手の1社である。2004年に現 代表取締役社長の中島拓(なかしまひらく)氏が大分県で設立した。当初から地域に密着した家賃債務保証サービスを行い、宮崎、熊本と支店を増やし九州の基盤を固めた。2010年には、東京、新潟を始め東日本進出に着手し、全国の主要都市に拠点を拡げている(2019年5月時点で全国27拠点)。2016年6月に東証マザーズに上場、2018年3月には東証1部に昇格した。地域別には歴史的に九州の比率が高かったが、2019年3月期にはじめて関東の売上構成比が九州を上回った。
1. 事業内容
国土交通省資料によると、賃貸借契約において家賃債務保証会社の利用率は、2010年に39%、2014年には56%に上昇しており、2018年の調査結果(日本賃貸住宅管理協会調査)では、75%まで上昇している。2020年4月に施行される改正民法(債権法)も追い風になる。この改正では、連帯保証人が保証する金額の極度額(上限)が設定されるため、連帯保証人の担保価値が低下する。結果として家賃保証会社の利用を必須とする不動産オーナーが増加することが予想される。
同社は、同業他社と比較して、高い成長性に特徴がある。2015年3月期から2019年3月期までの4期間で売上高を比較すると、同社が年率25.0%増、同業A社が年率7.7%増、同業B社が年率2.5%増、同業C社が年率15.6%増となっており、同社の成長性は際立つ。同社の成長の原動力はエリアの拡大である。特に東名阪の大都市エリアでは、同社がシェアを伸ばす余地はまだ広く残っているため、しばらくは着実なペースの成長が続くだろう。
2. 業績動向
2019年3月期通期の連結業績は、売上高で前期比21.1%増の6,082百万円、営業利益で256百万円(前期比13.4倍)、経常利益で211百万円(前期は37百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益で117百万円(前期は73百万円の損失)となり、大幅増収とともに利益のV字回復を達成した。売上面では、賃貸住宅市場が堅調ななか、主力の家賃債務保証事業において積極的な営業活動を展開し、同20%を超える成長を達成した。2018年3月期に出店した札幌支店・岡山支店・東京西支店が売上拡大に寄与。また新規商品では、事業者向け保証商品「J-AKINAI」が好調に推移した。売上拡大に伴い代位弁済立替金が増加し、貸倒引当金繰入額や訴訟関連費用が増加したものの、業務集約化及び効率化などにより販管費率が同4.3ポイント低下し、営業利益率は同3.8ポイント上昇した。積極的な売上拡大とリスク・経費コントロールを両立し、好決算となった。
3. 今後の見通し
2020年3月期通期の連結業績は、売上高で前期比15.9%増の7,050百万円、営業利益は同5.3%増で270百万円、経常利益で同4.0%増の220百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同27.8%増で150百万円と増収増益の見通しだ。売上面では、全国27の既存店を活用し、生産性を上げることで増収を達成する(新店計画なし)。2020年3月期は、潜在的な需要のある基幹店周辺エリアの攻略及びそこからの広域・遠隔営業を行う。過去数年は、毎年1,000百万円程度の売上増を継続しており、2020年3月期も同水準の増収を見込む。コスト面では一層の中長期債権の削減に注力する方針だ。また、業務効率化・集約化により経費を抑制し、利益率を向上させる方針のため、堅実な予想値と言えるだろう。
4. 成長戦略
同社は3年後の2022年3月期の中期数値目標を策定している。売上高においては、計画値である8,800百万円(2022年3月期)は順当にいけば余裕を持って達成できる数字だ。営業利益率は8%を目標とし、概算で704百万円(同)を目指す。人手をかけた地域密着営業が強みの同社ではあるが、今後は生産性の向上を継続し、1人当り売上高を現状の18百万円(2019年3月期)から24百万円(2022年3月期)に高める考えだ。そして、最大の狙いは2020年3月期無配となっている配当を早期に復活させることである。
同社は、これまで新規出店によるエリアの拡大によって成長を加速させてきた。大都市圏への新規出店が一定程度完了した現在、全国展開網の考え方を方針変更する。今後は、基幹店強化による広域(遠隔)営業によりエリアを拡大する。これまでは、大商圏への新規出店だったため収支の見込みが立てやすかったが、今後は小規模商圏が対象となるため、収支が読みにくくなっていることが背景になる。基幹店からの遠隔営業を行うなかで、一定の商圏形成の目途がたった段階で店舗設置を検討することになる。
■Key Points
・2019年3月期は大幅な増収と利益のV字回復を達成。業務集約化などが奏功し販管費率は前期比4.3ポイント低下
・2020年3月期も堅調に増収増益見込み。新規出店を行わず、既存店からの広域・遠隔営業で生産性を向上
・新たな店舗展開方法、代位弁済抑制などで効率化を図りつつ高成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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ジェイリース<7187>は、家賃債務保証業界の大手の1社である。2004年に現 代表取締役社長の中島拓(なかしまひらく)氏が大分県で設立した。当初から地域に密着した家賃債務保証サービスを行い、宮崎、熊本と支店を増やし九州の基盤を固めた。2010年には、東京、新潟を始め東日本進出に着手し、全国の主要都市に拠点を拡げている(2019年5月時点で全国27拠点)。2016年6月に東証マザーズに上場、2018年3月には東証1部に昇格した。地域別には歴史的に九州の比率が高かったが、2019年3月期にはじめて関東の売上構成比が九州を上回った。
1. 事業内容
国土交通省資料によると、賃貸借契約において家賃債務保証会社の利用率は、2010年に39%、2014年には56%に上昇しており、2018年の調査結果(日本賃貸住宅管理協会調査)では、75%まで上昇している。2020年4月に施行される改正民法(債権法)も追い風になる。この改正では、連帯保証人が保証する金額の極度額(上限)が設定されるため、連帯保証人の担保価値が低下する。結果として家賃保証会社の利用を必須とする不動産オーナーが増加することが予想される。
同社は、同業他社と比較して、高い成長性に特徴がある。2015年3月期から2019年3月期までの4期間で売上高を比較すると、同社が年率25.0%増、同業A社が年率7.7%増、同業B社が年率2.5%増、同業C社が年率15.6%増となっており、同社の成長性は際立つ。同社の成長の原動力はエリアの拡大である。特に東名阪の大都市エリアでは、同社がシェアを伸ばす余地はまだ広く残っているため、しばらくは着実なペースの成長が続くだろう。
2. 業績動向
2019年3月期通期の連結業績は、売上高で前期比21.1%増の6,082百万円、営業利益で256百万円(前期比13.4倍)、経常利益で211百万円(前期は37百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益で117百万円(前期は73百万円の損失)となり、大幅増収とともに利益のV字回復を達成した。売上面では、賃貸住宅市場が堅調ななか、主力の家賃債務保証事業において積極的な営業活動を展開し、同20%を超える成長を達成した。2018年3月期に出店した札幌支店・岡山支店・東京西支店が売上拡大に寄与。また新規商品では、事業者向け保証商品「J-AKINAI」が好調に推移した。売上拡大に伴い代位弁済立替金が増加し、貸倒引当金繰入額や訴訟関連費用が増加したものの、業務集約化及び効率化などにより販管費率が同4.3ポイント低下し、営業利益率は同3.8ポイント上昇した。積極的な売上拡大とリスク・経費コントロールを両立し、好決算となった。
3. 今後の見通し
2020年3月期通期の連結業績は、売上高で前期比15.9%増の7,050百万円、営業利益は同5.3%増で270百万円、経常利益で同4.0%増の220百万円、親会社株主に帰属する当期純利益は同27.8%増で150百万円と増収増益の見通しだ。売上面では、全国27の既存店を活用し、生産性を上げることで増収を達成する(新店計画なし)。2020年3月期は、潜在的な需要のある基幹店周辺エリアの攻略及びそこからの広域・遠隔営業を行う。過去数年は、毎年1,000百万円程度の売上増を継続しており、2020年3月期も同水準の増収を見込む。コスト面では一層の中長期債権の削減に注力する方針だ。また、業務効率化・集約化により経費を抑制し、利益率を向上させる方針のため、堅実な予想値と言えるだろう。
4. 成長戦略
同社は3年後の2022年3月期の中期数値目標を策定している。売上高においては、計画値である8,800百万円(2022年3月期)は順当にいけば余裕を持って達成できる数字だ。営業利益率は8%を目標とし、概算で704百万円(同)を目指す。人手をかけた地域密着営業が強みの同社ではあるが、今後は生産性の向上を継続し、1人当り売上高を現状の18百万円(2019年3月期)から24百万円(2022年3月期)に高める考えだ。そして、最大の狙いは2020年3月期無配となっている配当を早期に復活させることである。
同社は、これまで新規出店によるエリアの拡大によって成長を加速させてきた。大都市圏への新規出店が一定程度完了した現在、全国展開網の考え方を方針変更する。今後は、基幹店強化による広域(遠隔)営業によりエリアを拡大する。これまでは、大商圏への新規出店だったため収支の見込みが立てやすかったが、今後は小規模商圏が対象となるため、収支が読みにくくなっていることが背景になる。基幹店からの遠隔営業を行うなかで、一定の商圏形成の目途がたった段階で店舗設置を検討することになる。
■Key Points
・2019年3月期は大幅な増収と利益のV字回復を達成。業務集約化などが奏功し販管費率は前期比4.3ポイント低下
・2020年3月期も堅調に増収増益見込み。新規出店を行わず、既存店からの広域・遠隔営業で生産性を向上
・新たな店舗展開方法、代位弁済抑制などで効率化を図りつつ高成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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