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ハウスコム Research Memo(1):2020年3月期も増収増益予想。新規出店+不動産テックによる生産性向上推進

注目トピックス 日本株
■要約

ハウスコム<3275>は、賃貸住宅の仲介及び周辺サービスを行う大東建託<1878>グループの成長企業である。住宅需要の高い首都圏と東海圏を中心に直営178店舗(2019年3月末)を展開し、賃貸住宅の仲介件数では業界4位規模である。2011年6月、大証JASDAQ市場(現東証JASDAQ市場)に上場した。2019年6月14日付で東証2部へ市場変更となった。

2014年3月に代表取締役社長に就任した田村穂(たむらけい)氏は、5年にわたりリーダーシップを発揮し、収益構造を改善・維持しながら、事業規模の拡大を行ってきた。この5年間に、積極的かつ立地を吟味した店舗網の拡大(純増44店舗)、WebやAIなどのITツールの積極活用、リフォーム事業への進出・拡大などを成功させている。会社としては2014年3月期から6年連続の増収増益を達成しており、営業収益は、7,815百万円(2013年3月期)から11,600百万円(2019年3月期)に48.4%増加し、当期純利益は、255百万円(2013年3月期)から891百万円(2019年3月期)に249.4%増加した。

1. 市場環境・強み
全国の世帯数は、2023年をピークにその後急速に減少に転じるが、首都圏(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)及び愛知県においては、2025年まで世帯数が増加し、それ以降の減少も他の地域よりも緩やかなペースになると予測されている。同社は現在179の直営店舗を持つが、首都圏や東海圏、地方中核都市などの都市部に集中し、市場の成長を追い風にする戦略を実行するまた、顧客に関しては、インターネットやスマートフォンの普及により、不動産を選ぶ顧客の行動様式は大きく変わった。特に情報検索の仕方、意思決定の仕方は様変わりし、その変化に追従できない不動産業者は機会を失うことになる。同社では、「リアル店舗」を持つ強みを生かして地域情報を収集し、様々な「ITツール活用」を通じて顧客の検討を助け、その両方の相乗効果で成約を獲得する戦略である。賃貸仲介件数ランキングでは、実質的に4位のポジションにあるとみられる。

2. 業績動向
2019年3月期通期の業績は、営業収益で前期比7.2%増の11,600百万円、営業利益で同6.2%増の1,143百万円、経常利益で同1.6%増の1,349百万円、当期純利益で同4.1%増の891百万円となり、6年連続の増収増益を達成した。増収をけん引したのは、店舗数の増加等(前期比375百万円増)とリフォーム事業の拡大(同402百万円増)である。新規出店に関しては、計画12店に対して14店舗出店。リフォーム事業に関しては、本格参入から4年目に入り、成長軌道に乗っている。既存店売上が増加したことに加え、2018年6月には太田(群馬県)に営業所を開設し全国7営業所体制とエリアも拡大し、売上高で923百万円にまで成長した。費用面では、リフォーム事業の拡大に伴い原価が増えたことや人件費増などにより上昇したが、増収効果が上回り営業利益は前期比67百万円増となった。

同社は、2020年3月期より連結決算に移行する。2020年3月期通期の連結業績予想は、営業収益で13,034百万円、営業利益は1,171百万円、経常利益で1,404百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で924百万円である。2020年3月期上期の業績予想においては、連結の各利益が単体の各利益よりも低くなっている。連結子会社となったハウスコムテクノロジーズ(旧ジューシィ出版)は、不動産分野の広告事業を主体に行うため、転居シーズン(1月−3月)に売上高、利益が集中する傾向が強く、一方で上期(4月−9月)は連結業績にマイナスの影響を及ぼすことが予想される。通期の連結決算は、単体より利益を稼ぐ予想であるため、季節変動の大きな事業を連結したと理解したい。

3. 成長戦略
同社は5年前に「賃貸仲介業」から「賃貸サービス業」に変身するビジョンを作り、入居の際の様々なサービスを多角的に行う企業に変貌してきた。今後は「住まいのサービス業」として、さらに事業ドメインを拡大する。発想の原点には、賃貸契約の前後だけでなく、入居中のお客様の様々な悩みやニーズに対応したい、という思いがある。新ビジョンの実現に向けて、不動産テックによる顧客接点の拡大(ビッグデータ蓄積)、リフォーム事業の推進、広告・ネット関連兄弟会社の子会社化などが順次行われている。

新規事業推進の一環として「住生活サービスのマッチングプラットフォーマー」構想が検討されており、外部専門家を含むプロジェクトが始動している。同社の持つ250万件の顧客データ、問い合わせや検索などの行動履歴は、まさにビッグデータであり、貴重な資産である。個々人のニーズやライフステージの変化等を捉えて住生活サービスに結び付ける役割が「プラットフォーマー」だ。同社はAIを早くから不動産業界に取り入れた先駆的企業であり、当然AIを活用して新たな価値を生み出すことになるだろう。今後、どのような住生活サービスがビッグデータを起点に連携するのか、その具体的展開に是非注目したい。

4. 株主還元策
同社は株主還元策として配当を実施している。企業価値を継続的に拡大し株主への利益還元を行うことを重要な経営課題と位置付けており、配当性向「30%」の継続を基本方針とする。2019年3月期の1株当たり配当金は年間35.0円(中間17.0円、期末18.0円)、配当性向30.3%と6年連続増配を達成した。2020年3月期は、増益予想を背景に、年間36.0円(中間18.0円、期末18.0円)、配当性向30.3%と7年連続の増配を予想する。同社は、株式の流動性向上と株主還元の充実を目的に様々な施策を行ってきた。2018年4月には株式分割を実施。また、2019年3月期から株主優待制度を拡充した。これらの施策が奏功し、株主数は4,058人(2019年3月末)と3年間で4.5倍以上に拡大し、流動性が向上した。

■Key Points
・都市集中化やIT化の流れにいち早く対応。業界トップクラスの成長性
・強みは「不動産テック」と「豊かな地域情報」による店舗競争力
・中期経営計画はやや保守的。新店計画と好調なリフォーム事業を加味するとさらに大きな成長が期待できる
・配当性向30%維持方針。過去6年連続増配の実績。株主優待も拡充

(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)



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