ダイナムジャパンHD Research Memo(10):遊技機の入れ替えにより2年間で200億円の負担増と試算
[19/06/25]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
● 2020年3月期通期業績の考え方
ダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>は業績予想を開示していないため、弊社は業績予想を行う上でのポイントや視点などを整理した。
ネット売上高に相当する営業収入は、グロス売上高に相当する貸玉収入と景品出庫額の差額となる。貸玉収入は2019年3月期の実績が前期比0.8%減だった。弊社の想定より減収幅が小さかったが、その要因は客数について前期並みを確保できた点にあるとみられる。これは同社の集客の施策が奏功した結果と考えられ、2020年3月期の再現可能性は高いと期待される。一方、景品出庫額については2019年3月期は前期並みを維持したため、結果的に、顧客への還元率が上昇し、営業収入の減収幅は拡大した。還元率の変化により、営業収入は増収にも減収にも成り得る(例えば貸玉収入が前期比1%の減収となっても、還元率を80%とすれば営業収入は前期比4%の増収となる)。一方で還元率は集客にも影響を及ぼすため、同社自身にとってももろ刃の剣であるということを指摘しておきたい。
利益面については、2018年規則に適合した新型機への入替問題があるため、2020年3月期と2021年3月期の2年間で考える必要がある。同社はこの2年間で新型機への入替として184,000台の新型機を購入する必要がある。新台と中古機を取り混ぜることになるだろうが、その総額は2年間合計で約600億円と弊社では推計している。一方、2019年3月期は新台の購入を抑制したとはいえ、新台、中古機合わせて遊技機の購入に約200億円を投じたと推測しており、同社の2019年3月期に利益水準はこれの遊技機購入額をベースとして成り立っていたと考えることができる。前述のように、2020年3月期と2021年3月期の2期間合計の遊技機購入額が600億円に達すると仮定すると、同社は当該2年間で200億円の減益要因を抱えることになる。
問題はこの200億円の負担増加分を2つの期にどのように配賦するかだ。仮に2020年3月期の購入台数を抑制して前期並みの営業利益を確保したとすれば、2021年3月期に一気に200億円の負担増が顕在化し、営業利益はトントンにまで落ち込むということになる。
実際の配賦の仕方は誰にも予想はできない。重要なことは、2年間で200億円程度の減益要因を抱えていることをしっかりと認識することだ。もう1つは、その次の期(2022年3月期)にはそうした費用負担が緩和されると期待されることだ。業績変動をもたらす要因はほかにもあるため、必ず利益が急拡大するとは断言できないが、遊技機購入費をめぐる負担は一旦リセットされる可能性は高いと言える。
繰り返しとなるが、この200億円の負担増は同社だけの問題ではなく、すべてのパチンコホール事業者に起こることだ。すべての事業者が経営の存続について検討することを余儀なくされ、かなりの数の事業者が廃業(事業売却などを含む)を決断することになる弊社では考えている。前述のように、これを乗り切って再び一定の利益水準を回復できれば、その後は同社の成長戦略が一気に加速することになると考えている。
損益計算書の変動は以上のとおりだが、バランスシートについては、ここ数年進めてきた借入金返済や手元資金の積み増しの結果、上述の費用増加にも十分耐えることができると弊社では考えている。
バランスシートについてむしろ留意すべきは、同社が採用する国際会計基準(IFRS)においてリース会計が変更になり、2020年3月期決算から適用になることだ。これはすべてのリース契約についてオンバランス化することが骨子で、使用権資産とリース負債とをバランスシートに記載することが必要となる。同社は店舗の土地などを賃借しており、これがオンバランス化することになるが、その総額は同社の手元の試算で約850億円に達するとされている。これらはキャッシュフローには影響しないが、バランスシートの総資産をそれだけ膨らませることになる。2019年3月期末の同社の総資産は185,332百万円だったが、これが2020年3月期末には270,000百万円前後に膨らむことになり、その結果として同社の自己資本比率が大きく低下することになる。これをもって、同社のバランスシートが弱体化したと評価する投資家もゼロではないと考えられるため、その点はあらかじめ留意しておくべきだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
<MH>
● 2020年3月期通期業績の考え方
ダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>は業績予想を開示していないため、弊社は業績予想を行う上でのポイントや視点などを整理した。
ネット売上高に相当する営業収入は、グロス売上高に相当する貸玉収入と景品出庫額の差額となる。貸玉収入は2019年3月期の実績が前期比0.8%減だった。弊社の想定より減収幅が小さかったが、その要因は客数について前期並みを確保できた点にあるとみられる。これは同社の集客の施策が奏功した結果と考えられ、2020年3月期の再現可能性は高いと期待される。一方、景品出庫額については2019年3月期は前期並みを維持したため、結果的に、顧客への還元率が上昇し、営業収入の減収幅は拡大した。還元率の変化により、営業収入は増収にも減収にも成り得る(例えば貸玉収入が前期比1%の減収となっても、還元率を80%とすれば営業収入は前期比4%の増収となる)。一方で還元率は集客にも影響を及ぼすため、同社自身にとってももろ刃の剣であるということを指摘しておきたい。
利益面については、2018年規則に適合した新型機への入替問題があるため、2020年3月期と2021年3月期の2年間で考える必要がある。同社はこの2年間で新型機への入替として184,000台の新型機を購入する必要がある。新台と中古機を取り混ぜることになるだろうが、その総額は2年間合計で約600億円と弊社では推計している。一方、2019年3月期は新台の購入を抑制したとはいえ、新台、中古機合わせて遊技機の購入に約200億円を投じたと推測しており、同社の2019年3月期に利益水準はこれの遊技機購入額をベースとして成り立っていたと考えることができる。前述のように、2020年3月期と2021年3月期の2期間合計の遊技機購入額が600億円に達すると仮定すると、同社は当該2年間で200億円の減益要因を抱えることになる。
問題はこの200億円の負担増加分を2つの期にどのように配賦するかだ。仮に2020年3月期の購入台数を抑制して前期並みの営業利益を確保したとすれば、2021年3月期に一気に200億円の負担増が顕在化し、営業利益はトントンにまで落ち込むということになる。
実際の配賦の仕方は誰にも予想はできない。重要なことは、2年間で200億円程度の減益要因を抱えていることをしっかりと認識することだ。もう1つは、その次の期(2022年3月期)にはそうした費用負担が緩和されると期待されることだ。業績変動をもたらす要因はほかにもあるため、必ず利益が急拡大するとは断言できないが、遊技機購入費をめぐる負担は一旦リセットされる可能性は高いと言える。
繰り返しとなるが、この200億円の負担増は同社だけの問題ではなく、すべてのパチンコホール事業者に起こることだ。すべての事業者が経営の存続について検討することを余儀なくされ、かなりの数の事業者が廃業(事業売却などを含む)を決断することになる弊社では考えている。前述のように、これを乗り切って再び一定の利益水準を回復できれば、その後は同社の成長戦略が一気に加速することになると考えている。
損益計算書の変動は以上のとおりだが、バランスシートについては、ここ数年進めてきた借入金返済や手元資金の積み増しの結果、上述の費用増加にも十分耐えることができると弊社では考えている。
バランスシートについてむしろ留意すべきは、同社が採用する国際会計基準(IFRS)においてリース会計が変更になり、2020年3月期決算から適用になることだ。これはすべてのリース契約についてオンバランス化することが骨子で、使用権資産とリース負債とをバランスシートに記載することが必要となる。同社は店舗の土地などを賃借しており、これがオンバランス化することになるが、その総額は同社の手元の試算で約850億円に達するとされている。これらはキャッシュフローには影響しないが、バランスシートの総資産をそれだけ膨らませることになる。2019年3月期末の同社の総資産は185,332百万円だったが、これが2020年3月期末には270,000百万円前後に膨らむことになり、その結果として同社の自己資本比率が大きく低下することになる。これをもって、同社のバランスシートが弱体化したと評価する投資家もゼロではないと考えられるため、その点はあらかじめ留意しておくべきだろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)
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