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コスモスイニシア Research Memo(8):「中期経営計画2021」で営業利益81億円目指す

注目トピックス 日本株
■コスモスイニシア<8844>の中期経営計画

3. 新中期経営計画
(1) 業績目標
中長期経営方針に基づき、新中期経営計画2021では、新たなステージへの第一歩と位置づけ、更なる飛躍へ向けての投資や戦略を強化する方針である。数値目標としては、2019年3月期の実績に対して2022年3月期は、売上高で1.3倍の1,350億円、営業利益1.5倍の81億円、自己資本比率は1.3倍の30%を掲げている。

(2) 中長期経営方針への取り組み
中期経営計画の発表に合わせて中長期経営方針への取り組みを示し、社会的価値創出への挑戦、事業創造・革新への挑戦、株主価値の向上を掲げた。まず社会的価値の創出については、同社がこれまで推進してきたCSVをさらに発展させ、すべての経営活動においてCSVを実践することで、ESG・SDGsを意識した経営を遂行していくことになるだろう。次に、事業創造・革新への挑戦については、単身世帯やシニア層の増加、働き方や雇用の多様化、訪日外国人や日本在住外国人の増加、技術革新による社会インフラの変化、シェアリングエコノミーの拡大、レジャーやエンタテイメント領域の拡大、健康や美容への関心の高まりなど、同社の事業ドメイン周辺の社会変化に対しては、事業や投資、組織・人事といった各戦略を統合的に展開することで、社会の変化とニーズの多様化に応える都市環境をプロデュースしていく意向である。各戦略は、事業戦略として、アパートメントホテル事業に続く新たな事業を創造するとともにビジネス領域を拡張、既存の事業領域で開発した商品やサービスを新たに周辺事業領域へ展開、中古ストックの再生・活用に加え運営ビジネスも積極的に展開する方針である。投資戦略としては、ICT(Information & Communication Technology)の取り込み強化やM&Aも含め新たな事業の創造や既存事業の成長・拡大を促進する研究開発に資源を集中することになるだろう。組織・人事戦略では、同社独自の働き方改革「WSI※」を強化し、創造性や生産性の圧倒的な向上を目指す。まさに事業を創造し革新することで成長につなげようという計画である。最後に、事業拡大や積極的な投資と同時に財務基盤をさらに強化することで、1株当たり配当金を持続的に増加させるなど株主還元を強化し、株主価値を向上させていく考えである。

※WSI(Work Style Innovation):同社独自の働き方改革。WSI前後(2019年3月期/2015年3月期)の比較で、営業利益208%増、残業時間42%減、休日出勤数99%減、有給休暇取得44%増となった。2019年3月期はリモートワークの全社利用促進や育児・介護と仕事の両立支援を拡充した。


(3) セグメント別業績目標と戦略
a) レジデンシャル事業
レジデンシャル事業では、新築分譲とリノベーションマンション、リテール仲介等に分け、顧客に豊富なメニューとサービスを提供し、サブセグメントを一気通貫したワンストップサービスの提供により、収益性の向上を目指す。減少傾向にある新築分譲では、新築マンションと新築一戸建の開発はともに利便性の高い立地に注力する一方、空間品質にこだわった広い間取りや機能性の高い商品、首都圏での単身やDINKs世帯向け商品・サービスなど、社会の変化とニーズの多様化に応える一歩先の住宅開発で差別化する高付加価値戦略により、一定のマーケットシェアの確保を目指す。第1号プロジェクトを成功させたアクティブシニア向けマンションでは、今後全国主要都市でアクティブシニア層の多様なニーズに対応するとともに、管理・運営を含めたサービスも提供する方針である。リノベーションマンションにおいては、引き続き、中古マンション一室の買取再販を行い、新築マンションの空間設計をリノベーションに取り入れる。また、独自の住宅診断を実施したリノベーションマンションの情報サイト「RENONAVI」の運営によって取扱量の拡大を図るとともに、リテール仲介とリノベーション工事をワンストップのサービスとして展開する方針である。さらに、提案型サポートサービス「すごしかたコンシェルジュ」などにより、入居後のサービスを拡充する考えである。

ところで、高齢化により今後、元気なシニアが急増することが予想されている。しかし、一般的なシニアビジネスと言うと介護などと短絡しがちで、元気なシニア向けのビジネスの切り口が少ない。そこで、元気なシニア向けの需要を掘り起こそうというのが、同社のアクティブシニア向けマンション「グランコスモ」シリーズである。元気なアクティブシニアを想定して企画された分譲マンションで、家事や身体的な負担を軽減するためシニアに配慮した設計になっているが、「サービス付高齢者住宅」や「介護付き有料老人ホーム」などと異なり、自由に暮らせる上資産としての価値が残せるところに特徴がある。そして、通常の分譲マンションと異なる点は、子会社コスモスライフサポートなどによる、病気・震災への対応や健康・安心につながる生活支援など、シニア向けに様々なサービスやサポートが用意されていることである。政令指定都市や人口40〜50万人以上の都市の、買い物や趣味、旅行、医療などの生活利便性の高い立地をメインに、大和ハウス工業やダイワハウスグループのフジタと連携した再開発・建替案件を中心に取り組みを積極化しており、今後開発が進む計画である。そのほか海外では、シドニーでのマンション開発などオーストラリアとニュージーランドにおける大和ハウスグループの海外戦略に積極的に関わり、サービスアパートメントの運営事業への参画を目指す。

b) ソリューション事業
ソリューション事業では、購入から運営、売却までのあらゆるソリューションをワンストップで提供、一方、サブセグメント間でシナジーの強化やオペレーションの効率化を進める。フロービジネスである投資用不動産等では、商品の多様化を目指した開発に加え、中古ストックの再生とブランド化を強化している。社会の変化とニーズの多様化に応える一歩先の投資商品の開発によって、宿泊需要が拡大している訪日外国人向けに業態開発したアパートメントホテル「MIMARU」(2020年3月期以降独立セグメント)や共同出資型不動産「セレサージュ」、レンタルオフィス「MID POINT」を開発し拡大につなげているが、さらにそれらに続く、不動産価値の向上につながる商品やサービスの開発を継続する考えである。ストックビジネスとなる不動産賃貸管理等では、住宅からオフィスビルなどへと賃貸の領域を積極的に拡張、管理戸数や管理面積の拡大とオペレーションの効率化を推進する。サービス面では、不動産コンサルティングにおいて、同社の幅広いネットワークを使ったソリューションビジネスや、AIを活用した一棟投資用不動産コンサルティングサービス<VALUE AI>の活用などコンサルティングメニューの拡充とワンストップ対応を進める方針である。

c) 宿泊事業
分譲マンションのノウハウを生かし、暮らすように滞在できるアパートメントホテル「MIMARU」を業態開発し、管理運営サービスを付けて売却もしていく。フロー(開発)とストック(運営)の要素を併せ持つ事業で、主な特徴は、1)都市部や観光地などにアクセスしやすい東京や京都、大阪エリアのターミナル駅周辺など交通利便性の高い立地、2)客室数40室前後で1室40平米程度の比較的小規模な物件で「和」を意識したデザイン、3)寝室とリビング・ダイニングを全室に確保、ミニキッチンに食器や調理器具を常備し、共有部にはランドリールームを備える、自宅での生活の延長線上にある快適に過ごせる空間の提供、4)日本に珍しいファミリーでの中長期宿泊を想定した商品構成と1室当たりの料金設定(3万円程度)??などである。このため、トリップアドバイザーサイトで上位に入るなど既に高い人気を得ている(2019年5月時点)。

ちなみに、アジア系中心に家族旅行の訪日外国人旅行者の利用が見込めるため、ニーズは大きいと思われる。しかし、4人以上のファミリーやグループで宿泊できる広さを持ち、1人当たりの宿泊料金の安い施設が日本に非常に少ないため、競合もあまりないと思われる。民泊が一応のライバルと言えるだろうが、客層や利用動機が違う上、安心・安全・便利という点で寄せ付けない強みを持つと考えられる。またシティホテルに対しても、部屋に泊まれる人数やパーヘッドの料金で優位性がある。拡大するターゲットに対し使いやすいスタイルの宿泊を新たに提案している点で、アパートメントホテルの先行者メリットは大きそうである。収益源は開発後の売却益と売却後も含めた運営収益だが、人気のため比較的高く売却できるようだ。2022年3月期までに1,500室の稼働を目標にしており、2019年4月末時点ですでに25施設1,237室が開発されている。

d) 工事事業
工事事業では、住宅やオフィスにおけるサービスの拡充や、建築受注の確保と投資不動産の改修工事の拡張を目指す。単なるオフィス空間ばかりでなく、働き方改革に向けたオフィスの設計施工やフットサルコートやクラブハウスもあるスポーツ施設、それに店舗やアミューズメント施設への取り組みも強化しており、成長意欲の強い事業である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)




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