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イグニス Research Memo(5):VR事業への先行費用が利益を圧迫するも計画どおりの進捗(2)

注目トピックス 日本株
■イグニス<3689>の決算動向

2. 事業別の業績及び活動実績
(1) コミュニティ
「コミュニティ」の売上高は、前年同期比86.6% 増の1,355百万円と大きく拡大した。四半期推移で見ても、第2四半期は前四半期比8.8% 増と順調に伸び続けている。注力する「with」が、外部要因(社会的認知の高まり等に伴う市場の拡大)や内部要因(心理学を生かした最適なマッチング機能による差別化や最適なプロモーション展開等)により好調に推移。2018 年7 月末から開始したSMS 認証によるマルチログイン機能が会員数の拡大に拍車をかけている。また、2019年4月にも新機能を実装※している。2019年3月末時点で会員数は170 万人を突破し、SNS カテゴリの売上ランキングでも上位を維持している。

※これまでは、ユーザー自身で検索条件を設定して相手を探していたが、新機能「For You」では、独自のアルゴリズムによりwith がユーザー1 人 1 人に合った相手を提案する仕組みとなっている。


損益面でも、積極的な広告宣伝費を投入しながらも、積み上げ型収益モデルであるため、利益率は売上高に連動して拡大してきた。最近では、広告やプロモーションによる流入だけでなく、口コミなどによる流入も増えており、会員獲得コストを下げる方向に働いていると考えられる。

(2) ゲーム
「ゲーム」の売上高は、前年同期比17.2%減の1,278百万円と縮小した。リリースから4 年が経過し、成熟期に入ってきた「ぼくとドラゴン」への広告宣伝費を抑え、利益重視の運営を行ったことも影響している。ただ、それでも累計ダウンロード数は380万DL を突破し、プロダクト利益は高い水準を維持しており、利益面での貢献は依然として大きい。今後も効果的なプロモーション展開や各種キャンペーン等により中長期での安定運営を目指す方針である。一方、2018 年12 月12 日に配信開始した新規タイトル「でみめん」については緩やかなペースで立ち上がっており、2019年3月末の月間ダウンロード数(累計)は25万DLを突破。重視する指標である継続率も順調である。ただ、本格的な収益貢献には至っておらず、立ち上げ時の広告宣伝費の投入が利益を圧迫する要因となった。

(3) その他
「その他」の売上高は、前年同期比59.0% 減の81百万円と大きく縮小したが、四半期推移で見ると、第2四半期は前四半期比でおおむね横ばいで推移している。過去における小規模アプリの減少に加え、「TLUNCH」(モビリティビジネス・プラットフォーム)を運営するMellowを2018 年9 月期第4 四半期から非連結化したことや情報メディア「U-NOTE」の事業譲渡が影響した。また、VR事業(エンターテインメント)においては、「INSPIX」の開発加速とIP 創出のプロジェクトに取り組み、VRアイドルグループのライブビューイングやグッズ販売などで実績があったものの、本格的な収益化の段階には入っていない。その他のVR事業(順天堂大学との「慢性痛み刺激緩和」の研究)や新規事業(AI 技術を活用した工場の検査工程自動化、オンライン診療対応の医療機関向けSaaS の開発・提供)についても先行投資段階である。

3. 新規事業の進捗
(1) VR事業(エンターテインメント)
子会社パルスが展開するVR事業(エンターテインメント)については、前述のとおり、「INSPIX」の開発とIP創出のプロジェクトに取り組んでいる。第1 弾となるVR アイドルユニット「えのぐ」については、2018年11月28日にユニバーサルミュージックよりメジャーデビューを果たすとともに、公式ファンクラブの開設や世界初となるバーチャル握手会の開催、ライブビューイングの開催など本格的な活動を開始。2019年4月にはグループ結成1 周年を記念し、「INSPIX」を活用した初のAR ライブ※1をDMM VR THEATERにて開催している。他にも女性VRアイドルに限らない複数のプロジェクトが進行中※2であり、SNS等累計フォロワー数(ファン数)※3も340,000を突破した。また、2019年5月には芸能事務所「VOYZ ENTERTAINMENT」を設立。設立記念イベントにはファン約2,000人が集結した。2019年夏にボーイズグループのデビューを予定しており、IPによる多様なマネタイズ(チケット、グッズ、ファンクラブ、音楽など)の早期実現を目指している。また、「INSPIX」についても、フェーズ3(自宅から参加できるVRライブ体験の実現)に向けて、高価なVR-HMD(ヘッドマウントディスプレイ)に依存しない「スマホ版 INSPIX(仮)」の開発を進めており、2019年4月にはα版のテスト配信を実施(満足度91.6%の高評価)。2019年中の本リリースに向けて最終段階に入っている。

※1 チケット料金は5,000 円。
※2 「えのぐ」に続く第2弾として、秋元康氏と日本テレビ放送網 (株) が共同で行う声優グループをプロデュースする「ボイスタープロジェクト」へ参画。第3弾として、パルスとタレントプロモーション等を手掛ける(株) ジャストプロが設立した合弁会社の(株)ミラクルプロから女性キャラクターを起用したプロジェクトも活動を開始している。
※3 Twitter、Instagram、YouTube、ファンクラブ、その他のフォロワー数+登録数。


(2)VR事業(医療)
医療分野についても、順天堂大学との「慢性痛み刺激緩和」の研究が進んでおり、早期収益化に向けて準備中とのことだが、2019年6月11日に本プロジェクトに関するプレスリリースが発表され、そのプレスリリースによると、順天堂大学との共同研究に関する特許出願と『VRを用いた慢性疼痛の穏和』システムのパイロット提供※1を開始している。サービス名は「うららかVR」※2となる。VR事業の第0弾企画とされていたものが、ここにきて大きな進展が見られた。このシステムは、持ち運び容易なモバイル一体型のVRとなり、あおむけの状態でも使用可能で、自宅や入院時のベッド等、どんな姿勢にも対応するもので、一般家庭でも不安・慢性疼痛の緩和が可能となるVRサービスは世界初となるようだ。このパイロット提供は順天堂大学以外からも広く募集する模様。今後のさらなる展開についても注目したい。

※1 臨床研究目的の一環として行う試験調査。
※2 順天堂大学大学院医学研究科 堀江教授、医学部麻酔科学・ペインクリニック講座 井関教授との臨床研究に基づき、入院時の不安緩和と、3ヶ月以上続く慢性化した神経障害性疼痛の緩和を目的として開発されたもの。


(3) その他
a) AI ロボット活用による検査工程自動化等
AI 技術を活用した自動外観検査ロボット「TESRAY」と併せ、物体認識と測定精度、適用範囲を革新するハードとソフトの開発を進めている。また同じくAI技術を活用し、ピッキング作業における生産性向上を支援するソリューション(ピッキングソフト)の開発・提供により、新たな需要を開拓する方針である。

b) オンライン診療対応の医療機関向けSaaS
オンライン診療対応の医療機関向けSaaS「FOREST」を導入した医療機関(現時点では非開示)においてオンライン診療を進めており、利用患者数は順調に伸びている。

c) IoT 関連
持分法適用関連会社であるロビットが展開するスマートフォン連動型カーテン自動開閉機「めざましカーテンmornin’ plus」は着実に販売実績を上げており、累計販売個数は44,000 個を突破。「2018 年度グッドデザイン賞」((公財)日本デザイン振興会主催)を2 年連続で受賞した。技術や販売ノウハウの蓄積を含め、今後の事業展開に向けて様々な可能性を探っている段階と言える。

d) フード関連
また、持分法適用関連会社Mellow が展開する「TLUNCH」についても、利便性の高さや需要の大きさ等を背景として足元で急激に拡大しており、出店スペースは100(前年同期比81%増)を超え、流通総額(累計)は12億円(同55%増)、食数(累計)は180万食(同52%増)を突破した。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)




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