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3Dマトリック Research Memo(6):欧州全域における消化器内視鏡手技向け「PuraStat®」の独占販売権

注目トピックス 日本株
■スリー・ディー・マトリックス<7777>の業績動向

2. 止血材の売上動向
2019年4月期における止血材「PuraStat®」の地域別売上動向を見ると、欧州向けが前期比25.5%増の192百万円、アジア・オセアニア向けが同86.8%増の127百万円、その他(中南米)向けが2百万円(前期は3百万円)となった。期初計画では欧州向けが375百万円、アジア・オセアニア向けが120百万円、その他(中南米)向けが18百万円となっており、欧州向けが計画比では約50%の未達となっている。前述したように有力代理店の1社として期待していたPENTAXの動きが鈍く、第3四半期以降は独占販売権契約の最終交渉を控えて、仕入をストップしていたことが要因となっている。四半期ベースの売上動向を見ると2019年4月期第4四半期は130百万円と初めて1億円を突破し、前年同期比122.7%増、前四半期比でも75.7%増と大きく伸張した。オーストラリアで直販体制に切り替わり、販売価格が約2倍に上昇したことが大きいが、欧州向けについても過去最高水準を更新するなど、ようやく成長ステージに入ってきたことがうかがえる。

(1) 欧州
欧州向けでは特にドイツ、イギリスでの増収が目立った。ドイツは有力代理店であるニコライ向けが現地通貨ベースで前期比115%増の426千EUR(125円/EUR換算で53百万円)と急伸した。2016年11月に販売権許諾契約を締結し、当初は営業スタッフ向けのトレーニング等に時間を要したため、顧客獲得に至るまでの時間を要したが、2年目に入って継続的に発注する顧客数も増加し、順調に売上が伸び始めている。また、イギリスでは2018年に入って代理店契約を締結したアクイラント向けが現地通貨ベースで139千EUR(円換算で17百万円)となった。アクイラントでは当初から積極的なプロモーション活動を行っており、初年度の売上高としてはニコライを上回る実績を上げている。ニコライ、アクイラントともに会社計画を上回る売上を達成しており、今後の成長に期待が持てる状況となってきている。また、新たに中東(UAE、サウジアラビア等)での販売も開始されたほか、東欧でもポーランドでは「PuraStat®」を高く評価する医師が多いようで、売上高としてドイツ、イギリス、フランスに次ぐ規模となっているようだ。なお、用途としては約7割が消化器内視鏡領域、約3割が心臓血管外科領域となっており、心臓血管外科領域についても徐々に販売実績が積み上がってきている。

2018年12月に後出血予防材としてCEマーク認証を追加取得したが、販売面での実績はまだほとんど出ていないもようだ。ただ、消化器内視鏡領域において「PuraStat®」の特性を早い段階から評価し、学会等で臨床研究発表を行っているイギリスのBhandari(以下、バンダリ)教授は、止血材だけでなく後出血予防材用途でも「PuraStat®」を利用している。また、現在、消化器内視鏡手術において一般的に行われている電気焼灼術による止血後に、後出血予防として「PuraStat®」を用いるケースも増えていくものと予想される。

なお、欧州全域を対象とした独占販売権契約については、2019年4月期末までに間に合わなかったものの、2019年6月にFUJIFILMと消化器内視鏡手技領域で契約締結したことを発表している。年明け以降、3社とLOIを締結して交渉を進めてきたうちの1社となる。弊社ではPENTAXが有力候補と見ていたが、PENTAXの販売実績が同社の期待値を下回っていたことに加えて、FUJIFILMの欧州における顧客基盤がPENTAXよりも大きく、内視鏡のシェア拡大に積極的で※、同戦略の中で「PuraStat®」の販売増が期待できること、また、「PuraStat®」の利用医師等からの推奨もあってFUJIFILMとの契約を最終的に決定したとしている。

※2019年5月に内視鏡用処置具メーカーのmedwork GmbH(ドイツ)を買収、処置具の製品ラインアップを拡充している。


欧州における内視鏡の市場シェアでFUJIFILMはオリンパス<7733>に次ぐ2番手で、2〜3割のシェアを持っている。製品の特長としては、臓器の粘膜表層の微細な血管や構造などを強調して表示する機能「BLI(Blue Light Imaging)」や、画像の赤色領域のわずかな色の違いを強調して表示する機能「LCI(Linked Color Imaging)」を持ち、容易に微小な病変の発見を可能としている点にある。バンダリ教授もFUJIFILMユーザーであり、中堅〜トップクラスのKOLでのユーザーも多いと言う。また、アクイラントはFUJIFILMの代理店でもあり、引き続きFUJIFILMを通して二次代理店としてイギリスでの販売を担うものと予想される。また、ドイツのニコライなど既に販売実績のある代理店については販売効率も考えて、二次代理店として活用していくものと思われる。なお、PENTAXについてはFUJIFILMと内視鏡で競合していることから今回、代理店契約を解除している。このため従来、PENTAXがカバーしていたフランスやスペイン、オランダ等についてはFUJIFILMでカバーしていくことになる。

また、今回の独占販売権契約のなかでは契約一時金がなかったが、販売拡大に向けての具体的な協業施策を決めている。主には「短期間での顧客基盤の拡大」「PuraStat®に対する理解・認知の向上」「FUJIFILMのアドバイザリーボードの活用」の3点となる。当面はFUJIFILMの営業スタッフに向けたトレーニング等に時間を要すると見られ、本格的に売上に寄与してくるのは2020年4月期の後半からになると見られる。なお、年間最低購買量について初年度の取り決めはなく、販売実績等を見て2年目以降の購入量を決めていくことになるが、今後の欧州での販売拡大ペースについて、両社の見方に大きな差異はないとしている。

(2) アジア・オセアニア
アジア・オセアニア向け売上の大半はオーストラリアで占められている。2018年10月に代理店であったゲティンゲグループのバイオサージェリー部門が中国ヘルスケア企業に売却されたことで、代理店契約終了による売上へのマイナス影響が懸念されたが、ゲティンゲグループから経験豊富な営業マネージャー/スタッフを2名採用したこともあり、直販に切り替わった第4四半期も販売は好調に推移し、2019年4月期の「PuraStat®」販売本数(医療施設への販売ベース)は前期比2.6倍の3,651本と急拡大した。売上の大半は内視鏡領域とENT領域で占められている。

顧客となる医療施設数が、前期末の27施設から40施設以上に拡大したことが販売増の要因となっている。特に、ENT領域に関しては癒着防止材としての機能が医師だけでなく患者からも口コミ等を通して評価が高まっており、患者獲得のために「PuraStat®」を導入する医療施設がメルボルンやシドニー等の主要都市部で増加した。

(3) 中南米・カナダ
中南米向けについては主要市場であるブラジル、メキシコ、コロンビア、チリなどで現地販売代理店を通じた販売活動を行っているほか、2019年4月期は新たにアルゼンチン、ペルーでも代理店を通じた販売活動が始まっている。ただ、継続的な発注が出る状況には至っておらず、売上高は伸び悩む格好となっている。

一方、カナダで2019年1月にCEマーク認証を取得しており、新たにDiplomaグループ※の子会社であるVantage Endoscopy(以下、Vantage)と販売代理契約を締結している。2019年秋からの販売開始に向けて、現在は市場調査、KOLへのコンタクト、代理店へのトレーニング等の準備を進めている段階にある。なお、医療機器市場や医療費支出、GDP等を基に算出したカナダにおける止血材の市場規模は30〜50億円程度と同社では推計している。

※ロンドン証券取引所上場企業で、年間売上高は4.85億ポンド(約650億円)となっている。Vantageはカナダにおける内視鏡等の医療機器販売の大手の一角を占めている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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