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システム ディ Research Memo(5):大きな動きがないなか、県域案件の始動もあり着実に導入学校数が増加

注目トピックス 日本株
■事業部門別動向

4. 公教育ソリューション事業
公教育ソリューション事業は公立の小・中・高校向けに校務支援システム『School Engine』を提供している。文科省の平成30年度学校基本調査によれば、2018年5月1日現在で公立小学校は19,591校、公立中学校は9,421校、公立高校は3,559校ある(いずれも国立は含まない)。全体で32,571校の市場ということでシステムディ<3804>にとっても伸びしろの大きい事業ということができる。

同じ学校向けソフトウェア事業であっても、私立学校法人や独立行政法人である国公立大学を対象とする学園ソリューション事業とは事業環境が大きく異なる。違いの1つは自治体予算制度だ。公立学校は基本的に自治体の教育委員会の管理下にあり、エリア内での共通予算はあっても、1校当たりの予算の制約が厳しい。こうした状況に適合すべく、同社では『School Engine』をクラウドサービスで提供している。競合の中にはパッケージソフトで提供しているところも多く、小中高校すべてにクラウド対応を完了しているのは同社だけという状況だ。違いの第2は営業先だ。公教育ソリューション事業は提案先が県あるいは市町村の教育委員会となる。案件を落札できれば当該教育委員会の管轄下にある学校すべてに導入される流れとなるため効率が良い。しかし一方で入札のプロセスを経るため、収益性が高まらない可能性があるが、学校単位でのオンプレミス提供に対し、自治体エリア単位でのクラウドサービスの方が結果的に収益性が高くなるという利点がある。

2019年10月期第2四半期は、売上高が前年同期比10.8%減の290百万円と減収となった。同社は公立高校向けでは18県・4政令指定都市に納入し、市場シェア50%(都道府県数ベース)を獲得している。今第2四半期は受発注の動きがスローで、特段の受注・失注の動きがなく、前述のような売上高に落ち着いた。2019年4月末の導入学校数は2.061校となった。

公立高校についてはシステムの導入を決定していないところが10都道府県ほど残っているとみられる。同社はここについてもシェア50%の達成を目指して5都道府県前後の受注獲得に取り組むとみられるが、都道府県数ベースではゴールに近づきつつあるのは事実だ。それに対して小中学校向けの市場は依然として成長余地が大きい。小中学校は基本的に全国の1,741市町村(東京の23特別区を含む)の教育委員会が交渉相手となるが、この市場では同社のシェアは高校に比べて低く、3〜4番手のポジションとみられる。それだけアップサイドポテンシャルが大きいという見方もできる。

市町村向け(小・中学校向け)での苦戦は、クラウドサービスのセキュリティへの懸念がその背景にあるというのが同社の自己分析だ。しかし、クラウド化の大きな潮流のなかでこうした壁は次第に崩れていくと弊社では考えている。

もう1つの注目点は、“県域案件”の増加だ。これは都道府県単位で、県下全域にわたって統合型校務支援ソフト導入する案件のことで、簡単に言えば当該の県下すべての公立小・中・高校で同じ校務支援ソフトを導入するということだ。これまで4県が実施し、同社はそのうち2県(奈良・高知)を受注している。この4県は文科省の実証実験として採択されたものであるが、これを先行事例として他の都道府県にも広がることが想定されている。その際は公立高校市場の50%のシェアを有することや、小規模校にとって導入ハードルが低いクラウド型でサービスを提供していることが有利に働くと期待される。


今期は端境期ながら、総務省配布の無償ソフトからのリプレイスを狙う
5. 公会計ソリューション事業
公会計ソリューション事業は、地方自治体向けの新公会計用ソフトやソリューションを提供している。総務省は地方自治体に対して企業会計原則に基づく会計制度(複式簿記に基づく発生主義会計)の導入を2018年3月末までに完了させることを求めており、これが公会計ソリューション事業を後押しする背景となっていた。同社はこれに対応して公会計用ソフト『PPP』(トリプルピー)を開発し、熟成を重ねながら売上げを伸ばしてきた。また、2018年6月には、公会計活用システムで、言わば地方自治体の財務諸表分析に特化したソフト『創生』をリリースしている。

2019年10月期第2四半期の売上高は、前年同期比35.2%減の184百万円となった。大幅減収の理由は明確で、全国の地方自治体で新会計ソフトの導入が一巡し、その後の更新需要にも間のある、いわゆる端境期にあったことが減収の理由だ。2019年4月末時点の『PPP』の導入自治体・団体の数は950となった。

今第2四半期決算の売上高を見て、公会計ソリューション事業の成長は止まったと懸念する向きもあるだろうが、必ずしもそうではなく、成長軌道を回復する可能性は十分あると弊社では考えている。

まず同社の『PPP』のポジショニングを確認したい。総務省が主導した新公会計の導入対象は1,788の自治体(47都道府県と1,741の市町村(特別区含む))及び約1,595の関連公共団体だった。このうち、同社がターゲットとするのは1,788の自治体と約200の相対的に規模が大きい関連公共団体の約2,000団体だ。その市場において同社製品は2019年4月末時点で950団体に導入されており、市場シェアは約50%でトップシェアという状況だ(地方自治体に限定すると800超の地方自治体に納入されたとみられる)。
同社にとっては、この50%近い自治体ユーザがストックビジネスの大きな基盤の一つでもある。
シェア2番手の公会計ソフトは総務省が外郭団体のJ-LISを通じて無償で配布したソフトで、このシェアが約25%とみられる。

しかし、官製ソフトの常であるが、その無償ソフトを提供してきた総務省・J-LISが、2023年3月いっぱいで(すなわち、2022年度をもって)のアップデートや改良などのサポートを停止することを発表している。

こうした状況にあって、同社はJ-LISの無償ソフトのシェアを『PPP』でリプレイスすることで成長する戦略を描いている。同社はこれを好機として『PPP』への転換を提案していく方針だ。自治体では、予算措置を経る必要があるため実際の商談に至っていないが、J-LISの無償ソフトからの『PPP』を含めた他のソフトへの切り替えの動きは、2019年度後半から少しずつ動きだすとみられ、2020年度には切り替えの動きがより加速してくると期待される。同社の決算期では2020年10月期下期からということになる。

公会計ソリューション事業における同社の当面のゴールは、地方自治体の市場においてシェア50%(自治体数ベース)というものだ。地方自治体の数が1,788であるため、900自治体への導入を目指すということだ(現状は800数十自治体と推定)。シェア50%を獲得できればその後の事業展開で有利に進めることが可能になると弊社では期待しており、まずはシェア50%の達成を待ちたいと考えている。


客数が増加しないなかでも、保守・サポート収入を安定的に確保
6. 薬局ソリューション事業
薬局ソリューション事業は連結子会社のシンクが手掛ける事業で、小規模の独立系調剤薬局に対してレセプトコンピュータ(レセコン)の『GOHL2』などを提供している。2015年10月期には新製品の医薬品過誤防止システム「GOHL PICKING」をリリースした。

2019年10月期第2四半期の売上高は前年同期比23.4%減の29百万円となった。『GOHL』シリーズの導入薬局数は1,225で半年前から横ばいとなった。こうした状況のなかで、シンクは保守・サポート収入を安定的に確保した。

調剤薬局業界は、大手チェーンと個人経営の小規模薬局とに大きく二分された業界だ。また、国(厚労省)が医療制度改革の一環として“患者のための薬局ビジョン”を掲げてあるべき薬局像の確立や業界構造の変革を急ぐ状況下にある。こうしたなか、同社の潜在顧客である個人・小規模薬局においては業務効率化や経営改善に寄与できるソフトウェアやサービスへの需要がこれまで以上に高まってくる可能性がある。同社の製品ラインアップにはレセコンのほか服薬情報一元管理ができる『薬歴情報電子ファイル』など、個人・小規模薬局の経営効率改善に寄与できるソフトウェアがそろっており、これらの拡販で成長を目指す方針だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川裕之)



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